Journal of Japan Society of Pain Clinicians
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2023 Volume 30 Issue 2 Pages 34-35

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I はじめに

近年オンライン診療1)が普及し,遠隔地や専門医不足の解消につながり,医師同士の連絡も取りやすくなっている.また,IVR(interventional radiology)による治療では,血管造影の画像,手元の画像,指導医がモニターへ指さししている様子も,双方向伝送による遠隔指導が試みられている2,3)

当院のペインクリニック外来では主に超音波ガイド下神経ブロックを行っているが,透視下神経ブロックの経験がなかった.今回WEB会議での学習から4),オンラインの専門医指導のもとで技術的な問題や治療結果の共有を図ることができるのではないかと考え,WEB会議ツール(Zoom®)を用いた遠隔指導により,当院で透視下神経ブロックを安全かつ効果的に行うことができたため報告する.

本報告は患者から書面による同意を得ている.

II 症例

80歳代女性,主訴は両側腰下肢痛で,腰部脊柱管狭窄症,腰椎椎間板ヘルニア,第4腰椎すべり症と診断されたが手術適応はなく,当院紹介となった.さまざまな治療を行ったが,両側L5神経根症状のみ強く残存していた.透視下神経ブロックの適応と考えたが,実際の診療においては経験がないために施行には至らなかった.

ペインクリニック学会の指定研修施設の指導者に,透視下神経ブロックの適応と指導について相談を行い,透視下両側L5神経根ブロックを計画した.しかし,指導者も頻回に来院することは勤務上困難であり,遠方であることや給与の面でも複数回の来院指導は困難であった.このため,指導者と相談を行い,初回は対面指導で透視下神経ブロックを行い,2回目以降は遠隔指導下で行えると考え,試みた.

初回は指導者とともに,体位作成・透視装置の位置や管球の当て方,ブロックの手順確認をしながら右L5神経根ブロックを行った.

3日後,左L5神経根ブロックをZoom®を使用し,遠隔指導下で行うこととした.当院では一人のスタッフが1台の携帯電話で主に透視画像を撮影し,必要に応じて全体像の撮影も行い,指導者側のパソコンと画面を共有した.リアルタイム画像を指導者側に見せていく方法としては,患者の全体像を写し,透視を行う体位に問題ないかを確認した.腰椎の高さを調節し,次に透視画像を撮影し,透視装置の角度調整を共有しながら行っていった.音声は携帯電話からの音声をリアルタイムにお互いに聞き取れるようにした(図1).透視画像を共有しながら,ブロック針の穿刺部位確認,穿刺の方向,深さについてもお互いに確認を行っていった.針の位置や造影剤の注入タイミング,神経根造影の所見に問題がないかを確認し安全に行うことができた.

図1

遠隔指導時の配置図

3カ月後,右下腿外側の痛みが残存していたため,右L5神経根ブロックを計画し,再度Zoom®使用下で透視下神経ブロックを行った.

III 考察

ペインクリニック外来を行う医師にとって,指導者がいなければ透視下神経ブロックを施行することは敷居が高い.専門医指定研修施設での研修を行うことが容易にかなわず,十分な訓練が行われていないことも要因である.透視下神経ブロックの経験豊富な医師が少なくなってきており,技術を習得できる機会が極端に減ってきていると思われる.著者らはカダバーでの透視下ブロック研修に参加したが,臨床的な経験がなく指導者もいなかったため,安全面からも施行に至らなかった.今回,コロナ禍で普及し使用経験も多いZoom®を用い,特別な機材を用意することなく,携帯電話とパソコンで透視画像をリアルタイムに共有することが可能で,透視装置の角度調整,針の位置調整,造影剤に対して,的確な助言をリアルタイムに得ることが可能であった.一方,共有透視画像上で指し示すことができず,十分にZoom®の長所を使用できていなかった.透視装置を正面や斜位あるいは側面に動かす際に,指導者は透視画像のみを見ていたが,透視装置の位置が最初の位置よりずれてしまったことがあり,指導者側にはなぜ同じ透視画像が映らないのか把握ができずにいた場面もあった.この場合,最初の位置から全て見直しを行うために,患者の体位とX線透視装置の位置関係の確認に手間を要した.また,ブロック針の運針に関しても,指導者が言葉で位置を説明(上関節突起の左側など)していたが,実施者にはそれがどこなのか(上関節突起のどのくらい左側なのかなど)が分からずに,微妙な見え方の違いで運針の方向の指導も変わるため,指導者は全体像の把握が困難で多少指導に難渋していたようであった.また,共有透視画像を指導者が指し示すことができなかったため,解剖学的な位置に対して“その少し上”とか“少し下”といった曖昧な表現になってしまい,実施者が具体的な位置を把握できないといったこともあった点などは反省すべきである.

オンラインでの超音波ガイド下の神経ブロックセミナーでは,施行者の手元と超音波画像を両方提示されていることが多く,内容の理解が容易である.また,冒頭で述べた遠隔指導下のIVR治療のように2),透視下神経ブロックでも遠隔下で指導が行われる際には,施行者の手元を写す画面と施行者の目線での画面,透視画像の画面,患者や透視装置などの全体像をリアルタイムに同時に共有でき,透視画像内での図示を可能とすれば,より正確にかつ安全に遠隔指導ができるのではないかと考えた.

IV まとめ

WEB会議ツール(Zoom®)を用いた遠隔指導により,画像を共有することで,安全かつ効果的に透視下神経ブロックを行うことが可能であった.

本報告の要旨は,日本ペインクリニック学会 第2回九州支部学術集会(2022年2月,Web開催)において発表した.

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