The Japanese Journal of Gastroenterological Surgery
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CASE REPORT
A Resected Case of Leiomyosarcoma Originating from the Splenic Vein with a Preoperative Diagnosis of Pancreatic Tumor
Kensuke NittaShingo KozonoKazuyoshi NishiharaSho OkudaSho EndoYusuke WatanabeKeijiro UedaSadafumi TamiyaMasato SakamotoToru Nakano
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2020 Volume 53 Issue 9 Pages 718-724

Details
Abstract

症例は77歳の女性で,胸やけを主訴に近医を受診し,腹部エコーで膵腫瘤を指摘され当院紹介となった.画像検査にて,膵体部に22 mm大の腫瘤性病変を認め,脾静脈は腫瘤により著明に圧排されその境界は不明瞭であった.脾静脈浸潤を伴う膵原発腫瘍と診断し,手術は亜全胃温存膵頭十二指腸切除術,門脈切除・再建を予定した.術中所見にて腫瘍は脾静脈内に存在し脾静脈原発腫瘍と判明し,門脈および脾静脈再建を施行して予定通りの手術を施行した.術後病理診断では脾静脈由来平滑筋肉腫と診断された.脾静脈由来平滑筋肉腫は非常にまれな疾患で,画像診断からは膵腫瘍との鑑別が困難と考えられ,これまでの報告でもほとんどの症例で膵腫瘍と術前診断され膵切除が行われていた.術前診断が得られれば不要な膵切除を避けることができる可能性があるため,門脈浸潤を伴う膵腫瘍を認めた場合は本疾患を鑑別診断の一つとして考慮する必要があると思われた.

Translated Abstract

A 77-year-old female presented to a doctor at a nearby medical clinic complaining of heartburn. She was diagnosed with a pancreatic mass on ultrasound (US) and was referred to our hospital for further examination. Contrast abdominal CT revealed a 22 mm tumor that markedly compressed the splenic vein on the pancreatic body. We determined that the pancreatic tumor had invaded the splenic vein and planned subtotal stomach-preserving pancreaticoduodenectomy (SSPPD) with combined resection of the portal vein. During surgery, the tumor was found to be inside the splenic vein without invasion to the pancreatic parenchyma. The tumor appeared to originate from the vessel wall. By the time we recognized this, we had almost completed resection of the pancreatic head. We then performed SSPPD with reconstruction of the portal and splenic veins. The pathological diagnosis was leiomyosarcoma originating from the splenic vein. Preoperative diagnosis of leiomyosarcoma originating from the splenic vein is difficult. In almost all reported cases, pancreatectomy was performed under the diagnosis of pancreatic tumor. To avoid unnecessary pancreatectomy, when we encounter a pancreatic tumor that has invaded the portal vein system, we should consider this rare disease during the differential diagnosis process.

はじめに

血管壁原発の平滑筋肉腫はまれな疾患である1)が,その中でも脾静脈原発のものは報告例も少なく極めてまれである.

今回,我々は術前に膵腫瘍と診断し手術を行った脾静脈原発平滑筋肉腫の1例を経験したので報告する.

症例

患者:77歳,女性

主訴:胸やけ

既往歴:逆流性食道炎,下肢静脈瘤,白内障

現病歴:胸やけの増悪により施行された腹部超音波検査で膵腫瘤を指摘された.精査にて膵癌が疑われ,手術加療目的に当科紹介となった.

現症:腹部に腫瘤を触知せず,圧痛もなかった.その他に特記すべき異常所見はなかった.

血液検査所見:特記すべき所見は認めなかった.また,腫瘍マーカーはいずれも基準範囲内であった.

腹部造影CT所見:膵体部から背側へ膨隆するように発育する22×16×17 mm大の内部不均一な低吸収腫瘤を認めた(Fig. 1a~c).脾静脈および門脈本幹は腫瘍により強く圧排されていた(Fig. 1d, e).主膵管の拡張は認めなかった.

Fig. 1 

An abdominal CT with contrast enhancement revealed a heterogenous and hypodense mass measuring 22×16×17 mm in the body of the pancreas (red arrowheads). The tumor appeared to compress the splenic vein and portal vein. (a: Axial plane in early phase, b: Coronal plane in the early phase, c: Axial plane in the late phase, d: Coronal plane in the late phase, e: 3DCT image of the portal vein.)

MRI所見:膵体部から背側へ膨隆するように発育する18 mm大の腫瘤を認め,T1で低信号,T2およびDWIにて高信号を示した(Fig. 2a~c).

Fig. 2 

MRI showed a solid mass located in the body of the pancreas (red arrowheads). a: The lesion demonstrated hypointensity on T1-weighted images. b: T2-weighted image of the lesion demonstrated slight hyperintensity. c: Diffusion-weighted image of the lesion showed hyperintensity.

超音波内視鏡検査所見:膵体部に22×14 mm大の内部やや不均一なhypoechoic tumorを認めた(Fig. 3a).カラードップラーでの観察では腫瘍内部の血流を認めた(Fig. 3b).腫瘤と膵実質との境界は明瞭で,腫瘍の辺縁もスムーズであった.腫瘍は脾静脈を強く圧排していており,門脈本幹側への腫瘍の突出像も認められた.血管壁との境界は一部で不明瞭に観察され,浸潤や門脈内進展が疑われた(Fig. 3c).

Fig. 3 

a: Endoscopic US revealed a heterogenous and hypoechoic mass, measuring 22×14 mm in size, with a distinct boundary with the pancreatic parenchyma in the body of the pancreas (red arrowheads). b: Color Doppler US showed blood flow in the tumor. c: The tumor compressed the splenic vein and protruded into the portal vein. The boundary between the tumor and vein wall was indistinct (white arrowhead). T: tumor, PV: portal vein, SV: splenic vein, SMV: superior mesenteric vein.

以上の画像所見より,鑑別診断として膵腺房細胞癌や乏血性のpNET,膵癌が考えられ脾静脈への浸潤が疑われた.EUS-FNAは出血のリスクを考慮し施行しなかった.手術は亜全胃温存膵頭十二指腸切除術,門脈合併切除・再建術を行う方針とした.

手術所見:手術は,亜全胃温存膵頭十二指腸切除術,D2リンパ節郭清,門脈合併切除・再建術を行った.上腹部正中切開で開腹した.術中超音波検査で腫瘍は門脈左縁から脾静脈を圧排する形で膵臓内に観察され,腫瘍の左縁より1 cm尾側にて膵切離を施行した.膵頭部の授動を門脈側へ進めて行くと,膵臓と門脈は容易に剥離され,腫瘤性病変は脾静脈内に確認された(Fig. 4a).この時点で,膵原発性腫瘍ではなく脾静脈原発腫瘍と判明した.手術はそのまま膵頭十二指腸切除を行うこととし,門脈,上腸間膜静脈,下腸間膜静脈,脾静脈を切離した.血行再建はまず門脈と上腸間膜静脈を5-0 Novafilを用いて端端吻合を行った.脾静脈は下腸間膜静脈へ7-0 PDSを用いて端側吻合を行った(Fig. 4b).再建はChild変法で行った.手術時間は8時間17分,出血は410 mlであった.

Fig. 4 

Intraoperative findings. a: The tumor was located in splenic vein and protruded into portal vein. The pancreas was free from the tumor. b: After removing the tumor, two vein anastomoses were performed. Anastomosis ①: PV and SMV. Anastomosis ②: IMV and SV. IMV: inferior mesenteric vein.

病理組織学的検査所見:手術摘出標本で脾静脈内に弾性硬の白色充実性病変を認めた(Fig. 5a).脾静脈壁から連続するように,紡錘形細胞が束状に増生していた(Fig. 5b).核異型,核分裂像を認めた(Fig. 5c).免疫組織学的にSMA陽性,CD-34,S-100は陰性であった(Fig. 5d~f).以上より,脾静脈原発平滑筋肉腫と診断した.

Fig. 5 

a: The resected specimen showed the tumor located in the splenic vein. b: Pathological findings in HE demonstrated that the lesion originated from the wall of the splenic vein (red arrowheads) (HE staining, ×4). c: The tumor showed bundles of spindle cells with irregular atypical nuclei (HE staining, ×40). Mitotic count was 2–3 per 10 high power fields (red arrowheads). d: The tumor cells showed diffuse positive staining for smooth muscle actin (SMA). The tumor cells stained negative for CD34 (e) and S100 (f).

術後経過:術後膵液漏を認めたが保存的加療で軽快し,術後45日目に退院となった.術後4か月経過するが,明らかな再発所見を認めていない.

考察

平滑筋肉腫は平滑筋を起源とする間葉系腫瘍で全軟部組織肉腫の約6%を占める腫瘍である1).後腹膜や腸間膜,大網から発生するものが40%~45%,手足の皮下や軟部組織から発生するものが20%~30%,皮膚の立毛筋から発生するものが15%~20%を占め,血管壁原発のものは5%と少ない2).なかでも大血管由来のものは極めてまれとされている.血管平滑筋肉腫は中膜の平滑筋より発生し,発育形式として62%が血管外に,5%が血管内に,33%が血管内外に発育していく形態をとり,本症例のように,腫瘍が血管内にのみに発育する形態は少数派である3)4).病理学的には,HE染色で紡錘形の核を有する異型細胞の束状増生を認め,免疫染色検査ではsmooth muscle actin(SMA),desmin,h-caldesmon染色が陽性となることが多い5).また,静脈由来の血管平滑筋肉腫は動脈由来よりも5倍多いと報告されている6).静脈由来の平滑筋肉腫は主に中年女性に好発し,約50%が下大静脈原発である7).本症例のように脾静脈が原発の平滑筋肉腫の報告は,医学中央雑誌(1964年~2018年)で「脾静脈」および「平滑筋肉腫」を,PubMed(1950年~2018年)で「splenic vein」および「leiomyosarcoma」をキーワードに検索すると5例の報告2)8)~12)のみであった(Table 1).全て海外での報告で本邦での報告例はなかった.全ての報告例において術前に平滑筋肉腫と診断しえたものはなく,膵原発腫瘍の診断にて手術が行われていた.術中所見にて脾静脈原発腫瘍と判明し,脾静脈切除・再建術が行われた1例を除いて,6例中5例(本症例を含む)で膵切除が施行されていた.本来,臓器浸潤のない静脈原発平滑筋肉腫であれば血管切除のみで切除マージンが得られれば治癒切除となるため,術前に脾静脈原発平滑筋肉腫と確定診断ができれば無用な膵切除を回避できる可能性がある.例えば明らかな血管内発育の症例では脾静脈切除術が選択され,血管外発育を呈する症例であっても切除マージンが確保できれば膵中央区域切除術もしくは尾側膵切除術などの縮小手術が施行可能と考える.脾静脈再建の必要性に関しては一定の見解は得られていないが,脾静脈非再建時は,脾腫,貧血,腹痛,上部消化管出血などの術後合併症が危惧される.杉本ら13)は,脾静脈非再建の膵頭十二指腸切除症例を検討し,下腸間膜静脈または左胃静脈が温存されていればそれらを介した側副血行路が形成され,臨床的に問題となる合併症は認めなかったことを報告している.しかし,術中に胃の鬱血が明らかな場合は,脾静脈再建や胃切などの施行が重要とされる.Patronoら11)は脾静脈の端々吻合での再建を報告しているが脾静脈の端々吻合は緊張が掛かり極めて困難であるとの報告14)もあり,脾静脈の血行再建は脾静脈-下腸間膜静脈吻合15),脾静脈-左腎静脈吻合14),interposition graft16)などによる脾静脈再建が選択される.本症例のように腫瘍が脾静脈の門脈流入部に存在する場合は,たとえ術前に確定診断がついたとしても,脾静脈,門脈,上腸間膜静脈の切離を安全に施行するためには膵頭十二指腸切除を施行せざるをえないものと考える.また,術前の画像診断の可能性についてはNiverら10)が指摘している通り,画像所見から脾静脈原発腫瘍を積極的に疑うことは困難と考えられ,脾静脈浸潤を伴う比較的境界明瞭な腫瘍を認めた場合は,本疾患を鑑別診断の一つとして考慮する必要があると考えられる.EUS-FNAが診断の一助となる可能性があり,門脈由来平滑筋肉腫の症例において術前に確定診断を行えた報告例17)もあるが,出血や播種のリスクが考慮され,その施行には症例のさらなる検討が必要と思われる.

Table 1  Reports of leiomyosarcoma originating from the splenic vein
No. Author/Year Age Sex Symptom Collateraral Preoperative diagnosis Size Operation Adjuvant therapy Prognosis
1 Rödl9)/1988 67 M epigastric pain + not ditermined 15 cm distal pancreatectomy and splenectomy None 36 M alive
2 Gage8)/2012 & Niver10)/2011 58 F epigastric pain not ditermined 3.5 cm distal pancreatectomy and splenectomy None 15 M alive without recurrence
3 Aguilar2)/2013 66 F abdominal pain, progressive comstipation and weight loss pancreatic cancer 12 cm distal pancreatectomy and splenectomy doxorubicin and ifosfamide 12 M alive without recurrence
4 Patrono11)/2014 58 F epigastric and left hypocondrium pain not ditermined 1.5 cm partial resection of splenic vein None 12 M alive without recurrence
5 Wu12)/2017 52 M epigastric pain pancreatic cancer 4 cm splenic pedicle tumor resection+splenectomy+liver tumor resection unknown unknown
6 Our case 77 F heartburn + pancreatic cancer 2.2 cm pancreatoduodenectomy+partial resection of splenic vein and portal vein None 3 M alive without recurrence

平滑筋肉腫の治療法に関しては,外科的切除が唯一の根治的治療法である.下大静脈原発平滑筋肉腫では,外科的切除後の5年生存率は49.4%,再発率は52.4%と報告されている18).Hinesら19)は下大静脈原発の平滑筋肉腫の症例で切除断端が陽性であった場合は5年生存を認めなかったが,切除断端が陰性であった場合は5年生存率68%であったと報告している.また,下大静脈原発平滑筋肉腫の切除断端陰性を確保するため,腎摘や副腎摘出などの拡大切除や下大静脈グラフト置換が必要であったと述べている.本症例では結果的に膵臓への浸潤は認めず,膵切除を行わずとも切除断端陰性を確保できた可能性があるが,血管平滑筋肉腫が血管外発育の形態をとることが多いことや切除断端が陽性であった場合は予後が不良であることを念頭におき,その術式は慎重に検討する必要がある.血管平滑筋肉腫の切除不能例や再発例に対する治療法に関しては,化学療法や放射線療法などさまざまな報告があるが確立されたものはない20).再発形式としては局所再発が最も多く,次いで肝転移,播種,肺転移が多いとされている.再発例であっても積極的に切除を行うことにより生存期間の延長が得られるとされている.下大静脈原発平滑筋肉腫の再発に対して計10回の切除を行い,初回手術から7年11か月の生存を得た報告もある21).再発までの期間は中央値11か月22)と短く,術後は短期間でのフォローアップが望ましいと考えられる.平滑筋肉腫に対してはPET-CTが術後の局所再発,遠隔転移の検索に有用であると報告されている22)が,実臨床を考慮すると超音波検査や造影CTによるフォローアップが現実的と考えられる.脾静脈原発平滑筋肉腫においても密な画像評価による経過観察と積極的な切除が長期生存につながることが期待される.

利益相反:なし

文献
 

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