The Japanese Journal of Gastroenterological Surgery
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CASE REPORT
A Gallstone Ileus with a Cholecystoduodenal Fistula Treated with Two-stage Laparoscopic Surgery
Shinji OkazakiKeisuke OnishiHiroyuki KumataYuji KonnoMakoto HoriuchiYoshihiro NiheiKei OnoYukio IgarashiKazuyoshi SenooKazuhiro Morimoto
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2015 Volume 48 Issue 9 Pages 761-768

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Abstract

症例は70歳の女性で,2週間前から続く気分不良と嘔吐を主訴に当院救急外来を受診した.腹部造影CTにて小腸内に石灰化を伴う異物と,口側の小腸の拡張像を認め閉塞性イレウスと診断された.保存的治療で改善せず,手術目的に当科転科となった.腹部造影CTで胆囊底部にガス像を認め,胆囊頸部の結石,胆囊と十二指腸の近接も認めたことから胆囊十二指腸瘻に伴う胆石イレウスと診断した.初回は単孔式腹腔鏡下に腹腔内を検索し,胆囊周囲の著明な癒着と,結石の嵌頓した腸管を同定した.創部から体外に腸管を導出して結石の摘出のみ行った.33日後,腹腔鏡下に胆囊摘出術と胆囊十二指腸瘻閉鎖を行う二期的手術を施行した.胆摘後,十二指腸側の瘻孔部には大網を被覆した.術後経過は良好であった.近年,胆石イレウスに対する腹腔鏡下手術の有用性が報告されている.腹腔鏡下二期的手術を行い良好に経過した1例を経験したため報告する.

はじめに

胆石イレウスは胆石が胆管あるいは瘻孔を介して消化管内に逸脱し,腸管に嵌頓して生じる比較的まれな疾患である1).内胆汁瘻を有することが多く,外科的手術としてはイレウス解除術と胆囊摘出術,内胆汁瘻閉鎖術を行うことが求められ,腹腔鏡下手術の有用性も報告されているが,本邦で二期的手術をいずれも腹腔鏡下に行ったとする報告はない2)~5)

今回,我々は胆囊十二指腸瘻に伴う胆石イレウスに対して単孔式腹腔鏡補助下イレウス解除術を行い,腹腔鏡下に二期的手術を行って良好に経過した1例を経験したため,文献的考察を加えて報告する.

症例

症例:70歳,女性

主訴:体動困難,嘔吐

既往歴:パーキンソン病,高血圧症

現病歴:2013年11月,2週間ほど前から気分不良を自覚しており,体動困難と嘔吐を主訴に当院を受診した.精査加療目的に消化器内科へ入院となり,腹部造影CTにて小腸内の異物によるイレウスと診断された.イレウス管による保存的治療に抵抗性であり,手術目的に当科転科となった.過去に胆石症は指摘されていなかった.

入院時現症:身長150 cm,体重57.0 kg.腹部はやや膨満,軟で,明らかな圧痛を認めなかった.

入院時血液生化学検査所見:白血球数16,100/mm3,CRP 2.11 mg/dlと炎症反応の上昇を認めたが,肝胆道系酵素の上昇を認めなかった.また,腫瘍マーカーはCEA 1.5 ng/ml,CA19-9 2.0 IU/ml未満といずれも上昇を認めなかった.

腹部造影CT所見:小腸内に最大径3 cmの石灰化を伴う病変を一つ認め,それより口側の小腸の拡張が認められた(Fig. 1).また,胆囊底部にガス像を認め,胆囊頸部に石灰化を伴う結石を認めた.胆囊体部と十二指腸の近接も認められた(Fig. 2).

Fig. 1 

Abdominal CT shows a 3-cm calcified stone (arrow) in the small intestine and dilatation of the oral side of the small intestine.

Fig. 2 

Abdominal CT reveals gas (arrow) in the gall­bladder and adhesion in the gallbladder and duodenum (arrowhead).

以上の所見から,胆囊十二指腸瘻に伴う胆石イレウスと診断した.イレウス管留置による減圧と自然排石を試みたが排石ならず,腸管減圧はやや不十分な状態であった.腹部所見は増悪なく,待機的手術とした.イレウスのため詳細な胆道系精査は行えず,また,パーキンソン病に伴う症状が増悪傾向であったため,まずはイレウス解除を優先する方針で手術に臨んだ.

手術所見:臍部に約3 cmの縦切開を加えて開腹し,創縁保護具で創縁を保護し,グローブ法による単孔式手術を行うこととして創縁保護具に手術用手袋を装着した.12 mmトロッカー1本と,5 mmトロッカー2本を留置して手術を開始した.空腸から回腸の拡張を認め,これをたどると嵌頓した結石が認められた.また,胆囊は大網や周辺臓器と高度の癒着が認められ,胆囊炎および胆囊十二指腸瘻の存在が示唆された.胆囊に関しては胆道系精査を行ってからの二期的手術が妥当と考え,結石の嵌頓した部位の腸管を把持して体外に導出した.腸管虚血の所見は認めず,結石を肛門側の正常腸管へ誘導し,腸管壁に長軸方向の切開を置いて結石を摘出,Heineke-Mikulicz法で縫合した(Fig. 3).

Fig. 3 

Operative photographs showing the small bowel with the gallstone extracted from the peritoneal cavity through the port incision.

摘出標本所見:結石は3.4×3.3 cmで,割面は外殻を有する混成石と思われた.結石成分分析ではコレステロール87%,ビリルビンカルシウム10%であった.

術後経過:経過良好にて,第3病日より経口摂取を再開した.神経内科の診察を受け,パーキンソン病の治療のため専門病院への転院が望ましいと診断された.そのため,転院前に胆道系精査を行って,二期的手術を行う方針とした.

腹部MRI所見:MRCPでは胆囊と十二指腸の癒着が疑われたが,胆囊十二指腸瘻の所見は明らかでなかった(Fig. 4).胆囊頸部と下部胆管に結石を疑う陰影欠損を認めた.

Fig. 4 

MRCP shows adhesion in the gallbladder and duodenum (arrow), although the cholecystoduodenal fistula remains uncertain.

内視鏡的逆行性胆道造影検査(endoscopic retrograde cholangiography;以下,ERCと略記)所見:内視鏡的乳頭切開術を施行し,MRCPで認められた下部胆管の小結石を除去した.胆囊の描出は不良であったが,十二指腸から胆囊へ向かうと思われる造影所見を認め,MRCPでの胆囊管,総胆管の走行とは異なっており,胆囊十二指腸瘻の所見と考えられた(Fig. 5).内視鏡像では瘻孔は観察されなかった.

Fig. 5 

Endoscopic retrograde cholangiogra­phy suggests the presence of a cholecysto­duodenal fistula (arrow).

以上より,胆石症,胆囊十二指腸瘻と診断し,初回手術後33日目に胆囊摘出と瘻孔閉鎖目的に腹腔鏡下手術を施行した.

手術所見:臍を縦切開し12 mmのカメラポートを留置し,剣状突起下,右季肋部,右側腹部に5 mmのポートを留置して腹腔鏡下に手術を行った.胆囊底部と十二指腸は強固に癒着しており,瘻孔が疑われた.十二指腸を損傷せぬよう胆囊を開く形で剥離を行った.剥離後,十二指腸側からは明らかな腸液の漏出など,瘻孔の開存,穿孔を疑う所見は認めなかった.胆囊底部と体部・頸部は分割して切除する形となり,これらを摘出し,十二指腸瘻孔部と思われる部位に2-0吸収糸をかけ,大網を被覆した(Fig. 6A~D).

Fig. 6 

The laparoscopic intraoperative findings show a cholecystoduodenal fistula as severe adhesions in the gallbladder and duodenum (A). Cholecystectomy with resection of the fistula is performed (B). Closure of the fistula on the duodenal side with omental patch repair is performed (C, D).

摘出標本所見:胆囊壁は線維性肥厚が著明であったが,悪性像を認めず,また,瘻孔部は明らかでなかった(Fig. 7).結石成分分析ではコレステロール97%,ビリルビンカルシウム3%であった.

Fig. 7 

The resected specimen shows chronic cholecystitis, whereas the cholecystoduodenal fistula is unclear.

術後経過:経過良好にて,第2病日より経口摂取を再開した.第7病日にパーキンソン病の治療のため神経内科転科となり,その後転院された.

考察

胆石イレウスは胆石が胆管あるいは瘻孔を介して消化管内に逸脱し,腸管に嵌頓して生じるイレウスで,その頻度はイレウス全体の0.05%,胆石症の0.5%とされる比較的まれな疾患である1).特に60歳以上の高齢者女性に多い6)7).胆石の消化管への逸脱経路として内胆汁瘻を介する症例が大多数を占めるとされ,その中でも胆囊十二指腸瘻が73~96.5%を占めている1)7)

胆石イレウスの症状に特異的なものはないが,イレウス症状の増悪と寛解を繰り返すtumbling現象が特徴的とされ,徐々に閉塞症状が進行するとされている1)6).本症例も気分不良を自覚してからイレウスと診断されるまで約2週間を要している.

本症の診断には,かつてはRiglerら8)が提唱した,腹部単純X線写真での胆道内ガス像,腸管拡張・鏡面像,腸管内結石像,結石の移動の所見が有用であるとされていたが,これらの徴候が揃うのは半数以下とされていた6)~8).近年では,画像診断の進歩により診断率は格段に上昇しており,特にCTでの胆道内ガス像と腸管内結石の描出が有用であると考えられている9).一方で,内胆汁瘻の描出に関しては消化管造影の他,MRIやERCが有用であったとする報告があり,部位によっては内視鏡下に瘻孔を直接確認することもできるとされる6)10)~12)

胆石イレウスの治療としては,まず保存的治療が行われることが多いが,自然排石は4~8%と少なく,多くは手術が必要となる1)13).術式としては,イレウス解除術と胆囊摘出術,内胆汁瘻閉鎖術を行うことが求められるが,これらを一期的に行うか,二期的に行うかはいまだ議論のあるところである1)6)7).Reisnerら6)は本症に対する一期的手術の死亡率は16.9%と高値であったと報告しており,イレウス解除術のみもしくは二期的手術を行ったとする報告が多いが,近年では一期的手術も増加傾向にある1)6)7)14)

一方,胆道内に遺残結石がなく,胆道内圧が低下している条件の下では,瘻孔の自然閉鎖が期待できるとの報告もある11)15).また,内科的治療として,内視鏡的採石や,体外衝撃波破砕療法(extracorporeal shock wave lithotripsy;ESWL)の有用性も報告されており,耐術能に欠ける場合などは,これら内科的治療やイレウス解除術のみを行うことも考慮される13)

しかしながら,内胆汁瘻と胆道悪性腫瘍の発現には関連があるとの報告も散見される16)17).この発生機序に関しては,消化液が胆囊内へ逆流することで慢性炎症を来し腸上皮化生から胆囊癌を発生する説が有力とされている18).また,内胆汁瘻が残存している場合は胆石イレウスの再発,逆行性胆管炎などの続発症を生じる危険性がある1).これらを踏まえると,可能なかぎり胆囊摘出術と内胆汁瘻閉鎖についても行うべきと考えられる.

内胆汁瘻閉鎖に関しては,手縫いによる瘻孔の縫合閉鎖や自動縫合器による閉鎖が報告されているが,自動縫合器による切離の際は,炎症が高度な場合や腸管の伸展が不良である場合,術後の縫合不全や狭窄に留意する必要があるとされる10)19)

近年では,本症に対する腹腔鏡下手術の報告も増加している2)~5)15).腹腔鏡下手術は,不必要な開腹を避け,低侵襲下に胆囊周囲の状況と腸管の状態を観察することが可能であり,創感染などの合併症の低下,死亡率の低下につながると考えられている3)4).イレウス解除術においては,術前にできるかぎり腸管減圧処置を行うことが重要である4).内胆汁瘻の閉鎖に関しては,高度の炎症を伴っていることも多いため手術に難渋することも予想され,開腹移行も視野に入れた術式選択が重要といえる2)10)19).一方,1977年から2014年11月までの医学中央雑誌で「胆石イレウス」と「腹腔鏡」をキーワードとして検索(会議録を除く)した結果,内胆汁瘻を有する本症に対して腹腔鏡下二期的手術を行ったとする報告は認めなかった.本症例では,初回は単孔式腹腔鏡補助下に最小限の侵襲でイレウス解除を行うことができ,胆囊周囲の状態も観察することが可能であった.二期的手術においては,胆囊と十二指腸の癒着が強固で,瘻孔を確認することが困難であり,自動縫合器の使用は術後の十二指腸狭窄のリスクが高いと思われた.このため,胆囊側で切離することで十二指腸の損傷を避け,開存が疑われる十二指腸側の瘻孔部に対しては大網を被覆することで十二指腸の狭窄を来すことなく腹腔鏡下に手技を完遂でき,術後経過も良好であった.

内胆汁瘻を有する胆石イレウスに対しては,個々の症例に合わせて適切な治療法,術式を選択すべきであるといえる.二期的に腹腔鏡下手術を行う本術式は低侵襲かつ内胆汁瘻に対する根治性も担保されている.内胆汁瘻の閉鎖が本術式の重要なポイントとなるが,副損傷を避け,術後の縫合不全・狭窄を来さぬよう,腹腔鏡下の手技に固執することなく,閉鎖の方法やデバイスを選択することが肝要である.また,二期的手術では,イレウス解除を先行することで全身状態の改善を図り,詳細な胆道系精査を行ってから胆囊摘出と内胆汁瘻の閉鎖に向かえるという利点もあり,本症に対する有用な選択肢となると考えられた.

利益相反:なし

文献
 

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