2025 Volume 58 Issue 1 Pages nm1-nm4
新年あけましておめでとうございます.昨年は1月1日の能登半島地震や,1月2日の羽田空港での日本航空旅客機と海上保安庁航空機の衝突事故など,新年早々多くの出来事があり,落ち着かない日々が続きましたが,今年は9連休となる先生方も多くゆっくりと新年を迎えることができたのではないかと思います.
昨年9月に比企前編集委員長から引き継ぎ,第9代編集委員長を拝命しました.私は2018年に編集委員として本誌の編集に携わらせていただくこととなり,昨年で6年間の任期を終える予定でしたが,もうしばらく本誌に関わることができ大変うれしく思っています.一方,消化器外科領域における邦文誌の最高峰の編集委員長ということで,光栄に感じるとともに責任の重さを実感しています.各領域の第一人者である編集委員の先生方の力をお借りして,本誌の価値をさらに高めていきたいと思っています.
会誌編集委員会を代表して,以下に本誌の現状報告と今年の抱負を記させていただきます.
編集委員の交代は,私の編集委員任期終了に伴い,後任として松橋延壽先生(下部消化管)がご就任されました.また,2024年12月に退任された髙見裕子先生(肝胆膵脾)の後任として2025年1月から北見智恵先生にご就任いただくことになりました.
編集委員長の交代に伴い,会誌編集委員会の体制も刷新されます.比企前編集委員長にはアドバイザーとして引き続き編集委員会のサポートをいただけることになりました.これまでは編集委員長が一人で編集委員会をまとめていましたが,それぞれの専門領域のまとめ役がいた方が良いということで副編集委員長を板野 理先生(肝胆膵脾),稲木紀幸先生(上部消化管/消化器・一般)にお願いすることになりました.また,編集幹事を務めて下さった新原正大先生(国際医療福祉大学 三田病院 外科・消化器センター),樋口 格先生(北里大学 医学部 上部消化管外科学)が退任され,後任として松本尊嗣先生(獨協医科大学 肝・胆・膵外科),井原啓佑先生(獨協医科大学 下部消化管外科)が選任されました(表1).2025年はこのメンバーで頑張っていきたいと思っています.
| 委員長 | 水島 恒和 | |||
| 副委員長 | 板野 理 | 稲木 紀幸 | ||
| 委員 | 秋吉 高志 | 石沢 武彰 | 石原聡一郎 | 板野 理 |
| 稲木 紀幸 | 上野 秀樹 | 上原 圭 | 江口 晋 | |
| 岡野 圭一 | 沖 英次 | 押切 太郎 | 北見 智恵 | |
| 窪田 健 | 黒川 幸典 | 小林 宏寿 | 齋浦 明夫 | |
| 佐伯 浩司 | 里井 壯平 | 塩崎 敦 | 須田 康一 | |
| 徳永 正則 | 日髙 匡章 | 松橋 延壽 | 山下 継史 | |
| 吉川 幸造 | 渡邉 純 | |||
| 大庭 幸治(統計学) | 牛久 哲男(病理学(上部)) | |||
| 下田 将之(病理学(下部)) | 石田 和之(病理学(実質)) | |||
| アドバイザー | 比企 直樹 | |||
| 編集幹事 | 井原 啓佑 | 松本 尊嗣 | ||
2023年度(2023年5月1日から2024年4月30日)の投稿論文数は103編で,2020年度の199編からの減少傾向が続いています(表2).「教育的な査読によりいい論文を作り出す」という比企前編集委員長の方針の元,2023年度の採用率は56.3%となっています.より多くの会員の先生方に編集委員会の方針をお伝えし,投稿を促すためJ-STAGEに採択率を掲載するとともに,各編集委員の先生方の「査読への想い」を記事として編集後記に公開しました.第57巻(2024年)には73編(12号予定分含む)が掲載されています(表3).
| 年度(5月から翌年4月まで) | 論文投稿数 | 採用率 | 不採用率 |
|---|---|---|---|
| 2014年度 | 240 | 18.3% | 24.6% |
| 2015年度 | 223 | 27.8% | 32.3% |
| 2016年度 | 251 | 20.3% | 27.9% |
| 2017年度 | 183 | 36.6% | 49.2% |
| 2018年度 | 176 | 39.2% | 44.3% |
| 2019年度 | 167 | 57.5% | 30.5% |
| 2020年度 | 199 | 43.2% | 40.2% |
| 2021年度 | 144 | 47.2% | 41.7% |
| 2022年度 | 137 | 50.4% | 31.4% |
| 2023年度 | 103 | 56.3% | 16.5% |
※採用,不採用以外は,査読中となっているものです.
| 年 | 原著 | 総説 | 症例報告 | 臨床経験 | 研究速報 | 合計 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2015年(48巻) | 10 | 0 | 120 | 4 | 0 | 134 |
| 2016年(49巻) | 18 | 0 | 138 | 3 | 0 | 159 |
| 2017年(50巻) | 10 | 1 | 112 | 1 | 0 | 124 |
| 2018年(51巻) | 5 | 0 | 92 | 3 | 0 | 100 |
| 2019年(52巻) | 9 | 0 | 76 | 3 | 0 | 88 |
| 2020年(53巻) | 6 | 1 | 86 | 2 | 0 | 95 |
| 2021年(54巻) | 11 | 0 | 95 | 3 | 0 | 109 |
| 2022年(55巻) | 9 | 0 | 83 | 1 | 1 | 94 |
| 2023年(56巻) | 5 | 0 | 68 | 3 | 0 | 76 |
| 2024年(57巻) | 6 | 0 | 67 | 0 | 0 | 73 |
※一般投稿論文の掲載数.Editorial,Letter to the editor,特別寄稿,特別報告などは除く.
J-STAGE上の論文全文へのアクセス数は,2023年度695,176件(2022年度670,227件,2021年度618,463件,2020年度631,017件)と増加傾向であり,4年度連続60万アクセスを達成しました.本誌の論文が臨床の現場で多くの先生方のお役に立っていることが伺われ,喜ばしく思います.
消化器外科医として自らを高めていくためには,手術手技を磨くのはもちろんのこと,科学的なエビデンスに基づく治療を身に着け実践していくことが不可欠です.さらに,新しいエビデンスを創造していくためには,治療成績をまとめて評価しながらより良い治療について考えていく必要があります.その第一歩になるのが症例報告であり,会員の先生方の工夫がうまくいった症例,うまくいかず反省点が明らかになった症例,過去の症例報告と合わせて検討した結果,見えてきた特徴などを論文として残していけるように編集委員会としてサポートしていければと思っています.
2024年4月から医師の働き方改革の新制度が施行されました.消化器外科医が減少する中,診療に関しては時間外勤務を減らすためタスクシフトなどの取り組みが進みました.しかし,論文の執筆など研究に割く時間が勤務に当たるのか自己研鑽なのかを明確に区別できるところまでは至っていないように思います.AI(Artificial Intelligence)/LLM(Large language Models)技術などの進歩により,今後の研究や論文執筆を取り巻く環境は大きく変わることが予想されます.その中で本誌の「消化器外科領域における邦文誌の最高峰」,「若手消化器外科医の登竜門」という基本的なスタンスを保ちながら,より社会に貢献できるような雑誌とすることを目指していきたいと思います.最後に会誌編集委員会の沿革をお示しします(表4).会員の先生方におかれましてはご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます.
| 1968年 | 日本消化器外科学会発足. |
| 1969年 | 初代委員長 村上 忠重,日本消化器外科学会雑誌第1巻第1号発行. |
| 1970年 | 事務所移転(横浜市立大学第二外科→東京女子医科大学消化器病センター) |
| 1976年 | 日本医学会加盟. |
| 1979年 | 担当理事 長尾 房大,第二代委員長 鍋谷 欣市 |
| 1982年 | 事務所移転(九段南) |
| 1987年 | 担当理事 杉浦 光雄 |
| 1988年 | 担当理事 岩崎 洋治 |
| 1989年 | 英文要旨を追加. |
| 1991年 | 担当理事 大原 毅 |
| 1993年 | 担当理事 鈴木 博孝,第三代委員長 大原 毅,誓約書を追加. |
| 1995年 | 論文種目「臨床経験」を追加. |
| 1997年 | 表紙をデザイン化,編集後記の掲載を開始. |
| 1998年 | 担当理事 嶋田 紘,第四代委員長 佐治 重豊,著者名を10名以内に限定,入会免除依頼の受け付けを開始(病理医などの他科を想定). |
| 2000年 | 論文種目「総説」を追加,査読希望領域欄を追加,学会公式サイトを公開. |
| 2001年 | 第五代委員長 上西 紀夫,査読体制変更(臓器別),Digestive Surgeryを公式英文誌化. |
| 2002年 | データ添付投稿の受け付けを開始(FD,MO,CD). |
| 2004年 | 学会独自のオンライン・ジャーナルサイトを公開. |
| 2006年 | 事務所移転(茅場町),理事長制導入. |
| 2007年 | 担当理事 安藤 暢敏,第六代委員長 桑野 博行,文献検索期間の明示を義務化,平成19年度電子アーカイブ対象誌に選定(Journal@rchive),会誌編集委員会からの公示を掲載開始. |
| 2010年 | 事務所移転(新富),オンライン投稿・査読システムを導入,予稿集を電子化. |
| 2011年 | J-STAGEへ移行,会誌完全電子化,メールマガジン配信開始,CrossRef利用開始(DOI付加),委員会の体制を強化(統計学の委員,English language editor). |
| 2012年 | 担当理事 渡邊 昌彦,Top publications in Japanese和文ジャーナル上位100誌にて8位(Google Scholar Metricsより),J-STAGE 3公開,全文HTML公開,論文種目「特別報告」を追加,「日本消化器外科学会雑誌 英文作成上の注意(監修:東京医科大学国際医学情報学講座)」「日本消化器外科学会雑誌 用字用語について(公用文作成の要領などを基に作成)」を公開,投稿時の動画資料への対応を開始. |
| 2013年 | 第七代委員長 遠藤 格,委員を増員,学術情報XML推進協議会に加盟,DOIの付番ルール変更(早期公開機能への対応),和文の索引用語を追加,動画資料を含む記事を掲載,特別報告(NCD Annual report)・特別寄稿(英語による教育コンテンツ)を掲載,抄録・引用文献データベース「Scopus」の収載状態を整理. |
| 2014年 | NLMのElectronic linkを修正,Web会議システムを導入,J-STAGEの改善によりGoogle Scholarとの連携を強化. |
| 2015年 | 特別報告(医療安全委員会)を掲載,J-STAGE利用者アンケートに協力,投稿規程を改正(著者数制限の変更,貢献度の申告,連絡責任者及び保証者の明示,用字用語についての変更(日本医学会医学用語辞典に準拠),図表枚数制限の緩和,クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CC BY-NC-ND(表示-非営利-改変禁止))の導入. |
| 2016年 | 投稿規程を改正(ギフトオーサーの追加の抑止,倫理審査番号の原則明示,英文要旨と英文の索引用語情報は採用後の提示に,チェックリスト・原稿テンプレートを開示),メールマガジンへの会告・広告掲載開始,メールマガジンのデザインを更改(モバイルファースト) |
| 2017年 | 事務所移転(三田),J-STAGEにてGraphical Abstractを表示開始,クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CC BY-NC(表示-非営利))へ変更,J-STAGE刷新. |
| 2018年 | 学会創立50周年,J-STAGE利用者アンケートに協力,J-STAGEの論文閲覧性向上によるアクセス数の大幅増加を記録. |
| 2019年 | 担当理事 遠藤 格,第八代委員長 比企 直樹,優秀論文賞の新設,Similarity Checkを導入,Web会議システムを刷新,J-STAGE編集委員会名簿を公開. |
| 2020年 | 特別報告「オペレコを極める」通年掲載 |
| 2021年 | 特別報告「私の工夫」「ビデオ報告」の企画・検討,執筆依頼開始 |
| 2022年 | 特別報告「私の工夫」掲載 |
| 2023年 | 編集後記内「査読への想い:如何に教育的な査読によりいい論文を作り出すか?」掲載開始 |
| 2024年 | 「査読への想い:如何に教育的な査読によりいい論文を作り出すか?」を集約し,57巻6号に掲載,J-STAGEに採択率の掲載開始.第九代委員長 水島 恒和 |
(文責:日本消化器外科学会会誌編集委員会委員長 水島恒和)
(2025年1月)