2025 Volume 58 Issue 4 Pages en4-
この度,歴史ある日本消化器外科学会雑誌の編集委員長であられる水島恒和先生よりご推挙いただき,2024年9月より編集委員を拝命いたしました岐阜大学消化器外科・小児外科 松橋延壽です.はじめての編集後記の執筆依頼をいただきました.トランプ政権は2期目となり,世界経済の先行きが不透明である中,相互関税発令などで日本経済もどうなっていくのか不安が募る毎日です.また,働き方改革が始まりましたが,人件費高騰,物価上昇などもあり,全国国立大学附属病院含めて2024年の経営状態の悪化は浮き彫りとなり,この苦境の時代をどう乗り切っていくのかが大きな課題となっています.また,消化器外科医が大きく減少している中で地方の外科医不足をどう解消していくのか,全国の診療科科長をされている多くの先生方と情報共有しながら教室運営をすることは大変重要なことであると日々痛感しています.
さて第58巻4号掲載論文は症例報告8編が報告されていますが,どれも大変興味深い症例報告です.私の一押し論文は【抗リン脂質抗体陽性の潰瘍性大腸炎患者に発症した急性腸間膜静脈血栓症に対して二期分割大腸全摘術を併用し救命した1例】です.救命を優先しながら適切な手術術式選択(大腸亜全摘)を行い,術後DIC併発に対し集中治療管理も適切に行ったうえで,残存直腸においては2期的に低侵襲であるTaTMEを行い,血栓病変の再燃もなく治療フォローされているというまさに外科医の醍醐味を味わうような症例です.若い外科医にぜひ本症例のような患者さんを多く経験し,外科医だからこそ救命できるやりがいのある仕事であることを感じてほしいと思う論文です.
「査読への想い:如何に教育的な査読によりいい論文を作り出すか?」
近年原著論文,英文論文の重要性がいわれる中,邦文誌の役割は疑問視されることもあります.しかし,本誌の編集委員会に毎回出席させていただくと,各編集委員の先生方は担当論文において投稿者に寄り添い,いかにより良い論文に育てていくか時間をかけて議論されています.ぜひ若い先生方は自分自身が経験した貴重な症例を,経験させてもらった患者さんに感謝の気持ちを込めて論文として残してください.そして論文を書く楽しさ・重要性を同世代の若い先生方と共有しながら素晴らしい外科医に育ってください.本誌の編集委員の先生は労を惜しまない先生ばかりです.そんな一員に加えていただいたことに感謝し,私自身お役に立てるように貢献していきたいと思っています.
(松橋 延壽)
2025年4月15日