Journal of Japan Society of Pain Clinicians
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The latest treatment using pulsed radiofrequency therapy―Treatment methods and mechanisms using the latest equipment and parameters―
Sei FUKUIHidemi NIWA
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2025 Volume 32 Issue 5 Pages 106-110

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Abstract

パルス高周波法(pulsed radiofrequency:PRF)とは,神経組織に間欠的にラジオ高周波を作用させて疼痛を緩和する治療法である.本稿では,パルス高周波法の概略,最新の機器,最新のパラメーターを用いた治療とメカニズムについて概説する.PRFは,2022年に診療報酬化され,本邦でも,海外の機器と同様に周波数が4種類(1,2,5,10 Hz),パルス幅が5種類(5,10,20,30,50 msec),電圧も20~70 Vまで任意に変更できるジェネレーターが導入された.周波数や電圧などのパラメーターの変化で,PRFによってできる電場の力による効果が異なることは容易に予測されるが,エビデンスは少なく,PRFの新たな臨床的な課題となっている.

Translated Abstract

Pulsed radiofrequency (PRF) is a treatment method that relieves pain by intermittently applying radio frequency waves to nerve tissue. Unlike radiofrequency thermocoagulation, this method not only can be applied to nerves including motor nerves, but can also be expected to have a therapeutic effect by acting on peripheral nerve axons, so it has the advantage of being widely applicable. Last year, the latest PRF generators were introduced in Japan as well as equipment overseas. PRF has 4 types of frequencies (1, 2, 5, 10 Hz), 5 types of pulse widths (5, 10, 20, 30, 50 msec), A generator was introduced that allows the voltage to be changed arbitrarily from 20 V to 70 V. This article provides an overview of pulsed radiofrequency therapy, the latest equipment, treatments using the latest parameters, and mechanism of action of PRF. In the future, it is hoped that Japan will take the initiative in developing PRF and conducting clinical research.

I はじめに

パルス高周波法(pulsed radiofrequency:PRF)は,ラジオ高周波を利用したインターベンショナル治療である.PRFは,針先の非絶縁部5~10 mmのみ通電する絶縁針を利用し,ラジオ高周波をパルス状(間欠的)に発生させることで強い電場を発生させ,熱の蓄積・上昇を防ぎ,熱凝固を起こすことなく,神経に損傷を与えずに,鎮痛効果,抗炎症効果を発揮する治療である13).オフ時に熱が低下することで,針先端の温度が42℃に保たれ,神経を破壊する熱作用を伴わないよう設定されている13)

PRFは,高周波熱凝固法と比較すると効果持続時間が短いという問題や,その有効性を検証する質の高い臨床研究が少ないといった問題が指摘されているが,不可逆的な組織変性を起こすことがないため合併症発症のリスクが極めて低く,また,運動神経を含む神経根などにも適応できるという非常に大きな強みがある1,3)

II 最新機器の導入(デバイスラグの解消)・PRF設定パラメーター

PRFは,2022年に診療報酬化され,痛み医療の現場に急速に普及してきている.

本邦でも,海外の機器と同様に4種類(1,2,5,10 Hz)の周波数,5種類(5,10,20,30,50 msec)のパルス幅,20~70 Vまでの電圧で,任意に変更できるジェネレーターが2023年に薬事認可され導入された.

これまでは,周波数:2 Hz,パルス幅:20 msのみであったが,最新機器では,周波数:1 Hz/2 Hz/5 Hz/10 Hz,パルス幅:5 ms/10 ms/30 ms/50 msec,電圧:20~70 Vから選択でき,周波数,パルス幅,電圧,施行時間などさまざまなパラメーターを自由に設定できるようになった.

これまでの機器では最大出力が20 W±20%であったが,最新機器では40 W±20%と2倍の強さでパルス高周波の電場が作れるようになっている.

従来の機器と最新機器との違いの一つは,電圧を70 Vまで上げることができるように設計されていることがある.これまでの機器でも,60 Vに設定はできるようになっているが,実際のPRF施行時はそこまで上昇できていないことが多かった.

PRFの至適なパラメーターに関するエビデンスは少ないが,電圧,施行時間に関しては,高電圧で長時間のPRFで効果が高くなることが,椎間板性疼痛,陰部神経痛,急性期,亜急性期帯状疱疹痛,帯状疱疹後神経痛,三叉神経痛などで報告されている4,5)

現在までに公表されたPRFの論文,教科書では2,5 Hzの周波数,5,20 msecのパルス幅が多数を占めており15),筆者らは最新機種でのPRFのパラメーターは,周波数5 Hz,パルス幅5,20 msec,電圧60~70 V,施行時間6分施行を基本としている.それぞれの病態に至適なパラメーターに関しては,今後の検討が必要である.

また最新機器と従来の機器の違いとして,スライター針の適正な位置を決める電気刺激の時に,より小さな刺激で行えるように0~1 Vの低電圧の刺激モードが加えられている.そのことで患者に過度な痛みの負担をかけることなく再現性疼痛が確認できるように設計されている.

III 新しい電極一体型スライター針

本邦にも電極一体型スライター針が2017年に導入された.レギュラータイプでコードの長さが80 cmで,針の位置がずれない,施行者の被曝対策になる,中央材料室での滅菌が不要などのメリットがある.

より細かい手技を施行していくには,ケーブルに針が引っ張られることもあり,ケーブルの長いものが求められていた.そこで日本の特注仕様として,ケーブル長130 cmのものを市販品として作成しており,細かい手技が容易になっている.細やかな神経ブロック手技を得意とする本邦では,日本仕様のケーブル長130 cmの「電極一体型スライター針」の普及が望まれる.

また一度に4カ所の治療ができるようなケーブルも導入されており,一度に3~4カ所の多数箇所治療が必要な後枝内側枝PRFなどには非常に有用である.

IV 新しい機種に伴う手技の留意事項

X線透視下または超音波ガイド下に目的とする神経にスライター針を進める.PRFを施行する場合の針先の適正な位置は,50 Hz,0.5 V以下の電気刺激で再現痛が得られることにより確認する13)

治療のパラメーターは,施行部位,病態に応じて変更することが好ましい.PRFが形成する電場は,組織抵抗が低い方がより強くなると考えられていることから,自験例では神経根PRFは,60~70 Vの高電圧で行い,より大きな電場が必要になる椎間板内PRFでは,電圧,通電時間を60~70 V,15分としている6)

施行時に,電極先端からでる電流に対する抵抗値(インピーダンス)をリアルタイムで見ていくことも,通電ができているかどうかの確認となるので,非常に大切である.

V PRFの特徴とガイドラインでの評価

PRFは,神経組織の変性を起こす可能性は極めて低く,筋力低下や知覚障害,運動麻痺が生じにくい,少ない治療回数で長期の鎮痛効果が得られる,高周波熱凝固法では禁忌である神経障害痛の罹患部位や後根神経節に施行できるなどの安全で低侵襲な治療法として大きなメリットがある13)

また普及が進んでいる超音波ガイド下神経ブロック法の発達も相まって,脊椎疾患から関節疾患まで,PRFの対象疾患が広がっている7,8)

PRFの質の高いランダム化比較試験(randomized controlled trial:RCT)は,少ない状況であったが,多数の臨床研究が行われ,エビデンスレベルの高い論文も増えてきた9,10)

慢性疼痛治療ガイドライン11)では,推奨度,エビデンス総体の総括として,1)神経根症に対しては,頸部神経根症:1A(施行することを強く推奨する),腰部神経根症:2C(施行することを弱く推奨する),2)帯状疱疹関連痛に対しては,PHN:1A(施行することを強く推奨する),3)慢性肩関節痛に対しては,1B(施行することを強く推奨する),4)腰部椎間関節由来の痛み,特発性三叉神経痛に対しては,2B(施行することを弱く推奨する),5)後頭神経痛,頸原性頭痛,慢性膝関節痛に対しては,それぞれ2C(施行することを弱く推奨する)となっており,有用性と高い安全性が示されている11).PRFの至適なパラメーターの研究とともに,治療成績の向上も期待されている.

VI PRFの作用機序,メカニズム

PRFは,高周波を間欠的に発生させることにより,高周波熱凝固法よりもはるかに強い電場を作ることができ,その針先に生じる電場がPRFの鎮痛効果に重要な役割を果たしている1,2)

PRFの主な作用機序に関しては,最新の基礎研究とレビューから以下のメカニズムが報告されている1214)

1. 神経活動の変化,末梢神経から中枢神経系への疼痛シグナル伝達の変化

1)PRFの電場は,活動電位の伝播に関与する細胞膜内のイオンチャネル(Naチャネル,Ca2+チャネル)の働きを抑制する1214)

2)PRFの電場は,慢性痛の脊髄後角における長期増強(long-term potentiation:LTP)を抑制する1214)

3)PRFは,脊髄後角において,ノルアドレナリンおよびセロトニン作動性の下行性抑制系の活動を高める1215)

4)PRFにより,患部のシナプス末端の興奮性神経伝達物質のグルタミン酸レベルが減少し,抑制性神経伝達物質のGABAが増加する1214)

5)PRFは,侵害受容性C線維の興奮を抑制する1214)

2. 解剖学的変化

1)PRFは,脊髄後角,神経根,末梢神経などの神経細胞の微細構造を変化させる1214,16).施行後,組織学的には神経線維の粗大な構造は損なわないものの,電子顕微鏡レベルで,一般的に組織損傷時に誘導される組織修復機転と同様の応答が見られる16)

3. 抗炎症効果

1)PRFの電場は,IL-1βやTNFα,IL-6などの局所の炎症性サイトカインの活性を弱める1214,17)

2)PRFは,局所の血管内皮細胞に働きかけ,炎症の原因となる酸化ストレスを元に戻すことで,細胞機能を修復する18)

4. 分子レベルでの変化

1)PRFは,ミクログリア活性のマーカーである細胞表面受容体のCD56およびCD3レベルを低下させ,脊髄後角におけるミクログリアの活性化を低下させる1214,19)

2)PRFは,内因性オピオイド前駆体mRNAレベルおよび対応するオピオイドペプチドのレベルを増加させる1214)

中枢性感作のある慢性疼痛治療の鍵となるメカニズムとして,PRFのミクログリアに対する作用は,今後のさらなる研究が期待される.

VII 先進的な治療の取り組み

PRFを利用した病態別の先進的な治療として,椎間板由来の痛みに対する椎間板内PRFと超音波を利用した膝関節痛に対するgenicular nerveのPRFについて自験例を紹介する.

椎間板内PRFでは,施行1,3,6,12カ月後には,痛み,ローランド障害スコアとも有意に改善し,椎間板性腰痛に長期の鎮痛効果が得られることを報告している6)図1).また従来行われてきた椎間板内高周波熱凝固法(intradiscal electrothermocoagulation:IDET)と比較しても,椎間板内PRFの方が早期に治療効果が得られ,長期効果は同様であることも報告している20)

図1

椎間板内パルス高周波治療

A:椎間板内PRFのX線画像.B:椎間板内PRF施行前後のVASの変化(1年後まで).縦軸:NRS,横軸:椎間板内PRF施行前,施行1,3,6,12カ月後の時間経過.C:椎間板内PRF施行前後のローランド障害スコアの変化(1年後まで).縦軸:ローランド障害スコア(Roland-Morris disability questionnaire:RMDQ),横軸:椎間板内PRF施行前,施行1,3,6,12カ月後の時間経過.

痛みのレベルはNRSで,施行前7.47±0.85から施行1年後には3.13±2.58に有意に改善した.ローランド障害スコアは,施行前11.61±4.74から施行1年後には2.90±2.97に有意に改善した.N=23,Wilcoxon signed-rank test,**p<0.01.文献6から引用改変.

変形性膝関節症に伴う関節痛に対しては,伏在神経PRFの有効性と安全性に関するRCTも行われており7),膝関節痛に対するgenicular nerveに対するPRFも効果の高いことを報告している8).筆者の経験から,膝関節痛に対する末梢神経のPRFは,痛みを緩和することで,慢性関節疾患に必須のリハビリテーションや運動,筋力訓練を促進し,頻回の通院や関節注射にかかる費用を削減できる可能性があると考えている.

VIII 最後に

慢性疼痛の治療では,薬物療法,運動療法,インターベンショナル治療,心理療法などをうまく組み合わせながら,患者の病態に合ったmultimodalな治療法を模索することが重要であるが,PRFは,治療の行き詰まりを打破する有効な一手となることも多い.

慢性疼痛患者に対するPRFの適応は今後も拡大すると考えられ,安全な低侵襲治療法として,今後さらに発展していくと考えられる.疼痛緩和の分子機序の解明や,患者適応や詳細なパラメーターの知見が蓄積されることで,治療の質がさらに高まることも期待されている.

本稿の要旨は,日本ペインクリニック学会第57回大会(2023年7月,佐賀)において発表した.

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