The Japanese Journal of Gastroenterological Surgery
Online ISSN : 1348-9372
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EDITOR'S NOTE
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Hirotoshi Kobayashi
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2023 Volume 56 Issue 1 Pages en1-

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新年明けましておめでとうございます.お正月気分も抜けてきた今日この頃ですが,寒い日が続くとともに,COVID-19第8波による感染者増加と医療逼迫が報道されている中で,本稿を書かせていただいています.前回は東京オリンピックが延期されたおよそ2年半前に,一日も早いCOVID-19の収束を祈りつつ編集後記を書かせていただきましたが,現在でも収束していないのは残念です.読者の先生方も日常診療に影響を受けていらっしゃるのではないでしょうか.100年前のスペイン風邪は3年程度で収束しているようですが,この100年での文明の進歩とそれに伴う生活様式の変貌によって,今回のCOVID-19収束にはもう少し時間がかかるのかもしれません.

さて,第56巻第1号の掲載論文は,症例報告6編です.いずれも興味深い内容のものばかりですが,今月の一押し論文には,竹元小乃美先生の「人工甘味料の多量摂取が原因と考えられた直腸癌術後回腸ストマからのhigh output症候群の1例」を選ばせていただきました.日常診療にて回腸ストマを造設することはよくあると思いますが,時にhigh output症候群を呈する症例の管理に難渋することがあります.通常は止痢薬にてコントロール可能なことが多いわけですが,本症例では止痢薬が奏効していません.患者が術後からキシリトール含有の飴を多量に摂取していることがわかり,摂取中止ともにhigh output症候群も改善しています.キシリトールの作用と同時に問診など患者に向き合うことの重要性を改めて実感する,非常に示唆に富む内容となっています.ぜひご一読ください.

「査読への想い:如何に教育的な査読によりいい論文を作り出すか?」

昔と異なり,和文誌以外に英文誌に投稿する機会も多くなる中,本誌を含めた和文誌の役割は何なのかと考えることがあります.英語を母国語としない私たちにとっては日常診療における細かなニュアンスを英語論文から読み取るのは難しいと思います.また,私のような日本で生まれ育った場合は英語論文を読もうとすると一仕事となってしまいますが,和文であれば気楽に読めるメリットもあります.今の時代にあっても,論文をいきなり英文誌に投稿することはまだまれであり,多くの先生方にとって最初の論文投稿は和文誌となることも多いのではないでしょうか.そのような場合には,論文作成について学んでいただく場として,本誌をぜひご活用いただければと思います.本誌では各領域エキスパート2名の先生が査読者として,先生方の論文作成をサポートします.私は,論文作成はチームプレイだと考えています.先日まで日本を沸かせたサッカーに例えますと,筆頭著者の先生はフォワード,共著の先生方はミッドフィルダー,査読者となった編集委員はディフェンダー,編集委員長は差し詰め最後の砦キーパーといったところでしょうか.論文掲載に向けて協力する仲間です.毎月の編集委員会では,投稿された論文がどのようにすれば読者にとって有益で掲載に相応しいものになるか熱い論議が交わされています.先程,査読者をディフェンダーに例えましたが,論文掲載にあたって問題となる点を指摘することが守備としますと,その論文がより良くなるために新たな視点でのsuggestionをさせていただくことはディフェンダーが時折みせる攻撃参加にあたるでしょうか.編集委員長は先生方の論文が掲載されるように,キーパー宛らに常に我々を鼓舞するととも先生方の論文を死守しようとされています.

さあ,こちらの体制は万全です.あとは論文を作成して本誌にシュートを決めるだけです.今年も皆様からの投稿をお待ちしています.

 

(小林 宏寿)

2023年1月7日

 

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