The Japanese Journal of Gastroenterological Surgery
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CLINICAL EXPERIENCE
Treatment of Seven Patients with Ulcerative Colitis Complicated by Non-Toxic Megacolon
Eiichi NakaoKazutaka KoganeiKenji TatsumiRyo FutatsukiHirosuke KurokiNao ObaraAkira Sugita
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2022 Volume 55 Issue 1 Pages 64-71

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Abstract

当科で手術を行った非中毒性巨大結腸症合併潰瘍性大腸炎7例の特徴や臨床経過を分析した.全例全大腸炎型で,巨大結腸症診断時中央値年齢は51歳であった.巨大結腸症診断前の治療は,6例が5-ASA製剤とステロイド大量静注療法であり,1例は未治療であった.診断後ステロイド継続が3例,インフリキシマブへの変更が3例,未治療の症例はステロイド大量静注療法が開始された.手術適応は穿孔2例,難治4例であった.術後病理組織学的所見で全例に筋層以深に至る潰瘍を認め,難治例の内1例は,術後に被覆穿孔を来していたことが判明した.術後合併症は腹腔内膿瘍3例,正中創SSI 1例,麻痺性イレウス1例,縫合不全1例,肺炎1例,心筋梗塞1例であった.巨大結腸症を合併する症例は症状を伴わない症例でも,その本態は筋層に及ぶ潰瘍が多発した病変であり,中毒性巨大結腸症と同様に穿孔の可能性があるため,手術適応と考えられる.

Translated Abstract

We analyzed the characteristics and clinical courses of 7 patients with ulcerative colitis complicated with non-toxic megacolon who underwent surgery in our department. All cases were total colitis, and the median age at the time of diagnosis of megacolon was 51 years. Treatment before diagnosis of megacolon was 5-ASA and an intensive intravenous regimen in 6 cases, while 1 case was untreated. After diagnosis, the intensive intravenous regimen was continued in 3 cases, infliximab was started in 3 cases, and an intensive intravenous regimen was started in the untreated case. The surgical indications were perforation in 2 cases and refractory in 4 cases. Postoperative histopathological findings revealed ulcers deeper than the muscular layer in all cases, and we found that one of the refractory cases had covered perforation after surgery. Postoperative complications were intraabdominal abscess in 3 cases, SSI in 1 case, ileus in 1 case, leakage in 1 case, pneumonia in 1 case, and myocardial infarction in 1 case. These findings show that even if a case with megacolon is asymptomatic, it is likely to be accompanied by ulcers deeper than the muscular layer. Therefore, there is a possibility of perforation such as toxic megacolon, and this is considered to be an indication for surgery.

はじめに

潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis;以下,UCと略記)に合併する巨大結腸症は,腸管の全層性炎症と筋層の破壊によって生じるとされ,多くは中毒症状を伴い,手術の絶対的適応とされている1).一方,巨大結腸症を合併するものの,発熱・頻脈・貧血・脱水などの中毒症状を伴わない非中毒性巨大結腸症の症例も存在し2),手術適応の判定に難渋することがある.

目的

UCで非中毒性巨大結腸症を合併した症例の特徴や臨床経過を分析し,手術適応を明らかにすることとした.

対象と方法

2000年1月から2020年8月までに当科で手術を施行した巨大結腸症合併UC 45例中,非中毒性の7例を対象とし,患者背景,術前治療,術前経過,手術適応,術式,術後合併症,術後病理組織学的所見,術後経過をretrospectiveに検討した.

Jalanら3)は,中毒性巨大結腸症の診断基準を①仰臥位腹部単純X線検査・CTで結腸の拡張幅が6 cm以上,に加えて,②38°C以上の発熱,脈拍120回/分以上,白血球増多(10,500/ml以上),貧血のうちの3項目を満たし,さらに③脱水,意識障害,電解質異常,血圧低下のうち1項目を満たすこととしている.

本検討では,非中毒性巨大結腸症の定義を,①は満たすものの,②,③の基準を満たさなかった症例とした.貧血に関しては,Jalanら3)の報告では具体的な値が明記されていなかったため,潰瘍性大腸炎外科治療指針1)における重症診断基準の一つであるHb 10 g/dl以下とした.

結果

1. 患者背景

Table 1にまとめた.男性が6例と多く,UC発症時の年齢は中央値で44歳(36~70歳),巨大結腸症診断時の年齢は中央値で51歳(37~75歳)であった.病型は再燃寛解型3例,慢性持続型1例で,残りの3例は初回発作であった.全例,臨床的重症度は中等症かつ全大腸炎型で,全身状態が比較的安定していた.巨大結腸症の診断から手術までの日数は中央値で21日(2~43日)であった.

Table 1  Clinical characteristics
All patients (n=7)
Sex Male/Female 6/1
Median age at onset of UC, years (range) 44 (36–70)
Median age at onset of mega colon, years (range) 51 (37–75)
Disease severity
mild 0
moderate 7
severe 0
Type
relapse-remitting type 3
chronic continuous type 1
others 3
Median duration from diagnosis of mega colon to operation, days (range) 21 (2–43)

2. 術前治療

Table 2にまとめた.巨大結腸症診断前の治療は,6例で5-ASA製剤とステロイド大量静注療法が施行されていた.症例⑦は近医での緊急入院時に初めてUC,巨大結腸症合併と診断され,未治療であった.巨大結腸症診断前から治療が行われていた6例中,診断後はステロイドの継続が3例,インフリキシマブへの変更が3例に行われた.症例⑦は診断後,ステロイド大量静注療法が開始された.

Table 2  Profile of treatment
Case Treatment before diagnosis of mega colon Treatment after diagnosis of mega colon Total amount of prednisolone (mg) Surgical indication Surgical form
1 5-ASA, IIR 5-ASA, IIR 8,000 refractory total colectomy+ileal J-pouch anal canal anastomosis
2 5-ASA, IIR, Leukocyte apheresis 5-ASA, IIR, Leukocyte apheresis 800 perforation subtotal colectomy with ileostomy and suprapubic mucous fistula
3 5-ASA, IIR, Leukocyte apheresis Infliximab 3,000 refractory total colectomy+ileal J-pouch anal canal anastomosis
4 5-ASA, IIR, Leukocyte apheresis Infliximab 1,500 perforation subtotal colectomy with ileostomy and suprapubic mucous fistula
5 5-ASA, IIR, Leukocyte apheresis 5-ASA, IIR, Leukocyte apheresis 1,220 refractory total colectomy+ileal J-pouch anal canal anastomosis
6 5-ASA, IIR, Leukocyte apheresis Infliximab 845 refractory subtotal colectomy with ileostomy and suprapubic mucous fistula
7 none IIR 400 subtotal colectomy with ileostomy and suprapubic mucous fistula

5-ASA=5-aminosalicylic acid, IIR=intensive intravenous regimen

3. 術前経過

巨大結腸症診断時と術直前のバイタルサイン,血液検査,臨床重症度,画像所見の結果をTable 34にまとめた.内科治療継続中もバイタルサイン,血液検査,排便回数や腹痛などの腹部所見については,穿孔を来した症例②と④を除いて安定していた.症例②と④に関しても,穿孔を来す前日までは全身状態は安定していた.一方で,結腸の拡張幅に関しては,穿孔を来した2症例では増悪,そのほかの症例では拡張幅の縮小は見られたものの,巨大結腸症の基準の境界となる6 cm未満になった症例はなかった.

Table 3  Findings at the time of diagnosis of megacolon
Case Maximum distension of transverse colon (cm) Body temperature (°C) Pulse rate (/min) Blood pressure WBC (/μl) Hb (g/dl) Dehydration Mental changes Electrolyte disturbance Disease severity
1 10.5 37.3 88 95/69 7,430 11.9 no no no moderate
2 7.5 37.9 79 116/80 16,100 9.6 no no yes moderate
3 8 37.3 80 101/65 10,300 9.9 no no yes moderate
4 6.5 38.1 96 120/72 12,640 13.5 no no yes moderate
5 8 37.3 89 93/60 7,300 8.7 yes no yes moderate
6 7 36.1 89 126/72 9,400 11.4 no no yes moderate
7 7 37.1 85 140/88 8,600 10.8 no no no moderate
Table 4  Findings before surgery
Case Maximum distension of transverse colon (cm) Body temperature (°C) Pulse rate (/min) Blood pressure WBC (/μl) Hb (g/dl) Dehydration Mental changes Electrolyte disturbance Disease severity
1 8 37.3 88 95/69 7,430 11.9 no no no moderate
2 9 37.9 79 116/80 16,100 9.6 no no yes moderate
3 6 37.3 80 101/65 10,300 9.9 no no yes moderate
4 8 38.1 96 120/72 12,640 13.5 no no yes moderate
5 7 37.3 89 93/60 7,300 8.7 yes no yes moderate
6 6.5 36.1 89 126/72 9,400 11.4 no no yes moderate
7 7 37.1 85 140/88 8,600 10.8 no no no moderate

4. 手術適応,術式

手術適応は内科治療継続中の大腸穿孔が2例,ステロイド大量静注療法もしくはインフリキシマブによる内科加療で症状が改善したものの寛解導入できず,難治例であったものが4例,心疾患や脳疾患の既往があり,全身状態は安定していたものの,穿孔のリスクを考慮し適応としたものが1例であった(Table 2).

施行した術式は,7例中,全身状態が比較的安定し,肛門管に深い潰瘍がなかった3例に一期的大腸全摘・回腸囊肛門管吻合を施行した.他の4例では,心疾患の既往,高齢者(70歳代)などの全身状態と穿孔の合併から,結腸亜全摘・回腸人工肛門造設・S状結腸粘液瘻造設術を選択した(Table 2).

5. 術後病理組織学的所見

Table 5にまとめた.切除した大腸の肉眼的所見では,全例で横行結腸の拡張と壁の菲薄化を認めた.穿孔があった3例中,症例②,④は,術中に穿孔部位が同定でき,それぞれ,横行結腸と盲腸であった.また,症例⑥は術前に穿孔は不明であったが,術中にS状結腸腸間膜側と小腸が強固に癒着して同部に膿瘍を形成しており,術後病理組織学的所見でS状結腸の漿膜側に慢性炎症を伴う膿瘍形成と,内部には異物が散見されていることから(Fig. 1, 2),被覆穿孔と診断した.病理組織学的所見では全例でUl-III,Ul-IVの筋層以深に達した潰瘍を伴っており,症例④,⑥は潰瘍近傍で穿孔していた.症例②は,盲腸の穿孔部近傍には筋層以深に達する潰瘍はなかったものの,壁の菲薄化を認め,組織学的には全層性の炎症を認めた.

Table 5  Postoperative histopathological findings
Case Classification based on the depth of gastric ulcer
1 Ul-III
2 perforation (Transverse colon)
3 Ul-III
4 perforation (Cecum)
5 Ul-IV
6 covered perforation (Sigmoid colon)
7 Ul-III
Fig. 1 

In the ulcer, inflammatory cells infiltrated the muscularis propria and formed an abscess near the serosal layer (arrow).

Fig. 2 

Foreign matter that seemed to be food residue was found in the abscess, and multinucleated giant cells were found around it.

6. 術後経過

術後合併症は7例中5例(71%)に認め,のべ症例数で腹腔内膿瘍3例,正中創SSI 1例,麻痺性イレウス1例,縫合不全1例,肺炎1例,心筋梗塞1例であった(Table 6).症例②は術後にClavien-Dindo分類でGrade IIIaの心筋梗塞,Grade IIIbの肺炎を合併し,集中治療室での管理を要した.縫合不全を認めた症例は,再手術を行わず,保存的加療で改善し,全例で自然肛門温存が可能であった.その他の合併症に関しては全てGrade II以下であった.

Table 6  Postoperative complications
Complication Number of patients (n=7)
Intra abdominal abscess 3
Ileus 1
Surgical site infection 1
Leakage 1
Pulmonary pneumonia 1
Myocardial infarction 1

症例④は初回手術から約9か月後に,症例⑥では約3か月後に残存直腸切除,回腸囊肛門管吻合術を施行し,その後の経過は良好であった.症例⑦は,残存直腸切除,回腸囊肛門管吻合術を予定している.症例②は,長期間に集中治療管理を要し,最終的に転院先で肺炎により死亡した.

考察

UCに合併する中毒性巨大結腸症は1950年代に初めて提唱され4),その頻度は1~6%とされている5)6).本邦の診断基準・治療指針では,「重篤な症状を伴って,結腸,特に横行結腸の著明な拡張を起こした状態」と定義され1),絶対的手術適応とされている.一方で,巨大結腸症を合併しているものの,中毒症状の診断基準を満たさない病態(非中毒性巨大結腸症)も存在する2)

巨大結腸症を起こす機序は十分に解明されていないものの,UCでは通常,炎症の主座は粘膜および粘膜下層であるが,巨大結腸症では炎症が強く,筋層まで及び,平滑筋を傷害することが拡張の原因と考えられている7).また,平滑筋障害に関し,筋緊張の抑制物質である一酸化窒素が腸管収縮不全をじゃっ起するとの報告もある8)9).自験例は全例で結腸拡張部の全層性炎症と筋層破壊を認め,神経叢は保たれていたことから,前者と同様の機序で巨大結腸が生じたと考えられた.

中毒症状を来さない病態として,深田ら2)は,早期の強力な治療が腸管の粘膜防御能を助け,腸管内からの細菌性毒素などの影響が全身に及ぶのを抑える可能性があると述べている.しかし,自験症例⑦のように未治療であったにもかかわらず,中毒症状を欠く症例もあり,正確な病態は不明である.

非中毒性巨大結腸症に対し,内科的治療が奏効し,手術を回避した症例も存在する.岡野ら10),カルシニューリン阻害薬やインフリキシマブなどの治療歴のない症例では内科的治療の効果も期待でき,シクロスポリン持続静注療法は治療の選択肢と述べている.一方で,自験例②,④,⑥のように内科治療中に穿孔を来す症例も存在する.自験例全例の術後病理組織学的所見で筋層に及ぶ深い潰瘍を認めており,巨大結腸症合併例では穿孔の可能性があることを考慮すべきである.また,重症例に対してはステロイドを投与している症例が多く,症例⑥のように腹痛などの症状が隠され,穿孔が診断されにくい症例の存在に留意する必要がある.

UCの緊急手術症例の死亡率は,海外の報告で5~8%11),本邦の報告では以前より減少しているものの,3.3%とされ12),合併症発生率も21~51%と高い11).特に,穿孔合併例は,Heppellら13)が1986年に報告した死亡率27%と比較して改善されてはいるものの,最近でも巨大結腸症合併の非穿孔症例と比較して死亡率が3~5倍増悪すると報告されている14)ように,予後が不良と考えられている.被覆穿孔を含めた自験穿孔例3例全てにおいて,合併症が発生していた.特に,術後DIC,肺炎を合併し,転院先で死亡した症例②は,心疾患の既往と70歳と高齢かつ心疾患の既往歴があった.以上から,穿孔例は合併症発生率が高く,特に心肺疾患などの既往歴,高齢の症例では致死的になる可能性があることを念頭に置きながら,中毒性巨大結腸症と同様に手術を前提として加療を行い,穿孔を来す前に手術を施行することが必要である.

非中毒性巨大結腸症合併症例に対する適切な手術施行時期について明確な基準はない.自験例では術前に内科治療が施行された6例は,治療開始後,排便回数や出血は減少し,血液検査所見上の炎症反応は改善したものの,巨大結腸症の定義である6 cm以下に拡張幅が改善した症例はなく,被覆穿孔を含め3例が穿孔していた.医学中央雑誌(1964年~2020年)およびPubMed(1950年~2020年)で「潰瘍性大腸炎」,「巨大結腸症」,「ulcerative colitis」,「toxic megacolon」をキーワードとして検索したところ(会議録除く),過去の報告で,内科治療で改善して手術を回避した症例10)15)~22)のうち,詳細な記載があった7例全例で排便回数や下血の症状とともに,画像検査所見で拡張した結腸が縮小していた.これらの点から症状,検査所見が改善しても,結腸拡張が持続している症例は早期手術介入が必要と考えられる.手術適応を決定する具体的な日数の目安に関しては,症例④のように巨大結腸症診断後2週間以上経過してから穿孔を来す症例がある一方で,症例⑥のように,巨大結腸症診断後3日目で手術を施行したが,すでに被覆穿孔を来していた症例も存在しており,今後さらなる症例数の集積が必要と思われる.画像所見上,穿孔を来した2症例では,拡張幅の増悪を認めており,手術介入の決定因子の一つになる可能性があると思われる.

中毒性巨大結腸症合併UCに対する術式は,全身状態を考慮し,手術時間が短く,腸管吻合がない大腸亜全摘・回腸人工肛門造設・S状結腸粘液瘻造設術,あるいはHartmann手術が標準術式と考えられる.一方,非中毒性巨大結腸症では全身状態が比較的良好な症例も存在することから,当科では吻合部となる肛門管に深い潰瘍がない症例に対しては,一期的大腸全摘・回腸囊肛門管吻合を選択肢の一つとしている.非中毒性巨大結腸症に対する手術術式については,大腸全摘・回腸囊肛門(管)吻合術の適応症例について,一期または分割手術で行う選択肢があり,症例の全身状態,吻合部の局所所見,施設の方針によって術式を決定することが重要である.

近年,UCに対する薬物治療の進歩に伴い,内科治療が奏効して手術が回避可能な症例も増加しているものの,巨大結腸症を合併する症例は症状を伴わない症例でも,その本態は筋層に及ぶ深い潰瘍が多発した大腸病変であり,中毒症状を伴う巨大結腸症と同様に穿孔の可能性があることから,原則的に手術適応と考えられる.

利益相反:なし

文献
 

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