Article ID: 96.23035
While the link between autism and gender dysphoria (GD) has received increasing attention, the phenomenon of GD co-occurring with autism remains unclear owing to the lack of autistic transgender perspectives. A recent qualitative analysis found that their GD (i.e., dysphoria related to gender norms) may be a subset of pervasive social dysphoria (PSD: dysphoria related to pervasive social norms), suggesting a link between autism and PSD. To further investigate this hypothesis, we described all their dysphoria about social norms, including GD, at each developmental stage, by examining the life stories of 14 autistic participants who experienced GD as a subset of PSD. We also found that GD may become more prominent than dysphoria over other social norms because of the strong influence of gender norms, which have two characteristics: (a) gender norms are more recognizable from early childhood, and (b) after puberty, gender norms increase their influence on and merge with other norms. Thus, future studies should investigate whether there is a link between autism and GD, or instead, PSD.
近年,自閉スペクトラム(Autism Spectrum: 以下,ASとする)と性別違和(Gender Dysphoria: 以下,GDとする)の共起に対する関心が高まっている。1990年代に,AS者のGDに関する事例報告が国際的に提出され,ASとGDの発達機序上の関連性が問われるようになった(例えば,Williams et al., 1996)。そして,2010年に初の体系的調査で高い共起率が報告されて以降(de Vries et al., 2010),GDを示す群のASを調査する研究と,AS群のGDを調査する研究が増加し,ASとGDの関連性を肯定する結果が相次いで報告された。GDを示す群のASを調査する研究を対象とした最新のメタ分析では,「ASとGDに関連性がない可能性は棄却できる」という見解が出されている(Kallitsounaki & Williams, 2023)。一方で,複数の研究者が共起率調査の手法上の課題を指摘し,「ASとGDに関連性があるとは言い切れない」と疑義を呈してきた(例えば,Turban & van Schalkwyk, 2018)。2010年代に指摘された共起率調査の手法上の課題は3つある。(a)対照群を欠く研究が多いこと,(b)AS査定方法が不十分で,GDとASに類似した現象に関連性がある可能性を否定できないこと,(c)GDの査定方法が不十分で,ASと共起するGD現象の「中身」が不明確であることの3点である。近年では,(a)と(b)を改善した共起率調査も実施されている(例えば,Warrier et al., 2020)。しかし,当事者視点の不足により,(c)は未だに課題となっている。以下,本研究のAS,GD定義を示した上で,課題(c)について論じる。なお,本研究で使用する略語一覧はJ-STAGEの電子付録S1を参照されたい。
用語の定義自閉スペクトラム 1940年代に「自閉症」が医学者に見出されて以降,ASは障害の個人モデルに基づき概念化されてきた(Kanner, 1943)。障害の個人モデルとは,個人内の心身機能不全によって規範的な振る舞いができないことを障害とする考え方である(World Health Organization, 1980)。一般的なAS理解は個人モデルに基づくものであり,国際的診断基準では,社会的コミュニケーション・相互作用における持続的な欠陥と,行動,興味,活動の限局的・反復的なパターンを示す,発達早期から顕在化する障害と定義される(Autism Spectrum Disorder: ASD; American Psychiatric Association: APA, 2013)。しかし近年のAS領域では,当事者主導で,AS特性はニューロダイバーシティの表現型の一つであり,いかなる心身特性も受容される必要があるという理解が広まりつつある(例えば,Walker & Raymaker, 2021)。そして,AS者の社会的困難さとは,個人的要因(AS者の心身特性)とAS特性を持たない多数派に合わせた社会構造といった社会的要因の「間」に生じるという社会モデル的視点が強調されつつある(レビューはPellicano & den Houting, 2022)。従って本研究でも,ニューロダイバーシティ・社会モデル的視点を採用する。
性別違和 人のジェンダーアイデンティティは多様であり,出生時に性器の形状に基づき指定された性(以下,出生割当性とする)と同一とは限らず,二元的性(男性・女性)であるとも限らない。そして,ジェンダーアイデンティティと出生割当性が一致しない人々はトランスジェンダー(transgender: 以下,TGとする),一致する人々はシスジェンダーと呼ばれる。また,GDはジェンダーアイデンティティと出生割当性の不一致に伴い生じうる苦悩を指す(Coleman et al., 2022)。GDという用語は診断カテゴリーとしても用いられている(APA, 2013)。
一方,近年では,このようなジェンダーアイデンティティを中核に据える定義を見直す動きがある。TG者には,例えば,女性というジェンダーアイデンティティを持ち女性に移行する者だけではなく,生き延びる手段を模索した結果,女性に移行する者もいるというように,ジェンダーアイデンティティの関与を前提としないTG経験がある(例えば,五月・周司,2023)。
また,特にASとGDの共起領域では,GD発達に関与する社会的要因に焦点化するGD定義が必要である。先行研究ではASとGDの関連性が仮定される中で,その発達機序が探索されてきた。先行理論は遺伝的要因といった個人的要因に焦点化するものが中心で(例えば,胎児期のテストステロン曝露により,ASと出生割当女性のGDが多面的に発現;Hendriks et al., 2022),社会的要因(例えば,ジェンダー規範のAS特性に対する非受容性;Shimoyama & Endo, 2024)は十分検討されてこなかった(レビューは,霜山,2022; Wattel et al., 2024)。しかし,ジェンダー発達に関する先行研究が示唆してきたように,GDを含む,人の多様なジェンダー経験は,遺伝的基盤や生物学的発生機序といった個人的要因のみならず,心理社会的な環境要因が複雑に絡み合って発達するため(遠藤,2012),共起研究でも統合的視点を採用する必要がある。
以上のことを踏まえ,本研究ではジェンダーアイデンティティを前提とせず,ジェンダー規範(社会的要因)の関与により焦点化してTG,GDを定義する。社会には個人的事情とは関係なく,「(a)あなたは出生割当性(男・女)として,(b)出生割当性らしく生きなさい」と求めるジェンダー規範がある(森山,2017)。TGの人々は,主に(a)に,また(b)に苦悩する人々であり,出生割当性とは異なるジェンダーアイデンティティを獲得することで,あるいは,生きていく中で結果として出生割当性から離れることで,ジェンダー規範の要求「(a)あなたは出生割当性(男・女)として生きなさい」を棄却する(周司・高井,2023, p.37)。そしてTG者が,ジェンダー規範と個人的事情の「間」に抱えうる苦悩をGDと定義する(Shimoyama & Endo, 2024)。
当事者視点の不足という共起研究の課題上述したように,AS,GD領域では,当事者主導で現象理解が日々更新されている。一方,ASとGDの共起領域では当事者視点が十分に理解されていない。背景には,先行研究で第三者(養育者・研究者)の視点が優先されてきたことが関係している。例えば,これまで実施されてきた共起率調査では,AS群のGDを調査する複数の研究がChild Behavior Checklist(以下,CBCLとする;Achenbach & Rescorla, 2001)の「子どもが出生割当性とは異なるもう一つの性への嗜好性を示す」という項目に,AS児の養育者が,対照群よりも高い確率で「時々」,「しばしば」と選択したことを論拠にASとGDの関連性を主張してきた(例えば,Strang et al., 2014)。しかし,GD査定に特化していない単一項目で,また,養育者の回答に基づいて当事者のGDを査定することの妥当性が問われてきた(例えば,Turban & van Schalkwyk, 2018)。また,TG群のAS特性を調査する研究でも,当事者視点に基づくTG群内の多様性が考慮されておらず(例えば,Darwin, 2020),研究者により「シスジェンダーではない」という理由で一括りにされてきた人々のどのような経験とASが共起しているのかが不明確である(Kallitsounaki & Williams, 2023)。さらに,当事者視点を明らかにする質的研究も少なく,当事者視点に基づくとASとどのような(GD)現象が共起しているのかについては不明確さがある。
このような先行研究の限界に対し,Shimoyama & Endo(2024)は,GDを示すAS者にインタビュー調査を実施している。そして協力者が,発達を通じて,ジェンダー規範に関する違和感(GD)だけではなく,広範な社会規範(コミュニティで共有される,許容される振る舞いに関するルール;Gelfand, 2018 田沢訳 2022)に関する違和感を蓄積していたことを見出している。そして,この違和感を「広範な社会違和(Pervasive Social Dysphoria: 以下,PSDとする)」と名付けた上で,GDはPSDの部分集合であり,ASと「GDを部分集合とする“PSD”」に関連性があるのではないかという新たな仮説を提唱している。
本研究の目的以上の背景から,今後の共起研究の課題の一つは「ASとGDを部分集合とする“PSD”に関連性がある」という仮説の妥当性を検証することだが,調査設計上,PSDについてさらに検討する必要がある。Shimoyama & Endo(2024)はPSD概念を提示しているが,各発達段階で生じる違和感の詳細な記述はなく,GDを示すAS者の違和感がGDに限定されないことを,より精緻に実証する必要がある(Research Question 1:以下, RQ 1とする)。また,Shimoyama & Endo(2024)はASとGDの関連性が主張されてきた一因として,ジェンダー規範の社会的影響力の強さにより,PSDの中でGDが顕在化しやすい可能性を仮定している。そこで本研究では,各発達段階の検討を通じて,社会的影響力の強さに繋がりうるジェンダー規範の特有性を探索し,この仮説に関する検討を深める(RQ2)。
RQを検討する上で,Shimoyama & Endo(2024)で聴取されたPSDの部分集合としてGDを経験するAS者14名のライフストーリーと,本研究で新たにその養育者3名から聴取した,当事者のライフストーリーを分析対象とする。なお,当事者のライフストーリーに焦点を当てる理由は,本研究の協力者がGDを自覚するAS者であり,GDという枠組みに影響されて経験を語ることが想定されるため,GDという枠組みが語りに適用されないGD自覚前の時期の経験にも目を向け,あらゆる違和感をボトムアップに掬い上げるためである。また,当事者に規範を課す担い手であり,社会で当事者がどのような規範を課されてきたか見守ってきた養育者は,PSDに関する重要な情報提供者であると考えられたため,協力を依頼した。
共起領域に不足する当事者視点の理解を目指すために,本研究ではShimoyama & Endo(2024)と同じく,解釈的現象学的分析(Interpretative phenomenological analysis: 以下,IPAとする;Smith et al., 2022)を基礎的方法論として採用する質的調査を実施した。従って,後述するデータ収集方法や,RQに合わせてオープン・コーディング(箕浦,2009)を参照した分析方法においても,現象を理解する基本姿勢にはIPAが影響している。具体的には(a)当事者視点に基づいて経験を詳細に理解する,(b)先行理解の括弧入れと結びつく内省を実践する,(c)個別性に徹底的に着目する,というIPAの視点に留意して調査を実施した。
本研究は事前に東京大学ライフサイエンス研究倫理支援室・倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号:22-232)。全協力者にインタビュー前に,研究概要や倫理的配慮について説明し,対面インタビューの場合は文書で,オンラインインタビューの場合は動画で同意を得た。
協力者当事者14名は,ゲートキーパーからの紹介と,第一著者の縁故機会を活かす方法を取り,東日本と西日本の都市圏に位置する発達障碍専門医療機関,ジェンダー医療機関,当事者グループでリクルートされた。養育者のリクルートは,AS成人に対する調査では当事者の意向を重視する必要があるという指摘を鑑み(例えば,Nicolaidis et al., 2019),当事者が承諾した3名の協力を得た。
当事者14名は,(a)ASD診断を持ち,自身も診断に納得している,(b)本研究が定義するGDを経験している,(c)PSDの部分集合としてGDを経験している,(d)インタビュー調査に参加し得る言語能力を持つ,という包含基準を満たす者だった。年齢は20歳から49歳(M=32.1,SD=10.2),出生割当性は男性が11名,女性が3名であった。遠方で参加できなかった1名以外の13名のAS特性は,研究資格取得者によるAutism Diagnostic Observation Schedule-2(以下,ADOS-2とする)実施を通して確認した(Lord et al., 2012)。13名中,11名が自閉症,1名が自閉症スペクトラム,1名が非自閉症スペクトラムという結果だった。ADOS-2は診断の補助ツールであるため,非自閉症スペクトラムの1名も診断を根拠に含めた。GDについて,医学的診断を持つ者は6名だった。養育者の年齢は51歳から56歳(M=54.0,SD=2.6),全員が出生割当女性だった。当事者の情報をTable 1に示す。
協力者の属性
平均(標準偏差) | 幅 | |
---|---|---|
注)ADOS-2=Autism Diagnostic Observation Schedule 2 (Lord et al.,2012). a 遠方で参加できなかった1名を除く13名に実施,b 過去に受診経験がある3名を含む。 |
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年齢 | 32.1 (10.2) | 20―49 |
n | % | |
出生割当性 | ||
男性 | 11 | 78.5 |
女性 | 3 | 21.4 |
学歴 | ||
高校卒 | 2 | 14.3 |
専門学校・短期大学卒 | 3 | 21.4 |
大学在学中 | 3 | 21.4 |
学士号 | 3 | 21.4 |
修士号 | 3 | 21.4 |
就労状況 | ||
就労 | 8 | 57.1 |
非就労 | 6 | 42.9 |
ADOS-2(n=13a)結果 | ||
自閉症 | 11 | 84.6 |
自閉症スペクトラム | 1 | 8.1 |
非自閉症スペクトラム | 1 | 8.1 |
ジェンダー医療受診状況 | ||
DSM-5に基づく性別違和診断あり | 6 | 42.9 |
調査時受診中 | 7 | 50.0 |
調査時受診なしb | 7 | 50.0 |
当事者 Shimoyama & Endo(2024)で聴取され,本研究の再分析の対象としたデータは,1人あたり,1回1時間30分から2時間程度の半構造化インタビューを2―3回,2021年4月から2022年3月にかけて実施したものである(総インタビュー時間203―396分,平均268分)。インタビュー内容は,(a)GD経験,(b)AS者として社会で生きる経験,(c)AS者としてGDを抱える経験,(d)必要だと思う支援,という4つのテーマに関するものであった(電子付録S2)。また,上記インタビューの分析結果に関して,2023年1月に,1時間30分程度のメンバーチェックインタビューを,遠方で不参加の1名以外の13名に実施した際に得られたデータも対象とした(総インタビュー時間79―145分,平均112分)。
養育者 1人あたり,1時間30分程度の半構造化インタビューを2回,2021年6月から2022年2月にかけて実施した(総インタビュー時間147―214分,平均185分)。インタビュー内容は,当事者と同様の(a)―(d)というテーマについて,養育者として,どのように子どもを見守ってきたか尋ねるものだった(電子付録S3)。
分析方法協力者が各発達段階で社会規範との間に経験してきた違和感を詳細に記述するためには,データに表れている違和感を概念化する作業に取り組む必要があり,オープン・コーディング(箕浦,2009)を参照した分析を実施した。第一に,インタビューを逐語化したものを繰り返し読み込んだ。第二に,各協力者の規範に関する違和感を整理する分析を実施した。まず,逐語から社会規範との間で生じる違和感に関する語りを抜き出した。具体的には「こういう規範に合わせるよう求められてきた,求められているようだったが,違和感を持ってきた」という当事者の語りと,「自分・他者は,子どもにこういう規範に合わせるよう求めてきたが,子どもは違和感を持っているようであった」という養育者の語りを抜き出した。違和感の選定基準は,Shimoyama & Endo(2024)を参考に,抵抗感,不可解さ,負担感とした。次に,抜き出した語りの内容を要約し,コードに置き換える作業を行なった。最後に,生成されたコードを類似性に基づいてカテゴリー化し,各協力者の違和感を発達段階毎にまとめた一覧表を作成した。第三に,通事例的分析を実施した。各協力者の一覧表を見比べながら,全協力者のカテゴリーを類似性に基づきまとめ,上位カテゴリーを生成した。上位カテゴリーを用いて,発達段階毎に,協力者間で共有されていた社会規範に関する違和感をまとめた(Table 2)。分析はMAXQDA2022上で実施した(VERBI Software, 2021)。
発達段階毎の違和感一覧
発達段階 | 規範 | No | 違和感に関する語り例 |
---|---|---|---|
a注意欠如多動症(attention deficit hyperactivity disorder: ADHD)と近接する違和感と考えられるが,ADHD様の行動パターンを示すAS者も存在することから含めた。bインタビュー時,高等教育機関を卒業し,成人期に移行していた10名とその養育者の語りを対象に分析した。 | |||
幼児期 (n=7) |
生活習慣 (n=1) |
1 | 給食とか毎回食べれないで午後の時間残されているみたいな,ほぼ毎日です。(E) |
関係性・仲間 (n=2) |
2 | 友達のものを取ったり,そういうのはしょっちゅうでした(中略)もう見えてない感じですね,多分。他の人が見えていない,自分の中で,多分。(M養育者) | |
ジェンダー (n=5) |
3 | 服装もなんとなく男の子だと青系というのも嫌だったしね。男の子らしくみたいな表現はすごく嫌で。(G) | |
児童期 (n=13) |
教育 (n=7) |
4 | (先生が)権威を持って話すっていう手法は,少なくとも自分には全然馴染まなかった。まぁそういうところで,教室の中をウロウロしたり,全然従わなかったりして,「ADHD的なんじゃないか」って言われたり。まぁそれもあったと思うんですけど,座っているのが苦痛で。(A) a |
関係性 (n=9) |
5 | (Social Skill Trainingで)自分の意見じゃなくて決められた,求められている,形式にそった言葉を言わされるのがストレスだったのかもしれない。今でこそ身を守るために普通にできるようになっていますけど。(中略)形式を守らないと相手から勝手に敵意を向けられたりするリスクが高いじゃないですか。(J,仲間) | |
6 | やっぱりこう横並びで同じようにしなきゃいけないっていう中で,やっぱりこう普通を求められるので,多分,関わるのが辛かったのかなって思います。(D養育者,仲間) | ||
ジェンダー (n=11) |
7 | (他者に対する) わけわからなさの一つに,与えられた,割り当てられたジェンダーに対するconformity(適合)も含まれていて。なんでこの人たちはそんな男らしさ,女らしさみたいなものにconformしようとするんだろう。(A) | |
第二次性徴期 | ジェンダー規範が影響力を強める | 8 | 大人になる程,なんかはっきり分かれちゃって,そこに抵抗がありますね。子どもの頃は男子と女子って言ってもそんなに分かれていないというか。(I) |
ジェンダー規範と教育規範の一体化 | 9 | 特に中学校とか男女別になるんですけれども,男子の激しいスポーツの授業はすごく嫌で今でも苦痛として思い出しますね。(G) | |
ジェンダー規範と関係性規範の一体化 | 10 | (女子と一緒だと)やっぱりからかってくる人もいて,「女好きだ」みたいなね。(中略)自分が男性の体であることによってコミュニティに入れない状態になっていると。(B,仲間・パートナー) | |
ジェンダー規範が空間の使用方法を制限 | 11 | (プール前の着替えで)周り,男性でその中で着替えさせられるのがすごい嫌で。長いバスタオルを体に巻いて,皆に見られないように着替えをしていた記憶があったんですけれども。(C) | |
青年期 (n=14) |
教育 (n=6) |
12 | 自分にとって負担だよなと思う部分は,大学生以降になってから結構増しましたね。(中略)自主性が求められるので,そういったところで全然ダメだったりするので。(G) |
関係性 (n=10) |
13 | 人を好きになるってどういう感覚かわからないんですよね。それが友達と違うって言われると,体がそういう反応を示したことがないので。あの,単純に恋愛感情が発生すると,普通,一般的には友達と全然違う体の反応が起こるらしいんですよね。(J,パートナー) | |
14 | (クラスメイトの)好きな人,態度を見ていたらわかる,全然わからない。どの男子を見ているかすらわからない。特定の男子にだけ極端に行動を変えているわけではないんですよね。多分普通の,定型の人だったら,この人に好意を抱いているんだなっていうのがなんとなくわかるレベルくらいには行動が違うんでしょうけど,その差が全くわからない。(H,パートナー) | ||
ジェンダー (n=14) |
15 | (大学のサークルで)性別役割みたいなのが急に押し付けられるようになって。「1年の女子が応援でおにぎり作ってきて」とか,(中略)ものすごく反発を覚えてしんどかったのは覚えています。(L) | |
成人期 (n=10)b |
就労 (n=10) |
16 | 普通の会社だと,面接を突破しなければいけない上に,周囲にいっぱい人がいるオフィスで仕事しなきゃいけないし,で,会話もタスクの割り込みも大量に発生して,それにずっと耐えながら40年近くも勤め続けるっていうのは,多分そんな難しいことするくらいだったら,あの…芸術家として成功する方が確率マシなんじゃないかと思いますね。普通はそういう道の方が狭き門なはずなんですけど。自分にとっては一般的なサラリーマン像の方が遥かに難しいことなんです。(J) |
17 | 女は結婚して,家庭に入って,子供を産んで,母親になってという生き方が,あんまりというか全く共感できなくて。そんな生活は望んでいなかったんですよ。(H) | ||
関係性 (n=10) |
18 | 母親に向いていないから耐えられないんだと。(子が)泣いても母親だったら面倒を見なきゃいけないし,なんでここまで大変に思うのか。今思えば耳栓とかすればよかったんですけど,聴覚過敏もあったので,泣き声を3分聞いていたら気が狂うレベル。(L,家族) | |
ジェンダー (n=10) |
19 | 男性としてうまく生きるのであれば,やっぱり男性の中で社交性ですよね,口が上手でうまくやりつつ,競争では負けないとか,あとまぁ,こう,結構男性同士,男性的な振る舞いをしてお互いに威嚇し合うところがあるんですけれども,そういうこともやりつつ,仕事でも稼いで,家庭も持つ。そういった部分で発達障害というハンディを持つとですね,とても負担がかかると思います。(G) | |
その他 | 社会的アイデンティティ(n=5) | 20 | 性別に限らず,何かにカテゴライズされるってことが,好きでもないし,実感も湧かないですし,何かへの属性に感覚が薄いんですね。(中略)一括りにされるのに非常に違和感がありまして。(L) |
規範全般 (n=10) |
21 | (規範について)理解できていない部分が多すぎて,どこから考え始めればいいのかわからなくて考えないできたっていうことが大きいのかなと思います。(D) |
情報量の評価 情報力概念を参照し(Malterud et al., 2016),GDを示すAS者という特異性の高い対象者に,十分な時間を確保したインタビューを実施したことから,必要な情報量を得られたと判断した。一方で情報量の妥当性を確信することは難しいため(能智,2011),情報量の限界に留意しながら研究を進めた。
自己省察性に関する声明 調査・分析を実施した第一著者は臨床心理士・公認心理師として成人期の発達障碍医療機関に勤務し,GDを示す者を含むAS者支援に携わってきた経験を持つ。この経験はASと共起するGDやPSD理解を深める上で有用であったが,研究上,自己省察性を保つ必要があった。そこで,自己省察性記録や,質的研究に関する豊富な指導経験を持つ第二著者からの定期的なスーパービジョン,国内外での学会発表等を通じて,視点の偏りの修正に努めた。また,本文中に語りを提示し,読者が分析の妥当性を判断できるようにした。
以下,各発達段階において,協力者が抱えてきた社会規範に関する違和感を報告する。
幼児期(協力者が想起可能な時期から就学前)他の発達段階と比較して,幼児期に違和感を経験していた者は少なかった(n=7)。その一因として,他者との相互作用を実感しにくかったと報告する者がいたことから,コミュニティ内の規範が認識されにくかった可能性も考えられた(「自他境界あったのかな?わかんないや,って感じ。(A)」)。
幼児期の違和感は,生活習慣規範(n=1),関係性・仲間規範(n=2),ジェンダー規範(n=5)に関するものだった。生活習慣規範について,幼児期の発達課題の一つとして,健康で,文化的に適切とされる生活を送るために必要な基本的生活習慣(食事,睡眠,排泄,着脱衣,清潔)の習得が期待されるが(例えば,松田,2014),特性との兼ね合いでこの期待に違和感を抱いてきた者がいた。具体的には,AS者は摂食に困難さを呈する場合があり(例えば,Sharp et al., 2013),「見たことのない食べ物に対してどう食べたらいいかがわからなくて。(E)」という困惑から給食に負担感を持つ者がいた(語りはTable 2,No. 1参照)。
次に,同年齢集団で良好な関係性を築くことを期待し,その上で必要な振る舞い(例えば,相手のものを勝手に取らない)を定める関係性・仲間規範への不可解さが経験されていた(「よくわかんないけど突然口論になったり,そういうのがよくあったので。(J)」:Table 2,No.2)。
ジェンダー規範に関して,5名の協力者が出生割当性として生き,服装,玩具,色,遊び,習い事,態度に関して出生割当性らしく振る舞うよう求められることに違和感を持っていた(「幼少期から揺らいでいなくって,私は女性であるとはっきりと自己認識しているので。(C,出生割当男性)」:Table 2,No.3)。また,性徴に関する違和感を自覚していた者もいた5。
児童期(初等教育期間から第二次性徴開始時期)児童期は,就学を機に,規範獲得がより強く期待される時期であり(例えば,戸田,2016; 「小学校くらいで自分以外に共有されている普通っていう謎の概念があって,それと外れた行動をすると攻撃されるっていうことは学んでいたんですよね。(J)」),幼児期よりも違和感を経験する者が増えていた(n=13)。協力者は,教育規範(n=7),関係性規範(n=9),ジェンダー規範(n=11)に関する違和感を経験していた。
まず,教育規範は協力者に就学を期待し,就学状況での適切な振る舞いを定める規範である。具体的には,学校は休まない,授業は着席して聞く,一律に学ぶ,といった期待が協力者に課されていた(Table 2,No.4)。しかし,例えば,手作業を要する課題の達成を一律に求められることは,ASに随伴する運動制御スキルの困難さ(例えば,Kaur et al., 2018)を持つ協力者の負担となっていた(「どうしても家庭科みたいな作業が入る授業は全然ついていけなかったみたいですね。(I養育者)」)。また,幼児期と同様に,関係性・仲間規範に違和感を持っていた者もいた(Table 2,No.5,6)。
児童期のジェンダー規範は,協力者に出生割当性として生きること,また,一人称・言葉遣い・態度・持ち物・外見・遊びや家事等の領域において出生割当性らしく振る舞うよう求めるものであり,関連する違和感が報告された(Table 2,No.7)。また,児童期終盤の第二次性徴発現に伴い,性徴に関する違和感も経験されていた(「外性器が発達することがすごく嫌なんですよね。自分の身体が男らしくなっていくことがすごく嫌で。(G)」)。
第二次性徴期に影響力を強めるジェンダー規範 さらに,コミュニティ内で第二次性徴が意識され始めるのと同時に,ジェンダー規範が社会的影響力を強めることが示唆された(Table 2,No.8)。第一に,ジェンダー規範は他の規範に対する影響力を強め,他の規範は,ジェンダー規範という意味合いを持つようになっていた。具体的には,教育規範とジェンダー規範が一体化し,体育が男女別となるなど,出生割当性によって異なる教育規範が課されていた(Table 2,No.9)。また,関係性規範とジェンダー規範が一体化し,友人関係は「同性」間,「異性」間ではパートナー関係と,ジェンダーが関係性のあり方を制限するようになっていた(Table 2,No.10)。第二に,ジェンダー規範は,身体を目にする空間の使用方法をより強く制限するようになっていた。例えば,学校の更衣室は出生割当性で分けられるが,協力者は,ジェンダーアイデンティティとは異なる空間で過ごさなければいけない抵抗感や(Table 2,No.11),感覚過敏性により非個別的空間に対する負担感を経験していた(「男子対女子だと見られるのは嫌っていう認識は皆持っていますよね。じゃあ逆に男子同士,女子同士だったらなんで平気なの?っていう。(J)」)。
青年期(第二次性徴後から高等教育期間)子どもから大人への移行期である青年期は,進路・職業選択や,パートナー関係の形成,結婚,子育てといった成人期の発達課題に向け準備する期間とされており(平石,2002),関連する違和感として,教育規範(n=6),関係性規範(n=10),ジェンダー規範に関する違和感(n=14)が経験されていた。
まず,教育規範に関して,児童期と同様の違和感に加え,成人期の自立という発達課題がより強く意識される大学等では,単位の自己管理など,自主性が期待されることに負担感を経験する者がいた(Table 2,No.12)。
次に関係性規範について,仲間規範に加えて,パートナー規範に関する違和感が顕在化していた。パートナー規範は,協力者に(a)性愛感情を伴う恋愛感情を実感し,(b)異性と1対1の親密な関係を築くこと,(c)また,親密な関係を築くために特定の振る舞いをするよう期待するものであった。しかし一部の協力者は,パートナー規範に不可解さや(Table 2,No.13,14),関係性の持ち方(例えば,性的指向)を社会的に規定されることへの抵抗感,負担感を持っていた(「アセクシュアルなのかなと思うんですよね。その性的な関心度としては。(K)」)。ここで,パートナー規範は,「異性」とパートナー関係を築くことを期待するという意味で,ジェンダー規範という意味合いも持っていた(「異性にもその興味ない,その時期って辛かったのが,どうしても好きな(女性)アイドルを聞かれるんですね。(E,出生割当男性)」)。
ジェンダー規範は関係性だけではなく,協力者に出生割当性として生きること,また,身体・制服・髪型・言葉遣い・態度・サークル活動等の領域で出生割当性らしい振る舞いをするよう求めており,関連する違和感が報告された(Table 2,No.15)。
成人期(高等教育機関卒業後からインタビュー時)インタビュー時に成人期に移行していた10名は,就労することを期待し,就労者として適切な振る舞いをするよう期待する就労規範(n=10),関係性規範(n=10),ジェンダー規範(n=10)に関する違和感を経験していた。成人期の関係性規範には,仲間規範,パートナー規範に加え,家族形成を期待する家族規範が追加されており,関連する違和感が示唆された(「結婚して家庭を持たなければいけないっていう重苦しい社会の重圧みたいなのを感じていたので,それは本当に辛かったですね。(J)」)。
また,就労規範・家族規範と,ジェンダー規範は分け難いものだった。性別役割分業があるように,協力者は「出生割当性」として就労すること(家庭に入ること)を期待されてきたと経験しており,就労規範はジェンダー規範という意味合いも持っていた(Table 2,No.16,17)。家族規範もジェンダー規範と一体化しており,家族形成への期待は,出生割当性に基づき,協力者に「母親役割・父親役割」を担うよう期待していた(Table 2,No.17,18)。
ジェンダー規範は他にも,協力者に出生割当性として生きること,また,身体・スーツ・持ち物・言葉遣い・態度等の領域で出生割当性らしい振る舞いをするよう期待しており,関連する違和感が報告された(Table 2,No.19)。
他の違和感が存在する可能性以上,各発達段階の違和感を報告したが,協力者は他にも違和感を経験している可能性があった。まず,特定の発達段階に属さない違和感が報告された(例えば,属性意識を持つよう期待する社会的アイデンティティ規範への違和感;Table 2,No.20)。また,規範全般に違和感を持ってきたと報告する者もいた(Table 2,No.21)。
さらに協力者は,違和感に「正体不明さ」があり,言語化することが難しい場合があると指摘した(n=12; 「性別に関わらないことでも山ほど,言語化できない気持ち悪さっていうのは,なんか,幼少期からずっと蓄積してきたと思います。(J)」)。違和感の正体不明さは,個人的要因と社会的要因により生じるようだった。まず,ASに随伴するアレキシサイミア(個人的要因)により(例えば,Oakley et al., 2022),協力者が違和感を自覚しにくい可能性があった。また,類似した視点を持つ他者・言説に出会いにくいことで(社会的要因),他者の言葉を手がかりに違和感を理解しにくい可能性があった(「(コミュニティと出会って)experienceしたものが意味があるんだと,ようやっとわかったというか。(D)」;Fricker, 2007)。さらに,規範の多くが暗黙の規範であるために(社会的要因),協力者が違和感の対象となる規範を掴みにくい可能性があった(「当然すぎて皆(普通の)定義を教えてくれない,定義すら考えたことがないよって感じなんですけど。(H)」)。従って,本研究で報告した違和感は協力者の経験の一部にすぎない可能性に留意する必要がある。
RQ 1に関して,各発達段階の検討により,協力者はジェンダー規範に関する違和感(GD)だけではなく,生活習慣規範,関係性(仲間・パートナー・家族)規範,教育規範,就労規範といった広範な社会規範に関する違和感(PSD; Shimoyama & Endo, 2024)を経験していることが精緻に実証された。
規範は社会に張り巡らされており,人は発達初期から規範を学び,受け容れ,構築し,変容させる継続的なプロセスに従事している。規範は人々の協力や,集団生活を安定させ,維持する基盤となる(Schmidt & Rakoczy, 2023)。一方で,多数派の心身特性を前提とする規範が,少数派の人々の障壁となり,社会参加を困難にしていることも指摘されてきた(例えば,綾屋,2018)。熊谷(2018)は,発達障害を持つ人々は,日々否応なしに,当事者には困難さとして経験される「違背実験(対人的相互作用の中であえて望ましくない言動をすることで暗黙のルールを明らかにする試み)」を生きていると指摘している(p.289)。本研究で示唆された様々な違和感も,協力者が発達を通じて,違背実験のような困難経験を蓄積せざるを得なかったことを示唆していると言えるだろう。
社会的影響力の強さに繋がるジェンダー規範の特有性RQ2について,ジェンダー規範の2つの特有性により,ジェンダー規範が,発達を通じて強い社会的影響力を持つ可能性が示唆された。
発達早期より認識されやすいジェンダー規範 幼児期の違和感は児童期以降と比較すると少なかったが,その中でも5名がGDを経験していた。協力者がGDを自覚するAS者であるという理由以外にも,ジェンダー規範の,「幼児期より認識されやすい」という特有性により,幼児期よりGDが経験されていた可能性がある。
幼児期は,子どもがジェンダー知識を身につけ,他者や自分をジェンダー化し始める時期である(例えば,Halim & Ruble, 2010)。ジェンダー発達に関する研究は,人はどのようにもカテゴリー化できるのに(例えば,利き手),なぜ,ジェンダーカテゴリーの心理的顕在性が高くなるのかについて探索してきた。その中でBigler & Liben(2007)は,環境要因の関与を指摘している。第一に,子どもが過ごす環境は,ジェンダーカテゴリーが知覚的に目立つように構造化されているという。本研究でも,幼児期から,ジェンダー規範が,服装・玩具・遊び・色など,知覚的識別性の高い物事を規定していることが示唆された(Table 2,No.3)。第二に,子どもが過ごす環境には,子どもにジェンダー規範の社会的重要性を認識させる,(a)明確なメカニズム(例えば,大人の言語的ジェンダーラベリング)と,(b)暗黙のメカニズム(例えば,事実上のジェンダー分化)が働いているという。協力者が過ごしてきた環境でもこのようなメカニズムは働いていた(「『女の子っぽいものばっかりにハマっているね』って,そんな感じに母とか祖母に言われた覚えがあります。(中略)ピアノ教室も自分以外,全員女性だったと思います。(J)」)。このような環境要因により,ジェンダー規範は発達早期から 人に対して特に強い影響力を持つ可能性がある。
第二次性徴期に始まるジェンダー規範と他の規範の一体化 次に,特に第二次性徴期以降,教育規範,関係性(仲間・パートナー・家族)規範,就労規範といった他の規範はジェンダー規範の影響を受け,ジェンダー規範という意味合いを持つようになっていた。同様の傾向は社会学研究でも指摘されている。例えば,Cislaghi & Heise(2020)は「社会規範の多くが事実上はジェンダー規範」であり,人は自分に期待されることに関する信条ではなく,自分の「性別」ゆえに期待されることに関する信条を持つと指摘している(p.415)。このように規範の多くがジェンダー規範としても機能するということは,社会がジェンダー規範を中核に構造化されていることを示唆しており,ジェンダー規範の強い社会的影響力が指摘される。
以上の結果から,今後の共起研究では,上述した2つの特有性によりジェンダー規範が発達を通じて強い社会的影響力を持つために,PSDの中でGDが顕在化しやすく,ASとGDに特異的関連性があるように見える可能性も踏まえ,ASと「GDを部分集合とする“PSD”」の関連性について精査する必要がある(Shimoyama & Endo, 2024)。
今後の課題本研究は仮説生成研究であり,結果の妥当性を検証することが不可欠である。ASとPSDの関連性を検証する上では,本研究で十分検討できなかった経験の個別性に踏み込む調査が必要である。例えば,「ある者はPSD内の特定の違和感が強い」といった個別性や,個人的要因と社会的要因により,PSD経験に個別性が生じる可能性が想定される(例えば,環境のAS受容度が高い場合,PSDは経験されにくい)。
また,実践上の課題もある。協力者のように一定数のAS者がPSDを経験しているとすれば,当事者のニーズに合わせて,PSD支援を行う必要がある。しかし,従来のASD支援はAS者の規範的ではない振る舞いを問題として捉え,その原因となる個人内機能不全の治療か,機能不全を補うスキルの習得を促す実践が主流であり,PSD支援としては限界がある。従って今後,当事者視点に寄り添うAS支援の構築に取り組む必要がある。
このような課題はあるものの,Shimoyama & Endo(2024)による「ASとGDを部分集合とする“PSD”に関連性がある」という仮説について,発達的見地から検討を深め,共起領域の発展に寄与しうる知見を提出した本研究には一定の意義があると考えられる。
本論文に関して,開示すべき利益相反関連事項はない。
本研究は,日本科学協会の笹川科学研究助成,JST次世代研究者挑戦的研究プログラムJPMJSP2108,及び,東京大学バリアフリー教育開発研究センター若手研究者育成プロジェクトの支援を受け,実施された。
2本論文は第1著者が令和5年度に東京大学教育学研究科へ提出した博士論文の一部を加筆・修正したものである。
3補足資料をJ-STAGEの電子付録に記載した。
4ご協力者の皆様に,心より感謝申し上げます。また,ご協力者の募集にあたりご協力下さった医療者,当事者グループの皆様にも感謝申し上げます。
5性徴に関する違和感は,必ずしもジェンダー規範が直接的原因となって生じる違和感ではないと考えられるが,「身体的特徴を『性徴(性を理解する手がかり)』とする」認識が伴うことから,ジェンダー規範と無関係な違和感ではないと本研究では捉えている。