The Japanese Journal of Gastroenterological Surgery
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Akio Saiura
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2025 Volume 58 Issue 7 Pages en7-

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このたび,日本消化器外科学会雑誌編集委員としての任期を終えるにあたり,最後の編集後記を執筆する機会をいただきました.この間,多くの貴重な症例報告や研究成果に触れることができ,大変勉強になりました.消化器外科は常に臨床の最前線にあり,日々の診療の積み重ねが学問の発展を支えています.投稿いただいた先生方が真摯に患者さんと向き合い,その現場の息遣いが伝わる症例の数々は,外科医としての情熱と責任の重さを改めて実感させるものでした.

さて,第58巻7号には症例報告6編が掲載されており,いずれも臨床現場の難題に対峙しつつ新たな知見を示した大変興味深い内容です.なかでも私の一押しは「直腸癌の左総腸骨リンパ節転移再発と思われた結節性筋膜炎類似病変の1例」です.本症例は,直腸癌術後に左総腸骨リンパ節転移を疑わせる結節が,実際には結節性筋膜炎類似の良性病変であったという極めて興味深いものでした.画像所見(FDG-PET/CTでの集積)から悪性腫瘍が強く疑われる中で外科的切除が決断され,最終的に良性病変と診断されています.さらに,左下腹神経合併切除を余儀なくされつつも術後2年6か月の無再発経過を得た点は,術後異常陰影に対する慎重な対応の重要性を示す貴重な経験です.若手外科医には,このような症例を通じて外科医ならではの決断力と技術を身につけていただきたいと願います.

近年,和文雑誌は減少の一途をたどっていますが,母国語で臨床の詳細を表現できる本誌は,日本の外科医の経験と知見を次世代に伝える貴重な場です.真剣な臨床実践に裏打ちされた症例報告は,若い医師にとってかけがえのない学びの場となることでしょう.

最後になりますが,日本の消化器外科のさらなる発展と,若手外科医の皆さんが高い志を持って活躍されることを心より祈念しております.

 

(齋浦 明夫)

2025年7月1日

 

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