2018 Volume 25 Issue 1 Pages 36
Raczスプリングガイドカテーテルによる硬膜外神経癒着剥離術(Raczカテーテル法)開発者,Dr. Gabor B. Racz(Racz先生)の訪問指導を受け入れたので報告する.
学会講演のためRacz先生が来日し,Raczカテーテル法の実地指導を行いたい旨の希望がだされた.当院に打診があり,病院責任者の承諾を得て受け入れた.
当院は309床の医療法人病院で,手術室3室,血管撮影室1室,一般病床88床を備える.2015年に麻酔科常勤医2名が赴任し,ペインクリニック・手術麻酔を開始した.麻酔科医の一人はRaczカテーテル法十数例の経験があった.
訪問当日は病院の休日であったが,手術室看護師6名,病棟看護師2名,事務4名,放射線技師2名の出勤協力を得た.
症例は当科で治療に難渋した3症例とした.血管撮影室1室・手術室1室を手技施行用,1室をリカバリ用とし,待ち時間を削減した.血管撮影室では正面・側面の同時透視が可能な血管撮影装置(Philips Allura Xper FD20/10)を使用し,時間短縮と安全性の向上を図った.
Racz先生はGabor J. Racz Epimed社社長,アジア地区代理店関係者,日本地区代理店関係者とともに来院した.症例提示ののち,患者の症状を実際に確認した.手術室では口頭指導のもと,当院医師が実際の手技を行った.特に症例ごとのアプローチ法の選択,針の刺入角度,針を回転させるタイミング,カテーテル先端を留置するべき位置など,Racz先生の経験に裏打ちされた実践的なアドバイスは貴重であった.見学者向けのレクチャーもあり,充実した指導となった.
指導内容や,招聘するにあたって考案した工夫(正面側面の同時透視など)を,その後も活用している.
口頭での指導とはいえ,このような外国人医師および見学医師の受け入れは通常の診療と異なることが多く,実際に招聘することには困難が伴うと思われる.しかし,当院は中規模民間施設で,部署間の意思疎通の良さが成功の鍵であった.当該関係者各位に深謝申しあげる.
当論文の概要は,日本ペインクリニック学会第50回大会(2016年7月,横浜)で発表した.