Japanese Journal of Thrombosis and Hemostasis
Online ISSN : 1880-8808
Print ISSN : 0915-7441
ISSN-L : 0915-7441
Reviews: Current and future status of fibrinolysis testing
Evaluation of fibrinolysis by real time-imaging analysis
Yuko SUZUKITetsumei URANO
Author information
JOURNAL FREE ACCESS FULL-TEXT HTML

2023 Volume 34 Issue 3 Pages 338-344

Details
Abstract

本項では臨床応用につながる線溶検査としての可能性をリアルタイムイメージングの側面から探る.筆者らは線溶調節機構の可視化解析として,精製系・血漿・細胞成分を含む静止評価系における蛍光顕微鏡解析,流速存在下,さらに生体顕微鏡による血管内微小血栓動態評価系を用いてきた.これまでに提唱してきた時空間的に制御された線溶活性調節機構とその意義に関して,項目1では,血管内皮細胞からの線溶反応開始因子(tissue-type plasminogen activator: tPA)の分泌過程の可視化から推察される改変tPA,テネクテプラーゼの特性,項目2,3,5では,細胞表面あるいは血栓内部から開始される線溶反応におけるトロンビン活性の役割を考察する.また,最近血小板凝集測定装置として特定保守管理医療機器登録された,全血流下血栓形成能解析システム(Total Thrombus-formation Analysis System: T-TAS®)では,経時的な血栓動態の定量解析が可能であり,これを用いて全血流下で作成された血栓における線溶活性定量評価の可能性を紹介する(項目4).

はじめに

2008年に故下村脩博士がノーベル化学賞を受賞したことで広く知れ渡ったオワンクラゲ由来の緑色蛍光タンパク質(green fluorescent protein: GFP)とその類似体は,生きたままの細胞,個体における機能分子の動態を直接的に視て捉えることを可能にした.緑色の蛍光を発する生きた線虫が1994年のScience誌の表紙を飾ったことは記憶に新しいところである.光学顕微鏡の技術的進歩も相まって21世紀が幕開ける頃より様々な研究領域でリアルタイムイメージング手法が活用されるようになってきた.筆者らによる線溶過程の可視化解析では,蛍光分子の輝度値の経時的な定量解析を試みることで線溶反応開始因子(tissue-type plasminogen activator: tPA)の分子特性,凝固活性に応じた線溶活性の調節機構を明らかにしてきた.これらの業績に関して記載が重複する本誌第32巻4号の筆者の総説「リアルタイムイメージング技術が照らす線溶反応の時空間的制御機構」1もご参照いただき,本稿では特にその輝度値解析を中心に概説する.その画像取得ならびに解析にあたっては,いかに実験毎の条件を統一し評価しうる数値を担保するか,シグナル/ノイズ比を保ちつつ輝度が飽和しない条件設定をしうるか,どこに関心領域をおいて数値化するかなどが重要な要素となる.

1.tPA分泌動態:PAI-1の作用,Tenecteplaseの分子特性

全反射蛍光顕微鏡は,細胞膜近傍の限られた領域のみの蛍光分子を検出できる.培養血管内皮細胞にGFP融合tPA(tPA-GFP)遺伝子を導入し,分泌顆粒内にソーティングされたtPA-GFPの分泌動態可視化した2.ここでは,開口に伴い酸性環境から中性へとpHが上昇して消光していたGFP蛍光が回復すること,カバーガラスへ蛍光分子が接近することが相まって,顆粒内のtPA-GFP蛍光の輝度値の増強として分泌顆粒の開口が検出できる(図1).顆粒開口後は,液相中への移行に伴い,開口部のGFP蛍光は減弱するが,数分以上にわたってtPA-GFPは残存していた.なお,tPAの重鎖を欠失した触媒部位のみのGFP融合tPAでは,開口後約250 msで速やかに蛍光は消失し,細胞表面に残存しないことが分かった.tPAの分泌顆粒膜への接着に関わる結合タンパク質の存在はいまだ明らかではないが,筆者らは細胞表面へのtPA-GFPの残存程度を数値化することで,滞留に影響を与える2つの要因を明らかにした.

図1

全反射蛍光顕微鏡による細胞膜近傍のみの蛍光分子検出とtPA-GFP発現血管内皮細胞における開口放出の可視化

tPA-GFP発現培養血管内皮細胞における単一分泌顆粒に関心領域をおいた際の平均輝度変化(F)を開口前(F0)に対する比とし経時的な変化を折れ線グラフに示す.分泌顆粒開口後の輝度半減時間をtPA-GFP細胞表面滞留度の指標とした場合の不均一な分布を棒グラフで示す.

1)PAI-1による細胞表面tPAの解離促進

単一tPA-GFP分泌顆粒に関心領域をおき,開口後の最大輝度値が半値となるまでの時間をtPA-GFP滞留時間とすると,分泌顆粒毎で2秒未満から50秒以上に分布する(図1).この分布はPAI-1の添加でより早くなる,つまり解離が促進される側(左側)へシフトすること(図2A),逆にRNA干渉によるPAI-1ノックダウン細胞およびPAI-1阻害薬(TM5275)添加では分布が右側へシフトすること,tPAの活性中心のSerをAlaに置換しPAI-1との複合体形成が阻害されたtPA-S476A-GFPでは細胞表面からの解離が大きく阻害されていることを確認した.さらにtPA-GFPのみならず内因性tPAもPAI-1の添加により上清中にPAI-1との複合体のみが確認されることから,細胞表面残存tPAに対してPAI-1は複合体形成により液相中への移行を促進するという「細胞表面線溶ポテンシャル調節機構」(図2E)を提唱した.

図2

tPAs-GFP(野生型,変異型)発現培養血管内皮細胞におけるtPA滞留とプラスミン活性の検出

A)Recombinant PAI-1(rPAI-1)添加の前(pre)後(rPA2-1)におけるtPA-GFP滞留度の変化と上清のフィブリンオートグラフィーによる内因性tPA-rPAI-1複合体の検出.B)野生型(wild)・変異型tPAs-GFP(TNK:Tenecteplase-GFP,K:KHRRのみをAlaに置換したtPA-GFP)分泌顆粒開口5秒後の細胞表面滞留残存割合.C)抗GFP抗体による培養上清ウエスタンブロッティング,黒矢頭:tPAs-GFP-PAI-1複合体,白矢頭:遊離型tPAs-GFP.D)上段にGFP蛍光を示し,中・下段では上清中にAlexa Fluor 568標識プラスミノゲンを添加後20分(中),50分(下)経過時のプラスミノゲン集積を示す.グラフは添加30分後の輝度増加比を示す.E)PAI-1による細胞表面線溶ポテンシャル調節機構と変異tPAの細胞表面からの解離特性.文献267を改変引用

2)tPAの陽性荷電配列による細胞表面電荷依存性滞留

2021年に本邦における急性期脳梗塞の新規血栓溶解薬の承認を目指したTenecteplase versus alteplase For LArge Vessel Occlusion Recanalization(T-FLAVOR)が医師主導臨床試験として開始された(第17回本学会学術標準化委員会SSCシンポジウム,血栓溶解部会で現状報告された).海外では,血栓溶解薬として野生型Alteplaseにとってかわって遺伝子組換えtPA(recombinant tPA: rt-PA)として変異型のTenecteplaseがすでに主流となりつつある.PAI-1のreactive center loopのC末端側陰性荷電アミノ酸配列(Glu350-Glu351-Ile352-Ile353-Asp354)とtPAの触媒ドメインにある陽性荷電アミノ酸配列(Lys296-His297-Arg298-Arg299; KHRR)は電気的相互作用を示すsecondary binding site3として知られているが,1990年代に開発されたTenecteplaseは,このtPAのKHRRをAlaに置換しかつN型糖鎖付加部位を修飾したものである4, 5

筆者らはこの変異tPAs(TenecteplaseならびにKHRRのみをAlaに置換したtPA)をGFP融合タンパク質として細胞に発現させ,その分泌過程を全反射蛍光顕微鏡にて追跡した6.分泌顆粒開口後5秒経過した時点での細胞表面残存輝度値の割合は,野生型に比し変異tPAs-GFPで有意に減少しており(図2BC),すなわち細胞表面から離れやすいと考えられた.これより,KHRRの陽性荷電を欠失したtPA(Tenecteplase)はPAI-1の阻害作用を受けにくいのみならず,陰性荷電面である内皮細胞表面との電気的親和性が減弱しているという分子特性が明らかとなった(図2E).血管内皮細胞表面との相互作用が弱いこともTenecteplaseの半減期が長いことの要因の一つと考えられる.

2.プラスミノゲン集積量:プラスミン活性の指標

tPAが多くの凝固線溶関連因子と異なり,活性型のセリンプロテアーゼとして分泌されること,その活性は基質存在下ではフィブリン上あるいは細胞表面などの固相面にて増強されることから,前述の細胞表面tPA滞留現象は直接PA活性の発現に影響を与えると考えられる.プラスミンが基質を切断すると,そのカルボキシル末端はLys(C-ter Lys)かArgとなり,C-ter Lysは新たにプラスミノゲンの結合の場となることから,プラスミノゲンの活性化は増幅機構とされる.したがって蛍光標識したプラスミノゲンの集積局在性を可視化し定量化することで,プラスミン活性を検討できると考えた7

tPA-GFP発現細胞に蛍光標識プラスミノゲンを添加し,共焦点レーザ走査顕微鏡で細胞表面を観察すると,細胞表面残存tPA-GFPのPA活性により,蛍光標識プラスミノゲンの輝度は経時的に増強する(図2D左パネル).これはリジン様分子であるepsilon aminocaproic acid(EACA)あるいはC-ter Lysを切断するcarboxypeptidase Bによりほぼ消失し,またプラスミン活性を阻害するアプロチニンやα2-antiplasminにより減弱することから,リジン結合部位とプラスミン活性に依存したプラスミノゲン集積を示していると考えられた.なお,前述のGFP融合Tenecteplase発現細胞では,細胞表面におけるプラスミノゲン集積は減弱しており(図2D),血栓溶解療法時の血管内皮細胞上の過剰なプラスミン活性による脳傷害作用の低減に関わることが示唆されるのかも知れない.

3.血小板血漿によるフィブリン網形成と溶解

1)フィブリン網へのプラスミノゲン集積量:プラスミン活性の指標

クエン酸添加全血を遠心分離し得られた血小板血漿の血小板数を調整後に,数千倍以上に希釈したプロトロンビン時間測定用試薬とCaCl2溶液を混ぜて共焦点顕微鏡にて観察をすると,活性化血小板を中心に予め加えておいた蛍光標識フィブリノゲンにより蛍光フィブリン網が形成される過程を捉えることができる8.このときtPAと蛍光標識プラスミノゲンも加えておくと,フィブリン網形成に続く溶解過程も観察できる9.細胞表面プラスミン活性同様,蛍光標識プラスミノゲンの輝度値増強,すなわち集積量の増加はプラスミン活性を反映することが,プラスミン活性を阻害するアプロチン添加との比較から確認された.フィブリン上にプラスミノゲンの集積が増強したのちにフィブリン溶解が起こり,それが活性化血小板上から周辺へ拡大していく様子を図3Aに示す.

2)プラスミノゲン集積時間:TAFI活性化の指標

添加するtPA量により溶解時間は大きく変動することは,血漿クロット溶解アッセイでよく知られた事実である.本実験系で,フィブリン網が形成されてから溶解が開始されるまで30分以上要するような条件下(終濃度tPA 1~1.5 nM)では,フィブリン網形成時にわずかにプラスミノゲンが集積したのちに,時間を経てから集積増強が進行する(図3A)ことが,密なフィブリン網に関心領域をおいた際の輝度変化解析から明らかとなった10.ここで活性化thrombin-activatable fibrinolysis inhibitor(TAFI)阻害薬(TAFIaI)を添加しておくと,速やかなプラスミノゲン集積増強ならびに早期の完全溶解が得られる.TAFIaはそのcarboxypeptidase作用によりC-ter Lysを切断しプラスミノゲンの基質への結合を抑制し線溶反応を抑制するため,その阻害により得られる現象である.先の関心領域において,フィブリノゲン輝度値の増加で示されるフィブリン網形成開始から,プラスミノゲン輝度値が最大となるまでの時間をプラスミノゲン集積時間と定義する(図3B)と,TAFIaIあるいはTAFIの活性化に関わるトロンボモジュリンの中和抗体の存在下では,プラスミノゲン集積時間は大きく短縮することから,この時間の延長はTAFI活性化の指標になることが示唆された.

3)プラスミノゲン集積の伝播性:TM結合トロンビンによるTAFI活性化の局在性

トロンボモジュリンは主に血管内皮細胞表面に発現しており,内皮プロテインC受容体の存在下,トロンビン生成が増強した際の凝固ブレーキの役割を果たすプロテインCを効率良く活性化し,抗凝固作用を発揮する.また内皮細胞表面から血中に放出された微量の可溶性トロンボモジュリンは,in vitroの系において十分にトロンビンが生成される環境下(例えば活性化血小板近傍)であれば,血漿中のTAFIを活性化し線溶を抑制できることを筆者らは示してきた10

前述のプラスミノゲン集積時間を,TAFIaIとトロンボモジュリン中和抗体は同程度に短縮させたが,密なフィブリン網を中心に同心円状に関心領域を拡大させ,プラスミノゲン集積を円の中心から外側に向かう伝播として検討すると,両者では異なる傾向が示された(図3C).伝播程度を反映するプラスミノゲン集積のdelayはTAFIaIではほぼ差がなくなり,一方でトロンボモジュリン中和抗体ではコントロールと同パターンのdelayを示した(図3D).中和抗体の効果が,よりトロンビン濃度の高い中心部で強く現れた可能性,あるいはトロンボモジュリンに依存しない,例えばプラスミンによるTAFIの活性化が特にプラスミン活性が増強する溶解縁において認められる可能性を示唆していると考えられた.

図3

血小板血漿におけるフィブリン網形成に続くプラスミン活性・TAFI活性化の検出

A)血小板血漿にAlexa Fluor 488標識フィブリノゲン(緑)とAlexa Fluor 568標識プラスミノゲン(赤)を添加し,希釈プロトロンビン時間測定用試薬にて凝固をtPAにて線溶をそれぞれ惹起した時の,クロット形成溶解過程の共焦点レーザ走査顕微鏡による可視化.B)Aで示した単一関心領域(密なフィブリン網)における緑色蛍光(フィブリノゲン)と赤色蛍光(プラスミノゲン)の輝度変化ならびにプラスミノゲン集積時間を示す.C)同心円状に関心領域をおき,中心部,周辺部の赤色蛍光(プラスミノゲン)の輝度変化を示す.D)Cにおけるピーク時間の中心部から周辺部への遅延D1–D3を示す.# p<.001 vs control, * p<.01 vs control.文献10を改変引用

このような微量可溶性トロンボモジュリンによる線溶抑制が実際に起こりうる可能性に関して,次項で全血流下血栓形成能解析システム(Total Thrombus-formation Analysis System: T-TAS®)を用いた線溶反応解析の試みとして述べる.

4.T-TAS®による線溶活性評価

1)測定方法と原理

2016年に本誌第27巻5号11に技術紹介され,本学会でもT-TAS®による解析がしばしば取り上げられている.これは,生体分子であるコラーゲンや組織トロンボプラスチンを固相化したマイクロ流路チップにより,血管内環境を模した全血流下における血栓形成能を測定するシステムとして開発された12.藤森工業(ZACROS)のウェブサイトによると,現在その進化型として3種類のチップ(PL:血小板凝集による一次止血能,AR:全血凝固能として一次止血+二次止血,HD:血小板数の少ない検体での全血凝固能)に対応したT-TAS®01が利用可能となっている.流路に充填した3.2%クエン酸で処理した全血は,各チップに応じて定められたshear rateで流される.流路の状態はシステム内のCCDカメラを通して視覚的に確認でき,血栓形成程度は流路内の圧力波形とその指標(血栓形成開始時間:流路圧10 kPa上昇時間,閉塞時間:流路圧80 kPa上昇,血栓形成能:30分間の流路圧下領域面積)を30分間に渡って定量評価するものである.抗血小板薬や抗凝固薬の薬効モニタリング,あるいは出血性疾患における血栓形成機能評価への応用が期待されている.

一方でT-TAS®による線溶活性検出への応用は細川ら13により報告されており,全血にtPAを添加した検討では,shear rate 240 s–1にて閉塞時間の延長と血栓形成能の減弱が検出された.本流路チップは流路幅80 μm,高さ30 μmと狭く,血小板数の違いで圧波形が大きく変わること(図4AB)が確認されたので,筆者らは血小板数を半分に調整した全血にtPA 5 nM(終濃度)で添加し,ARチップを用いてshear rate 240 s–1で計測を行った.tPA添加による閉塞時間の延長と血栓形成能の減弱を認め,さらにTAFIaIの効果を検出した(図4C)10

図4

T-TAS®による線溶活性検出の試み

A)血小板数のみを調整した全血を用いた血流下血栓形成能評価.B)Aで得られた圧力波形の定量評価(血栓形成開始時間[T10]:流路圧10 kPa上昇時間,閉塞時間[OT]:流路圧80 kPa上昇までの時間,血栓形成能[AUC30]:30分間の流路圧下領域面積).C)tPA,TAFIaI添加の有無と各種パラメータ変化.* p<.01, # p<.01 vs tPA-/TAFIaI-.文献10を改変引用

2)結果の解釈

血栓形成に伴い生成されたトロンビンと血漿中あるいは血小板由来の可溶性トロンボモジュリンによりTAFIが活性化されること,それにより線溶抵抗性をきたしうることが全血流下で実証されたと解釈できる.

3)ピットフォールと限界

線溶活性の検出仕様のマイクロチップはなく,全血にtPAを添加する必要がある.計測時間の30分以内にtPAによる溶解反応を検出する必要があり,それに要するtPA量は血栓溶解療法時のtPA濃度に相当する.したがって,必ずしも生理的止血反応あるいは病的血栓形成を模しているとはいえない.また血管内皮由来の血栓形成溶解に関わる要素が反映できていない点はシステムの限界でもある.

4)その他

検出部に蛍光顕微鏡システムを搭載し血栓内部の分子のリアルタイム情報の取得が可能となること,また細胞壁成分存在下での血流負荷システムの構築への発展等,さらなる機器のアップデートを期待したい.

5.生体顕微鏡による微小血栓動態:プラスミノゲン集積量定量化

筆者らのマウス腸管膜静脈レーザ惹起微小血栓モデルでは,血栓内部における強力な血小板の活性化によるphosphatidylserineの表出を示す蛍光標識アネキシンA5の集積と,続く同部位でのフィブリン形成を認めた14.マウスに標識プラスミノゲンを予め投与しておき,同様に微小血栓を作成すると,血栓内部のフィブリン形成部位にプラスミノゲンの集積増強を認めた.そして生体血管でもこの集積増強はプラスミン活性ならびにリジン結合部位依存性であることが,その輝度値解析により実証された15.さらにrt-PAを投与すると,血栓の完全溶解の直前にプラスミノゲン集積増強が生じ,これはrt-PA投与に先立ってカルボキシペプチダーゼ阻害剤を前投与することで,さらに溶解反応が促進する結果となった16.生体においてもTAFIの活性化による線溶抵抗性が生じうることが示された.

ヒト生体における血管のイメージングは,非侵襲な超音波検査,最新の光超音波イメージングやいわゆる造影剤を用いた血管造影,MRIによる血管イメージングなどで可能であるが,凝固線溶能を反映できるような生体イメージングによる解析は,その励起光の深達度を考えると現時点では困難である.蛍光物質としてヒトに実際に使用されている近赤外蛍光色素のインドシアニングリーンを改変した色素による分子イメージングの取り組みも進んでおり,今後の動向が期待される.

おわりに

リアルタイムイメージングは線溶活性の局在性を直接捉え,時空間的な線溶活性調節のメカニズムを解析することに貢献をしてきたと考える.これは実際に線溶活性定量評価のツールというよりも,ここで得られた考え方を基盤に,既存の凝固活性診断法に線溶活性を上乗せするような技術付加が現実的と思われる.体外に取り出した血液を用いて,いかに生体血管に近い状況を再現できる評価系を確立するかは,線溶のみならず血栓形成・凝固領域でも求められ,その実現が望まれる.

著者全員の利益相反(COI)の開示:

本論文発表内容に関連して開示すべき企業等との利益相反なし

文献
 
© 2023 The Japanese Society on Thrombosis and Hemostasis
feedback
Top