The Japanese Journal of Gastroenterological Surgery
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Yukinori Kurokawa
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2020 Volume 53 Issue 7 Pages en7-

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今年の梅雨は平年以上に雨が多く,日本各地で甚大な被害を及ぼしています.ここ近年の異常気象はもはや「異常」から「通常」になっており,梅雨明け後も「通常」どおりの猛暑がやって来ることと思われます.この不快な湿度と気温のなかでも新型コロナウイルスは再び猛威を振るいつつあり,常にマスクを付けなくてはならない生活様式が「通常」とならずに「異常」のままで終わってくれることを切に願っている次第です.

このように,最近の新聞やテレビでは水害や新型コロナウイルスといった暗いニュースばかりですが,その中で珍しく明るいニュースが昨日の新聞の1面を飾りました.まだ高校3年生の17歳である将棋の藤井聡太七段が,史上最年少でタイトルを獲得したのです.プロ棋士は数百手先まで読んでいると言いますが,天才揃いのプロ棋士のなかでも彼は別次元だと言われており,もはやAIを超えた頭脳を持っているとも噂されています.また,彼は従来から言われている将棋のセオリーとは全く逆の予想外の一手を繰り出すことでも有名です.これは我々医学の世界でも重要なことであり,上司や先輩がしていることや言っていることを素直に吸収することは初期の成長のためには必要不可欠ですが,これまでのセオリーやエビデンスが必ずしも正しいとはかぎらないということは常に意識しておくことは大事です.そういう意識を持って臨床に望んでいると時に新しいひらめきがあるもので,これを実際に調べて論文にまとめるという作業は医学者としての責務でもあります.藤井聡太七段のような誰もが驚く“予想外の一手”はなかなか思いつかないものですが,小さな発見の積み重ねも医学の発展につながりますので,ぜひ若い先生方もそういう意識をもって日々の臨床に携わっていただければと思います.

さて,本号には原著1編,症例報告6編,「オペレコを極める」2編が掲載されています.いずれも貴重な内容のものばかりですが,中でも一押し論文は魚谷倫史先生らの「90歳以上の超高齢者における消化器外科緊急手術後の在院死亡に対する術前リスク評価」です.日本はすでに超高齢化の時代に入り,今や80歳以上の患者さんの手術は日常となっており,90歳以上の患者さんの手術を行うことも珍しくはありません.しかし,90歳以上の超高齢者はそれなりに手術のリスクが高いため,手術適応の有無や術式の決定のためには正確なリスク評価が求められます.本論文では数ある術前リスク評価方法の有用性を比較しており,非常に興味深い内容となっています.原著論文は英文誌への投稿を周りから勧められることも多いですが,欧米では日本のような超高齢者に対する手術はほとんどされていませんので,このような論文こそ邦文誌に掲載する価値が大きいと思います.ぜひ,ご一読ください.

 

(黒川 幸典)

2020年7月18日

 

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