Japanese Journal of Thrombosis and Hemostasis
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Education seminar report—Let’s start with the first step in thrombosis and hemostasis
Kagehiro AMANO
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2025 Volume 36 Issue 1 Pages 55-58

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1.はじめに

日本血栓止血学会教育セミナーは次世代を担う医師として総合的なパフォーマンスを向上させるとともに,血栓止血領域への興味を喚起し,将来,血栓止血学に関する研究や臨床に携わる人材を育成することを目的としたセミナーとして企画された.著者はこのセミナーのコースディレクターとして2013年第1回から2023年第11回までコースの企画・運営を行ってきた.第1回開催時は受講生がどれほど集まるのか少し心配であったが,学会ホームページや研修医によく見られているメディアへのポスター告知によって,毎年ほぼ申込み定員に達している.参加者の受講前アンケートでは「凝固については苦手意識を持っております.このセミナーを機に少しでも日々の診療のレベルをあげることができればと期待しております」「臨床医になってから独学で勉強しましたが,系統だった知識になっていないため本セミナーのような機会を待っていました.」など,本領域のセミナーに対する需要と期待の高さが示されている.

2.開催実績

第1回から11回までの開催実績を表1に示す.受講対象者は「血栓止血学ビギナーズ 若手医師」という設定で募集している.募集定員は,対面実施時は50~60名で行っているが,2020年第8回から2022年第10回までの3年間は,コロナ禍のためWEB開催20~40名で実施した.実際の参加者は11回トータルで初期研修医75名,専攻医(後期研修医)229名,大学院生24名,その他医師が121名であった.計449名の参加のうち,まだ専門分野に所属していない初期研修医が約20%も参加していることは,今後,血栓止血分野で活躍が期待される若手医師への良い刺激になっていると考える.

表1

開催実績

実施年 会場 定員 参加者数 内訳
初期研修医 後期研修医専攻医 大学院生 その他医師
第1回 2013年(平成25年) 東京ビッグサイトTFTビル(東京) 60名 54名 14名 16名 4名 20名
第2回 2014年(平成26年) クロスウェーブ梅田(大阪) 50名 44名 10名 22名 3名 9名
第3回 2015年(平成27年) クロスウェーブ船橋(千葉) 50名 44名 8名 28名 3名 5名
第4回 2016年(平成28年) クロスウェーブ梅田(大阪) 50名 47名 15名 19名 4名 9名
第5回 2017年(平成29年) クロスウェーブ船橋(千葉) 50名 46名 8名 31名 1名 6名
第6回 2018年(令和30年) クロスウェーブ梅田(大阪) 50名 53名 9名 22名 1名 21名
第7回 2019年(令和元年) クロスウェーブ船橋(千葉) 50名 33名 4名 17名 2名 10名
第8回 2020年(令和2年) Web開催 20名 18名 0名 12名 0名 6名
第9回 2021年(令和3年) Web開催 30名 26名 1名 12名 1名 12名
第10回 2022年(令和4年) Web開催 40名 32名 0名 19名 1名 12名
第11回 2023年(令和5年) クロスウェーブ梅田(大阪) 60名 52名 6名 31名 4名 11名
トータル 449名 75名 229名 24名 121名

3.現在のセミナー内容

1泊2日でプレナリーセッション3つとスモールグループによるワークショップ(WS)が6つ行われるプログラムとなっている.まずはイントロダクションとして「血栓止血学オーバービュー」と題し,基礎的な凝固メカニズムを概説し,6つのWSにてそれぞれどんなことが学べるのかをディレクターが紹介する(写真1).その後,2日間一緒に研修するメンバーの5つのスモールグループ(7~11人)に分かれ,お互いの立場や考え方を知ることができるように工夫された「アイスブレイク」を行っている.

写真1

血栓止血学オーバービューの実施風景

この後,60分を1コマとして,症例ベースで講師と受講生がインタラクティブに学んでいくWSを行う.お互いの名札が見えるようにコの字にテーブルを配置して,講師は写真2のように受講生に症例を見せながら,質問を投げかけて考えてもらいながら,解説していく講義方法をとっている.「止血機能検査」をテーマとしたWSはすべての基本になるので,全グループに最初に行うようにしている.その後は2日間をかけて残りの5つのWS,「血小板」,「凝固系出血疾患」,「血栓性疾患」,「DIC」,「TMA」を順々にラウンドしていく方式である.受講生には写真3のようなバインダーセットとスライドPDFが入っているCD-ROMを持ち帰り資料として配布している.(各講師の連絡先を含む)

写真2

スモールグループでのワークショップの実施風景

写真3

受講生への配布資料

2日目にはWSの前後にモーニングセミナーとランチョンセミナーを行っており,ここではWSでは触れることができないような最新の知見や,研究マインドの醸成につながるようなアトラクティブな内容を紹介することをテーマとして実施している.最後に全体を通しての振り返りを行ったのち,閉会式となる.

4.受講生のアンケート結果

受講後に各セッションの興味度や難易度,それぞれのセッションに対して希望する講義方法についてのアンケートを行っている.興味度は図1に示すように,どのセッションにおいても10点満点で概ね平均8点を示しており,受講生の満足度が高いことが伺える.難易度はどのセッションも平均6~7点であり,易しすぎず,難しすぎずという丁度良い設定であると考えている.講義方法に関しては,どのWSに関しても「スモールグループでの症例ベースインタラクティブ方式」が最も多く希望されており,現在実施している方法が参加者のニーズに合っているものと推測される.

図1

第1回から10回までの各セッションに対する受講生の興味度 10点満点での平均点

5.おわりに

受講生にとって,より良いコースにすべく,アンケート結果をもとにタスクフォースの先生方とディスカッションをして,毎回少しずつ実施方法と内容をブラッシュアップしている.受講生に近しい存在でいろいろ質問しやすい雰囲気を作ってもらうために,各受講生グループにチューターの先生に帯同してもらっており,チューターにはその経験をもとに次世代のタスクフォースとして引き継いでもらっている.日本血栓止血学会認定医制度においては,本教育セミナーが認定医取得のための重要な研修となっており,全参加で20単位取得できる.受講後のアンケートでは,「体系立てて,勉強できて良かった」「それぞれの専門家の先生を知ることができ,コンサルテーションしても良いと聞きありがたい」など,嬉しい言葉をもらっている.実際,天野も実臨床での相談メールを受講生からもらっている.

このように良い評価を得ているのは,今までにコミットしていただいたすべてのタスクフォースの先生方の熱意により,充実したWSやセミナー内容と配布資料が確立されているからこそである.この場を借りて感謝申し上げたい.また,日本血栓止血学会理事会が本セミナーの必要性と重要性を認識し,開催継続できていることにも感謝の意を表したい.受講生から「参加して良かった.後輩にも是非勧めたいです!」と言われるたびに,コースディレクターとして教育イベントの運営に携われていることを嬉しく思う.2024年第12回からは群馬大学の小川孔幸先生にコースディレクターを著者からバトンタッチした(写真4).この10年の間に講師陣も世代交代してきており,活発にさらに興味深く楽しいセミナーに発展していくことを期待している.最後に運営全般をサポートしてくれている学会事務局の皆さんに感謝する.

写真4

コースディレクターの世代交代

著者の利益相反(COI)の開示:

本論文発表内容に関連して開示すべき企業等との利益相反なし

 
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