Journal of Japan Society of Pain Clinicians
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Stereotactic radiosurgery using CyberKnife for trigeminal neuralgia
Hiroshi TAKAHASHI
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2019 Volume 26 Issue 4 Pages 279-287

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Abstract

サイバーナイフ(CK)の特徴は,従来の定位放射線治療装置で使用されていたガントリーに代えてロボットが採用され,患者の位置を正確に認識できる病変追尾装置が装備されたことであり,固定がフレームレスとなった.また,治療計画時に一点にビームを収束させるisocentricという方法と,一点に集中させずビーム強度の変化により3次元的な線量分布を形成するnon-isocentricという2通りの照射方法を選択できる.これらの特性はガンマナイフ(GK)とは異なるが,従来GKが行ってきた特発性三叉神経痛の治療をCKも同様に施行することが可能で,しかも高齢者に発生しやすい三叉神経痛治療において非侵襲的固定のフレームレスであることの利点は大きい.また,個人差の多い三叉神経の走行に対して照射法を選択できる点も有用である.このCKとGKの定位放射線治療の結果を,自験例および最新の報告例から検証してみると,初期除痛効果および治療後合併症としての三叉神経障害に関して大きな相違はみられず,サイバーナイフ定位放射線治療の適応は今後ますます拡大していくものと思われる.

I はじめに

顔面痛を主訴とする疾患のなかで,三叉神経痛は通常一側性の顔面の発作性疼痛であり,持続時間は短いものの激烈な痛みを呈する代表的な疾患である.この三叉神経は橋の中上部腹側面を起始部として三叉神経節から3本の感覚神経が分かれ,第1枝は顔神経,第2枝は上顎神経,第3枝のみ運動根と合わさり下顎神経となっている.特発性三叉神経痛の痛みの部位はこの3枝,とくに第2,3枝に沿って生じることが多い.そして,この三叉神経痛の原因の多くは神経周囲の蛇行や迷走する血管の圧迫によって生じると考えられている特発性三叉神経痛である.また,原因が血管性圧迫以外の腫瘍など器質性疾患である場合は症候性三叉神経痛として区別されている.

本論文は特発性三叉神経痛に対する定位放射線治療(RS)の有用性を紹介することを目的としたものであるが,この特発性三叉神経痛の治療としては,通常非観血的治療としてカルバマゼピンなどの抗てんかん薬を主体とする薬物療法や神経ブロック療法があり,観血的治療としては脳神経外科による微小血管減圧術がある.しかし,代表的薬物療法剤であるカルバマゼピンは初期には著効を示しても徐々に効果が減弱し,投与量を増加しても最終的には無効になってしまう症例も少なからず存在する1).また,局所麻酔薬による神経ブロックは通常効果が短く,比較的長期の効果が得られる神経破壊薬や高周波熱凝固による神経ブロックではブロック時からの感覚低下が永く持続することを覚悟しなければならない.観血的治療法の微小血管減圧術は唯一の根治療法であり,現在では年齢にかかわらず安全に手術が行われることが可能になってきているとはいえ,やはり高齢初発が多い特発性三叉神経痛患者の中には全身麻酔下での手術を容易には選択できないことが多々ある.

このような状況において,全身麻酔下での手術にリスクのある高齢者や,薬物への抵抗性といったそれまでのいろいろな治療で十分な効果が得られなかった特発性三叉神経痛患者にRSとしてのガンマナイフ(Gamma Knife®:GK,エレクタ社)が次第に選択されるようになり,その有効性や安全性が数多く報告されてきている26)

コバルト60によるガンマ線を用いたGKは,1951年にLeksellらにより開発され,本邦には1990年に導入されて脳腫瘍や脳動静脈奇形,さらには三叉神経痛の治療オプションとして広く知られるようになった79)

一方,ロボットアームの先端にリニアック(線形加速器)を装着してX線にてGKと同様なRSを行うサイバーナイフ(CyberKnife®:CK,日本アキュレイ社)が1980年代後半より米国スタンフォード大学の脳神経外科医John Adlerらにより開発され,1994年にはロボット技術と画像誘導技術を結合させたこれまでにないロボット誘導型定位放射線治療装置として実用化された10).本邦では1998年に保険適用となり治療が開始されたが,2003年に薬事申請上の問題でいったんリコールとなり,2004年に再導入され現在に至っている.当院でも従来の第3世代CKから格段に機能を向上させた第4世代CKを本邦第2号機として導入して臨床使用を行うとともに,サイバーナイフ研究会などの活動を通じて当該機の有効性,安全性についての学術啓発を推進してきた.当初,このCKは頭蓋内病変や頭頸部がんを中心に治療が行われていたが,近年GKと同様に特発性三叉神経痛にも安全に治療が行われるという報告が数多くなされている1118)

そこで,本論文ではこのCKの特発性三叉神経痛治療における有効性および安全性について概説する.

II CKの特徴

これまでの定位放射線治療装置で使用されていたガントリーに代えてロボットが採用されたことと,患者の位置を正確に認識できる病変追尾装置(target locating system:TLS)が装備されたことがCKの最大の特異性である.このロボットアームの先端に装着された小型のリニアックは画像上のアイソセンターを中心として約6,000の方向からの照射が可能となり,入射方向の空間的自由度の著しい向上性をもたらした.また,アイソセンター外への照射も可能になり不整形病変への照射を均一な線量分布によってできるようにした.すなわち,CKはビーム中心を変化させながらさまざまな方向のビームを照射することができ,ビームの照射時間を変化させることによって強度変調放射線治療装置としての側面も併せ持つわけである.さらにTLSにより動きのある治療中の照射目標をロボットが追尾して照射することを可能にしたことにより,頭蓋内および頭頸部病変に関して侵襲的な固定器具が不要となり分割照射を容易にした.また,肺がんなどの呼吸性移動のある体幹部病変に対しては,TLSに赤外線カメラを組み合わせて病変位置を予測しながら照射する動体追尾照射を実現した.

またCKの治療計画上の特徴は,腫瘍の一点にビームを収束させるisocentricという方法と,一点に集中させずビーム強度の変化により3次元的な線量分布を形成するnon-isocentricという方法の2通りの照射方法を選択できることである(図1).isocentricを選択すると,分布は球形で線量勾配が急峻になり病巣周囲の被曝を極力少なくして照射時間を比較的短くできる一方,non-isocentricを選択すると,アイソセンターがないため不整形病変に対しても形状に合わせて均一な線量分布を作成することが容易にできる.

図1

サイバーナイフ治療計画上の特徴

イメージングシステムの中心から半径65~100 cmの球面上に設定された,130以上のポイント(左)から一点にビームを集中させるisocentric照射(右上)と,ロボット位置を微調整することで,最大6,000ポイントよりターゲットにまんべんなくビームを照射するnon-isocentric照射(右下)が選択可能で,実際には100本前後の最適な位置・方向を選択して照射を実行する.

以上の特徴を備えたCKは,体幹部においては肺がん,肝臓がん,前立腺がん,腎がんなどの各種がん疾患を対象とした治療が可能であり,頭蓋内や脊髄脊椎疾患においては,悪性脳腫瘍のみならず良性脳腫瘍19),血管奇形20),さらには特発性三叉神経痛などの機能性疾患1118)についての治療にもCKの有用性が明らかにされてきている.

III CKによる特発性三叉神経痛治療

特発性三叉神経痛に対するGKによるRS(GKS)に引き続いて,リニアックによるRS(LINAC),そしてCKによるRS(CKR)が施行されるようになり,2018年になって1951年から2015年までの英文論文を渉猟してこれらの治療結果を比較検討した論文が発表された21).45報5,687例のGKS,11報511例のLINAC,9報263例のCKRの治療結果を評価した結果,初期治療後の疼痛緩和効果発現は,GKSで66.6~100%(平均値84.8%,中央値85.6%),LINACで75~100%(平均値87.3%,中央値88.5%),CKRでは50~100%(平均値79.3%,中央値79%)ということでCKRの結果はGKS,LINACの両治療法と比較しても決して劣らないことが明らかとなった.一方,三叉神経痛に対するRSにおいて最も気になる合併症である知覚障害発生率はGKSで0~68.8%(平均値21.7%,中央値19.0%),LINACで11.4~49.7%(平均値27.6%,中央値28.5%),CKRでは11.8~51.2%(平均値29.1%,中央値18.7%)といずれの方法でも大きな相違はみられなかった.しかし,Barrow Neurological Institute(BNI)facial numbness scores22)(I:no facial numbness,II:mild facial numbness, not bothersome,III:facial numbness, somewhat bothersome,IV:facial numbness, very bothersome)III,IVという中等度以上の知覚障害発生率はGKSの0~17%(平均値3.1%,中央値0%)に対して,CKRでは5.9~12.0%(平均値9.3%,中央値10.0%)と有意に多く認められたと報告された(表1).

表1 三叉神経痛定位放射線治療のシステマティック・レビュー
執筆者,年 治療方法 症例数 経過観察期間(月) 疼痛緩和効果(%) 再発(%) 知覚障害(%)
BNI I~IV BNI III,IV
平均値 中央値 平均値 中央値 平均値 中央値 平均値 中央値 平均値 中央値
Tuleascaら21
2018
GKS 5,687 7.1~92 6.7~76 84.8 85.6 24.6 23 21.7 19 3.1 0
LINAC 511 18~56.5 12~26.6 87.3 88.5 32.2 29 27.6 28.5
CKR 263 8~20.4 22~23 79.3 79 25.8 27.2 29.1 18.7 9.3 10.0

GKS:Gamma Knife radiosurgery,LINAC:linear accelerator radiosurgery,CKR:CyberKnife radiosurgery

BNI:Barrow Neurological Institute facial numbness scores22)

しかし,この結果を評価するにあたっては十分な注意が必要と考えられる.すなわち,このレビュー論文においては2015年までに報告された文献のみが渉猟されており,2016年以降の最近の発表論文がまったく含まれていないということである.また,知覚障害発生率は報告により大きな差がみられるが,これは三叉神経の長さ,太さなどその走行が個々に異なるうえに施設によっての評価基準が微妙に異なることが原因と思われる.このように多施設の報告を比較検討することの困難さは確かにあるが,平均値あるいは中央値を用いた統計学的解析は施設ごとの治療傾向の把握という点で大きな意義があると考えられる.

特発性三叉神経痛に対するCKRとしては,ランダム化はされていないが2018年に報告されたRomanelliらの138例を対象とした観察期間中央値52.4カ月の前方視的研究11)において,CKR後6カ月で93.5%,12カ月で85.8%の患者で疼痛管理が可能となり,初回治療後3年での疼痛制御率は76%であった.知覚障害発生率は18.1%であったが,そのうちBNI facial numbness score III,IVの発生率はそれぞれ4.3%,0.7%ということで,結局III以上の知覚障害発生率は5%と報告された.したがって,この論文の結果によればCKSでの三叉神経の知覚障害発生率はGKSと比較してまったく遜色がないことがわかる(表2).

表2 特発性三叉神経痛に対するサイバーナイフ定位放射線治療の研究
執筆者,年 症例数 経過観察期間(月) 疼痛緩和効果(%) 再発(%) 神経障害(%)
Romanelliら11,2018 138 52.4 85.8 18.6 18.1
Lazzaraら12,2013 17 11.8 88 28.6 11.8
Tangら13,2011 14 20.4 100 0 21.4
Fariselliら14,2009 33 23 93.9 33.3 0
Borchersら15,2009 46 12.4 87 15.6 15.2
Adlerら16,2009 46 10.5 95.7 2.3 17.1
Villavicencioら17,2008 95 22 63 31 28.4
Limら18,2005 41 11 78 15.8 51.2
自験例,2018 5 42 100 0 20

執筆者,年のは前方視的研究,その他は後方視的研究.

:平均値,:中央値

RS後の経過としては,治療後2~3週で著明な改善がみられ,おおむね6~12カ月で安定した改善効果が得られるのが通常である.そこで,2018年以前に報告された研究のなかで疼痛緩和効果(治療後12カ月前後),再発,神経障害の3項目に関して発生割合を抽出することが可能であった7報(前方視的研究1報,後方視的研究6報)1218)を前述のRomanelliらの報告に加えて表2に提示した.なお,この表には後述する最近の自験例5例のデータも参考までに記載した.表中の自験例を除いた8報告から,それぞれの項目の中央値を参考として分析してみると,これらの報告からはCKR後1.5年の経過観察期間で疼痛緩和効果は87.5%で得られ,再発は17.2%,知覚障害などの神経障害発現の可能性は17.6%と言えそうである.

IV 特発性三叉神経痛治療に対するCK治療の実際

CK治療では,位置情報をCT骨条件から得るために,thin slice CTの情報が必須で,情報量は多いが位置ゆがみの生じやすいMRI画像と融合させて正確な三叉神経の走行を同定する.そのためには,thin slice MRIでheavy T2強調画像により三叉神経全体を撮像しておく必要があり,さらに三叉神経近傍の血管を鑑別するためにMRAとできれば造影CT画像を撮像しておくことが望ましい.

次に頭部の固定を行うが,GKRではこれまでレクセルフレームという頭蓋骨にピン固定する侵襲的な頭部固定がどうしても必要であった(図2).しかし,CKSにおいてはシェルと呼ばれるプラスチック製のフェイスマスクを用いたフレームレスの頭部固定(図3)で済むのがGKにない最大の利点と思われる.

図2

ガンマナイフのレクセル頭部固定

ガンマナイフ治療の頭部固定の基本はレクセルフレームで,このフレームは照射時の固定具として用いるのみでなく,頭蓋内の座標系の土台となっている.固定は頭蓋骨に通常4点でピン固定されるが,適切な沈静下でフレーム装着を行うことにより,疼痛のコントロールはある程度可能である.

図3

サイバーナイフのフレームレス頭部固定

サイバーナイフ治療の頭部固定では,プラスチック製のユニフレーム頭部固定具を加温して軟化した後に仰向けに寝た患者の頭の上に持って行き,顎にユニフレームの端を合わせベースプレートに向けてゆっくりと引き下げる.素早く患者の顔の輪郭に沿って指先で軽く押しながら形状を整えてから冷却すると,ユニフレームは固くなりフレームレスとしての頭部の固定が可能になる.

三叉神経は脳幹から出て2~4 mmのところに三叉神経根入口部(root entry zone:REZ)といわれる中枢性髄鞘(oligodendrocyte)が末梢性髄鞘(Schwann cell)に移行する場所があり,この部位では髄鞘が一部欠如していて圧迫などの機械的刺激を受けやすい.また,oligodendrocytesはSchwann cellsよりも放射線感受性が高いことから,REZは三叉神経痛のRSのターゲットとして適切と考えられている6).しかし,REZをターゲットとした場合には治療効果は高いと考えられるが,脳幹に近接しているために合併症発生の可能性は高くなることが危惧される.一方,錐体骨三叉神経切痕部にあたるガッセル神経節後部(retrogasserian region:RGR)を治療ターゲットとすると,脳幹からは十分に離れているので脳幹への直接照射が回避されて合併症が起きにくくなることに加え,三叉神経の描出が不良の場合でも三叉神経切痕部の同定は容易なため,より正確な照射が可能になる利点がある.

CKRでは,通常三叉神経脳幹接合部から3 mm以上離して,遠位へ6 mm神経長部分を描画して照射ターゲットとすることが多く,ターゲットの形状が細長くなることからnon-isocentricでの照射を選択する.しかし,三叉神経長には個人差が多く,三叉神経が短い場合には6 mmの神経長を短縮することや,GKSと同様にisocentricなポイント照射を選択することも可能である.このように,CTおよびMRIにて描出された三叉神経の精密な状態により,照射法を選択できることがGKSと比較したCKRの利点の一つであると考えられる.

治療計画作成においては,通常CKに装備された12種類のコリメータ(図4)の中から5 mmを使用し,REZには60~80 Gy,RGRには70~90 Gy程度を設定する.リスク臓器としては,側頭葉内側,脳幹,VII・VIII脳神経,蝸牛などを必ず描画して,過剰な被曝を抑制する.

図4

サイバーナイフシステム

放射線治療器には,一般的にコリメータと呼ばれる放射線の進路および入射面積を制限する装置が付随している.このコリメータによって放射線が照射される領域(照射野)が規定され,ターゲットに十分な線量を照射しつつ近傍正常組織への照射を抑制することができる.サイバーナイフシステムでは,直径5~60 mmの円形照射野を実現する12種類のコリメータが装備されている.

ところで,最近5年間に経験した自験例は5例ある(表2)が,いずれも脳槽部を走行する三叉神経長が短めであったので,神経脳幹接合部から3 mm以上離したREZをターゲットとしてisocentricなポイント照射を選択した.5 mmのコリメータを用いて,計画標的体積の100%に80 Gyを照射し,脳幹部内の被曝は20% isodose line(16 Gy)にとどまるように計画した(図5).5例の年齢は67~89歳で中央値は78歳,観察期間は60~1,975日で中央値は1,260日(42カ月)であったが,疼痛は全例で消失した.疼痛消失までの期間は5~60日で平均40日,中央値は45日であった.1例(20%)に顔面のしびれ感が2年後に発生したが,日常生活にはなんら支障のない程度であった.きわめて少数の自験例だが,最近のCKRの報告結果1118,21)と比較するかぎりほぼ同様な結果であった.また,2001年のMaesawaらのREZをターゲットとした220例のGKSの報告5)では,中央値2年の経過観察にて2.8年後の除痛効果は75.4%,治療後合併症としての三叉神経障害は10.2%にみられたと述べられており,少数の自験例と直接的な比較はできないが,大きな差異はないものと考えられた.

図5

サイバーナイフによる三叉神経痛治療計画(MRI heavy T2強調画像)

三叉神経痛に対するサイバーナイフによる治療計画作成にあたっては,thin sliceで撮像したCTとMRI画像を融合させて三叉神経の正確な走行を同定するが,その際MRIのheavy T2強調画像がとくに有用となる.自験例では,神経脳幹接合部から3 mm以上離したREZをターゲットとしてisocentricなポイント照射を選択した.5 mmのコリメータを用いて,最大線量80 Gyを照射して脳幹部内の被曝は20% isodose line(16 Gy)にとどまるように計画した.

ところで,現時点で三叉神経痛に対するRS治療の保険適用はまだGKに限られている(2015年7月1日からGKによる定位放射線治療50,000点:3割負担であれば15万円相当).CKによる三叉神経痛治療は,自由診療のため施設により20~60万円ほどの診療費で施行されているのが現状と思われる.本論文でも述べているように欧米諸国ではすでに治療法として確立されつつあり,本邦では現在保険適用取得についての可能性が模索されている.

V 特発性三叉神経痛治療におけるCK治療の展望

高齢化が急速に進行しているわが国において,高齢者に対する適切な治療指針の確立は喫緊の課題である.そこで,比較的高齢者に初発することの多い特発性三叉神経痛の治療では,治療の有効性と安全性が十分に担保された低侵襲治療の提供がきわめて重要な意味をもつことは言うまでもない.

高線量一括照射をするRSは侵襲性の少ない治療であるが,RSによる三叉神経痛の治癒機序についてはいまだ明らかとはなっていない.しかし,多くの治療経験からいくつかの仮説が立てられている.すなわち,治療後数カ月以内の初期効果については神経と神経との間の異所的接触部位を介するインパルス(ephaptic transmission)の伝達が電気生理学的に阻害されるのではないかという報告5,6,23)があり,その後に生じる遅発効果としては神経軸索の変性5,6)や神経への微小循環系の障害6)が示唆されている.

低侵襲性治療が期待されるRSにおいて,GKRと異なり非侵襲性のフレームレスという固定法を用いるCKSは,GKRに劣らない有効性と安全性が担保されるならば比較的高齢者が罹患することの多い特発性三叉神経痛の加療におけるCKSの有用性が際立つものと考えられる.また,治療計画として,腫瘍の一点にビームを収束させるisocentricという方法と,一点に集中させずビーム強度の変化により3次元的な線量分布を形成するnon-isocentricという方法の2通りの照射方法を選択できるCKSは,走行に個人差の大きい三叉神経を治療対象としなければならない点で,その有効性に大きな期待が寄せられる.

一方,RS治療後の三叉神経痛の再発時に手術を選択した場合に手術が困難になるという懸念がもたれている.しかし,GKR後の神経血管減圧術時において確かにくも膜の肥厚,神経と血管の癒着,神経の萎縮/偏位がみられたが,手術そのものには影響はなかったという報告24)がすでにされており,また,特発性三叉神経痛においてGKRはその後の手術にはなんら影響がなかったとも報告されている25,26).CKS後の手術に関しての報告はまだみられないが,治療手技からしてGKRの結果と大きな相違はないものと推察され,特発性三叉神経痛治療において低侵襲性のRS治療を積極的に行うことの不利益さはあまり問題にならないのではないかと思われる.

このような状況において,非侵襲性固定に加えて照射法の選択性を兼ね備えたサイバーナイフ定位放射線治療は,従来から施行されてきたガンマナイフ定位放射線治療と比較して遜色のない有効性と安全性を示すことが判明してきており,薬剤抵抗性の三叉神経痛に対する有用な治療法の一つとして広く周知されていくことが今後大いに期待される.

なお,本論文に関して日本アキュレイ社をはじめとする企業との利益相反はない.

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