Japanese Journal of Thrombosis and Hemostasis
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Topics: “New Medical Modalities” series
Challenges in disease therapy using synthetic polymer nanoparticles that capture and neutralize target molecules
Hiroyuki KOIDE
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2025 Volume 36 Issue 4 Pages 527-533

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1.はじめに

がんや炎症性疾患,感染症など,さまざまな疾患において,特定のタンパク質が病態の進行に深く関与している.こうした標的分子に選択的に結合し,その機能を制御することは,治療戦略において非常に重要なアプローチである.現在,医薬品として広く用いられている抗体医薬は,特定の分子に高い親和性と選択性をもって結合できるという特徴を活かし,がんや自己免疫疾患などの分野で大きな成果を上げている.しかしながら,抗体には生産コストや安定性,免疫原性といった課題も存在する.そのため,抗体に代わる機能性分子として,合成高分子を用いた分子認識材料の開発が注目を集めている.これらの材料は,化学的に設計された構造に基づき,特定の分子に対して高い親和性を示すよう最適化することができ,構造の再現性や安定性,さらには分解性や応答性などの機能性を自由に付加できる点で優れている.なかでも,N-isopropylacrylamide(NIPAm)を基盤とする合成高分子ナノ粒子は,高い保水性と柔軟な三次元構造を特徴とし,生体環境下での親和性認識や物質輸送,刺激応答機能を統合的に発現させることができる.このナノ粒子に,静電的相互作用や疎水性相互作用,水素結合など非共有結合を生み出す複数の機能性モノマーを組み込むことで,病態に関与する分子を吸着・中和することが可能であり,疾患の制御や治療への応用が期待されている.本稿では,筆者らがこれまでに行ってきた合成高分子ナノ粒子の研究を基に,標的分子に対する高い親和性を持つナノ材料の設計と,それを応用した疾患制御の新たな可能性について概説する.

2.血液中で標的毒素を吸着・中和するナノ粒子開発

標的分子に高い親和性を有する合成材料の開発は古くから検討されているが,その多くは試験管内という限られた条件内での成果である.しかし,実際に疾患治療を実現するためには様々な分子が存在する血中環境という複雑かつ厳しい条件下においても,標的に対して高い選択性と親和性を発揮する分子認識材料の開発が必要不可欠である.抗体と同等の分子認識能を有する合成材料開発として,分子インプリント技術(molecular imprinting technique: MIT)が広く知られている.MITは1972年にWulffとSarhanによって初めて報告された手法であり1,標的分子と機能性モノマーをあらかじめ混合後に重合するため,標的の構造に適合した三次元的な結合ポケットをポリマー内に形成可能である.この技術により,高い親和性と特異性を有する合成高分子材料が得られることから,抗体代替材料としての応用が進められてきた.しかしながら,テンプレート分子を完全に除去することが困難な場合もあるだけでなく,開発コストがテンプレート分子以下にはなりえないこと,テンプレート分子の毒性が高い場合は安全性の確保が困難など,様々な課題がある.筆者らはこうした背景を踏まえ,インプリント技術を用いることなく,標的分子に高い親和性と中和能を有する合成高分子ナノ粒子の開発を行うこととした.一般に非インプリント型ナノ粒子は標的分子に対する親和性や特異性がインプリント型に比べて劣ると考えられているが,適切なモノマー構造や配合比率の最適化,投与量の調整により,非インプリント型ナノ粒子を用いたとしても十分な治療効果を発揮することも十分可能と考える.この仮説を検証するために,我々は非インプリント法で合成したナノ粒子によって,血中における蜂毒由来の溶血毒素であるメリチンの吸着と中和を試みた2.ナノ粒子はNIPAmに加え,水素結合を導入するacrylamide(AAm),正電荷モノマーである(3-acrylamidopropyl)trimethylammonium(APM),負電荷モノマーであるacrylic acid(AAc),疎水性モノマーであるN-tert-butylacrylamide(TBAm),架橋剤であるN,N’-methylenebis(acrylamide)(Bis)を用いて合成した.合成方法としては,これら機能性モノマーを水に溶解させ,窒素をバブリングすることで酸素を除いた後,ラジカル開始剤を添加し65°Cで3時間反応させるのみであり,非常に簡便な手法である.それぞれの機能性モノマーの配合比率を変化させることでナノ粒子ライブラリーを合成し,標的であるメリチンに対する親和性を解析した.その結果,静電的相互作用や疎水性相互作用のみの,単一の相互作用ではなく,静電的相互作用と疎水性相互作用の2つの異なる相互作用を生み出すモノマーを組み込むことで,初めて標的に高い親和性を有するナノ粒子開発が可能となることが明らかになった.特に,AAcおよびTBAmをそれぞれ40 mol%含むナノ粒子が最もメリチンに対して高い親和性を示した(図1a,b).この最適化されたナノ粒子を,蛍光標識メリチンを静脈内投与したマウスに投与したところ,蛍光標識メリチンの体内動態がナノ粒子投与によって大きく変化し(図1c),両者は肝臓で共局在していた(図1d).これは,ナノ粒子が血液中でメリチンに結合することで,その体内動態を変化させたと考えられる.さらに,致死量のメリチンをマウスに投与してから20秒後にナノ粒子を静脈内投与したところ,マウスの生存率が著しく改善した(図1e).また,メリチン投与してから5分経過後にナノ粒子を投与した場合においても,高い生存率の改善が認められた.これらの結果から,分子インプリント技術を用いずとも,機能性モノマーの構造や配合比を最適化することで,標的分子をインビボで吸着・中和するナノ粒子の設計が可能であることが示された.

図1

メリチンを吸着・中和するナノ粒子開発2

(a)ナノ粒子中のAAcとTBAmがメリチンの溶血毒性の中和に与える影響.(b)Quartz crystal microbalance法(QCM)による結合親和性解析から得られたメリチンとナノ粒子(NP)間の見かけの結合定数.グラフ(a)と(b)の赤グラフは,メリチン結合を示さなかったナノ粒子,青グラフは,沈殿したナノ粒子を示す.(c)Cy5標識メリチン(0.3 mg/kg)インビボイメージング画像.ナノ粒子はメリチンを投与してから20秒後に投与(10 mg/kg)Li:肝臓,Sp:脾臓,SI:小腸,K:腎臓,H:心臓,Lu:肺.(d)Cy5-メリチン(0.3 mg/kg)と蛍光標識ナノ粒子(10 mg/kg)を投与してから70分後に肝臓を採取し,共焦点レーザースキャン顕微鏡で観察.緑:蛍光標識ナノ粒子,赤:Cy5-メリチン.Bar:25 μm.(e)メリチン静脈内注射後24時間後のマウスの生存率.緑:ナノ粒子(30 mg/kg)投与(緑),青:ナノ粒子非投与.

3.メリチンに高い親和性を有するナノ粒子による癌治療

筆者らが用いているNIPAmを基盤とする合成高分子は,32°C付近に下限臨界溶液温度(lower critical solution temperature: LCST)を有し,この温度を境に親水性と疎水性の性質が劇的に変化する,刺激応答性を有している35.すなわち,LCST以下ではpolyNIPAmナノ粒子は水和状態を保ち膨潤する一方,LCST以上の温度では脱水和が起こり,ナノ粒子は収縮してコンパクトな構造を形成する.興味深いことに,ナノ粒子は収縮状態でのみ標的分子に親和性を示し,膨潤状態では標的分子に対する親和性が減少する6.また,このLCSTはナノ粒子に組み込む機能性モノマーの構造と配合比を変えることで精密に制御できる.筆者はこの温度応答性に着目し,蜂毒であるメリチンのがん組織への特異的な送達と放出によるがん治療戦略の構築が可能となると考えた7図2a).そこで,マウスの皮下に移植した腫瘍を外部から冷却したところ,腫瘍内部の温度が35°Cから25°Cまで低下したため(図2b),25°C付近にLCSTを有し,温度に応答してメリチンとの親和性が変化するナノ粒子開発を試みることとした.これまで,AAcおよびTBAmをそれぞれ40 mol%含有したナノ粒子がメリチンに対して高い親和性を示しているが,この組成ではLCSTが高すぎて25°Cまで冷却してもメリチンの放出が困難であった.そこで,AAcを5 mol%,TBAmを20 mol%としたところ,LCSTが25°C付近となり,37°Cでメリチンを中和し,25°Cに冷却することでメリチンを放出した.さらに,静脈投与後の血中安定性向上のため,ナノ粒子表面にポリエチレングリコール(PEG)を導入した.PEGの導入によってメリチンの結合容量はやや低下したものの,生物学的製剤である抗体よりも高い結合容量を示した.また,このナノ粒子は温度変化に対する応答速度が非常に速く,冷却から20秒以内に吸着しているメリチンを全て放出することが確認された.そこで実際にマウスを用いて,温度応答性ナノ粒子の癌治療に対する有用性を検証した.ナノ粒子とメリチンを事前に30分間37°Cで混合し,ナノ粒子―メリチン複合体を形成させ,腫瘍移植マウスに静脈内投与した.投与後は毎日15分間腫瘍部位を冷却したところ,冷却した腫瘍でのみメリチンがナノ粒子から放出されており,冷却しなかった腫瘍内もしくは,腫瘍を冷却してもそれ以外の組織(肝臓内)ではメリチンとナノ粒子は複合体を形成していた(図2c).そこで腫瘍の大きさを測定したところ,温度応答性ナノ粒子とメリチンの複合体を投与し,さらに冷却したマウス群でのみ腫瘍増殖が抑制されていた(図2d).本研究は温度応答性のpNIPAmナノ粒子用いて,ペプチドの吸着・放出をインビボで実証した初めての例であり,温度応答性ポリマーの “治療モダリティ” としての新たな地平を切り開く成果である.

図2

温度応答性ナノ粒子を用いたがん治療7

がん治療のために,生きたマウスを用い,設計されたポリマーナノ粒子から細胞毒性ペプチドを冷却により局所的に放出させる.

(a)本研究の戦略.ナノ粒子は,37°Cでメリチンを吸着し,25°Cでメリチンを放出するように設計.メリチンと最適化されたナノ粒子を37°Cでインキュベートしてメリチンを吸着させた後,メリチンとナノ粒子の複合体を担がんマウスに投与する.ナノ粒子が腫瘍部位に集積した後,腫瘍を局所的に冷却すると,冷却された腫瘍でのみメリチンが放出され,殺細胞効果が誘導される.(b)腫瘍を冷水で30分間冷却による,腫瘍深部(腫瘍表面から5.9±0.3 mm)の温度.(c)腫瘍と肝臓におけるナノ粒子とメリチンの局在.マウスにCy5-メリチンと蛍光標識ナノ粒子を静脈内投与.その24時間後,腫瘍を冷水で30分間冷却し,共焦点レーザー顕微鏡でメリチンとナノ粒子の局在を観察した.腫瘍のbar:20 μm,肝臓のbar:25 μm.(d)担癌マウスに,腫瘍移植後7,10,13,16日目にPBS,またはメリチン含有ナノ粒子(メリチン濃度1.2 mg/kg)を静脈内投与.腫瘍は7日目から20日目まで毎日30分間冷水で冷却した.有意差 ** p<0.01;PBS vs メリチン吸着ナノ粒子(1.2 mg/kg).

4.敗血症治療への応用

次に,標的分子を吸着・中和するナノ粒子を用いて,敗血症治療への応用について紹介する.敗血症は,細菌やウイルスなどの感染症により誘発される全身性の炎症反応に起因する多臓器不全であり,進行すると生命を脅かす重篤な疾患である8.特に高齢者では免疫機能の低下が背景にあり,超高齢社会において,敗血症治療法の重要性は年々高まっている.現在,敗血症に対する治療法としては,主に抗菌薬や抗凝固剤などによる対症療法が行われているが,多剤耐性菌の出現や免疫暴走への対処困難といった問題から,新たな治療手段の開発が急務とされている.敗血症の病態では,ヒストンやhigh mobility group box 1(HMGB1)などのアラーミンと呼ばれる内因性炎症誘導分子の放出が鍵を握っており,中でもヒストンが,敗血症の主要な憎悪因子であると認識されている8, 9.ヒストンは通常,細胞核内に局在しているが,細胞の壊死や損傷によって血中に放出されると,強い正電荷と疎水性を有する構造により細胞膜に結合し,細胞傷害・臓器不全を引き起こすことが知られている.特にヒストンH3およびH4は高い細胞毒性を示し,敗血症の進行に深く関与する10, 11.しかし,ヒストンにはH1,H2A,H2B,H3,H4など複数のサブタイプが存在し,それぞれが生体内で障害を引き起こすことが知られている.従って,敗血症の効果的な治療には,一種類の抗体では不十分であり,ヒストンサブタイプを網羅的に中和できる手段が必要であると考えられている.全てのヒストンサブタイプに共通して存在する特徴として,高い正電荷(リジン・アルギニン)と疎水性が挙げられる.そこで,NIPAm,負電荷モノマーのAAc,疎水性モノマーのTBAm,および架橋剤としてBisを組み合わせ,ナノ粒子ライブラリーを合成した.スクリーニングの結果,メリチンの場合とは異なり,NIPAm 53%,AAc 5%,TBAm 40%,Bis 2%で構成されたナノ粒子が混合ヒストンに対して最も高い親和性を示した12.この最適化したナノ粒子のそれぞれのヒストンサブタイプに対する親和性を検討したところ,H3(解離定数(Kd);250 nM),H4(Kd; 560 nM)に加えてH2A(Kd; 880 nM),H2B(Kd; 520 nM)といった他のヒストンサブタイプにも結合できることが明らかとなり,複数サブタイプに網羅的に結合可能なプラスチック抗体の設計に成功した.敗血症の病態では,組織が損傷を受けるたびに細胞内のヒストンが継続的に血中へ放出されるため,ナノ粒子が血中を長時間滞留し,かつ標的分子への結合能を維持することが極めて重要である.しかし,ナノ粒子は静脈内投与するとすぐに細網内皮系などにより捕捉・除去され,十分な治療効果を発揮する前に血中から消失してしまう.この課題に対処するため,我々はナノ粒子表面にPEGを修飾することで血中安定性の向上を試みた.PEG修飾はナノ粒子の非特異的なタンパク質吸着を抑え,網内系からの除去を防ぐ手法としてよく知られている.一方で,PEGは同時に標的タンパク質との結合も妨げるため,標的親和性の低下を引き起こすリスクもある.そこで筆者らは,PEGの分子量および修飾率の最適化を試みたところ,分子量4,000のPEGを3 mol%ナノ粒子に導入することで,PEG非修飾粒子と比較して,投与から3時間後の血中残存量が約150倍増加することを見出すと共に(図3a),ヒストンの吸着量の減少も最小限に抑えることができることを見出した.この最適化されたPEG修飾ナノ粒子は,インビトロにおいてヒストン毒性の中和能を示すだけでなく,細胞膜に結合したヒストンを “剝がし取る” ように吸着することで細胞保護効果を発揮した.インビボ実験では,致死量のヒストンを静脈内投与してから20秒後にPEG修飾ナノ粒子を投与したところ,生存率が大幅に改善された(図3b)だけでなく,PEG修飾ナノ粒子投与から1時間後に致死量のヒストンを投与しても生存率が大幅に改善された(図3c).この結果から,PEG修飾ナノ粒子はヒストンとの親和性を維持した状態で血液中を長時間循環していることが示唆された.さらに,リポ多糖(LPS)を静脈内投与することで作成した敗血症モデルマウスにおいて,PEG修飾ナノ粒子を投与することでマウスの生存率が大きく改善した(図3e).これらの結果は,敗血症治療においては単に標的分子と結合できるだけでなく,標的が動的に存在し続ける体内環境下で長時間機能を維持できる材料設計が不可欠であることを示している.以上の知見から,我々はヒストンを含む敗血症誘導因子を網羅的に中和することができ,かつ血中で長時間機能を維持できる合成高分子ナノ粒子の開発に成功した.

図3

ナノ粒子による敗血症治療12

放射標識PEG修飾ナノ粒子を静脈注射してから3時間後の血液中のナノ粒子の残存量.PEGの分子量は500,1,500,4,000を用いた.(b)ヒストン(75 mg/kg)投与から20秒後にPEG修飾ナノ粒子(10 mg/kg)を静脈内投与し,マウスの生存率を評価.(c)PEG修飾ナノ粒子(10 mg/kg)を投与してから1時間後にヒストン(75 mg/kg)を静脈内投与し,マウスの生存率を評価.(d)敗血症モデルマウスにナノ粒子(10 mg/kg)を静脈内投与し,マウスの生存率を評価.LPS:リポ多糖

5.ナノ粒子の課題

本研究では,NIPAmを基盤とした合成高分子ナノ粒子が,血液中において標的分子を吸着・中和できることを明らかにしてきた.しかし,臨床応用に向けては多くの課題が存在しており,その解決が実用化の鍵となる.一つ目は安全性(生体内分解性と生体適合性)である.現在までに,合成ナノ粒子の細胞毒性はほとんど報告されておらず,また,静脈投与後に炎症性サイトカインの産生が認められない.しかしながら,ナノ粒子はラジカル重合によって合成された非分解性ポリマーであるため,臓器に集積した際に長期的に体内に残留する可能性がある.標的や疾患の性質によっては生涯にわたる反復投与が必要となる可能性もあり,この非分解性という性質は臨床応用において大きな障壁となる.そのため,ジスルフィド結合(–SS–)などの分解性架橋剤を導入や,主鎖にアミド結合やエステル結合などの生分解性結合を組み込むポリマー設計が重要となる.二つ目はモノマー配列と鎖長の精密制御による構造均一性の確保である.ランダムラジカル重合によって合成されるナノ粒子は,モノマー配列や鎖長が均一ではない.この構造的不均一性が,ナノ粒子の体内挙動や治療効果の再現性に影響を与える要因となる.ポリマーの均質化は,薬物動態の制御や標的親和性の精密設計に直結するため,今後の技術進展において不可欠な要素となる.近年の高分子合成技術や分離精製技術の進展により,モノマー配列と鎖長が完全に均一なオリゴマーの合成が可能となってきている.そのため,構造均一化されたポリマーと高親和性化を両立させる新たな設計戦略が今後の臨床応用に向けて求められる.

6.結論

本研究では,抗体様機能を有する合成高分子ナノ粒子(polymer NPs)の設計と応用について紹介した.本技術は未だ発展途上であり,合成高分子ナノ粒子を実際に医療へと応用展開していくためには,実験的な試行錯誤を繰り返しながら,予期される課題に対して柔軟に対応し,実証例を一つずつ積み重ねていく努力が不可欠である.特に,分解性,安全性,親和性,特異性,薬物動態,構造均一性といった多くの技術的課題を解決していく必要がある.一方で,合成抗体は抗体医薬に比べて製造の自由度が高く,コスト効率や安定性にも優れた新規モダリティとしての潜在力を有している.これらの特性を活かすことで,今後さまざまな疾患に対する革新的な治療法や診断法への展開が期待される.本稿が,今後の合成抗体を用いた医薬品開発や応用研究の一助となり,より多くの研究者によって本技術が発展していくことを願う.

著者の利益相反(COI)の開示:

本論文発表内容に関連して開示すべき企業等との利益相反なし

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