Journal of Intelligence Science in Local Research
Online ISSN : 2759-1158
Research article
Analysis of Errors in Standard Normal Distribution Problems and Proposals and Evaluation of Effective Instruction
Through an Error Analysis of Test Problems on the Standard Normal Distribution Administered to College Students of Arts and Humanities
Jun Sasaki
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2025 Volume 2 Issue 1 Pages 20-39

Details
Abstract

本研究は、高等学校学習指導要領(文部科学省、2019、以下「新学習指導要領」と略記する)を踏まえ、統計的な推測の履修状況を調査し、その中から標準正規分布に関する問題を取り上げ理解の様相を確認した。 また、標準正規分布の過去の誤答データを踏まえ、効果的な教育方法を提案し、その教育実践を行い、その教育効果を検証した。 標準正規分布の問題については、図を描き数式との対応関係を理解させ、見直しをすることで、正答率に上昇が見られたが、用具的理解に終始した誤答及びケアレスミスが少なからず存在した。ケアレスミスに対する対策については、改善の余地が残されている。

Translated Abstract

This study investigated the status of learning statistical inference based on the new high school curriculum guidelines, focusing on problems related to the standard normal distribution to assess understanding. Furthermore, based on past incorrect answer data for the standard normal distribution, effective teaching methods were proposed, implemented in educational practice, and their effectiveness was verified. Regarding problems on the standard normal distribution, having students draw graphs to understand the relationship with the formula and then review their work led to an increase in the correct answer rate. However, a significant number of errors persisted, including those based solely on rote understanding and careless mistakes. Measures to address careless mistakes still have room for improvement.

【原著論文】

標準正規分布の問題に関する誤答分析

及び効果的な教育提案と検証

―文科系大学生に行った「標準正規分布」のテスト問題の誤答分析を通して―

Analysis of Errors in Standard Normal Distribution Problems and Proposals and Evaluation

of Effective Instruction

―Through an Error Analysis of Test Problems on the Standard Normal Distribution Administered to College Students of Arts and Humanities―

佐々木 淳1

Jun Sasaki1

1下関市立大学

Shimonoseki City University

要旨

 本研究は、高等学校学習指導要領(文部科学省、2019、以下「新学習指導要領」と略記する)を踏まえ、統計的な推測の履修状況を調査し、その中から標準正規分布に関する問題を取り上げ理解の様相を確認した。

 また、標準正規分布の過去の誤答データを踏まえ、効果的な教育方法を提案し、その教育実践を行い、その教育効果を検証した。

 標準正規分布の問題については、図を描き数式との対応関係を理解させ、見直しをすることで、正答率に上昇が見られたが、用具的理解に終始した誤答及びケアレスミスが少なからず存在した。ケアレスミスに対する対策については、改善の余地が残されている。

キーワード:誤答分析、統計的な推測、標準正規分布

Abstract

This study investigated the status of learning statistical inference based on the new high school curriculum guidelines, focusing on problems related to the standard normal distribution to assess understanding.

Furthermore, based on past incorrect answer data for the standard normal distribution, effective teaching methods were proposed, implemented in educational practice, and their effectiveness was verified.

 Regarding problems on the standard normal distribution, having students draw graphs to understand the relationship with the formula and then review their work led to an increase in the correct answer rate. However, a significant number of errors persisted, including those based solely on rote understanding and careless mistakes. Measures to address careless mistakes still have room for improvement.

Keywords: Error Analysis, Statistical Inference, Standard Normal Distribution

1.はじめに

令和7年度は、平成30年に告示された新学習指導要領に基づく教育を受けた生徒が大学に入学する初年度に相当する。新学習指導要領における改訂によって、実質的に「統計的な推測」を履修する生徒数が増加した。従来は、日本学術会議(2020)が指摘するように「選択科目数学Bの『確率分布と統計的な推測』は多くの大学において入学試験の出題範囲外とされ、実際には十分に学習されていない」状況であった。しかし、今回の改訂を契機として、従来は出題範囲外とされていた「統計的な推測」を必修内容として入試に導入する大学が複数現れている。

この状況を鑑みると、中等教育及び高等教育で「統計的な推測」に関する教育的知見を体系的に蓄積し、その効果を検討することが喫緊の課題であると考えられる。

そこで本研究は、高等学校の数学Bの「統計的な推測」における標準正規分布の問題に焦点を当て、大学の文科系学部の新入生における同単元の履修状況及び習得状況を調査する。また、2024年度までに蓄積してきた誤答分析に基づく教育提案の有効性について、数学基礎力テスト及び期末テストの結果を用いて検証することを目的とする。

本稿は、2025年度数学教育学会春季例会、2025年度日本テスト学会23回大会における質疑応答と数学基礎力テスト及び期末テストの結果を踏まえて加筆・修正したものである。

2.研究の方法等

2-1.研究の前提条件、対象の授業及び履修登録者数

本研究では、2023年度、2024年度及び2025年度にS大学経済学部の学生を対象として行った「統計入門」の期末テストと2025年度に同授業で行った数学基礎力テストの結果を用いて、誤答を分析した。

「統計入門」は、記述統計と推測統計の基礎を学ぶ科目であり、高等学校の教育課程における数学I「データの分析」及び数学B「統計的な推測」に対応する内容を含んでいる。開講は2023年度までは春学期のみ、2024年度以降は春学期及び秋学期で、単位数は2である。講義はパワーポイントを用いて行った。対象学年は主に1年生、授業内容は表1の通りで、教科書は大内(2024)を用いた。本稿に関する授業は、第10回次に実施した。

2024年度・2025年度の期末テストでは電子式卓上計算機(以後、電卓と略記)の持ち込みを許可したが、2023年度の期末テスト及び2025年度の数学基礎力テストについては、計算力の分析も兼ねていたため、電卓の持ち込みを許可しなかった。

出題したテストの問題は、 Z を標準正規分布 N ( 0 , 1 ) に従う確率変数とするとき、与えられた正規分布表に P ( 0 Z t ) = p ( t ) が記載されているものから数値を読み取り解答する形式である。正規分布表はチャート研究所編著(2022)の巻末にある形式のものをテスト用紙に含めて印刷した。

受検者のうち研究協力者の人数は、2023年度334人、2024年度春学期311人、同秋学期45人、2025年度は期末テストが312人、数学基礎力テストは307人であった。

本稿において考察の対象とする標準正規分布に関する問題とその正答率は表2の通りである。また、対応する高等学校の教科書における例題及び演習問題は表3の通りである。

2-2.倫理審査

対象の学生には文書と口頭により研究の趣旨を説明した。研究の参加は自由意思によること、途中で拒否できること、個人情報の保護及び匿名性の確保等を伝え、研究同意書を用いて同意を確認した。数学基礎力テストについては、日本とカリキュラムが異なる留学生を分析対象に含めなかった。分析の対象に含めなかった学生は、数学基礎力テストにおいては2025年度の留学生7人、期末テストにおいては、2023年度に研究の参加に不同意であった2人、2025年度に不同意であった3人である。本研究の調査実施に当たっては、下関市立大学の研究倫理審査委員会(受付番号2301-0417)の承認を得て行った。

3.誤答の分析

3-1.授業の展開

授業では P ( 0 Z 1.64 ) = p ( 1.64 ) を例に記号の意味及び正規分布表の活用方法を説明した後、学生に演習問題として P ( 0 Z 1 ) P ( 0 Z 2 ) を提示し、正規分布表から確率を求める問題の演習を行った。その後、 P ( 0 Z 1.5 ) を説明し、 P ( 0 Z 1.96 ) P ( 0 Z 2.57 ) の問題を学生に演習させた。これらの例で一通り正規分布表の活用方法を理解させた後、 P ( 1.5 Z 0 ) などの場合を説明した。そして、学生に演習をさせながら、 P ( 1 Z 1 ) P ( 1 Z ) P ( Z 2 ) P ( 1.5 Z 2.5 ) について段階を踏んで解説と問題演習を行った。

表1に示す問題1から10の正答率を概観すると、問題1・問題3と問題7・8のように正答率に15%以上の差が生じていたものもあった。しかし、高等学校教科書においては、これらの問題は同列に例題や演習問題として掲載されている。例えば、東京書籍『数学B Advanced』(俣野博・河野俊丈ほか、2024)では、例題として P ( 0 Z 1.5 ) P ( Z > 1.5 ) P ( Z 2 ) が扱われ、演習問題として P ( Z 1 ) P ( Z > 0.5 ) P ( 2 Z 2 ) P ( 1.96 Z 1.96 ) が提示されている。表2の正答率から、これらの問題間で難易度に差があるため、授業の実践においては学生の理解度に応じた段階的な例題・演習問題の解説が必要になると考えられる。

以下における誤答の分類は2023年度から2025年度に実施した期末テスト及び2025年度の数学基礎力テストの結果をまとめて記載する。なお、2023年度及び2024年度の期末テスト及び2025年度の数学基礎力テストの結果を踏まえた授業を2025年度に行っている。

3-2.問題1a・1b及び問題2の分析

 問題1aは P ( 0 Z 2.17 ) = 0.485 、問題1bは P ( 0 Z 1.16 ) = 0.377 、問題2は P ( 0.51 Z 0 ) = 0.195 を解答する問題で、正規分布表に記載されてある数値から計算することなく解答ができる問題である。標準正規分布を理解し、正規分布表を適切に使用できるかを確認するために出題した。問題1a、1b、2の正答・誤答・無答の割合は表4から6で、それらの誤答の概要は表7から9の通りである。

問題1a、1b及び問題2の誤答の多くは、正規分布の理解不足に起因するものであった。

問題2については、正規分布の理解不足に加え、読み取り間違いにより P ( 0.5 Z 0 ) を解答したものが見られた。また、 P ( 0.51 Z 0 ) = p ( 0.51 ) = 0.195 のように、数式を形式的に数値に置き換える答案も散見された。これら誤答の結果から、正規分布の基本的な問題でつまずいている学生が存在しているとわかる。そのため、小テストなどを用いて、早期につまずき箇所を把握し、教育に反映させる必要があると考える。なお、本問で誤答であった学生の答案は数値や数式のみで図の記載はほとんどなかった。

 2024年度までの誤答の結果から前述の知見は得られた。そのため、2025年度の授業時は図を描いて理解の促進を図ると共に図の必要性を説明し、形成的評価としてGoogle Formを用いた小テストも活用することで、つまずきを確認できるようにした。また、読み取り間違いも想定して、解答の数値が問題文の条件を満たすかを確認する見直しの方法を紹介し、実演も行った。このような見直しを実施することで誤答を軽減できる。例えば、本問の場合、 0.1915 と解答した場合は、 p ( t ) = 0.1915 を満たす t の値は 0.5 であり間違いとわかる。

正規分布表の読み間違いを考慮し、授業では見直しについても言及し、実際に前述の見直しの過程も紹介したが、同年度の期末テストにおいても読み間違いによる誤答は少なからずあった。そのため、読み間違いを減らすための工夫については、今後の課題としたい。

表5 問題1b:P(0≦Z≦1.16)の正答・誤答・無答の内訳

出題時期 人数 正答 誤答 無答
2025春 312 303(97.1) 9(2.9) 0(0.0)
2025基礎 300 182(60.7) 36(12.0) 82(27.3)

表6 問題2:P(-0.51≦Z≦0)の正答・誤答・無答の内訳

出題時期 人数 正答 誤答 無答
2025春 312 291(93.3) 20(6.4) 1(0.3)
2025基礎 300 147(49.0) 70(23.3) 83(27.7)

表7 問題1a:P(0≦Z≦2.17)の誤答の概要 ()の数値は計算間違い

誤答要因 誤答例 24春 合計 24秋 合計

標準正規分布

の理解不足

  
0.5 p ( 2.17 ) = 0.015
3(1) 10
  
p ( 2 ) + p ( 0.17 ) = 0.5447
3
  
p ( 2.17 ) + p ( 2.1 ) = 0.0029
1
  
p ( 0.1 ) = 0.0398
1
  
0.5 + p ( 2.17 ) = 0.985
1
読み取り間違い   
p ( 2.16 ) = 0.4846
1 3 1 1
  
p ( 2.08 ) = 0.4812
1
  
p ( 0.17 ) = 0.0675
1
当て推量   
0.1
1 1
合計 14 14 1 1

誤答要因 誤答例 25春 合計 基礎 合計
転記間違い 0.3772 0.3774 0.3776 各々1人 計3 3 1
  
0.3778
1
当て推量 10 10
合計 9 9 36 36

表9 問題2:P(-0.51≦Z≦0)の誤答の概要、()の数値は計算間違い

誤答要因 誤答例 25春 合計 基礎 合計

標準正規分布

の理解不足

  
0.5 p ( 0.51 ) = 0.305
4 9 9(1) 43
  
0.5 p ( 0.5 ) = 0.3085
2
  
p ( 0.51 ) = 0.195
1 14
  
p ( 0.51 ) 0.5 = 0.495
1
  
0.5 + p ( 0.51 ) = 0.695
1 1
不等式の解答 9
  
p ( 1.16 ) = 0.377
2
  
1 p ( 0.51 ) = 0.805
2
  
0.5 + p ( 0.5 ) = 0.6915
1
  
p ( 0.5 + 0.51 ) = p ( 1.01 ) = 0.3438
1
  
p ( 2.5 0.51 ) = p ( 1.99 ) = 0.4767
1
  
0.5 + p ( 0.01 ) = 0.54
1
  
0 { p ( 0.51 ) } = ( 0.195 )
1

読み取り

間違い

  
p ( 0.5 ) = 0.1915
8 8 11 16
  
p ( 0.5 ) = 0.1915
1
  
p ( 0.5 ) = 0.1925
1
  
p ( 0.5 ) = 0.1591
1
  
p ( 0.5 ) = 0.1195
1
  
p ( 0.49 ) = 0.1879
1
記載間違い   
p ( 0.51 ) = 0.9150
1 3 1
  
p ( 0.51 ) = 0.1956
1
  
p ( 0.51 ) = 1.95
1
  
p ( 0.51 ) = 1950
1
当て推量 10 10
合計 20 20 70 70

3-3.問題3及び問題4の分析

問題3は P ( 1.96 Z 1.96 ) = 0.95 を解答する問題、問題4は P ( 2 Z 1 ) = 0.8185 を解答する問題である。これらの問題は正規分布表の数値を読み取るだけではなく、いずれもたし算の計算が必要であり、正規分布の理解度を確認するために出題した。

問題3は2023年度から出題している問題である。問題4の解き方は問題3と同様であるが、問題3に関する値である 1.96 0.95 は頻繁に利用する値であるため、数値を記憶しているだけの場合も考えられるため出題した。計算間違いや読み間違いを除けば、問題3が正答で問題4が誤答の場合は、問題3の結果を記憶しているだけの可能性も考えられる。

問題3、問題4の正答・誤答・無答の割合は表10、11の通りで、問題3、問題4の誤答の概要は表12、13の通りである。

なお、本稿は2024年度までの知見を踏まえた授業を2025年度に行っているため、2025年度期末テストの正答率が2024年度以前と比較して有意な差があるか否かを、カイ二乗検定を行った結果も含めた。有意な差がない場合については n . s . N o t S i g n i f i c a n t と記載した。検定はイエーツ( Y a t e s )の補正を行った場合も考慮して、有意差を判定した。

表10 問題3:P(-1.96≦Z≦1.96)の正答・誤答・無答の内訳、有意差は2025春と比較

出題時期 人数 正答 誤答 無答 有意
2023春 334 305(91.3) 17(5.1) 12(3.6)   
* * p < .01
2024春 311 283(91.0) 17(5.5) 11(3.5)   
* * p < .01
2024秋 45 43(95.6) 2(4.3) 0(0.0)   
n . s .
2025春 312 305(97.8) 7(2.2) 0(0.0)
2025基礎 300 142(47.3) 68(22.7) 90(30.0)   
* * p < .01

表11 問題4:P(-2≦Z≦1)の正答・誤答・無答の内訳、有意差は2025春と比較

出題時期 人数 正答 誤答 無答 有意
2024春 311 262(84.2) 35(11.3) 14(4.5)   
* * p < .01
2024秋 45 34(75.6) 10(22.2) 1(2.2)   
* * p < .01
2025春 312 292(93.6) 20(6.4) 0(0.0)
2025基礎 300 131(43.7) 72(24.0) 97(32.3)   
* * p < .01

問題3、問題4の誤答についても、標準正規分布の理解不足に起因するものが多くを占めた。誤答の答案については、表12、13に示す通り、意味も分からず数式を計算しているものがあった。意味も分からず計算に終始している誤答は、特に問題4で多くみられ、 P ( 2 Z 1 ) = P ( 0 Z 3 ) P ( 2 Z 1 ) = P ( 0 Z 3 ) = 3 P ( 0 Z 1 ) などのような平行移動によって無理やり正規分布表に記載されてある数値にした解答もあった。

これらの誤答は、図を描かず数式のみで処理しているものが多かった。数式のみならず、問題で問われている内容を正確に把握し計算につなげるためにも図を描くことが重要で、その重要性を伝える必要があると考える。2025年度は過去の誤答を踏まえ、授業時に図の重要性を強調することで誤答は減少したが、実際のテストでは図を描かず誤答となった学生が少なからず存在した。そのため、学生に図を描く習慣をつけさせる工夫も必要と考える。

表12 問題3:P(-1.96≦Z≦1.96)の誤答の内訳

誤答要因 誤答例 23春 24春 24秋 25春 25基

標準正規分布

の理解不足

  
p ( 1.96 ) = 0.475
4 6 14 19
  
1 p ( 1.96 ) = 0.525
1
  
p ( 1.96 2 ) = p ( 2.92 ) = 0.4983
1
  
p ( 1 ) = 0.3413
1
  
p ( 2.5 ) p ( 1.5 ) = 0.0606
1
不等式の解答 8
  
0.9
2
  
± p ( 1.96 ) = ± 0.475
2
  
0.95 2 = 1.9
1
  
2 p ( 1.96 ) = 1.525
1
  
p ( 1.96 2 ) = p ( 2.82 ) = 0.4976
1
  
0.3778 2 = 0.7556
1
  
1 2 p ( 1.96 ) = 0.05
1
  
0.5 2 p ( 1.96 ) = 0.45
1
  
0.5 0.05 = 0.45
1
  
p ( 1.66 ) = 0.4515
1
  
p ( 0.59 ) = 0.2224
1

読み取り

間違い

  
2 p ( 1.95 ) = 2 0.4722 = 0.9488
2 1 5 1
  
2 p ( 1.97 ) = 2 0.4756 = 0.9512
1 1
  
2 p ( 1.92 ) = 2 0.4726 = 0.9452
1
転記間違い   
2 p ( 1.96 ) = 2 0.4725 = 0.945
1 2
  
2 p ( 1.96 ) = 2 0.457 = 0.914
1
計算間違い 5 2 5 12 1
当て推量 3 6 1 10 25
合計 17 17 2 7 43 68

表13 問題4:P(-2≦Z≦1)の誤答の概要、()の数値は計算間違い

誤答要因 誤答例 25 基礎

標準正規分布

の理解不足

  
p ( 2 ) p ( 1 ) = 0.1359
10(1) 5 4(1)

40

[47]

8
  
p ( 2.1 ) p ( 1 ) = 0.1408
1
  
p ( 2 Z 1 ) = p ( 0 Z 3 ) = 0.4987
3 2 15
  
p ( 1 ) = 0.3413
3 1 1 2
  
{ p ( 2 ) + p ( 1 ) } = 0.8185
3
  
1 { p ( 1 ) + p ( 2 ) } = 0.1815
2 (2)
  
{ p ( 2 ) p ( 1 ) } = 0.1359
2 1 3(2)

誤答要因 誤答例 24春 25 基礎
  
2 p ( 2 ) = 0.6826
2

7

[47]

不等式の解答 2 8
  
p ( 2 Z 1 ) = 3 p ( 0 Z 1 )
2
  
p ( 1.09 ) = 0.3621
1
0.3413 0.4772 4
  
1 + p ( 1 ) = 1.3413
2
  
p ( 2 ) = 0.4772
2
  
p ( 2.1 ) = 0.4821
1
  
1 p ( 2 ) = 1 0.4772 = 0.5228
1
  
0.5 0.0196 = 0.4804
1
  
p ( 2 ) + p ( 1 ) 0.5 = 0.3185
1
  
0.5 + p ( 1 ) = 0.8413
1
  
1 + p ( 1.21 ) = 1 0.3869 = 0.6131
1
  
1 { p ( 0.1 ) + p ( 0.2 ) } = 0.8809
1
  
0.3413 ( 0.4772 )
1
  
0.5 { p ( 1 ) + p ( 2 ) } = 0.5 p ( 3 ) = 0.0013
(1)
読み取り間違い 4 2 2 8
計算間違い 5 5 1
転記間違い 4 2 2 1
当て推量 1 1 13
合計 35 10 20 65 72

3-4.問題5及び問題6の分析

問題5は P ( 0.5 Z 1.5 ) = 0.2417 を解答する問題、問題6は P ( 2.5 Z 1.5 ) = 0.0606 を解答する問題である。考え方や計算方法は問題3、4と同様であるが、問題3、4がたし算を用いる問題であったことに対し、本問は引き算を用いる問題として出題した。

問題5、問題6の正答・誤答・無答の割合は表14、15で、問題5、問題6の誤答の概要は表16、17の通りである。

問題5、問題6の誤答についても、標準正規分布の理解不足に起因するした形式的な数式の処理に終始したものが多くを占めたが、計算間違い、記載間違い、読み取り間違いなどのケアレスミスも見られた。

問題5、問題6においても図を描くことで、引き算をすればよいことが容易に分かるが、図を描かずに形式的な数式処理に終始して誤答となったものが多かった。この結果を踏まえ、図を描かない形式的な数式処理は、表16や表17のような誤答例になることを学生に提示し、図の重要性を伝える必要があると考える。

 計算間違い、記載間違い、読み取り間違いなどのケアレスミスについては、前述した見直しの導入のみならず、その数値が適切であるのかを検証する習慣が必要である。

表14 問題5:P(0.5≦Z≦1.5)の正答・誤答・無答の内訳、有意差は2025春と比較

出題時期 人数 正答 誤答 無答 有意
2024春 311 241(77.5) 56(18.0) 14(4.5)   
* * p < .01
2024秋 45 34(75.6) 10(22.2) 1(2.2)   
n . s .
2025春 312 272(87.2) 39(12.5) 1(0.3)
2025基礎 300 109(47.3) 94(22.7) 97(30.0)   
* * p < .01

表15 問題6:P(-2.5≦Z≦-1.5)の正答・誤答・無答の内訳

出題時期 人数 正答 誤答 無答
2025春 312 281(90.1) 28(9.0) 3(1.0)

表16 問題5:P(0.5≦Z≦1.5)の誤答の概要、()の数値は計算間違い

誤答要因 誤答例 24春 24秋 25春 基礎

標準正規分布

の理解不足

  
p ( 0.5 ) + p ( 1.5 ) = 0.6247
29(4) 3(1) 19(1)

85

[85]

25
  
p ( 0.5 ) + p ( 1.05 ) = 0.5446
1
  
p ( 1 ) = 0.3413
3 1 4 13
  
p ( 1.5 ) = 0.4332
2 1 4(1)
  
p ( 1.5 ) { 0.5 p ( 0.5 ) } = 0.1247
1 1(1) (1)
  
0.5 p ( 1.5 ) = 0.0668
2
不等式の解答 1 1 9
  
p ( 1.05 ) p ( 0.5 ) = 0.1616
2 1
  
p ( 0.5 ) p ( 1.5 ) = 0.2417
1
  
p ( 0.5 + 1.5 ) = p ( 2 ) = 0.4772
1 4
  
p ( 1.05 ) = 0.3531
1 1
  
p ( 1.09 ) = 0.3621
1
  
2 p ( 1.19 ) = 0.766
1
  
p ( 1.53 ) p ( 0.5 ) = 0.2455
1
  
2 p ( 1.05 ) 0.5 = 2 0.351 0.5 = 0.202
1
0.4332 0.1915 4
  
p ( 0.5 ) + p ( 1.5 ) = p ( 1.55 ) = 0.4394
1
  
1 { p ( 0.5 ) + p ( 2.5 ) } = 0.3753
1(1)
  
1 { p ( 2.5 ) + p ( 1.5 ) } = 0.0073
(1)
  
p ( 2.5 ) = 0.4938
1
  
0.5 p ( 1 ) = 0.1587
1
  
p ( 0.5 ) p ( 1.5 ) = 0.2417
1
誤答要因 誤答例 24春 24秋 25春 基礎

標準正規分布

の理解不足

  
p ( 0.7 ) = 0.258

0

[85]

1
  
1 + p ( 1.99 ) = 1.4757
1
  
p ( 1.5 ) p ( 0.5 ) = p ( 1 ) = 0.1915
1
読み取り間違い   
p ( 1.5 ) p ( 0.05 ) = 0.4133
1(1) 2
転記間違い   
p ( 1.5 ) p ( 0.5 ) = 0.4322 0.1913
1 1
計算間違い 11 2 2 15 10
当て推量 2 2 11
合計 56 10 39 105 94

表17 問題6:P(-2.5≦Z≦-1.5)の誤答の概要

誤答要因 誤答例 25春

標準正規分布

の理解不足

  
p ( 2.5 ) + p ( 1.5 ) = 0.927
9 21
  
p ( 2.5 1.5 ) = p ( 1 ) = 0.3413
4
  
p ( 2.5 ) + p ( 1.5 ) 0.5 = 0.427
1
  
0.5 { p ( 2.5 ) + p ( 1.5 ) } = 0.427
1
  
p ( 2.5 ) p ( 0.5 ) = 0.3023
1
  
p ( 2.5 ) + p ( 0.5 ) = 0.6853
1
  
0.5 p ( 2.5 ) = 0.0668
1
  
p ( 1.5 ) = 0.4332
1
  
2 p ( 2.05 ) 0.5 = 0.4596
1
  
1 2 p ( 2.05 ) = 0.0404
1
記載間違い   
0.606
5 5
読み取り間違い   
p ( 2.05 ) p ( 1.05 ) = 0.1267
1 2
  
p ( 2.5 ) p ( 1.05 ) = 0.1407
1
合計 28 28

3-5.問題7から問題10の分析

問題7から問題10は不等式の範囲が閉じていない問題である。問題6までは、大学入学までに統計的な推測を履修しなかった学生も正規分布表と問題の関係から当て推量の可能性を含め正答となった例があった。しかし、問題7から問題10については大学入学までに統計的な推測を履修しなかった学生の正答数は0であった。

問題7は P ( 2.5 Z ) = 0.0062 、問題8aは P ( 2 Z ) = 0.9772 、問題8bは P ( 0.51 Z ) = 0.695 、問題8cは P ( 1.47 Z ) = 0.9292 、問題9は P ( Z 1.24 ) = 0.8925 、問題10は P ( Z 1.53 ) = 0.063 を解答する問題である。それぞれの正答・誤答・無答の内訳は表18から表21で、誤答の概要は表22から27である。

表18 問題7:P(2.5≦Z)の正答・誤答・無答の内訳、有意差は2025春と比較

出題時期 人数 正答 誤答 無答 有意
2024春 311 239(76.8) 59(19.0) 13(4.2)   
* p < .05
2024秋 45 32(71.1) 12(26.7) 1(2.2)   
n . s .
2025春 312 261(83.7) 50(16.0) 1(0.3)
2025基礎 300 88(29.3) 114(38.0) 98(32.7)   
* * p < .01

表19 問題8a・8b・8cの正答・誤答・無答の内訳

問題 出題時期 人数 正答 誤答 無答
問題8a   
P ( 2 Z )
2023春 334 194(58.1) 122(36.5) 18(5.4)
問題8b   
P ( 0.51 Z )
2024秋 45 32(71.1) 13(28.9) 0(0.0)
問題8c   
P ( 1.47 Z )
2025春 312 261(83.7) 48(15.4) 3(1.0)

表20 問題9:P(Z≦1.24)の正答・誤答・無答の内訳、有意差は2025春と比較

出題時期 人数 正答 誤答 無答 有意
2024春 311 242(77.8) 54(17.4) 15(4.8)   
* * p < .01
2024秋 45 38(84.4) 6(13.3) 1(2.2)   
n . s .
2025春 312 272(87.2) 40(12.8) 0(0.0)
2025基礎 300 84(28.0) 119(39.7) 97(32.2)   
* * p < .01

表21 問題10:P(Z≦-1.53)の正答・誤答・無答の内訳、有意差は2025春と比較

出題時期 人数 正答 誤答 無答 有意
2024秋 45 33(73.3) 10(22.2) 2(4.4)   
* p < .05
2025春 312 272(87.2) 40(12.8) 0(0.0)
2025基礎 300 86(28.7) 110(36.7) 104(34.7)   
* * p < .01

表22 問題7:P(2.5≦Z)の誤答の概要、()の数値は計算間違い

誤答要因 誤答例 24春 24秋 25春 基礎

標準正規分布

の理解不足

  
p ( 0.5 + 2.5 ) = p ( 3 ) = 0.4989
1

4

[88]

  
p ( 2.5 0.5 ) = p ( 2 ) = 0.4772
1 1
0.5 p ( 2 ) = 0.0228 1
  
1 + p ( 1 ) = 1.3413
1
  
1 p ( 2.5 ) = 0.5062
14(1)
不等式の解答 5
  
p ( 2.5 ) = p ( 2 ) + p ( 0.05 ) = 0.6687
1
  
2 p ( 2.5 ) = 0.9876
1
  
p ( 2.05 ) = 0.4798
1
  
0.5 + p ( 2.4 ) = 0.9918
1
  
0.0037
1

読み取り

間違い

  
0.5 p ( 2.05 ) = 0.0202
3(1) 2 3(1) 12 2
  
0.5 p ( 2.04 ) = 0.0207
1
  
0.5 p ( 2.55 ) = 0.0054
1
  
0.5 p ( 2.4 ) = 0.0082
2
  
0.5 p ( 2.54 ) = 0.0055
1
転記間違い   
p ( 1.5 ) p ( 0.5 ) = 0.062
3(2) 5 3
計算間違い 6 3 4 13 3
当て推量 1 2 3 13
合計 59 12 50 121 114

表23 問題8a:P(-2≦Z)の誤答の概要 ()の数値は計算間違い

表24 問題8b:P(-0.51≦Z)の誤答の概要

誤答要因 誤答例 24秋 合計

標準正規分布

の理解不足

  
p ( 0.51 ) = 0.1950
7 13
  
0.5 p ( 0.51 ) = 0.350
3
  
1 p ( 0.51 ) = 0.8050
1
  
1 p ( 0.5 ) = 0.8085
1
  
p ( 0.51 ) = 0.1950
1

表25 問題8c:P(-1.47≦Z)の誤答の概要

誤答要因 誤答例 25春 合計

標準正規分布

の理解不足

  
p ( 1.47 ) = 0.4292
15 38
  
0.5 p ( 1.47 ) = 0.0708
14
  
1 p ( 1.47 ) = 0.5708
3
  
1 + p ( 1.47 ) = 1.4292
1
  
p ( 1.47 + 0.5 ) = p ( 1.97 ) = 0.4756
2
  
p ( 1.47 + 0.5 ) = p ( 0.97 ) = 0.334
1
  
p ( 1.47 ) p ( 0.5 ) = 0.2377
1
  
p ( 1.47 ) + p ( 0.5 ) = 0.6207
1
計算間違い 4 4
4転記間違い   
0.5 + p ( 1.47 ) = 0.5292
2 3
  
0.5 + p ( 1.47 ) = 0.9242
1
読み取り間違い   
0.5 + p ( 1.46 ) = 0.9279
2 2
  
0.5 + p ( 1.46 ) = 0.9297
1 1
合計 48 48

表26 問題9:P(Z≦1.24)の誤答の概要、()の数値は計算間違い

誤答要因 誤答例 24春 24秋 25春 基礎

標準正規分布

の理解不足

  
0.5 p ( 1.24 ) = 0.1075
19 2 13

72

[82]

9(1)
  
0.5 p ( 1.23 ) = 0.1093
1
  
p ( 1.24 ) = 0.3925
10(1) 2 9 53
  
p ( 1.23 ) = 0.3907
2
  
p ( 1.14 ) = 0.3729
1
  
p ( 1.42 ) = 0.4222
1
  
1 p ( 1.24 ) = 0.6075
6 6
  
p ( 0.5 ) + p ( 1.24 ) = 0.584
2 (1)
  
p ( 1.24 ) + p ( 2 ) = 0.8697
1
誤答要因 誤答例 24春 24秋 25春 基礎

標準正規分布

の理解不足

  
1 + p ( 1.24 ) = 1.3925
1

10

[82]

4
不等式の解答 3 8
  
p ( 1.24 + 0.5 ) = p ( 1.74 ) = 0.4591
2
  
p ( 1 ) + p ( 1.24 ) = 0.7338
1 1
  
p ( 1.24 + 0.5 ) = p ( 1.79 ) = 0.4633
1
  
2 p ( 1.24 ) = 0.785
1
  
p ( 1.24 ) p ( 0.5 ) = 0.2010
1
  
5 + p ( 1.24 ) = 5.3925
1
  
p ( 0.5 ) + p ( 0.24 ) = 0.2863
1
  
p ( 1.24 0.5 ) = p ( 0.74 ) = 0.2704
1
  
2 p ( 1.24 ) = 1.6075
(1)
  
p ( 1.56 ) = 0.4406
1
読み取り間違い   
0.5 + p ( 1.23 ) = 0.8907
6 1 2 9 3
  
0.5 + p ( 1.34 ) = 0.9099
1
計算間違い 1 1 2 9 14(2)
その他 当て推量 3 1 13
前の問題の解答を記述 1
合計 54 6 40 100 119

表27 問題10:P(Z≦-1.53)の誤答の概要、()の数値は計算間違い

誤答要因 誤答例 24秋 25春 基礎

標準正規分布

の理解不足

  
0.5 + p ( 1.53 ) = 0.937
2(1) 9(2)

38

[38]

7(2)
  
p ( 1.53 ) = 0.437
2 11 37
  
p ( 1.53 ) = 0.437
11
  
1 p ( 1.53 ) = 0.563
1 3 12(2)
  
p ( 1.53 0.5 ) = p ( 1.03 ) = 0.3485
3 1
  
p ( 1.53 ) p ( 0.5 ) = 0.2455
1
  
p ( 1.53 ) + p ( 0.5 ) = 0.6285
1
  
p 1 ( 0.5 p ( 1.53 ) ) = p 1 ( 0.0624 ) 0.16
1
  
p ( 1.53 ) 0.5 = 0.063
(1)
不等式の解答 6
  
0.5 + p ( 1.52 ) = 0.9357
3
  
p ( 1.52 ) = 0.4357
1
  
p ( 1.52 ) = 0.4357
1
  
1 p ( 1.52 ) = 0.5643
1
  
p ( 2.5 1.53 ) = p ( 0.97 ) = 0.334
1
誤答要因 誤答例 24秋 25春 基礎

標準正規分布

の理解不足

  
p ( 3.5 1.53 ) = p ( 1.97 ) = 0.4756

0

[38]

1
  
p ( 0.5 ) + p ( 1.53 ) = 0.6285
1
  
5 + p ( 1.53 ) = 5.437
1
計算間違い 2 3 5 7
読み取り間違い   
0.5 p ( 1.52 ) = 0.0643
1 2 5 2
  
0.5 p ( 1.54 ) = 0.0618
1
  
0.5 p ( 1.04 ) = 0.1515
1
記載間違い   
0.5 p ( 1.53 ) = 0.5 0.473 = 0.027
0 1
その他 解なし 1 2 1
不明 1
当て推量 11
合計 10 40 50 110

問題7から問題10についても、正規分布の理解不足による誤答が多い点はそれまでと同様であった。図を描かず、正規分布の意味を十分に理解しないまま、用具的理解に基づいて数式処理のみを進めていた学生の理解不足が顕著に表れた結果となった。

特に P ( Z 0 ) = 0.5 P ( Z 0 ) = 0.5 p ( 0.5 ) = 0.1915 として無理やり計算した誤答では、誤りが重なり p ( 0.5 ) + p ( 2.5 ) = p ( 2.5 + 0.5 ) = p ( 3 ) とした解答も存在した。

4.教育への効果検証

3章に示した2023年度及び2024年度の答案分析の結果、誤答の多くは、正規分布に対する理解の不足に起因し、図の記載がなく形式的な数値の置換にとどまっていた。その他は、不等式の読み違い、正規分布表の読み取り誤り、計算間違いによるものであった。

2025年度は、これらの知見を踏まえた授業を実施し、その教育効果についてマクネマー検定を用いて有意性を検証した。具体的な改善策としては、図を記載させて数式と図を対応させることで用具的理解にとどまらず意味的理解を促すこと、さらに見直しの手続きを導入することである。ただし、2025年度入学の学生は、2024年度までに入学した学生と異なり、高等学校で「統計的な推測」を履修している者が多く含まれていた。そのため、本研究では「統計的な推測」について、履修者と未履修者に分けて教育効果を検証した。

2025年度入学の新入生に「統計的な推測」の履修状況及びその学習定着度の確認を4月21日に実施した数学基礎力テストを通して調査した。留学生を除く受検者は300人で、期末テストを受検した学生は297人であったので、本稿はこの297人を教育効果の検証対象とした。なお、297人のうち統計的な推測を履修した学生は226人、未履修者は71人であった。これらの状況をまとめたものは表28の通りである。2025年度の数学基礎力テスト(4月)と期末テスト(8月)で出題した問題における正答率の比較は表29の通りで、表30から37は、それぞれの問題の正答数の変化をまとめたものである。マクネマー検定は、IBM SPSS for Windows Ver.28.0を使用した。記載のp値は、二項検定によるp値である。

表28 数学基礎力テスト及び期末テストの受検者数()の数値は、統計的な推測の履修者/未履修者

期末テスト受検 同左・未受検 合計
数学基礎テスト受検 297(226/71) 15 312
同上・未受検 3(2/1) 7 10
合計 300 22 322

表29 正規分布の問題の正答率の変化 履修者 N=226、未履修者 N=71

上段の正答率は数学基礎力テスト(4月)、下段の正答率は期末テスト(8月)

問題 問題 答え 履修者 未履修者 合計
1b   
P ( 0 Z a )
  
P ( 0 Z 1.16 )
0.3770 72.1% 25.4% 60.9%
97.3% 97.2% 97.3%
2   
P ( a Z 0 )
  
P ( 0.51 Z 0 )
0.1950 59.7% 15.5% 49.2%
93.4% 95.8% 93.9%
3   
P ( a Z a )
  
P ( 1.96 Z 1.96 )
0.9500 59.7% 9.9% 47.8%
98.2% 98.6% 98.3%
4   
P ( a Z b )
  
P ( 2 Z 1 )
0.8185 55.3% 8.5% 44.1%
95.1% 91.5% 94.3%
5   
P ( a Z c )
  
P ( 0.5 Z 1.5 )
0.2417 46.0% 5.6% 36.4%
89.4% 84.5% 88.2%
7   
P ( a Z )
  
P ( 2.5 Z )
0.0062 38.9% 0.0% 29.6%
85.0% 80.3% 83.8%
9   
P ( Z a )
  
P ( Z 1.24 )
0.8925 37.2% 0.0% 28.3%
86.3% 88.7% 86.9%
10   
P ( Z a )
  
P ( Z 1.53 )
0.0630 39.8% 0.0% 30.3%
86.3% 91.5% 87.5%

表30 問題1bの正誤の様相 ○が正答、×が誤答、Mはマクネマー検定統計量、pはp値

履修 期末〇 期末× 未履修 期末〇 期末× 合計 期末〇 期末×
基礎〇 161 2 基礎〇 17 1 基礎〇 178 3
基礎× 59 4 基礎× 52 1 基礎× 111 5

M:53.3、p: 1.64 × 10 15 M:49.1、p: 1.20 × 10 14   M:102.3、p:2 .38 × 10 29

表31 問題2の正誤の様相 ○が正答、×が誤答、Mはマクネマー検定統計量、pはp値

履修 期末〇 期末× 未履修 期末〇 期末× 合計 期末〇 期末×
基礎〇 130 5 基礎〇 10 1 基礎〇 140 6
基礎× 81 10 基礎× 58 2 基礎× 139 12

M:67.2、p: 9.58 × 10 19   M:55.1、p: 2.08 × 10 16  M:122.0、p: 5.44 × 10 34

表32 問題3の正誤の様相 ○が正答、×が誤答、Mはマクネマー検定統計量、pはp値

履修 期末〇 期末× 未履修 期末〇 期末× 合計 期末〇 期末×
基礎〇 134 1 基礎〇 7 0 基礎〇 141 1
基礎× 88 3 基礎× 63 1 基礎× 151 4

M:85.0、p: 2.91 × 10 25 M:63.0、p: 2.17 × 10 19   M:148.0、p: 5.36 × 10 44

表33 問題4の正誤の様相 ○が正答、×が誤答、Mはマクネマー検定統計量、pはp値

履修 期末〇 期末× 未履修 期末〇 期末× 合計 期末〇 期末×
基礎〇 122 3 基礎〇 6 0 基礎〇 128 3
基礎× 93 8 基礎× 59 6 基礎× 152 14

M:84.9、p: 3.72 × 10 24 M:59.0、p: 3.47 × 10 18   M:143.2、p: 2.72 × 10 4

表34 問題5の正誤の様相 ○が正答、×が誤答、Mはマクネマー検定統計量、pはp値

履修 期末〇 期末× 未履修 期末〇 期末× 合計 期末〇 期末×
基礎〇 95 9 基礎〇 4 0 基礎〇 99 9
基礎× 107 15 基礎× 56 11 基礎× 163 26

M:82.8、p: 2.00 × 10 22 M:56.0、p: 2.78 × 10 17   M:137.9、p: 1.04 × 10 37

表35 問題7の正誤の様相 ○が正答、×が誤答、Mはマクネマー検定統計量、pはp値

履修 期末〇 期末× 未履修 期末〇 期末× 合計 期末〇 期末×
基礎〇 82 6 基礎〇 0 0 基礎〇 82 6
基礎× 110 28 基礎× 57 14 基礎× 167 42

M:93.2、p: 7.54 × 10 26 M:57.0、p: 1.39 × 10 17   M:149.8、p: 5.91 × 10 34

表36 問題9の正誤の様相 ○が正答、×が誤答、Mはマクネマー検定統計量、pはp値

履修 期末〇 期末× 未履修 期末〇 期末× 合計 期末〇 期末×
基礎〇 78 6 基礎〇 0 0 基礎〇 78 6
基礎× 117 25 基礎× 63 8 基礎× 180 33

M:100.2、p: 8.42 × 10 28 M:63.0、p: 2.17 × 10 19   M:162.8、p: 1.12 × 10 45

M:95.1、p: 5.93 × 10 26 M:65.0、p: 5.42 × 10 20   M:159.4、p: 4.83 × 10 44

表29の正答率の変化、表30から表37の正答数の変化により、正答率は有意な差が認められた。これは、学生が問題を解く際に図を描いて、式と図を対応させて問題を解いたこと、見直し手続きや解答の数値の検証方法を示すことでケアレスミスが減少したこと、不等式の読み間違いに注意を促したことで、不等式による間違いが減少したことが要因である。

しかし一方で、数学基礎力テストでは正答していたにも関わらず、期末テストで不正答になった学生も少数存在した。これらの要因は、正規分布表の読み間違い、不等式の読み間違いなどのケアレスミスであった。ケアレスミスによる誤答は見直し及び解答の数値が適切であるかを検証することで軽減できるが、実際には見直しや検証を行わない学生が多い。そのため、見直しや検証の有用性を学生に理解させ、習慣化させることが今後の課題である。

5.まとめ

本稿の目的は、「統計的な推測」の単元における「標準正規分布」の問題に焦点を当て、数学基礎力テストと期末テストの正答率や誤答を通して学生の理解状況を把握した上で、効果的な教育の提案を行い、その効果を検証することであった。

誤答分析の結果、標準正規分布の確率を求める初期段階、すなわち問題1から問題3においても、つまずく学生が少数存在していた。また、問題1から問題3には正答できても、それ以外は誤答もしくは無答で、用具的な理解にとどまっている学生の存在も示唆された。このことから、形成的評価として小テスト等を適宜実施し、学生の理解状況を継続的に把握し、誤答箇所の振り返りを行い、理解の促進につなげる必要がある。

昨年度までに得られた知見を踏まえた授業実践を行い、期末テストでその教育効果の検証を行ったところ、正答率に有意な差が見られたものの、本稿の内容授業前には解けていた問題が、授業後には解けなくなっていた学生が少数存在していた。これらの主たる要因はケアレスミスによるものであるが、ケアレスミスに対する対策にはまだ改善の余地があるため、今後の課題としたい。

引用・参考文献

大内俊二(2024)「データサイエンス指向の統計学」、学術図書出版

佐々木淳(2025)「標準正規分布及び正規分布の問題対する誤答分析及び授業導入の一考察」、数学教育学会、2025年度数学教育学会春季年会発表予稿集、pp.24-26

佐々木淳(2025)「文科系大学生の記述統計・推測統計に関する期末テストの分析」、日本テスト学会、日本テスト学会第23回大会発表論文抄録集、pp.120-123

チャート研究所編著(2022)「基礎からの数学B」、数研出版、p.127(解答編)

日本学術会議(2020)「新学習指導要領下での算数・数学教育の円滑な実施に向けた緊急提言:統計教育の実効性の向上に焦点を当てて」、https://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-24-t293-2.pdf

俣野博・河野俊丈ほか58名(2024)「数学B Advanced」、東京書籍

文部科学省(2019)「高等学校学習指導要領(平成30年告知)解説数学編理数編」、学校図書

 
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