The Japanese Journal of Gastroenterological Surgery
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2020 Volume 53 Issue 1 Pages 77-80

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手術記録,俗称「オペレコ」は,施行した手術の内容を記載した貴重な公的文書であるが,例えば米国ではイラストを伴わない文章のみによる記載が一般的であり,また我が国でも内視鏡外科手術が普及した領域ではイラストよりも手術ビデオのスクリーンショットを活用することが多い.私は日本肝胆膵外科学会の高度技能専門医制度委員会の委員長と修練施設認定委員会の担当理事を8年間務めた関係で,全国の肝胆膵外科の高難度手術の手術記録を読む機会が多く,その際にイラストが精緻なものから一筆書き漫画のような簡単なものまで極めて多様であり,全く標準化されていないことを認識していた.

今回,第74回日本消化器外科学会総会特別企画を企画したが,東京での開催という種々の制約から近年恒例の学会2日目の全員懇親会を行わず,一部であっても関心がある方が集まって勉強し,かつ楽しんでもらえるようなイベント性のあるプログラムができないかと考えたのが,本企画のスタートであった.

当初は施設対抗としその場で指示された手術のイラストを評点することも考えたが,当企画で司会をお願いした,手術イラストでご高名な杏林大学の阪本良弘先生と兵庫医科大学の篠原 尚先生(写真1)と相談した結果,種々の消化器外科手術のイラスト付き手術記録を総会ホームページで公募し,各分野の手術エキスパートである10名の学会評議員の先生方に採点していただくこととした.

写真1 

特別企画「オペレコを極める」の司会のお二人

はじめての取り組みであり,主催者としては応募数が十分あるか不安であったが,76題もの応募があり,評価点数順に口頭発表10名,ポスター発表21名を選出し,ポスターは学会期間中,第3会場内に掲示していただいた.

口頭発表の10名については,ご聴講いただいた会員全員にアンサーパッドを手渡し,発表終了後にベストと考える演者1名を投票してもらい,その集計で順位を決める「全員参加型」とした.口頭発表の上位者には豪華賞品を用意し,さらにポスターでは会長賞1名と司会者賞2名を選出し,司会の先生方が執筆された手術書を謹呈した(表1).

表1  受賞者一覧
口頭発表 大賞
1位楳田 祐三先生(岡山大学 消化器外科)
2位多田 和裕先生(大分大学 消化器・小児外科)
3位秋月 恵美先生(札幌医科大学 消化器・総合,乳腺・内分泌外科)
佐野  力先生(愛知医科大学 消化器外科)
5位櫻岡 佑樹先生(獨協医科大学病院 第二外科)
6位入江 彰一先生(がん研有明病院 肝・胆・膵外科)
7位堀 周太郎先生(慶應義塾大学医学部 外科学教室)
8位石井 隆道先生(京都大学 肝胆膵・移植外科)
9位眞田 雄市先生(社会医療法人喜悦会那珂川病院 外科)
10位菊地祐太郎先生(栃木県立がんセンター 外科)
ポスター発表
会長賞大村 範幸先生(仙台赤十字病院 外科)
司会者賞日比 泰造先生(熊本大学大学院 小児外科学・移植外科学講座)
森  直樹先生(久留米大学 外科)

同企画は学会2日目に第3会場で行ったが,口頭発表の会場は立ち見が出るほどで,主催者側として胸をなでおろした(写真2).集計を待つ間,参加者には隣の会場に移動していただき,リラックスした雰囲気でお酒や軽食を取りながら協賛企業のプレゼンテーションを聞き,集計結果が出たところで,口演,ポスターの順に上記の表彰を行った(写真36).

写真2 

口演発表会場

写真3 

口演発表最優秀賞

写真4 

口演発表表彰式

写真5 

ポスター会長賞

写真6 

ポスター司会者賞

初の試みとなる本企画を進めるにあたっては,参加者数や開催意義についてさまざまな意見が交わされたが,ありがたいことに口演発表・表彰式ともに大変盛り上がり,主催者として全員懇親会に替わる企画が成功したことを大変嬉しく思う.また,本特別企画の司会の労のみならず,企画面でもご尽力いただいた司会の阪本良弘先生と篠原 尚先生,オペレコの査読をいただいた評議員の先生方,学会事務局の総会担当の方々,そして企画の立案・実施に携わった医局の各位に心より感謝したい.

この度,前理事長の瀬戸泰之先生と前会誌編集委員長の遠藤 格先生のご高配により,本特別企画の31名の採用者全員の発表内容を本学会の和文誌である日本消化器外科学会雑誌に「特別報告」として掲載される運びとなった.しかも,採用者全員から執筆のご承諾をいただけたとのことで,主催者としては望外の喜びである.

本特別企画では手術記録の精緻化,さらには働き方改革に寄与する効率化など種々の工夫が会員と共有された.可能なら今後もこのような特別企画が継続されて,我が国の「イラストを含むオペレコ」文化が国内で熟成され,更にはアニメ文化の如く世界を席巻することに期待したい.

 

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