The Japanese Journal of Gastroenterological Surgery
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CASE REPORT
Follicular Cholangitis Mimicking Hilar Cholangiocarcinoma
Yuichi AsaiTakanori KyokaneToru KawaiShingo OyaRyosuke KawaiYuki WatanabeShingo KuzeMasahiko MiyachiSatoshi Baba
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2019 Volume 52 Issue 1 Pages 36-44

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Abstract

症例は79歳の女性で,黄疸のため近医より紹介となった.造影CTでは,左右肝内胆管の拡張と肝門部領域胆管の壁肥厚による狭窄を認め,胆管狭窄所見は,右側は前後区域胆管合流部まで,左側はB4の合流部近傍まで連続しており,右肝動脈とA4は壁肥厚胆管と接触していた.右側優位の肝門部領域胆管癌と診断し,B2にENBDチューブを挿入し減黄を図った後,肝右3区域尾状葉切除,肝外胆管切除再建術を施行した.術後は合併症なく経過し,14日目に退院となった.切除標本割面では,肝門部胆管は著明に壁肥厚し,内腔は狭窄していた.病理組織学的には,胆管粘膜上皮に異型はなく,胆管壁は線維性間質の増生と胚中心を伴ったリンパ濾胞の形成が著明で,濾胞性胆管炎と診断された.術後4年6か月が経過したが,炎症の再燃はなく良好なQOLのもと外来フォロー中である.濾胞性胆管炎は比較的新しい疾患概念で,報告数はまだ少なく,貴重な症例と考え報告する.

はじめに

肝門部領域胆管は胆管癌の好発部位の一つであるが,何らかの原因による慢性炎症により,線維化を伴った硬化性胆管炎,胆管狭窄を起こすことの多い部位でもあり1)~3),肝門部領域胆管癌との鑑別が困難で,肝葉切除以上の手術を余儀なくされることがある1)~4).今回,我々は術前CTで肝門部に腫瘤形成を伴う不整な胆管狭窄を認め,肝門部領域胆管癌の診断で手術を行った濾胞性胆管炎の1例を経験した.濾胞性胆管炎は,2003年にAokiら5)により報告された比較的新しい疾患概念で,報告例はまだ少なく,我々の検索しえた範囲では現在までに9例の報告を認めるのみである5)~10).肝門部領域胆管に好発し,肝門部領域胆管癌との鑑別が困難な症例が多く,臨床上問題となる疾患と考える.今回は,術後の経過を長期間観察することができた点でも貴重な経験と考えられたため,臨床像や画像所見,病理組織学的所見などにつき報告する.

症例

患者:79歳,女性

主訴:尿の濃染,全身倦怠感

既往歴:糖尿病,肺塞栓症(ワーファリン内服中)

現病歴:尿の濃染を認め,全身倦怠感も強くなってきたため,近医を受診した.採血で黄疸を指摘されたため,精査目的で当院紹介となった.

来院時血液検査所見:T.Bil 11.4 mg/dlと高値であった.AST 406 U/l,ALT 321 U/l,ALP 2,891 U/l,γ-GTP 1,211 U/lと肝胆道系酵素の著明な上昇を認めた.WBC 10,300 /μl,CRP 1.63 mg/dlと軽度の炎症反応上昇を認めた.腫瘍マーカーはCEA 3.7 ng/ml,CA19-9 5.1 U/mlと正常であったが,DUPAN-2が7,419 U/mlと著明な高値を示した.また,血清IgG,IgG4はそれぞれ1,075 mg/dl,43 mg/dlと正常値であった.抗核抗体,抗ミトコンドリア抗体は陰性であった.

腹部造影CT所見:左右両葉の肝内胆管拡張と肝門部領域胆管の壁肥厚所見を認め,21×16 mm大の軽度造影効果を伴う腫瘤として描出された(Fig. 1A~C).壁肥厚による胆管狭窄所見は,右側は前後区域胆管合流部まで,左側はS4の胆管合流部付近まで連続していた.右肝動脈は広く壁肥厚胆管と接触しており(Fig. 1A~C),A4も右肝動脈との分岐部で壁肥厚胆管と接触していた(Fig. 1B).また,総肝動脈周囲に19×10 mm大の腫大リンパ節を認めた(Fig. 1D).

Fig. 1 

Abdominal enhanced CT showed marked wall thickening of the right and left hepatic ducts and the proximal common hepatic duct with slight enhancement (A, B, C, white large arrows). The right hepatic artery (A, B, C, black small arrows) and A4 (B, white small arrow) were in contact with the thickened biliary wall, suggesting tumor involvement of these arteries. Swelling of the common hepatic artery lymph node was noticed (D, black large arrow), suggesting regional lymph node metastasis.

FDG-PET CT所見:肝門部壁肥厚胆管はSUVmax 3.4,総肝動脈周囲の腫大リンパ節はSUVmax 4.3の軽度集積を認めた.

ERCP所見:総肝管から左右肝管にかけて,不整な狭窄所見を認めた(Fig. 2A, B).不整狭窄所見は,右側は前後区域枝の合流部まで,左側はB2+3とB4の合流部近傍まで連続していた.胆汁細胞診を施行したが,悪性細胞は認められなかった.胆管生検は,生検鉗子の挿入が困難であり,無理な操作で膵炎を起こす可能性を考慮して施行しなかった.

Fig. 2 

ERCP demonstrated an irregular stricture of the hilar bile duct in a wide area from the proximal common hepatic duct (A, B, black large arrows) to the peripheral side of the right hepatic duct (B, black small arrow) and the left hepatic duct (A, B, white small arrows). The large white arrow and black arrowhead indicate B2+3 and B4, respectively. Cytology of the bile revealed no malignancy.

以上の所見より,総肝動脈周囲リンパ節転移を伴う右側優位の肝門部領域胆管癌と診断した.CT所見で壁肥厚胆管は右肝動脈とA4に接触しており,根治的には肝右3区域尾状葉切除,肝外胆管切除再建術が望ましいと考え,B2にENBDチューブを挿入し減黄を図った.減黄後,血清DUPAN-2値は低下したが,1,180 U/mlと依然として高値であった.減黄後の肝機能評価は,ICG15分値8.0%,K値0.165と良好であり,CT volumetryでは肝外側区域は37.7%と計算された.肝右3区域尾状葉切除を行った場合,残肝K値は0.062と計算され,耐術可能と判断した.患者は79歳と高齢であるが,performance statusは良好で,重篤な合併症はなかった.患者,家族と十分相談したうえで手術を施行した.

手術所見:肝門部に硬い腫瘤を触れた.A4は根部付近で硬い腫瘤に接触し癒着していた(Fig. 3A).総肝動脈周囲に術前CTで指摘された腫大リンパ節を認めたが,柔らかく,明らかに転移を疑う所見ではなかった.肝十二指腸間膜内にも明らかに転移を疑うリンパ節はなかった.予定通り肝右3区域尾状葉切除術,肝外胆管切除再建術を施行した(Fig. 3B).リンパ節郭清は肝十二指腸間膜から総肝動脈周囲,膵頭後部にかけての範囲で行った.胆管断端はB2とB3の2穴となった(Fig. 3B).術中迅速病理診断で胆管断端に悪性所見がないことを確認した.手術時間は7時間23分,出血量は810 ml,無輸血であった.

Fig. 3 

Intraoperative findings. A: a hard mass was palpable at the hepatic hilum (white large arrow). A4 adhered firmly to the hard mass (white small arrow). The black arrow indicates the stump of A4+right hepatic artery. B: Right hepatic trisegmentectomy and caudate lobectomy with extrahepatic bile duct resection was carried out. Black and white arrows indicate the stumps of B3 and B2, respectively.

摘出標本肉眼所見:胆管を切開したところ,総肝管,左肝管,右肝管開口部にかけて胆管壁の硬化,肥厚を認め,内腔は狭窄していた.総肝管~左肝管粘膜表面には,胆管内腔に突出するようなcobblestone様の顆粒状小隆起が多発する所見を認めた(Fig. 4A).固定標本割面では,肝門部胆管壁は白色調に著明に肥厚していた(Fig. 4B).

Fig. 4 

Gross appearance of the resected specimen. A: the heptic hilum showed marked thickening of the bile duct wall and biliary stenosis. The common hepatic duct and the left hepatic duct had some granular nodules (black arrows), which had a cobblestone appearance. The small white arrow indicates the orifice of the right hepatic duct. The large white arrow indicates the stump of B2+3. B: The cut surface of the resected liver. The hepatic hilar bile duct showed marked wall thickening (black arrow), mimicking hilar cholangiocarcinoma.

病理組織学的検査所見:肝門部の壁肥厚胆管では,胆管粘膜上皮に異型はなく,上皮はよく保たれていた(Fig. 5A, B).胆管壁は,線維性間質の増生とともに,リンパ球,形質細胞の浸潤が著明で,胚中心を伴う著明なリンパ濾胞の形成により肥厚していた(Fig. 5A, C, D).免疫組織化学染色では,IgG陽性形質細胞の浸潤を多数認めたが,IgG4陽性形質細胞は少数のみであった(Fig. 5E, F).総肝動脈周囲の腫大リンパ節は,胆管壁同様,リンパ濾胞過形成を伴って腫大しているが,悪性所見はなかった.DUPAN-2染色を行ったところ,壁肥厚胆管の異型のない胆管粘膜上皮が染色された(Fig. 5G).

Fig. 5 

Histological and immunohistochemical examination of the resected specimen. A: HE, original magnification ×40. B, C, D: HE, original magnification ×100. E: Immunostaining of IgG, original magnification ×200. F: Immunostaining of IgG4, original magnification ×200. G: Immunostaining of DUPAN-2, original magnification ×200. The wall of the hepatic hilar bile duct is lined by the normal biliary epithelium (A, B), and irregularly thickened by marked formation of lymphoid follicles with germinal centers (A, C) and proliferation of fibrous stroma (D). Although IgG-positive plasma cell infiltration around the bile duct lesion is abundant (E), only a small amount of IgG4-positive plasma cells can be seen (F). Biliary epithelial cells of the thickened wall are positive for DUPAN-2 (G).

上記の病理組織学的所見とともに,女性の高齢者,炎症性腸疾患や自己免疫性疾患の既往がない,抗核抗体陰性,血清IgG4正常値などの臨床所見も考慮すると,原発性硬化性胆管炎(primary sclerosing cholangitis;以下,PSCと略記)やIgG4関連硬化性胆管炎(IgG4-related sclerosing cholangitis;以下,IgG4-SCと略記)は否定的と考えられ,肝門部に発生した濾胞性胆管炎と診断した.

術後経過:合併症なく経過し,術後14日目に退院となった.術前1,180 U/mlと高値であったDUPAN-2は,手術3週後に327 U/ml,2か月後には233 U/mlと低下した.2年後に正常値となり,その後はほぼ正常値を維持している.術後4年6か月現在,外来経過観察中であるが,血清肝胆道系酵素の上昇はなく,造影CT上肝内胆管の拡張も認められず,炎症の再燃はない.日常生活に支障はなく,QOLは良好である.

考察

肝門部領域胆管は胆管癌の好発部位の一つであるが,さまざまな原因による慢性的な炎症により,硬化性胆管炎が好発する部位であることも知られている.硬化性胆管炎では胆管が不整に狭窄することが多く,臨床上胆管癌との鑑別が問題となる.硬化性胆管炎は原因不明のもの,ある程度原因が明らかで続発性のものに分けられる.前者の代表的な疾患がPSCであり,比較的若年者に多い,炎症性腸疾患を高頻度に合併する,独特の胆管像所見を示すなどの臨床的特徴を有し,ステロイドに対する反応は不良で,有効な治療法はなく難治性の疾患である.後者には胆管内結石,外傷,手術による損傷,胆管虚血,先天的要因,抗癌剤の肝動注療法などが原因で起こるものがある11).近年,高度のIgG4陽性形質細胞の浸潤を伴う硬化性胆管炎症例の報告が相次ぎ,IgG4-SCとして疾患概念が確立された12).当初,IgG4-SCは自己免疫性膵炎に合併する胆管病変として理解されていたが,その後,高度のIgG4陽性形質細胞浸潤を伴う硬化性病変は膵臓・胆管のみならず,涙腺,唾液腺,甲状腺,肝臓,肺,腎臓,前立腺,後腹膜,リンパ節など全身に分布していることが明らかとなり,IgG4関連硬化性疾患という概念が提唱されるようになった13)14).このうち胆管壁に慢性炎症による硬化性病変を認める病態がIgG4-SCであると理解されるようになった.PSCと比較しステロイド投与が有効なことが多く,正確な術前診断が重要となる.

難治性疾患であるPSCは,有効な治療法がない点でまだ多くの問題が残されているが,診断基準はある程度確立されている15).IgG4-SCは多くの症例で自己免疫性膵炎を合併しており,自己免疫性膵炎の診断基準に関するガイドラインの制定に伴い16)診断可能な症例も増え,正確な診断のもと手術を回避し,ステロイド投与が行われ効果が認められる症例も多い17).しかし,実臨床では,PSCやIgG4-SCの診断基準を満たさず,結石や外傷などの明らかな原因を特定することもできない,非特異的な慢性炎症が原因で起こる良性胆管狭窄症例が散見されるのが現状である.これらの症例では,術前肝門部領域胆管癌との鑑別が困難で,肝葉切除以上の手術が施行された後で非特異的慢性炎症による胆管狭窄と診断されている.Erdoganら2)は,肝門部胆管癌の疑いで手術を行った良性胆管狭窄32例のうち,15例が組織学的に線維化とリンパ球浸潤を伴う病変であり,そのなかでIgG4-SCと診断されたのは僅か2例であったと報告している.Fujitaら3)は,手術を行った良性胆管狭窄21例のうち,5例は原因不明の胆管炎による狭窄で,うちIgG4-SCと診断されたのは1例のみであったと報告している.横山ら4)も,肝門部領域胆管癌との鑑別が困難で手術を施行した非特異的慢性胆管炎症例を2例報告している.肝門部領域胆管の慢性硬化性胆管炎症例のなかに,ある程度の頻度で,明らかな原因が特定できず,PSC,IgG4-SCの診断基準にもあてはまらない,非特異的な炎症が原因で発症する良性胆管狭窄症例が存在することがわかる.

濾胞性胆管炎は,2003年にAokiら5)により報告された比較的新しい疾患概念で,主に肝門部領域胆管が障害され,病理組織学的には,比較的保たれた胆管上皮下で線維性間質と強い濾胞形成を伴うリンパ球,形質細胞浸潤を認め,IgG4陽性細胞は少数とされる18).報告数が少ないまれな疾患であるが,濾胞性胆管炎という疾患概念が確立する以前の症例で,原因不明の非特異的慢性胆管炎と病理組織学的に診断されていた症例のなかに,本疾患が含まれている可能性がある.PSC,IgG4-SCとともに,硬化性胆管炎の原因として鑑別に挙げるべき疾患である.PubMedで「follicular cholangitis」をキーワードに,1950年より2018年2月の期間,医学中央雑誌で「濾胞性胆管炎」と「follicular cholangitis」をキーワードに,1964年より2018年1月の期間で会議録を除き検索したところ,現在までに9例の報告を認めるのみであった5)~10).2003年にはじめて報告された新しい疾患であることを考慮しても,やはりまれな疾患といえる.自験例を含めた10例につきTable 15)~10)に示した.10例中7例が女性で,女性に多い傾向がある.自験例は高齢者であったが,10例中6例が60歳以下であった.全例で肝門部領域胆管が障害されており,9例で肝葉切除以上の手術が施行されている.術前診断は8例が肝門部領域胆管癌,1例がPSC,1例が胆管狭窄で,報告された症例のなかでは術前に診断が確定された症例はなく,全例で手術が施行されている.ステロイド投与などの内科的治療が行われた症例はない.Saitoら10)が報告した症例では,8年間左肝管の難治性良性胆管狭窄としてフォローされたのちに手術が施行されており,濾胞性胆管炎は放置していても胆管狭窄が軽快しない可能性が示唆される.退院後の経過について明記された症例は8例で,うち6例は術後胆管炎の再燃なく経過している8)~10).6例全てで1年以上フォローされており,Zenら8)は5年以上フォローし胆管炎の再燃がない症例を報告している.自験例も4年6か月の長期間フォローを行い,胆管炎の再燃を認めていない.しかし,Fujitaら7)は術後胆管炎の再燃を認めた2例を報告しており,1例は10か月後に胆管炎の再燃を認め,1例は胆管炎の再燃による肝不全で手術2年後に死亡している.濾胞性胆管炎の治療としては,ステロイドなどの薬物療法の効果は全く不明であり,悪性所見がないためフォローしても難治性の胆管炎を繰り返すこともあり,現時点では外科的切除しかないのかもしれない.しかし,切除後も胆管炎が再燃する可能性があることは念頭に置くべきであり,良性疾患であるが術後もしばらくの期間はフォローが必要と考えられる.

Table 1  Reported cases of follicular cholangitis
Case Author Year Age/Sex Preoperative diagnosis Treatment Long-term outcome
1 Aoki5) 2003 57/F Hilar cholangioca. Extended right hepatectomy ND
2 Lee6) 2005 61/M Hilar cholangioca. Extrahepatic bile duct resection ND
3 Fujita7) 2010 47/M Hilar cholangioca. Extended right hepatectomy 10m alive, DR (+)
4 Fujita7) 2010 44/F Hilar cholangioca. Extended left hepatectomy 2y dead, DR (+)
5 Zen8) 2012 73/F Hilar cholangioca. Right hepatectomy DR (−)
6 Zen8) 2012 70/M Hilar cholangioca. Left hepatectomy DR (−)
7 Zen8) 2012 42/F PSC Liver transplantation DR (−)
8 Fujii9) 2014 60/F Hilar cholangioca. Left trisegmentectomy 2y alive, DR (−)
9 Saito10) 2016 42/F Stricture of the left HD Left hepatectomy 1y alive, DR (−)
10 Our case 79/F Hilar cholangioca. Right trisegmentectomy 4y 6m alive, DR (−)

HD: hepatic duct, ND: not described, DR: disease recurrence

現時点では本疾患の術前診断は困難と考えられるが,特徴的な胆管像が重要な所見の一つになるのではないかと考える.Aokiら5)は,“holly-like appearance”と表現したが,自験例の胆管像所見もAokiら5)の症例と酷似している.組織学的に胆管粘膜下での胚中心を伴う著明なリンパ球形質細胞浸潤と線維性間質増生により,小粘膜下腫瘤様の顆粒状隆起が数か所で形成されており,これが肉眼的には胆管粘膜表面のcobblestone様隆起となり,造影では“holly-like”,つまり,ヒイラギの葉のような像を呈したものと考えられる.胆管癌ではあまり見られない所見で,PSCやIgG4-SCの胆管像とも異なっていると思われる.しかし,胆管像に関する詳細な記載のある報告は少なく,今後の症例の蓄積が必要である.

自験例では術前DUPAN-2が異常高値となった点でも興味深い.DUPAN-2は膵癌や胆管癌でしばしば高値となる腫瘍マーカーであるが,良性胆道疾患でも上昇することがある.しかし,1,000 U/mlを超えることはまれであり19),また,良性疾患による胆道狭窄でDUPAN-2が上昇した場合は,胆道減圧により正常値まで下がる症例が多いことが示されている19).自験例では減黄前は7,419 U/mlと異常高値で,減黄後も1,000 U/ml以上の高値を示した.切除標本のDUPAN-2免疫組織化学染色で壁肥厚部の異型のない胆管粘膜上皮が染色され,病変部切除後の血清DUPAN-2は正常値となった.過去に血清DUPAN-2値に言及した報告例がないため,血清DUPAN-2の上昇と本疾患との関連は不明であるが,注目してもよい所見かもしれない.

濾胞性胆管炎は原因,診断,治療,手術後の胆管炎の再燃など,臨床的に不明な点がまだ多い.症例の蓄積が必要であるが,PSCやIgG4-SCの診断基準にあてはまらない,非特異的な慢性炎症による硬化性胆管炎症例に遭遇した場合,濾胞性胆管炎は鑑別に挙げるべき疾患である.

利益相反:なし

文献
 

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