Journal of Japan Society of Pain Clinicians
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2025 Volume 32 Issue 2 Pages 43-53

Details

会 期:2024年10月26日(土)

オンデマンド配信 2024年11月15日(金)~12月13日(金)

会 場:ピアザ淡海(滋賀県立県民交流センター)

会 長:中西美保(滋賀医科大学麻酔学講座)

開催形式:現地開催+オンデマンド配信

■特別講演I

社会的痛み・共感・向社会行動:神経科学的アプローチ

定藤規弘

立命館大学総合科学技術研究機構

コミュニケーションの一つの定義として,「情報や考え,態度を共有することで相手の心の状態を変えること」があります.この共有の仕組みを理解するためには,模倣や社会的なつながり,共同注意,心の理論といった,社会性の発達に関わる神経回路を明らかにすることが重要です.現在,これらを対象にした機能的MRI研究が進んでいます.向社会行動とは,他者を助けるための自発的な行動を指し,遺伝的に関係のない人々の間での役割分担や協力に重要な役割を果たします.この行動のメカニズムは,共感的な痛みの回避と社会的報酬の獲得という二つの側面で説明されてきました.共感的な痛みの回避は,他人の苦痛を共感し,それを避けようとする動機によって動かされると考えられています.一方,社会的報酬の獲得は,向社会行動が評判を通じて社会的な報酬を生み出し,良い社会的相互作用を促進することを示しています.この過程で報酬系が活性化されることが,機能的MRIによって明らかになっています(Izuma et al. 2008).これらは外部からの動機づけですが,向社会行動の内発的な動機づけについてはまだ多くが不明です.共感は,他者の感情を共有し,その理由を評価し,相手の視点を理解する能力として定義されます.特に人間の向社会行動においては,相手の視点を取得することが重要であり,これによって共感的な喜びが増し,回避的な感情が抑制され,向社会行動が促進されることが脳機能イメージング解析によって明らかになっています(Kawamichi et al. 2016).共感的な喜びによる向社会行動の促進は,内発的な動機づけと考えられ,その起源は,発達初期に見られる母子関係における「相手を喜ばせること自体が報酬となる」社会的随伴性にあるとされています.この神経的な基盤を機能的MRIで調べたところ,初期視覚野から下前頭葉にかけての階層的な処理によって担われていること(Sasaki et al. 2018),さらに社会的随伴性知覚が報酬であること(Sumiya et al. 2017; Miyata et al. 2021)が明らかになりました.内発的な動機づけと社会的承認はウェルビーイングの本質的な要素であるため,これらの神経メカニズムを含めた理解の深化が求められています.

Izuma K, Saito DN, Sadato N. 2008. Neuron. 58: 284–294.

Kawamichi H, et al. 2016. Soc Neurosci. 11: 109–122.

Sasaki AT, et al. 2018. Cortex. 108: 234–251.

Sumiya M, et al. 2017. Neurosci Res. 123: 43–54.

Miyata K, et al. 2021. Neuroimage. 233: 117916.

■特別講演III

Evolution of PRF~慢性疼痛の治療から最新のメカニズムまで~

福井 聖

愛知医科大学痛み医療開発寄附講座

パルス高周波法(pulsed radiofrequency:PRF)は,針先の非絶縁部5 mm~10 mmのみ通電する絶縁針を利用し,ラジオ高周波を間歇的に発生させることで強い電場を発生させ,熱の蓄積・上昇を防ぎ,神経に損傷を与えずに,鎮痛効果,抗炎症効果を発揮するインターベンショナル治療である.PRFは神経組織の変性を起こす可能性は極めて低く,筋力低下や知覚障害,運動麻痺が生じにくい,少ない治療回数で長期の鎮痛効果が得られ,安全で低侵襲な治療法として大きなメリットがある.また超音波ガイド下神経ブロック法の発達も相まって,脊椎疾患から関節疾患,最近ではCRPSや末梢神経障害まで,PRFの対象疾患が拡がっている.PRFは2022年に診療報酬化され,本邦でも周波数:1 Hz/2 Hz/5 Hz/10 Hz,パルス幅:5 ms/10 ms/30 ms/50 msec,電圧:20~70 Vから選択でき,周波数,パルス幅,電圧,施行時間などさまざまなパラメーターを自由に設定できるジェネレーターが2023年に導入された.これまでの機器では最大出力が20W±20%であったが,最新機器では40W±20%と2倍の強さでPRFの電場が作れるようになっている.至適なパラメーターに関しては,高電圧で長時間のPRFで効果が高くなることが,報告されており,筆者らは最新機種でのPRFのパラメーターは周波数5 Hz,パルス幅5,20 msec,電圧60~70 V,施行時間6~10分施行を基本としている.それぞれの病態に至適なパラメーターを明らかにするということが,現在の課題となっている.PRFの作用機序としては,最新のレビューからは,以下のメカニズムが考えられている.1:イオンチャネル(Naチャネル,Ca2+チャネル)の働きの抑制.2:長期抑制の拮抗作用.3:下行性疼痛抑制系の活性化.4:神経伝達物質に対する作用.5:C線維の興奮性の抑制.6:神経細胞の微細構造の変化.7:炎症性サイトカインの減少.8:酸化ストレスを元に戻す作用.9:脊髄後角におけるミクログリア活性の低下.10:内因性オピオイド前駆体mRNAレベルの増加.特にミクログリアに対する作用は,中枢性感作のある慢性疼痛治療の鍵となるメカニズムと考えている.PRFを利用した病態別の先進的な治療として,椎間板内PRF,超音波ガイド下膝関節痛に対するgenicular nerveのPRF,CRPS,末梢神経障害性疼痛に対する末梢神経のPRF治療などについて若干の知見を紹介する.痛覚変調性疼痛の中枢性感作に対して,どのような症例に効果があるのか明らかにしていくことも今後の課題である.このようにPRFは,慢性疼痛患者に対するmultimodalな治療の中で,治療の行き詰まりを打破する有効な一手となることもあり,今後の臨床研究の蓄積が望まれる.

■教育講演II 硬膜外腔癒着剥離術

脊椎診療における硬膜外癒着剥離術(Raczカテーテル)の役割について

水野幸一

日本医科大学多摩永山病院麻酔科

近年,硬膜外癒着剥離術(Raczカテーテル)は日常的に行われる手技となってきたが,それにもかかわらずRaczカテーテルほどその治療意義,適応と効果,手技について意見が分かれる治療法はないと言える.この講演ではRaczカテーテルの原理を再考し,われわれの経験を基にその適応と治療の限界について,いくつかの提唱をしたいと思う.

1.Raczカテーテルの目的

硬膜外癒着剥離という言葉の「癒着」および「剥離」の定義が曖昧なため,Raczカテーテルの解釈が定まらず,手技にバリエーションが見られる.当科では2012年からRacz原法に近いプロトコルで行っているが,その意義を「病変部の液性剥離,洗浄,集中的薬液投与を主たる目的とするもの」と解釈しており,機械的な剥離,いわゆるneuroplastyはカテーテルの性状および合併症防止の点からも期待できないと考えている.

2.Raczカテーテルの適応

「痛みの原因が硬膜外癒着と考えられ,その病変は硬膜外造影にて陰影欠損として描出される.その上,症状および理学所見はその病変に由来するものと考えて矛盾しない」この病態をRaczカテーテルの適応とし,病名や狭窄の程度や症状の強さは特に関係ないと考えている.この中には一般的に保存的治療の適応外とされていたものも含まれる.症例とともに提示したい.

3.Raczカテーテルの限界

治療の限界を述べることは,Raczカテーテルの効能を最大に活かせたという確信がないと不可能である.すなわち症状が改善しなかった事実に対し「手技が原因」なのか「病態が原因」なのかを区別できる必要がある.このため,われわれは病変部にカテーテルをいかに接近させられるかという手技にこだわりを持って行っている.適切な手技のRaczカテーテルが効果をなさない,これは次なる治療へのスタートであり他の治療選択肢が用意されている.実際の症例を供覧しさまざまな治療の中でRaczカテーテルがどのような役割を担っているか考えたい.

4.Raczカテーテルの今後の課題

Raczカテーテルは病巣を根本除去する治療ではなく,まさに脊椎診療の「中庸」である.施術翌日からすっきり症状が改善するような治療でもなければ,適切な後療法を行わないと症状再燃の可能性も高い.超高齢化社会の今日,適応となる症例は増加の一方であるが施術後リハビリテーションの体制が十分とは言えない.Raczカテーテルの効果を最大限に高めるためにも後療法の確立については早急の課題であり,現在考案中である.

■特別企画II 慢性疼痛に対する集学的治療

慢性痛の心療内科的治療

水野泰行

関西医科大学心療内科学講座

慢性痛は言わずと知れた難治性の疾患で,その病態を理解するためには生物心理社会的(BPS)モデルにもとづいて,個々の患者をよく知ることが必要だ.この医学モデルは1970年代にEngelが提唱した概念で,従来の直線的な因果関係を前提としている生物医学的モデルでは理解できない病態を説明するためのものである.社会が複雑化するに伴い増えてきた多要因が複雑に絡み合った疾病では,特定の「原因」よりも多彩な「要因」の円環的相互作用を想定することが重要となる.そのためヒトの生物学的メカニズムだけではなく,病を抱えたその人の生活や環境,文化,信条,価値観,思考,気分や行動といったあらゆるものが疾病に関与する要因となり得る.これがBPSモデルを前提とする心療内科が,全人的医療と呼ばれる所以である.それらの要因の中から,患者の状態を理解し治療するために役立ちそうなものを組み合わせて心身医学的病態仮説を構築し,患者や関係者と共有し,悪循環を好循環へ変化させる過程が心療内科における治療である.

慢性痛においては,多くの症例で痛みに対する認知や対処行動,選択的注意,過覚醒などが,患者個人の要因として関与している.また外的な要因として,仕事や家事,学業,対人関係などの身近な社会的状況,景気や政策,気候,災害,パンデミックなどの巨視的な社会環境の関与も想定しなければならない症例も少なくはない.こういった情報は患者自身から得られるものであり,患者−治療者関係によって情報の質も意味も変わってくる.心療内科では良好な治療関係の構築は治療の一環ととらえており,常に関係性を意識している.その上で,患者が能動的に変化し,自己効力感と自己コントロール感を高めて,治療者が不要になるまでを援助するのが治療である.

今回の特別企画では,こういった心療内科での治療の一端を紹介したい.

慢性痛診療の薬味としての心理職

安達友紀

神戸大学大学院人間発達環境学研究科,滋賀医科大学医学部附属病院ペインクリニック科

多くの先達の先生方のご尽力によって,本邦においても,慢性痛・慢性疼痛に心理社会的要因が密接な関与を示すことや心理社会的アプローチが一定の意義を有することが周知されてきたように思います.しかしながら,心理職が集学的診療の中で活動する様子を目の当たりにする機会というのは,医療者にとっても,患者さんにとってもまだまだ限られているかもしれません.本講演では,集学的診療の中での心理職の活動(評価や認知行動療法などの心理社会的アプローチ)について紹介し,慢性痛・慢性疼痛の診療で心理社会的背景に目を向ける意義について,参加者の先生方と一緒に考える機会とさせていただきたいと思います.医師・看護師・療法士といった医療者が,患者さんとのよりよい関わりをもつうえで,薬味やスパイスのような役割が心理職に果たせるのではないかと考えています.

慢性疼痛患者に対する運動療法

下 和弘

神戸学院大学総合リハビリテーション学部

慢性疼痛患者は,痛みを理由とした不活動から身体機能の低下やさらなる痛みの増悪を招き,それらが悪循環となって,生活が制限されていることが多い.そのため,痛みがあっても身体活動量を維持,増加させる介入は重要な慢性疼痛マネジメントの一つとなり,運動療法はその役割を担う.運動を継続することで,慢性疼痛患者の痛みや機能障害が改善することは多く報告されており,慢性疼痛マネジメントにおいて運動療法は全ての患者に適応すべき第一選択治療と位置付けられている.一方で,実際の慢性疼痛患者に運動を勧めても「痛くて動かせない」「動かすと痛くなる」などの訴えがあり,運動療法の実施が難しいことが少なくない.慢性疼痛患者では,運動による痛みを経験することで痛みや運動に対する誤った考え方が助長され,運動への恐怖・回避を招き,不活動となり,運動耐容能が低下し,運動によって痛みが生じやすい状態が維持・増強されるexercise-induced hyperalgesiaと称される悪循環を呈することが示されている.そのため,慢性痛患者に運動療法を処方する場合には,この悪循環を意識して,運動や痛みに関する誤った考え方を是正する取り組みを行うこと,患者の身体機能や普段の身体活動量を考慮して適切な強度の運動から開始すること,徐々に運動の負荷や身体活動量を増やすことが必要である.

集学的治療が必要となる患者は,長期間の痛みや不活動によって筋力低下などの身体機能低下を呈している場合だけでなく,患者の訴えと実際の身体機能が乖離していることも少なくない.それぞれの場合における運動療法の進め方について,理学療法士の立場からお伝えするとともに,集学的治療をどのように展開していくかについて議論するための話題提供としたい.

■ハンズオン座学 超音波ガイド下神経ブロック

1. 手術麻酔にも,ペインクリニックにも使える「腕神経叢・頸椎神経根」ブロック

木田健太郎

神戸大山病院麻酔科・ペインクリニック内科/外科・緩和ケア科

腕神経叢ブロックと頸椎神経根ブロックは,周術期の疼痛管理だけではなく,ペインクリニック外来診療においても重要な神経ブロックの手技です.かつてはランドマーク法や神経刺激法を併用し,行われていました.その効果は認めるものの難易度,合併症の恐れ,そして成功率の低さから積極的に行われていませんでした.現在,超音波装置の進歩により,これら全てのデメリットを覆すことができるようになったため,従来の手技よりも超音波ガイド法は最近ますます普及しています.特にペインクリニック外来においては,患者さんに対して,安全に迅速で,かつ効果的な治療が求められると考えています.

超音波ガイド下腕神経叢ブロックは,肩から前腕にかけての周術期疼痛管理をよりよく行うことを目的として行います.患者さんの痛みの部位によっては,ペインクリニック外来でも活用することができます.

超音波ガイド下頸椎神経根ブロックは,頸部の痛みや神経根の圧迫による症状の治療に用いられます.原因となっている頸椎神経根を超音波ガイドで正確に同定することで,効果的にブロックを行うことができます.ペインクリニック外来では,頸椎椎間板ヘルニアや頸椎症性神経根症における痛みの治療に特に有効です.

どちらの神経ブロックも外来診察室での実施が可能であり,手術室や透視室へ移動する必要はなく,迅速に治療を受けることができます.超音波ガイド下にブロックを行うことで,高い精度と安全性を担保し,患者さんの痛みを効果的に軽減し生活の質を向上させることが期待されます.手技のさらなる普及で,より多くの患者さんに恩恵をもたらすことが期待されます.

今回の講演およびハンズオンでは,腕神経叢および頸椎神経根の基本的な解剖と超音波画像,またブロック施行時における注意点などを解説させていただきます.

2. 脊髄神経後枝内側枝領域のブロック初級編

鈴木智文

JA三重厚生連三重北医療センターいなべ総合病院

脊髄神経後枝内側枝領域の鎮痛法として頸椎,胸椎,腰椎それぞれの領域でのアプローチについて紹介する.今回取り上げるアプローチはいずれもコンパートメントブロックで,多椎間に効果を得たい場合に有用である.演者は脊椎手術の術後鎮痛としてこれらのブロックを頻用している.頸椎領域ではmultifidus cervicis plane(MCP)block,胸椎領域ではerector spinae plane block(ESPB),腰椎領域ではthoracolumbar interfascial plane(TLIP)blockを取り上げる.いずれも椎弓や横突起,関節突起とその周囲の筋組織を描出する手法で,対象の描出自体は難しくないが,筋膜面を判別する見方に目を慣らす必要はある.いずれも付近に重篤な合併症を起こしうる構造が少ないことから,初学者が実施するにあたっても心理的なハードルは高くないと思われる.ただし,時に発達した分節動脈や深頸動脈が穿刺経路に見られることがあり,注意が必要である.今回紹介する神経ブロックは,神経根ブロックや椎間関節ブロックのように特定の椎間に効果を得たい場合には不向きであるが,ターゲットの描出が容易であることから,それらのブロックが困難な場合の次善策としても有用と考える.

MCP blockは大越らにより2016年に報告された.頸椎背側の筋層は表面から順に僧帽筋,頭板状筋,頭半棘筋,頸半棘筋,多裂筋と並び,椎弓に到達する.MCP blockでは頸半棘筋と多裂筋の筋膜面に薬液を注入する.注入量により効果範囲は異なるが,最大でC4~T4の範囲に効果を得られるとされている.ESPBは胸壁や腹壁の鎮痛法の一つとしても一定の効果があるとされており,突起間ブロックの1アプローチとして知られている.外側皮枝や前枝にも効果が得られるとされているが,最も効果が得られるのは後枝内側枝領域である.矢状断で胸椎横突起を描出し,プローブを外側へとスライドして肋骨へと移行する部位を確認する.その後,少し内側にプローブを戻して横突起の先端付近の位置で横突起の表層にある脊柱起立筋の筋膜面に薬液を注入する.TLIP blockは2015年にHandらが報告したブロックである.腰椎レベルでは棘突起を中心に外側に向かって多裂筋,最長筋,腸肋筋と筋層が並んでおり,TLIP blockでは多裂筋と最長筋の筋膜面に薬液を注入する.

脊髄神経後枝内側枝領域のブロックはいずれも薬液注入部位を少し変えた亜型のブロックが報告されており,それぞれ効果をうたっている.どのブロックがより効果的で,安全に施行可能か今後の研究成果が待たれるところである.

3. ペイン診療でも使える足関節とその周囲のブロック

櫻井洸太朗

京都大学医学部附属病院麻酔科

足部の疼痛は歩行を困難にするため,患者の日常生活に多大な影響を及ぼすことが多い.そのため,ペインクリニック診療においても足部の疼痛はよく見られる症状の一つである.特に,高齢者や糖尿病患者などでは,慢性的な足部の痛みが生活の質を大きく低下させる要因となる.このような背景から,足部疼痛に対する適切な管理が重要であり,足関節ブロックはその一環として非常に有用である.

足関節ブロックは足関節より末梢の疼痛に対して有用性の高いブロックである.具体的な適応として,手術のリスクが高い患者や,手術適応には至らないものの疼痛の強い潰瘍,変形,神経絞扼による疼痛などがある.これらの症例では,痛みが日常生活を著しく制限することもあり,患者の苦痛を軽減するために神経ブロック療法が有用となる可能性がある.

足関節ブロックのメリットとして,運動神経に対する影響が少ないため,外来での施行がしやすい点がある.また,足関節を支配する神経は体表に近いため,ブロックを行う際の出血リスクが低く,使用する局所麻酔薬の量も少なくて済むことが特徴である.ランドマーク法によってブロックを行うことも可能であるが,超音波ガイド下での施行により,ブロックの成功率が向上し,血管への誤穿刺を避けることができる.また,万が一血管内へ誤注入した場合でも迅速に気付くことができ,合併症の発生を抑制することが期待される.

さらに,ペインクリニックでの治療に特有の利点として,神経を直接視認できるため,高周波熱凝固や高周波パルス療法といった治療への応用が効きやすい点が挙げられる.これにより,慢性的な足部疼痛に対しても,より精密かつ効果的なアプローチが可能となる.

足関節以遠の神経支配は,浅腓骨神経,腓腹神経,伏在神経,深腓骨神経,後脛骨神経の5本の末梢神経で構成されている.それぞれの神経は特定の皮膚および骨の領域を支配しており,これらの解剖学的知識は超音波ガイド下でブロックを行う際に非常に重要である.本講義では,これらの神経について,具体的な神経支配領域を示すとともに,超音波を用いて効果的に描出するための解剖学的なポイントやコツについて説明する.

4. 傍仙骨坐骨神経ブロック・陰部神経ブロック

中本達夫

関西医科大学附属病院麻酔科学講座

坐骨神経および陰部神経はともに,仙骨神経叢から分枝する神経であり,股関節以下の下肢や陰部の運動や感覚に関与する.下肢痛や陰部痛は脊柱管病変に伴う症状として生じることもあるものの,末梢レベルでの神経絞扼などによっても生じうるため,これらの神経ブロックに関する知識は重要である.傍仙骨坐骨神経ブロック(SNB)は,仙骨神経叢から坐骨神経が分枝し,大坐骨孔の梨状筋下孔を通じて骨盤外へと出るレベルでのブロックであり,数多くある坐骨神経ブロックの中で,最も近位でのアプローチとなる.一般に,コンベクスプローブを用いて実施され,患者体位は腹臥位または側臥位で実施される.大坐骨孔レベルで,梨状筋の深部に高エコー性に描出される坐骨神経を目標にブロック針の穿刺が行われる.またSNBの手技は,いわゆる梨状筋ブロックの実施にも応用可能である.陰部神経ブロック(PNB)は,仙骨神経叢から分枝した陰部神経が内陰部動脈とともに下降し,仙棘靱帯と仙結節靱帯の間を通過して,内閉鎖筋と肛門挙筋の間隙を通過して陰部の筋・皮膚へと分布する経路の中で,坐骨棘あるいは坐骨結節レベルで実施される.超音波ガイド下に行う際には,これらの骨性構造の他に,靱帯や筋,動脈がランドマークとなる.講演では,これらのブロックの実施に必要な,解剖・超音波解剖・実際の手技の様子などについて供覧する予定としている.

■一般演題I 神経ブロック

I–1 右Th2帯状疱疹後神経痛に対して胸壁神経と肋間上腕神経ブロックを併用した1症例

廣津聡子*1 宮尾真理子*1 池浦麻紀子*1 加藤果林*1,2 川本修司*3 江木盛時*1

*1京都大学医学部附属病院麻酔科,*2京都大学医学部附属病院医療安全管理部,*3京都大学医学部附属病院集中治療部

【緒言】胸壁神経ブロック(PECSB)の慢性痛に対する報告は限られている.今回,PECSBと肋間上腕神経ブロック(IBNB)を併用した帯状疱疹後神経痛(PHN)の症例を経験した.

【症例】70代男性.30日前に発症した右Th2領域帯状疱疹後の疼痛加療目的に当科紹介となった.初診時,右前胸部外側優位にVAS 100の疼痛を認め,右Th2~4領域に0.2%ロピバカイン5 mlで傍脊椎ブロック(PVB)を施行した.背部痛は軽快したが前胸部痛がVAS 95で残存し,前医からのミロガバリン30 mg/日を継続した.ミロガバリンは効果がなく,翌週に0.2%ロピバカインと0.5%リドカイン計20 mlでエコーガイド下PECSBを施行したところ前胸部痛がVAS 70に軽減した.週1回のPECSBを計3回施行後,右上腕内側の疼痛残存に対し5回目よりPECSBにIBNBを追加したところ,初診から42日後にVAS 40まで改善した.

【考察】本症例では疼痛が肋間神経外側皮枝および肋間上腕神経優位であったため,PVBより合併症の少ないPECSBとIBNBにより局所麻酔薬量を増加でき,外来で鎮痛管理を図れたと考える.

I–2 頸椎症に対する脊髄刺激療法が狭心痛に奏功した症例

池垣友康 石本大輔 高雄由美子

兵庫医科大学病院

本邦ガイドラインにおいて,脊髄刺激療法(spinal cord stimulation:SCS)の推奨度の高い疾患は,脊椎手術後症候群,末梢血行障害となっている.今回頸椎手術後に残存する頸部から上肢の痛みに対してSCSトライアルを施行し併存していた狭心痛にも効果があった症例を経験したので報告する.47歳男性,頸椎症に対して手術施行したが,頸部から右上肢にかけての疼痛が残存し首を横に向けることもできず,脊椎術後疼痛症候群および筋筋膜性疼痛疑いでペインクリニックの受診となった.頸部硬膜外ブロックを施行したが効果は限定的であり,SCSトライアルを行った.電極は先端がC2,3となるように留置した.刺激開始後数日後から頸部痛の改善が認められた.また患者は併存疾患として狭心症があり,以前は1カ月に数回程度硝酸薬の使用を必要とする強い狭心痛があったが,トライアル中は予兆もなく経過した.トライアル終了後翌日から狭心痛が再燃した.SCSが頸椎症に対して効果を認めたため,植込み術が施行された.植込み後に同様の刺激で頸部および狭心痛に対する効果は得られた.

I–3 透視下S4神経根,仙骨硬膜外高周波パルス療法が奏功した帯状疱疹関連痛の1症例

木本勝大 山口綾子 河田大輝 長畑敏弘

ベルランド総合病院麻酔科

【症例】84歳男性.前立腺がん加療のため当院通院中.X日右殿部,肛門周囲痛,その後膨疹が出現した.近医で帯状疱疹と診断され,X+7日からアメナビル400 mg/日を1週間内服し,トラムセット配合錠®3錠/日,プレガバリン50 mg/日が処方されたが,痛みが残存するためX+25日当科初診となった.初診時VASは100,右S4領域の8割に集簇著明な皮疹,アロディニアおよび知覚低下を認めた.排尿障害は認めなかった.ケタミン10 mg,ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液3.6単位の点滴,デュロキセチン20 mg/日の内服を追加したが無効であった.X+42日点滴加療に代え仙骨硬膜外ブロックを施行し殿部痛VASは70に改善したが効果は1日のみ,排便時痛VASは100で残存した.X+81日透視下右S4神経根パルス高周波法(以下PRF)によりVASは70に低下し数週間持続した.さらにX+130日仙骨硬膜外PRF施行後殿部痛VASは30に低下,排便時痛も消失した.X+150日現在内服加療のみ継続している.

【考察】会陰部の帯状疱疹関連痛に対しS4神経根および仙骨硬膜外PRFが有効である可能性が示唆された.

I–4 複数の神経ブロックを用いて痛みの治療を行った腰椎分離すべり症の1例

宮田妙子*1 橋村尚香*2 横川直美*2 貴志暢之*2

*1白庭病院,*2大阪ろうさい病院

【症例】84歳,男性.当院整形外科で腰椎分離すべり症と診断され,痛みが続くためブロック治療を希望され当科紹介となった.

【治療経過】X年4月初診時は左臀部から下肢全体の痛みがあり,安静時はVAS 20 mm,動作時にはVAS 65 mmと増悪するため歩行に支障が見られた.疼痛誘発テストではBragardとPatrickテスト以外は陰性であった.まず仙骨部硬膜外ブロック(0.18%ロピバカイン)を行い,下肢の筋力低下が帰宅後まで続いたが痛みの緩和は得られなかった.次にL5神経根ブロック(1%リドカイン)を行ったところ,大腿外側から下腿外側にかけての痛みは軽減し,臀部と大腿後面の痛みが残った.そこで後大腿皮神経ブロックをまずは1%リドカインで行い,効果が得られたのでパルス高周波術を行った.初診から1カ月後には左下腿全体の痛みは消失しており,左臀部のみとなり,上後腸骨棘の圧痛があったため仙腸関節枝ブロックを1%リドカインで行ったところ,痛みは軽減し,終診となった.

【考察】腰椎分離すべり症による症状に対して痛みの部位を特定して神経ブロックを選択することで良好な鎮痛効果が得られたと考えられた.

I–5 レイノー症候群に対し星状神経節パルス高周波法が奏功した症例

杉本美和 辻川翔吾 宅野結貴 長谷川湧也 矢部充英 森  隆

大阪公立大学大学院医学研究科麻酔科学講座

【目的】レイノー症候群は末梢循環障害のため強い痛みを伴うことがあるが,難治性であり有効な治療法が確立されていない.今回,レイノー症候群に対し星状神経節パルス高周波法(SGP)が著効した症例を経験した.

【症例】63歳,女性.当科初診8カ月前より両手指の色調変化と冷感を自覚し内科を受診.膠原病や動脈疾患は否定され,寒冷により誘発される有痛性の手指症状が強いため当科紹介となった.プロスタグランジン製剤,抗血小板薬は効果を認めなかったが,右星状神経節ブロック(SGB)は1カ月程度,症状を緩和させた.しかしSGBを毎月施行する必要があり,両側星状神経節近傍近赤外線照射では代替できなかったため,右SGP(42℃,600秒間)を施行したところ症状の発現頻度が激減した.SGP施行後6カ月間,効果は持続しNRS 1~2/10でコントロールされている.

【考察】レイノー症候群の治療は薬物療法,神経ブロック,交感神経切除術が挙げられるが,有効な治療法は確立されていない.レイノー症候群に対するSGPの有用性についてはこれまでに報告が無い.SGBが有効な症例では長期の効果が期待できるので治療選択肢となりえる.

I–6 透視パルスレート3回/秒はブロック時の被曝低減に有効か?―7.5回/秒との比較

中村大輝 上北郁男 橋爪圭司

高清会高井病院ペインクリック外科

【目的と方法】透視下神経ブロックは安全,確実で,診断的価値もある一方,患者および術者の被曝の問題がある.被曝の低減方法に,毎秒当たり透視回数;pulse rate(以下,PR)の調整がある.放射線被曝は照射時間に比例するので,PRを半減させると被曝線量も半減するはずであるが,画像の視認性が悪化して手技時間が延長すると,低減効果が打ち消される可能性もある.われわれは腰部神経根ブロック67症例においてPR 15 p/sと7.5 p/sを比較し,7.5 p/sで患者被曝線量が有意に少なく,手技時間の延長も認めなかった.今回はPRを7.5 p/sに固定した2023.6.30~9.30と3 p/sに固定した2024.4.24~7.24の各期間に同一の透視下腰・仙椎神経根ブロックを複数回受けた35名を抽出し,累積被曝線量(mGy)と累積透視時間(sec)を比較した.

【結果】7.5 p/s vs 3 p/sで,透視時間は34.8 vs 36.1 secと差がなく,被曝線量は7.4 vs 5.1 mGyで有意差を認めた.PR 3 p/sは7.5 p/sに比して透視時間に延長なく,患者被曝線量を減らすことができた.

■一般演題II 慢性疼痛

II–1 上肢の痛覚変調性疼痛に対して腕神経叢ブロックとデュロキセチンが奏功した1症例

横川直美*1 宮田妙子*2 貴志暢之*1 橋村尚香*1

*1大阪ろうさい病院,*2白庭病院

【症例】64歳男性.2年前から持続するシャント閉鎖痕の痛みを主訴に紹介受診された.

【既往歴】X−10年左上肢内シャント作成,X−8年生体腎移植,X−2年内シャント閉鎖.

【経過】左肘部の血管瘤の部分や上腕内側や前腕撓側の持続痛と誘因のない突出痛があり(VAS:42 mm),アロディニアも認めた.X年1月初診時は問診等の結果から痛覚変調性疼痛を強く疑い,デュロキセチンを開始した.初回は腕神経叢ブロック(斜角筋間アプローチ,0.75%ロピバカイン5 ml+生理食塩水10 ml)も行った.神経ブロック後に左上肢全体の痺れと,触知にて痛みのないことを自覚された.3週間後には痛みの回数が減りVASは25 mmであった.デュロキセチンは20 mg/日で継続しX年8月にはほぼ痛みのない程度となった.

【考察】慢性疼痛診療ガイドラインではデュロキセチンが有効なことはエビデンスが高いと示されており使用を強く推奨されている.本症例では痛みの悪循環を断ち切る意味で,インターベンショナル治療として初回に腕神経叢ブロックも行ったことでより効果的に痛みを緩和することができたと考える.

II–2 上腕熱傷後の疼痛に対してパルス高周波法が著効し薬剤性めまいのリスクが軽減した1例

村上瑛亮 緒方洪輔 中本達夫 増澤宗洋

関西医科大学総合医療センター

【症例】既往歴のない20歳代男性.X−6年5月,左上肢熱傷に植皮術を施行された.ミロガバリンを最大30 mg/日使用するもめまいのため,10 mg/日で維持されていたが視覚的アナログスケール(VAS):80/100でありX−3年1月当科紹介となった.内側上腕皮神経に対するテストブロックで効果を認めたため,X−3年2月に高周波熱凝固法(RF)を施行した.RFを数回施行したが,近傍の左尺側神経の領域の疼痛と運動障害が一時的に出現したためX−2年7月にパルス高周波法(PRF)の施行に切り替えた.以後3~4カ月ごとにPRFを施行し,ミロガバリン,トラマドールが中止可能となった.7回目のPRF施行後はNSAIDs,アセトアミノフェンのみで経過良好となり,直近では半年以上薬物療法のみで副作用なく経過観察できている.

【考察】PRFは効果持続時間が数カ月と長く,繰り返し施行による相乗効果の可能性も報告されている.本症例では薬剤性のめまいの副作用に対する忍容性が低く内服のみでは疼痛コントロールが難渋していたが,PRFによって内服薬の減量・中止が可能となり,鎮痛効果のみならずADL向上の一助ともなった.

II–3 神経ブロック後に運動療法を開始継続させたことで症状改善を得た難治性上肢痛の1症例

旭爪章統 中村恵梨子 中村里依子 中本達夫 上林卓彦

関西医科大学麻酔科学講座

【症例】70歳台の女性.半年前から右の上肢に痛みを自覚.近医で処方をうけるも改善が薄く当科紹介となる.診察室で痛みのため前屈し巻き肩となって姿勢が悪いこと,また痛みでほとんど家にこもるなど活動性が落ちていること等が悪影響を及ぼしていると判断.痛くて動けないという状態のため,肩甲背神経ブロックと肩甲上神経ブロックを行ったうえで肩関節運動を中心に日々運動を継続するよう指示した.処置直後は症状の変化はなかったとのことだが処置5日目に症状の軽快を自覚.翌日には起床時の痛みを感じない状況となり,以降症状増悪することなく経過している.

【考察】筋筋膜性疼痛における筋緊張緩和には運動療法が有効であるが,痛みのために運動ができないという状態であった.この患者に対し神経ブロックで症状緩和と局所環境の改善を与えたタイミングで適切な運動を課せたことで筋緊張性の解除を導き,継続した結果鎮痛を得られたと考える.

【結語】筋緊張に伴う痛みの患者に対して神経ブロックを初動の契機として利用することで運動療法を良好に導入し鎮痛を得た症例を経験した.患者の生活様式や外来でのふるまいなど患者の全体像を常に観察する意識も大切である.

II–4 超音波ガイド下陰部神経ブロックが奏功した慢性臀部・会陰部痛の1例

堀池博吏 松田陽一 高橋亜矢子 山中百優 西尾龍太郎

大阪大学医学部附属病院

【症例】60歳男性.4年前から左会陰部・臀部・下肢の痛みで坐位保持が困難となり,肛門科では器質的疾患は否定された.前医で仙骨硬膜外造影,左S1~3神経根ブロックが施行され,下肢痛は改善したが会陰部・臀部痛は変化なく,薬物療法も無効であったため当院紹介となった.10~30分の坐位でNRS 6に増強する左臀部から会陰部にかけての痛みがあり,圧痛や動作時痛はなく,知覚異常はなかった.超音波ガイド下左陰部神経ブロック(1%リドカイン3 ml+ベタメタゾン2 mg)を施行すると坐位保持時間の延長がみられた.2週間ごとに計3回施行したところ,痛みの強度はNRS 3まで軽減し坐位保持時間は1時間まで改善した.以後は2カ月に1回の陰部神経ブロックで痛みとADLの改善を維持している.

【考察】本症例の痛みは,仙骨神経レベルでの神経ブロックは無効であったが,より末梢の陰部神経ブロックにより改善したことから,坐位の持続で陰部神経が坐骨付近で圧迫を受けることにより出現する絞扼性の陰部神経痛の可能性が考えられた.坐位で増強する慢性会陰部・臀部痛は超音波ガイド下陰部神経ブロックを考慮すべきである.

II–5 ペインクリニック外来における慢性疼痛患者への看護介入

出穂麻智子*1 金  徹*1 山下祐貴*2

*1日本医科大学千葉北総病院,*2公立甲賀病院

わが国の慢性疼痛の有病率は全成人の22.5%,推計患者数は2,315万人と報告されている.高齢者においては,慢性的な関節疾患が要介護あるいは要支援状態となる原因であることも多く,社会保障財源の逼迫や医療・介護の担い手不足などの問題を抱える現在,慢性疼痛対策の推進が課題となっている.

慢性疼痛の病態は,骨関節変性や神経・筋(障害)といった器質的な要因だけでなく,心理社会的要因の影響を受けることがわかっており,診療には集学的な多職種による介入が効果的であることが報告されている.しかし,集学的な診療は国内において,38カ所の大学病院等が指定を受ける「集学的痛みセンター」等,一部の施設のみで受けられる状態であり,集学的な診療・支援を迅速に受けられる体制の整備が必要な状況にある.

当院の慢性疼痛患者に対する治療は,麻酔科医による薬物療法,神経ブロック療法である.本発表は,今年度からペインクリニック外来に携わった看護師が,慢性疼痛患者の現状と課題を抽出し,痛みの理解とセルフケアの必要性を見いだしたため,慢性疼痛患者の課題および課題に対する看護師の活動,今後の展望について言及する.

II–6 ペインクリニック治療は抑うつ患者の障害悪化を阻止できるのか?

藤原亜紀*1 渡邉恵介*2 吉村季恵*1 山村祐司*1 西井世良*2 川口昌彦*1

*1奈良県立医科大学麻酔科,*2奈良県立医科大学附属病院ペインセンター

【はじめに】慢性疼痛の治療目標は障害の減少である.抑うつが高齢者における障害発生のリスク因子であることが複数の縦断研究で示されている.

【目的】ペインクリニック治療が,抑うつが障害に与える負の影響を抑制するのかを調べる.

【方法】2019年4月~2021年3月までに当院を受診した50歳以上の慢性疼痛患者に対して,痛みの強さ(NRS),健康関連QOL(EQ5D5L),痛みの破局化思考(PCS),不安・抑うつ(HADS),障害(WHODAS)を3カ月ごとに1年間評価した.初回にHADSのD項目が11点以上の症例を抑うつ有とし,抑うつ有群と抑うつ無群の1年後の障害悪化症例割合を比較した.WHODAS点数が9点以上増加した場合を障害悪化と定義した.

【結果】1年間受診を継続し評価ができた患者は406人であった.抑うつ有群は80人(平均年齢67.2歳,男35人),抑うつ無群は326人(平均年齢70.7歳,男154人)であった.1年後の障害悪化症例は抑うつ有群8人,抑うつ無群27人であり,有意差がなかった(p=0.62).

【考察】抑うつが障害に与える負の影響をペインクリニック治療が抑制する可能性がある.

■一般演題III 難治性疼痛

III–1 後天性血友病による尿管出血で生じた疼痛の緩和に漢方薬が有効であった1症例

田原慎治 緒方洪輔 村上瑛亮 増澤宗洋

関西医科大学総合医療センター

腎出血では血塊が尿管を閉塞させ尿管結石様の疝痛発作が出現することがある.特発性腎出血が疑われ後に後天性血友病と診断された腰背部の高度疼痛に対して漢方薬が疼痛緩和の一助となった症例を経験した.

【症例】40代女性.関節リウマチとシェーグレン症候群のため膠原病内科通院中であった.X年4月に肉眼的血尿と右腰背部痛のため泌尿器外科に紹介受診となり特発性腎出血と軽度の右水腎症と診断された.鎮痛薬での疼痛管理と尿管鏡下経尿道的腎孟尿管凝固止血術が行われたが改善せず,X年12月にペインクリニックに紹介となった.疝痛発作に芍薬甘草湯を開始し疼痛は軽減を認め泌尿器科で継続処方として一旦終診とした.X+1年6月,血液腫瘍内科にて後天性血友病と診断されステロイド加療を開始された.血尿は改善するもステロイドを漸減すると再燃することを繰り返していた.X+2年7月,帯状疱疹を発症したためペインクリニック科に再診となった.血尿についての加療も希望されX+3年4月に芎帰膠艾湯を開始し血尿はあるものの止血効果を自覚されたため継続とした.

【考察】後天性血友病と肉眼的血尿の治療中に漢方薬が症状緩和の一助となったと考えられた.

III–2 米国留学中に帯状疱疹を発症した妊婦の1症例

神田 恵 神田浩嗣 川股知之

和歌山県立医科大学

【緒言】まれではあるが,妊娠中に帯状疱疹を発症することがある.今回,米国留学中に帯状疱疹を発症し,疼痛治療を受けた妊婦の1症例を報告する.

【症例】36歳,女性.特記すべき既往歴はなかった.X年12月に渡米し,X+1年4月に妊娠6週の診断となった.X+1年7月妊娠21週0日に仙骨神経領域の皮膚に発疹と軽度疼痛,違和感が出現した.妊娠21週2日に近医産科にて帯状疱疹の診断となり,抗ウイルス薬と非オピオイド鎮痛薬による治療を開始した.疼痛が増強しアロディニアと灼熱痛,夜間睡眠困難等の症状が出現したため,妊娠21週3日に疼痛診療科を受診した.帯状疱疹痛に対しオピオイド鎮痛薬が処方され,痛みは自制内に緩和した.発症から約2週間後に痛みは完全に消失した.X+1年11月妊娠36週4日に帝王切開により出産し,出生児に異常は認められなかった.

【考察】妊娠は免疫機能が抑制された状態であるため,帯状疱疹を発症した際に帯状疱疹痛が難治化するリスク因子である.本症例では妊娠中の帯状疱疹痛に対して発症早期に疼痛診療科による疼痛管理を受け,効果的な鎮痛を得ることができた.

III–3 眉間痛を主訴とした片頭痛の1症例

赤澤舞衣*1,2 藤野能久*1 中西美保*2

*1東近江総合医療センター麻酔科,*2滋賀医科大学麻酔学講座

【緒言】片頭痛は非典型的な症状のために診断に難渋することがある.今回,眉間痛を主訴とした片頭痛の1例を経験したので報告する.

【症例】41歳の男性.20歳代から眉間の痛みを認め,耳鼻咽喉科で精査されたが原因不明だった.ロキソプロフェン内服は無効で,痛みが増悪傾向となり当科に紹介された.両側性・非拍動性の痛み(NRS 2~7/10)が数時間~12時間持続した.痛みの頻度は14回/月程度で,4回/月は痛みのため寝込む状態であった.痛みに先行して肩の筋緊張を認めた.ミロガバリン内服を開始して重度の痛みは1~2回/月に減少したが,軽~中程度の痛みは改善しなかった.経過中に,痛みはしばしば片側性で光過敏を伴い,日常動作で増悪することが明らかになった.前兆のない片頭痛(国際頭痛分類1.1)と診断し,スマトリプタンコハク酸塩50 mgを疼痛時頓用で処方したところ著効した.初診6カ月後には痛みはNRS 2/10(1~2回/月)に改善した.

【考察・結語】本症例では繰り返し詳細な問診を行うことで片頭痛の診断に至り適切な治療が行えた.長引く眉間痛は片頭痛の症状である可能性も念頭に置くべきである.

III–4 トラマドール製剤処方後に幻覚を生じた2症例

東方謙介 岩元辰篤 松本知之 湯浅あかね 吉野由佳里 越智貴広

近畿大学麻酔科学講座

トラマドール製剤処方後に幻覚を生じた症例を経験したので報告する.

【症例1】80歳,女性.大腿骨の病的骨折術後から右股関節から大腿部にかけての痛みで当科に紹介となった.トラマドール・アセトアミノフェン配合錠と神経ブロック療法で痛みは軽快した.だが,トラマドール製剤処方lカ月後,夜間内服後に攻撃的になり,変なものが見えたりし,また翌日そのことを覚えていないとの家人からの報告があった.これより,トラマドール製剤を中止したところ症状は軽快した.また物忘れの症状が残存したため精神科を受診したところストレス性の注意障害に薬剤性の認知機能低下が重なったのではないかと診断された.

【症例2】94歳,女性.慢性腰下肢痛にトラマールを処方した.腰下肢痛は軽減するが,処方6カ月後に天井に花畑の幻視や突然軍歌が聞こえてくるなどの幻聴が生じた.原因薬剤としてトラマールを疑い中止したところ幻視は消失したが,幻聴は継続した.精神科を受診し,感音性難聴からくる器質的幻聴の可能性が指摘された.トラマドールは,1%未満の副作用として幻覚が報告されているが,高齢者に処方するときは注意が必要である.

III–5 自然完治した重症特発性脳脊髄液減少症の1症例

村谷忠利 萩永桃子

洛西シミズ病院麻酔科

【症例】32歳男性.既往歴はなし.

【現病歴】約3カ月前に後頭部と両肩の痛みを自覚し,頸部椎間板ヘルニアの診断で加療された.その後,起立性の頭痛,嘔吐のため寝たきりとなり,呂律が回らず会話不能な状態で発見され救急搬送となった.搬送時JCS-10,右上肢不全麻痺と両側慢性硬膜下血腫を認めた.左穿頭血腫除去術の施術後,特発性脳脊髄液減少症(SIH)を疑われ紹介となった.

【臨床経過】受診時はJCS-0,異常所見や自覚症状は全てなかった.前施設のMRIで髄液漏が確認できたが自然完治と判断し,特に精査加療は行わず経過観察とした.数カ月異状なく経過している.

【考察】SIHは硬膜下血腫や水腫を併発し重症化することがある.本症例も同様であったが,自然完治した症例はまれであると考える.治療に関して,血腫除去術と硬膜外自家血パッチの施行順序が問題となることがある.自験例では,硬膜外自家血パッチ後に頭蓋内圧亢進による意識障害を起こした症例があった.本症例からも先に血腫除去術を施行する順序が良好な結果を得られる可能性も考えられた.

【結語】SIHに硬膜下血腫と意識障害を伴う重症症例が,自然治癒した症例を経験した.

III–6 認知症のある脳脊髄液漏出症患者の診断と治療を鎮静下に施行した1症例

吉村季恵*2 渡邉恵介*1 藤原亜紀*2 西井世良*1 山村祐司*2 川口昌彦*2

*1奈良県立医科大学附属病院ペインセンター,*2奈良県立医科大学附属病院麻酔科学教室

【症例】78歳女性.硬膜下血腫のため血腫除去術を同月に2回施行された.術後も頭痛が改善せず,CTにて両側の硬膜下血腫と脳幹周囲の脳槽の狭小化を認め,脳脊髄液漏出症(cerebrospinal fluid leakage:CSFL)を疑われた.入院中に認知症が増悪し,意思疎通が困難になった.当科転院後は安静臥床ができず,輸液も末梢静脈路を自己抜去するため施行できなかった.MRI撮影を断念し,ハロペリドール5 mgを筋注し軽度鎮静下にCTミエログラフフィーを施行したところ,Th10~L1/2硬膜外腔に髄液貯留像を認めた.3日後,術前にハロペリドールを筋注し,デクスメトミジンを用いた鎮静下に硬膜外自己血パッチ(epidural blood patch:EBP)を施行した.術後CTでTh1~L2に注入血の広がりを認めた.術後頭痛消失し,笑顔で歩行で退院となった.3カ月後CTで脳槽狭小化の回復を認められた.

【考察】意思疎通が困難な患者は,硬膜下血腫がきっかけでCSFLが見つかる可能性がある.鎮静下のEBPは合併症発見が遅れるリスクがあるが,本症例では他の治療法がないため許容されると考える.

■一般演題IV 緩和医療

IV–1 多剤服用となっていた化学療法誘発性末梢神経障害性疼痛患者に対し入院による薬剤調整

西原侑紀 溝渕知司 佐藤仁昭 野村有紀 上野喬平 岡田卓也

神戸大学医学部附属病院

長期経過のため多剤服用となっていた化学療法誘発性末梢神経障害の患者に対し,入院治療による薬剤調整によりADLを改善し得た症例を経験した.

【症例】60歳代,男性.28年前に精巣がんに対して高位精巣摘除術および術後化学療法が施行された.その後,手袋靴下型の痺れを伴う疼痛が生じ,近医よりプレガバリンやデュロキセチンを処方されたが副作用のため内服継続ができず痺れや痛みは改善しないまま経過した.4年前から併存する不眠症に対しロラゼパム,ゾルピデム,エスゾピクロンが処方されたが,日中の傾眠や入眠困難が増悪し自殺願望も生じたため当科紹介となった.入院時は上記薬剤に加え芍薬甘草湯やイソプロピルアンチピリンも内服しており多剤服用となっていたため内服薬の調整を行った.離脱症状に注意しながらデュロキセチンを減量しロラゼパム,ゾルピデム,エスゾピクロンをトラゾドン,レンボレキサントに変更した.疼痛に対してはミロガバリンの内服を開始し,最終的にデュロキセチン20 mg,ミロガバリン10 mg,トラゾドン50 mg,レンボレキサント5 mgの4剤に調節することができた.現在不眠症は改善し,四肢の軽微な痺れのみでADLは改善している.

IV–2 疼痛による緊急緩和照射の体位保持困難に対して複数の鎮痛薬を用いて対応した症例

大屋里奈*1 上野博司*1 越田晶子*1 天谷文昌*2

*1京都府立医科大学麻酔科学教室疼痛緩和医療部,*2京都府立医科大学麻酔科学教室

【症例】65歳男性.2022年に左背部軟部腫瘍(線維形成性小円形細胞腫瘍)と診断され,化学療法を継続していた.2024年8月のCTで腫瘍浸潤による脊柱管内圧排が指摘されていたが,放射線感受性が低い病理組織のため,下肢麻痺が出現した際に緊急照射する方針であった.

【経過】最終CTから2週間後,下肢麻痺と痛みの増強があり入院となった.緊急緩和照射の適応であったが,痛みのため端坐位しかとることができなかった.腫瘍の脊柱管内伸展のため硬膜外ブロックは施行不可であり,オキシコドン内服80 mg/日を静注75 mg/日へ変換,増量し,フルルビプロフェンとアセトアミノフェンの点滴静注も併用した.緊急照射時には緩和ケア医師が付き添い,場合によってはプロポフォールやケタラールで鎮静もできるように準備した.結果的に鎮静薬は使用せず,オピオイド増量の対応で緩和照射を遂行できた.照射後はもとの用量にオピオイドを戻したが,痛みはほぼゼロとなった.

【考察】増強した痛みは脊柱管内浸潤による神経障害性疼痛であると考察する.一時的な鎮痛薬の増量で照射時の体位保持が可能となり,緩和照射後は疼痛緩和を得ることができた.

IV–3 オピオイド全身投与からくも膜下投与への移行時にオピオイド退薬症状が出現した1例

愛甲一樹 鳥井理那 中尾謙太 南 敏明

大阪医科薬科大学病院

【症例】74歳男性.直腸がん術後.骨盤病的骨折,大腿骨頭転移による股関節痛に対し,ヒドロモルフォン皮下投与を28.8 mg(経口モルヒネ換算720 mg)/日まで増量されたが疼痛持続するため当科紹介となった.初診当日にモルヒネ硬膜外投与86 mg/日を開始したところ疼痛改善し,翌日にヒドロモルフォン皮下投与を14.4 mg(経口モルヒネ換算360 mg)/日へ半減した.初診7日後にモルヒネ硬膜外投与をくも膜下投与へ切り替えた.くも膜下モルヒネ9.6 mg/日から開始と同時にヒドロモルフォン皮下投与14.4 mg/日を中止した.翌日から焦燥感,流涙,流涎,欠伸が出現したためオピオイド退薬症状を疑い,同日ヒドロモルフォン皮下投与を9.6 mg(経口モルヒネ換算240 mg)/日で再開したが,症状は約1週間継続した.

【考察】モルヒネくも膜下投与は全身投与と比べて,モルヒネの必要量を大幅に減量することが可能となるが,投与経路変更に伴うモルヒネの減量方法に関する具体的な指針はない.退薬症状を防ぐために,より慎重に段階的なオピオイド投与経路の切り替えが必要であった.

IV–4 ペインクリニック外来で診療していた患者に在宅緩和ケア医として関わった1例

上川竜生

上川ペインクリニック

【はじめに】ペインクリニック外来で疼痛治療を行っていた患者が悪性腫瘍に罹患し,がん拠点病院での化学療法を経て在宅医として終末期医療を担当することになった症例を経験した.

【症例】90歳女性.数年前から腰部脊柱管狭窄症,慢性腰痛症で通院されていた.腰痛悪化のためX年7月に基幹病院整形外科に紹介した.腰椎MRI検査と骨盤レントゲン検査で左骨盤骨折を伴う多発骨病変を指摘された.血液腫瘍内科で多発性骨髄腫,形質細胞腫の診断が得られ,抗がん治療を4年5カ月実施された後にBSC移行となった.X+5年1月,入居先の有料老人ホームに訪問診療を開始した.がん性疼痛に対してフェンタニルクエン酸経皮吸収型製剤,ジクロフェナク経皮吸収製剤などで疼痛コントロールを実施した.終末期には内服が困難となったため,クーデックエイミーPCAを用いてモルヒネ塩酸塩,ミダゾラム,ハロペリドールの持続皮下注射を行い,在宅で看取ることができた.

【結語】外来通院していた慢性疼痛患者の最後に在宅緩和ケア医として関わることができた1例を経験した.

IV–5 当院における非がん性疼痛に対する鎮痛薬の使用方法と患者説明について

上川竜生

上川ペインクリニック

【はじめに】非がん性疼痛の治療は疼痛の性質を考慮して投薬を行うが,薬物の選択や用法用量および投薬期間に関しては治療医の裁量に委ねられる.治療上のジレンマとして,強い副作用が出現した場合は効果の期待できる鎮痛薬でも患者の忍容性が得られず,一方で鎮痛効果が得られなければ通院を中断される.

【方法】帯状疱疹関連痛を例に当院で実施している薬物療法の選択と患者説明の方法を供覧する.

【結果】非ステロイド性消炎鎮痛薬は急性期のみの投与とする.強い侵害受容性疼痛を伴う場合は発症初期から弱オピオイドを併用するが,強オピオイドは可能な限り使用しない.神経障害性疼痛治療薬はパンフレットを用いて鎮痛機序の説明を行う.疼痛の軽減が得られた場合は,減薬・中止を提案し,患者判断での減薬を許可する.類似した機序の薬剤を併用しない.ポリファーマシーを避けるため,併用薬は最大3種類までとする.

【考察】効果的な投薬を行うために,病態の説明はもとより治療薬の特徴や治療計画について患者のアドヒアランスを得るよう工夫することが大切である.

【結語】ペインクリニシャンには,中長期的な予後を考慮して治療を行う責務がある.

IV–6 せん妄改善のために硬膜外持続鎮痛を導入し在宅療養可能となった終末期がん患者の1例

栗山俊之 丸山智之 山﨑亮典 水本一弘 月山 淑 川股知之

和歌山県立医科大学麻酔科学教室

【はじめに】終末期患者においてオピオイド鎮痛薬を投与するとせん妄を悪化させ在宅療養の移行を妨げることがある.今回,終末期がん患者に対して硬膜外持続鎮痛を導入し在宅療養が可能になった症例を経験したので報告する.

【症例】70歳代女性.肺がん腹腔内リンパ節転移による腰背部痛・腹痛のために緊急入院した.ヒドロモルフォン持続静注1.68 mg/日投与したところせん妄が出現し痛みのコントロールができなくなり,予後が4週間と見込まれ緩和ケア病棟に転棟した.第12胸椎/第1腰椎椎間より硬膜外カテーテル挿入し0.25%レボブピバカイン5 ml/時を持続投与しヒドロモルフォン中止したところ痛みとせん妄が消失し,入院15日後退院できた.その後,症状悪化なく退院22日後自宅で永眠した.

【考察】せん妄を改善させるためオピオイドを減量することは有効である.硬膜外鎮痛法は低侵襲かつ短時間で導入できるという利点がある.本症例では長期予後は見込めなかったため早急な症状コントロールを優先して硬膜外鎮痛法を選択し,往診医と訪問看護師の協力のもと在宅療養へ移行できた(本発表の要旨は第29回日本緩和医療学会学術大会で発表した).

 
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