2025 Volume 46 Issue 2 Pages 113-120
兵庫医科大学麻酔科学講座における医学生臨床実習に導入したシミュレーション教育モデル「シム・パック(SIM-Package)」を紹介する。近年,医学教育では患者安全と教育機会の確保の観点からシミュレーション教育が重要視されている。特に麻酔科学領域においては,限られた臨床機会を補完し,標準化された学習環境を提供する手段として有効である1–8)。シム・パックは,①国家試験過去問を活用した学習目標設定とeラーニングによる事前学習,②実習当日のマインド・ストレッチによる知識の整理と動機付け,③高機能シミュレーターを用いたシナリオシミュレーション,④振り返りを通じたアウトラーン(Outlearn)により,学習者の内発的動機を高めることを目的としている。また,事前・事後アンケートによる学習効果の評価を行い,有意な理解度の向上と高い教育効果が確認された。単なる技能習得にとどまらず,チーム医療,医療安全,プロフェッショナリズムの涵養を重視し,最終的には手術室における安全文化の醸成を目指す。今後は,学習者の非認知的スキルや行動変容の可視化と,初期研修へのシームレスな教育連携が課題である。本稿は,シミュレーション教育が医学生の学びを深める重要な契機となることを示し,医療者育成における新たな教育モデルの一助となることを期待する。
医学教育において,臨床現場での学習機会の制約,安全性への配慮,患者権利意識の高まりを背景に,シミュレーション教育の導入と活用が急速に進展している。特に麻酔科学領域では,限られた時間・空間・症例に依存しない標準化された臨床実習の手段として,シミュレーションの果たす役割が大きい。シミュレーションは,実際の臨床現場に近い環境を再現することで,安全かつ効果的に経験学習を提供する教育法である。学習者は,仮想的な患者や緊急事態を相手に実践的な対応を繰り返すことにより,知識の定着や判断力の向上を図ることができる。
高機能(high-fidelity)シミュレーターは,手技の精度に加え,臨床判断力やチームワークといったノンテクニカルスキルの育成にも有効とされている。兵庫医科大学麻酔科学講座でも,シミュレーション教育を早期から積極的に導入し,医学生・研修医・専攻医・多職種スタッフに対して体系的な教育を提供してきた。特に近年では,シミュレーション教育を単なる技術伝達の場ではなく,チーム医療や医療安全,さらには医療者としての姿勢を育てる教育文化として位置づけている。
筆者らが設計した教育構造シム・パック(SIM-Package)を紹介する(表1)。シム・パックという概念はすべてのシミュレーション医学教育では大切であると考えられ,すでに多くのシミュレーションで行われているであろう。シム・パックとは導入からシミュレーション,振り返りの一連の「パッケージ」である。学生の内発的な学習意欲を刺激する“撒き餌”としての「国家試験問題」をベースにした学習目標から始まり,当日のイントロダクション=マインドストレッチを丁寧に指導者が行い,実体験によって自己効力感を得る「シミュレーション実習」,そして感情と知識を統合し,意味を言語化する「アウトラーン(Outlearn=より深く学ぶ)」へと展開する3ステップからなる。シム・パックは形成的評価であり,学生を評価する総括的評価ではない。評価することは,学習効果を定量化したり,学習者にフィードバックする際の手がかりとしては必要であるが,評価はあくまでも学習効率を上げるためで,この実習では学生の成績や順位を決定することが目的ではない。
| 日 | 時間(分) | 内容 | 分類 | |
|---|---|---|---|---|
| 実習期間中 | 約120 | ① | 練習問題 | eラーニング |
| 約60 | ② | 動画視聴 | eラーニング | |
| 1日目 | 5 | ③ | 実習前アンケート | 学習効果の評価 |
| 30 | ④ | 症例割り当て,説明 | マインドストレッチ | |
| 60 | 患者評価,麻酔プラン | マインドストレッチ | ||
| 60 | 各学生症例プレゼン | マインドストレッチ | ||
| 60 | ⑤ | 気道確保ハンズオン(バッグマスク換気,気管挿管,声門上器具) | 過去問トリガー型シナリオ | |
| 60 | ⑥ | 全身麻酔導入シミュレーション SimMAN3G | 実臨床予習型シナリオ | |
| 5 | ⑦ | 実習後アンケート | 学習効果の評価 | |
| 2日目 | 翌日 | ⑧ | 手術症例実習(手術室) | 臨床実習 |
「学んでみよう」というモチベーションを高めることは学習で最も大切なことと心得ている。単なるシミュレーションの1経験だけでなく,「手術室医療ってこんなことやっているんだ」「国家試験って実臨床につながっているんだな」「試験勉強でこういうことを勉強しておくと臨床で役立つのか」というモチベーションに着火するための話題提供が,アウトラーンへの動機付けに大きく寄与する。得たいの知れない麻酔科学に対して「麻酔科ってこんなことやるのか」というきっかけから,学びを「おもしろそう」と思わせ,「ちょっとやってみたい」と動かし,「自分でもできるかも」と実感させ,「もっと知りたい=アウトラーン」へというモードチェンジの一連の流れにシム・パックの本質がある。
シム・パックは,情報を与える教育ではなく,モチベーションに火をつける教育である。シミュレーションは派手な学習手法なので,一見学習効果が高そうに見えるが,実際に伝えることができる情報量は限界がある。アウトラーンが伴わないと獲得できる情報量は他の学習法と比較すると少ない。したがってシミュレーションの周辺の知見を医学生に学び続けてもらうことは重要で「体験」であるシミュレーション実習を取り巻く,「マインド・ストレッチ」「振り返り」という前後のステップを疎かにしないようにしている(表1)。
そして最終の理想的なアウトカムは手術室安全文化の醸成である。これは本稿の他項の筆者の先生方が記されている各職種クラスへの垂直と水平方向のシミュレーション教育が寄与する。
①「撒き餌」の撒き方:国家試験過去問からの学習目標の抽出:eラーニング効果的なシミュレーション教育を行うためには,設計段階から明確な学習目標を設定し,それに応じたシナリオや指導体制,評価法を構築する必要がある。
医学生に対してレベルに応じた学習目標として観察力や基本的な対応手順の理解を設定している。国家試験過去問を毎年すべてレビューし約15年間にわたって麻酔科実習のトリガーとなりうる問題をストックし,2025年現在で50問になっている。ここから学習目標(表2)を設定し,PDCA(Plan-Do-Check-Act)サイクルを確立することで,毎年度教育プログラムの質向上に努めてきた。
| シナリオフェーズ | 学習目標形式 |
|---|---|
| 患者情報 | 患者の年齢・性別・BMIを確認することができる |
| 手術手技を確認することができる | |
| 患者到着時 | 患者の不安を認識することができる |
| 静脈路が必要であることに気づくことができる | |
| 初期対応 | 自己紹介を行うことができる |
| 患者のIDを確認することができる | |
| 麻酔方法について説明することができる | |
| 機器・モニターの準備 | 麻酔器を準備することができる |
| 心電図モニターを装着することができる | |
| 心電図モニターを評価することができる | |
| 非侵襲的血圧モニターを装着することができる | |
| 非侵襲的血圧モニターを評価することができる | |
| 酸素飽和度モニターを装着し評価することができる | |
| BISモニターを装着することができる | |
| BISモニターを評価することができる | |
| 神経筋モニターを装着できる | |
| 神経筋モニターを評価することができる | |
| 呼気終末二酸化炭素モニター(ETCO2)を装着できる | |
| 呼気終末二酸化炭素モニター(ETCO2)を評価できる | |
| 静脈路確保 | 適切な針の太さを選択することができる |
| 適切な静脈路セットを選択することができる | |
| 適切な輸液製剤を選択することができる | |
| 前酸素化 | 100%酸素での前酸素化を行うことができる |
| 薬剤投与 | 静脈麻酔薬を投与することができる |
| オピオイドを投与することができる | |
| 筋弛緩薬を投与することができる | |
| 筋弛緩モニタリング | TOFで筋弛緩の評価を行うことができる |
| 維持 | 吸入麻酔薬を気化器で投与開始することができる |
| 適切な吸入麻酔薬の投与濃度を設定できる | |
| 換気 | 効果的なバッグマスク換気を行うことができる |
| 気管挿管 | 気管挿管を行うことができる |
| カプノグラフィでチューブ位置を確認することができる | |
| 人工呼吸器設定 | 容量制御モードを設定することができる |
| 圧制御モードを設定することができる | |
| PEEP設定を調整することができる |
ところで表2のようなよくある学習目標の一覧をシラバスに掲載しても誰もちゃんと読んでいない。目を通していないと言ってもいいだろう。私自身がそうである。一方で国家試験合格率に一喜一憂する医学部では国家試験にはほぼすべての医学生が興味を「少しは」持つことに気づいた。学習目標は国家試験から抽出しているのであるから事前に国家試験問題を表1の① eラーニングで解いておいてもらう仕組みを作った。GoogleformのURL(https://forms.gle/EMSzL5ApgmHFAZ8H7)をシラバスに貼り付けてこれを実習中に回答してもらっている。
国家試験とシミュレーション実習と手術室臨床実習を結びつける「撒き餌」である。クイズ形式で過去問を解くうちに知らないうちに表1の学習目標に気づく仕組みを工夫してみた。正解もすぐにフィードバックするのでストレスも少ないせいか,回答率は非常に高い。
この正解率は毎年度,集計し,回答率を算出しクラスタリングすることによって,正解率の高いクラスターより正解率の低いクラスターの項目に重点的に翌年の指導の軸を調整している。クラスター解析については成書9)に譲る。
②動画視聴による基礎知識の習得動画教材(各10分 × 6本)YouTube®(図1)のQRコードをシラバスに掲載し,これを実習前に視聴しておくように指導している。手術室入室から全身麻酔導入の手順の動画である。この視聴率は非常に悪い。視聴記録をとっていないからと考えられる。

手術室入室から全身麻酔導入までの流れを学ぶ動画教材(各10分 × 6本)をシラバスに掲載し,実習前に視聴するよう指導している。
イントロとして実習で麻酔に関する理解の自己評価の無記名アンケートを行っている。何がテーマになるかを提示するイントロダクションである(表3)。0(全く理解できていない)から5(非常よく理解できている)の6段階のスケールで無記名の8項目の自己評価アンケートである。事後に同じ内容でアンケートを行って,学習効果の評価にも活用している。
| 術前評価 |
|---|
| 麻酔プランの立案 |
| バッグマスク換気 |
| 気管挿管 |
| 全身麻酔導入前にすること |
| 麻酔導入から人工呼吸設定までに行うこと |
| 麻酔導入で用いる薬剤の種類 |
| 人工呼吸器の設定 |
兵庫医大麻酔科学の医学生4年時の臨床実習では7または8名のグループがローテーションする。シミュレーション実習当日は翌日の実際の担当患者の情報収集と麻酔計画を各学生に立案してもらう。術前合併症,ASAPS分類,内服薬,術前中止薬,麻酔法,モニタリング,麻酔薬,筋弛緩薬,麻薬,気道管理法,術後鎮痛を各学生に担当症例についてプレゼンしてもらう。ここは指導医が時間をかけて各プレゼンにアドバイスとヒントを与える。正解は与えないが,臨床の実際と医学生のナレッジのギャップを埋めるデブリーフィングを行っている。実際の手術センターの監視モニターで生体情報モニターの解説も行う。あくまでもプランは学生が立案し,正解は翌日の実際の実習内で答え合わせを行う。ここまでがシミュレーション実習のマインド・ストレッチである。
⑤過去問トリガー型シナリオ(実習当日@医学教育統括センター)(表1):アウトラーン第1段階(表4)シナリオシミュレーションは医学教育統括センターの職員の全面的な協力を得ている。準備と後片付けと実習中のインストラクションも協力していただいている。シナリオシミュレーションを協力していただくようになって以降,系統的なコース運営が可能になった。
シナリオ設計では課題項目に関連するフェーズを明確に構成し,学習者がその課題に取り組むための“トリガー”と“問い”を用意することが効果的であるという結論に至っている。大声を出して楽しく学ぶだけでは学習効果は得られない。楽しかったけど,終わってみたら学びになっていない,ではいけない。楽しいことや興味を引くことを最優先していると,軸足がトラベリングして重要な焦点がずれてくる。シミュレーションで期待される学生のアクションひとつひとつに伝えたい意味を持たせたシナリオ創作が必要である。
このシナリオのテーマは「バッグマスク換気」である。気道管理トレーナーを用いて気管挿管やSGA挿入のテクニカルスキルも同時に実習するが,呼吸停止のシナリオ(表4)でトリガーし,そこから意識や呼吸・脈の確認,上気道の開通,応援の要請,酸素投与,バッグマスク換気,トリプルエアウェイマニューバ,異物除去,気管挿管準備へと展開させる。知識の羅列の学びから,実体験の3次元的なネットワークを頭の中に「手と頭を使って」構築させることがアウトラーンの第1段階である。学習者どうしの対話の中からこのシークエンスを構築させる工夫も重要である。
| 呼吸停止のシナリオシミュレーション(気道管理シミュレーター)病室で呼吸停止の患者を発見する。脈は強くゆっくり触知する。 | ||
|---|---|---|
| シナリオ | 対応例 | |
| 1 | 病室で反応が無い患者さんを発見した | 反応と脈と呼吸を確認する,応援とQQカートを取り寄せる,呼吸停止の確認 |
| 2 | 呼吸停止 | バッグマスク換気 |
| 3 | 換気困難 | 両手法,鼻咽頭エアウエイ,口腔エアウエイ |
| 4 | 気道抵抗がある | 口腔内の異物を見える範囲で除去する,吸引器を使用できるように準備する |
| 5 | 換気は改善したが,SpO2は90である | バッグに酸素を接続して投与する,酸素レギュレーターを使用できるように準備する |
国家試験過去問ベースの学習目標をシミュレーションのバーチャル経験を通じて翌日,体験する予定の手術患者の全身麻酔の「現実世界」に接続させるシミュレーションシナリオである。全身型のシミュレーター(SIMMAN3G®)(図2)を用いて,表5のシナリオをグループで経験する。

医学教育統括センターの協力のもと,準備から実習中の指導まで支援を受け,系統的なシミュレーション教育を実施している。
| 58歳 男性 腹腔鏡下S状結腸切除術 全身麻酔 BMI 27 | ||
|---|---|---|
| 患者入室 不安そう 静脈路なし | ||
| シナリオ | 期待される行動 | |
| 1 | 患者入室時 | 自己紹介,患者確認,麻酔法の説明 |
| 2 | 患者入室後 | 麻酔器の立ち上げ(Aisys® GE Health Care) |
| モニタリング 心電図,非観血的血圧計,パルスオキシメトリー,BIS,筋弛緩モニター,カプノメトリ,以上の評価 | ||
| 3 | 静脈路確保 | 針の太さ,点滴セットの構造,輸液の選択 |
| 4 | 前酸素化 | 麻酔器を用いた酸素供給 |
| 5 | 麻酔薬の投与 | 静脈麻酔薬,麻薬,筋弛緩薬 |
| 6 | 筋弛緩薬の投与 | 筋弛緩モニタ(TOF)の評価 |
| 7 | 麻酔器を用いた吸入麻酔薬の投与 | 適切なMAC |
| 8 | バッグマスク換気 | 換気感覚,換気量,トリプルエアウエイマニューバ,op |
| 9 | 気管挿管 | カプノメトリの確認 |
| 10 | 人工呼吸器の設定 | 従圧式,重量式,PEEPの設定 |
実習前の③事前自己評価アンケートと同じもの(表3)を実習後に行って実習効果の評価に役立てている。研究データとして使用してよいと承認されたデータの一部を図3に示す。実習前(n = 81)および実習後(n = 80)のこの無記名アンケート結果をマンホイットニーのU検定で比較したところ,有意な理解度の向上(p < 0.00001)が認められ,効果量r = 0.70であった。

実習前後の自己評価アンケート結果の一部。0(全く理解できていない)から5(非常よく理解できている)の6段階のスケールで無記名の8項目の自己評価アンケートである。このうちの1項目,「全身麻酔導入」について実習前と実習後の自己評価の比較。有意な理解度向上が確認された(p < 0.00001,効果量r = 0.70)。
医学生は約3か月に渡って1グループ7,8名でローテーションしながら臨床実習を経験するが,その間にもみるみる成長する。実習期間が終わりに近づくとグループによっては,表2のような学習目標を超えて初期対応やコミュニケーション能力,高度な判断力やチームリーダーシップを学ぶことができる医学生も見受けられる。意識が高くアウトラーンできそうな学習者の反応や場の雰囲気をみながらシミュレーション実習の間に高度なノンテクニカルスキルを学習目標として組み込んでいくようにしている。
大切なのはすべての医学生には前述した表2を付与し,個人のレベルに合わせてアウトラーンをさらに外に向けてもらえるようにシミュレーションの中でファシリテーションする。これが指導者にとって「本当の意味での」ファシリテーションであり醍醐味でもある。
国家試験合格が中間目標ではあるが,最終目標ではない。初期研修医として病院に戻ってきた卒業生が,「あのときのシミュレーション実習が,国家試験勉強への火をつけてくれた」と語ってくれたことがあった。教育者として,これほど嬉しい言葉はない。国家試験の合格はあくまで通過点であり,将来,医師としての姿勢を問われる場面で,かつての学びの火種が再び心の中で灯ること――それこそが,シム・パックの目指すゴールである。
大学病院勤務の麻酔科医としての立場からは「麻酔科医のリクルート」はクリティカルな課題であり続けている。幸いにもここ数年は初期研修医が麻酔科を臨床研修として選択してくれることが維持できているが,幣学の多くの卒業生が麻酔科を専攻に選択しているとは言い切れない。何となく麻酔科のハードルを下げることには成功しているかもしれないが,残念ながら専門分野として選択するための「火だね」にはなっていない。中長期的に学びに伴走し,麻酔科学を深く学んで(アウトラーン)もらうには次のステップすなわち初期臨床研修におけるシミュレーショントレーニングの工夫が必要である10)が,これは別の機会に述べたいと思う。
シム・パックでは,「目に見えにくい変化」をどう評価するかが課題となる。アンケートやeラーニングで得られる教育効果はシミュレーション固有のものではない。
極論すれば「別にシミュレーションをやらなくても知識獲得の教育設定はいくらでもある」でしょう。本来はシミュレーション医学教育の効果は期間を空けて医学生の行動変容を定量化することが望ましい。残念ながら筆者の力不足でシミュレーション医学教育の評価にいたっていない。判断,態度,連携といったシミュレーションで評価される非認知的スキル習得の効果の可視化は難しい。
シミュレーションにおける評価法は,形成的評価としてのリアルタイムフィードバック,総括的評価としてのOSCEやチェックリストによる評価がある。ビデオ再生や構造化デブリーフィングを活用することで学習者の自己省察を促進できる。筆者も別のシミュレーションコースでビデオ解析を行った経験があるが,非常に大きな時間的コストはかかるが指導者側が得られるスキルは無限大である。
筆者らは,教育評価を「学びのアウトカムの測定」から「学びのプロセスの理解」へと転換しようとしている。すなわち,数値だけでなく,学習者の語り,気づき,再挑戦の兆しを評価の一部として扱うことで,教育全体の質を保証しようとしている。
学習者だけでなく,指導者の学びを支援する仕組みも重要である。学習者の反応から得られる気づきや,ファシリテーションを通じた自己の教育スタイルの見直しは,教育者としての成長に直結する。
学習環境を丁寧に設計し,学習者の内発的動機を高める工夫が,シミュレーション教育全体の質を左右する。単なる臨床スキルの練習にとどまらず,設計から評価,改善に至る教育のプロセス全体を意識したシミュレーション教育のシム・パックの概念をご紹介した。