Journal of Nursing Economics and Policies
Online ISSN : 2435-0990
Research notes
Professional Autonomy of Nurses Corresponding to Consultations by Telephone in Outpatient Departments
Yuko YokoiNaomi Sato
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2021 Volume 4 Issue 1 Pages 1-9

Details
【要旨】

【目的】日中の病院外来で電話相談に対応する看護職の専門職的自律性の特徴と,自律性に関連する要因を明らかにする。【方法】看護の専門職的自律性測定尺度を用いて,同意が得られた内科外来看護職に自記式質問紙調査を行い,462名を分析対象とした。【結果】5つの下位尺度すべてにおいて,就業形態が「常勤職」の方が「非常勤職」よりも,有意に高得点を示した。4つの下位尺度において,「子どもなし」の看護職の方が「子どもあり」よりも,また,3つの下位尺度において,「配偶者なし」の看護職の方が「配偶者あり」よりも有意に高得点を示した。「配偶者あり」や「子どもあり」の看護職は非常勤職が多く,就業形態と自律性得点との関連が考えられた。【結論】電話相談に対応する外来看護職の自律性の向上には,勤務時間内に提供できる教育支援が必要であると考えられる。

【Abstract】

【Purpose】This study aimed to clarify characteristics and factors related to the professional autonomy of nurses corresponding to consultations by telephone in outpatient departments.

【Methods】We surveyed 462 nurses who worked in the outpatient departments using the scale for professional autonomy in nursing via mailed self-administered questionnaires.

【Results】Nurses in “full-time” employment had significantly higher mean scores in all five subscales compared to those in ”part-time” employment. In four of the subscales, nurses “without children” had significantly higher scores compared to nurses “with children” while in three of the subscales, nurses “without spouses” had significantly higher scores compared to nurses “with spouses”. Many of part-time nurses had spouses or children with a significant level, therefore, “employment status” seemed to be related to scores on professional autonomy in nursing.

【Conclusions】To enhance the professional autonomy of nurses corresponding to consultations by telephone, it seemed to be required that educational support regarding telephone consultation is provided to nurses in outpatient departments during working hours.

緒言

在院日数の短縮化などの影響もあり,従来入院期間中に行われていた診療・看護が外来に移行し,高度な治療や侵襲性の高い手術や検査を行った後,外来での継続治療やその管理への対応が求められている。そして外来看護は診療の補助業務以外にも,患者・家族に対する相談と指導,在宅物品の管理,他職種との連携・調整など,多様な活動を行っている。疾病を抱えながら地域で生活している患者が増加し,継続治療に対して対面での療養相談が必要とされる場合があるが,その一方で電話を介しての相談もまた存在している。しかしこれまで,これらの日中の病院外来で応じる電話相談の実態を正確に把握した報告はほとんど見られていない。

容易に来院できない人々の重要なアクセスツールの一つとして電話があり,「患者にとって予期せぬトラブルが起きた場面では,看護師などの専門職者によるタイムリーで利便性の高い電話相談等を利用した対処指導が必要」1)であったり,「診察後に治療に関する確認が必要な場面では,時間外診察するほどではないが解決したい問題への対処指導が必要になる」1)など,電話が有用な手段となる状況も多い。

外来での電話相談では,診察時には話せなかった患者や家族の思いや迷いへの対応,適時な医療機関への受診の提案,治療・合併症への患者の疑問や不安等の軽減のためのケアなど,多様な対応を外来看護職は行っている。電話相談は,顔を見ながら相手の感情を読み取るのとは違い,相談内容,質,安全性の観点からも対面式の診察とは異なる。電話相談には電話を通じて受け手が想像する要素が多いが,必要な情報収集,症状確認,相手の感情をも受け入れた声かけなど高度な相談・指導技術が必要である。そして,患者やその家族の多様な価値観や仕事等の心理社会面をも考慮した対応がなければ効果的な支援にもつながらない。

外来における看護職員(看護師および准看護師)は,患者30名につき1名の配置定員とすべきことが1948年以来医療法施行規則で定められ,現在も変わっていない。日本看護協会業務委員会は,「外来医療・看護が変化しているにも関わらず,外来看護の体制については積極的な改革ができておらず,外来職員が削減され,外来看護師のスキル不足がある」2)ことを問題視している。今後,専門職として社会に認知され位置づけられるためにも,看護職自身が,専門的な知識と技術を自主的・主体的に遂行することが必須条件となってきている3)。専門職として期待される役割行動がとれる人材育成が重要課題であり,一人ひとりが専門職としての自律性を高めていく必要があると考える。外来における看護でも自律性が発揮されるべきであり,そのなかでも上記のように高度な技術が必要とされる電話相談の中で,どれくらい自律性が発揮できているのか,疑問をもった。そこで今回,日中の病院外来で電話相談に対応する看護職の自律性に焦点をあて,職務遂行における専門職的自律性の特徴と,自律性に関連する要因を明らかにすることを目的に研究を行った。それにより,電話相談に対応する外来看護職の自律的な行動形成をサポートできる体制づくりに有用な視座を検討したので報告する。

I. 用語の操作的定義

専門職的自律性:電話相談に対応する看護職が看護の専門的知識・技術に基づき,患者の状況を正しく認知し,適切な看護へ導くための判断を主体的・自主的に実行するものとする。

電話相談:平日の日中にかかってくる電話相談のうち,取り次ぎ者(看護職以外)では返答できず,看護職に返答依頼された電話対応とする。また外部から直通電話でかかってきた相談に看護職が直接対応する場合も含むものとする。

II. 研究方法

1. 調査対象

地域の高度医療を担う200床(一般床および療養病床)以上を有する病院(精神科単科の病院は含まない)339医療機関を調査対象施設とした。全47都道府県の200床以上の病院は調査対象として多数になりすぎるため,近畿地方および東海地方から調査施設の抽出を行なった。各医療機関の電話相談の対応経験がある内科外来の看護管理者および看護職を対象者とした。

2. 調査方法

構成的設問を用いた調査票による郵送調査を行った。各施設の看護部長室宛てに調査依頼文書と研究協力への同意書を送付し,同意書の返送があった施設に,調査対象者宛の人数分の調査依頼文書と無記名自記式質問紙,各施設の電話相談に関する調査用紙を送付し,個人の対象者である看護職に対して質問紙の配布を依頼した。各施設の電話相談に関する調査用紙は看護部長に回答を依頼した。回収方法は,無記名で質問に回答後,同封している封筒に封入し,回収袋に投函,その後回収袋を返送してもらう,留め置き法とした。

3. 調査期間

2016年4月から7月

4. 調査内容

調査対象施設に対しては,施設の特性(病院類型,病床数,電話相談に関する電話番号の公表の有無,最初に電話を取り次ぐ職種,電話相談に対応する看護職の資格要件,電話相談の対応時間帯,電話相談の診療報酬としての加算の有無,カルテ電子化の有無,看護職の現任教育の導入,看護職の現任教育の対象者となる要件),個人の対象者である看護職に対しては,年齢,看護経験年数,電話相談の経験年数,就業形態(常勤・非常勤),免許(看護師・准看護師),職位(看護師長(または看護課長)・副看護師長(または係長,主任))の有無,配偶者の有無,子どもの有無,修了した看護基礎教育課程,進学状況,看護職の現任教育の参加状況,電話相談に対応する看護活動への満足度および電話相談に対応する外来看護職の専門職的自律性について質問した。

電話相談に対応する外来看護職の専門職的自律性の特徴の把握には,「看護の専門職的自律性測定尺度」4)を用いた。この尺度は5つの下位尺度(正確な状況認知を示す14項目の「認知能力」,的確な看護実践に導く具体的な行動を示す14項目の「実践能力」,具体的な手がかりを基にした判断内容を示す7項目の「具体的判断能力」,看護モデルや仮説に基づいて判断を行う7項目の「抽象的判断能力」,他者依存的な看護活動を行う5項目を反転項目にした「自立的判断能力」)全47項目から構成されている。尺度の信頼性と妥当性は,菊池らの先行研究 4)で検証されている。回答は5段階評定(かなりそう思う5点~全くそう思わない1点)であり,得点が高い程,看護の専門職的自律性が高いことを示す。対象者には日中の電話相談において,多様な相談に対応している状況を思い浮かべながら,気持ちをもっともよく表す数字を選択するよう示した。調査票作成にあたり,研究者の所属する施設の外来看護師7名(認定看護師1名を含む)の協力を得てパイロットテストを施行した。電話相談という限られた状況に関して,この尺度の質問項目に回答するにあたって答えにくさなどの問題がないかどうかを検討した結果,使用可能であると考えた。尺度の使用にあたっては,開発者の許可を得た。

5. 分析方法

日中の電話相談対応の施設別状況および,対象者の属性については,記述統計量を算出した。「看護の専門職的自律性測定尺度」は,各下位尺度の内的整合性を検討するためCronbach α係数を算出後,本尺度の各項目について,天井効果およびフロア効果の確認を行なった。属性による自律性得点の平均値で比較を行い,2群間をMann-Whitney-U 検定,3群間以上はKruskal-Wallisの検定を用い,多重比較はBonferroni法を行った。各属性同士の関連性をみるため,χ2 検定を用い,PhiおよびCramerのVで検証した。統計的分析には,統計解析ソフト SPSS Statistics Ver 27.0 for Windowsを用い,有意水準は5%とした。

6. 倫理的配慮

本研究は浜松医科大学医の倫理審査委員会(承認番号E15-303)の承認を得て行った。対象者に研究の趣旨,目的,データの保管と研究終了後の処理,研究参加は自由であり拒否したことで不利益を受けないこと,研究で取り扱う情報は個人が特定されないことを文書で説明し,質問紙は無記名とし,回収袋への投函をもって研究協力の同意とした。

III. 結果

研究協力可能である返答が得られたのは70施設であり,721名に質問紙を配布し,回収数は511名(回収率70.8%)であった。記入漏れのある49部を除外し,有効回答数462名(有効回答率64.0%)であった。

1. 研究対象施設の概要(表1

電話相談の連絡先として,専用の電話番号は特に設けず,施設の代表電話としているところが多かった。最初に電話を取り次ぐ職種は,電話交換手が多く,その他の回答として総務企画課,医事課クラーク,受付事務などが挙げられた。電話交換手を経由した電話での問い合わせに応じる看護職の資格要件は,「資格設定なし」が最多であり,電話対応の時間帯は,毎日(午前午後とも対応),次いで毎日(午前・午後の一定時間のみ対応)と,各施設に設定時間の幅があり,実際には設定時間以外においても適宜対応するとする回答もあった。電話対応への診療報酬加算の有無は,8割が「加算なし」の回答であった。

2. 対象者の属性

対象者の「年齢」は,40歳~49歳が193名(41.8%)で多くを占めていた。

「配偶者」や「子ども」については,「あり」という回答(それぞれ365名(79.0%),391名(84.6%))が多かった。「職位あり」は101名(21.9%)であり,「就業形態」は非常勤職が127名(27.5%),「免許」は准看護師が32名(6.9%)と少数存在していた。

3. 対象者の専門職的自律性の得点

本尺度のCronbachα係数は,.974であり,下位尺度別では,認知能力=.922,実践能力=.952,具体的判断能力=.918,抽象的判断能力=.921,自立的判断能力=.869と一定水準を保持していると判断した。本尺度の全体の得点は3.47(0.51)(平均(標準偏差))であった。

本尺度の各項目には,平均値に標準偏差を加えた際に最大値(5)を上回る,もしくは平均値から標準偏差を引いた際に最小値(1)を下回る項目はなかった。したがって,天井効果およびフロア効果は生じていないと判断した。

対象者の属性による専門職的自律性の得点については表2に示す。

「認定看護師教育機関修了者」は「免許取得後に修了した教育機関なし」に比べ,「認知能力」「実践能力」「具体的判断能力」「抽象的判断能力」で自律性平均値が有意に高得点を示した。

「現任教育の参加あり」は「現任教育の参加なし」に比べ,5つの下位尺度すべてにおいて有意に高得点を示した。「非常勤」の看護職において,「現任教育の参加あり」と「現任教育参加なし」の自律性得点の平均値では,有意な差は見られなかった。

「職位あり」は「職位なし」に比べ,5つの下位尺度すべてにおいて有意に高得点を示した。

外来における電話相談の対応経験年数は,「11年以上」が「3~10年」と「3年未満」に比べ,「認知能力」「実践能力」「具体的判断能力」「抽象的判断能力」において,自律性平均値が有意に高得点を示した。

「配偶者なし」は「配偶者あり」に比べ,「認知能力」「実践能力」「具体的判断能力」において,有意に高得点を示した。「子どもなし」は「子どもあり」に比べ,「実践能力」「具体的判断能力」「抽象的判断能力」「自立的判断能力」において,有意に高得点を示した。また,「配偶者」「子ども」については「就業形態」「現任教育の参加」「職位」との交絡の可能性が疑われたため,関連性を検討した(表3)。有意な関連を示したのは「就業形態」(それぞれχ2=8.798,p < .01,φ=-.138,χ2=3.940,p < .05,φ=-.093)であった。

「就業形態」では,「常勤」が「非常勤」と比べ,5つの下位尺度すべてにおいて,有意に高得点を示した。

表1 研究協力対象施設の概況

V. 考察

1. 対象者の専門職的自律性の特徴

電話相談の対応経験がある内科外来の看護職を対象とした「看護の専門職的自律性測定尺度」の各下位尺度平均は,「抽象的判断能力」が3.17(± .66)点で,他の下位尺度平均はおおむね3.5前後の水準を維持している。これは菊池ら4)の総合病院に勤務する看護師を対象とした研究と似た様相を示し,実践における看護問題に対して自律性が発揮できているという,おおむね肯定的な自己評価をしていることを示唆していると考えられる。

表2 電話相談に対応する外来看護職の属性による専門職的自律性得点の平均値

†Mann-WhitneyのU検定,‡Kruskal-Wallisの検定,Bonferroni法 ***:p <.001,**:p <.01,*p <.05,n.s.:not significant

表3 「配偶者」や「子ども」と「就業形態」,「現任教育の参加」,「職位」との関連性

χ2検定を用いた。***:p <.001,**: p <.01,*: p <.05

2. 日中の病院外来で電話相談に対応する看護職の自律性に関連する要因

以下は,日中の病院外来で電話相談に対応する看護職の自律性に関連する要因として,いくつかの側面ごとにその特徴を述べ,そこから考えられる今後の実践について検討したことを記述する。

1) 教育の側面から

「認定看護師教育機関修了者」は,「認知能力」,「実践能力」,「具体的判断能力」,「抽象的判断能力」において,対象者全体のなかで最も自律性得点の平均値が高く,総じて対象者全体が低値を示す傾向の「抽象的判断能力」も高値を示している。「認定看護師教育機関修了者」は,限られた時間の中で対応する日中の電話相談においても,より高度なレベルでの抽象的判断を行っていることが考えられる。

「基礎教育課程」による比較では,5つの下位尺度のどれも有意な差を示さなかった。一方,「現任教育の参加あり」は「現任教育の参加なし」に比べて5つの下位尺度すべてにおいて有意に高い平均値を示した。今回の対象施設では現任教育の対象を常勤・非常勤全ての看護職としているところも約3分の1存在した。しかし,「非常勤」の看護職のなかで,現任教育の参加の有無により自律性得点が異なるか分析を行なったが有意な差は見られなかった。このことは現任教育が「常勤」には有効であるが,「非常勤」には,少なくとも現在行われている教育が自律性向上に効果をもたらしていないことを示している可能性がある。したがって,「非常勤」に対してどのような教育を提供するか検討することが必要と考える。時間内に提供できる教育サポートとして,実践後の振り返りの機会がその1つであると考える。

従来,外来での電話相談における看護のあり方を系統的に示した規準はなく,看護師は経験や感覚を頼りに行ってきたことが考えられる。今後,必要とされる看護を客観的に捉えた実践モデルを明らかにし,外来看護職向けの独自の教育として,あるいはすべての新人看護職へのオリエンテーションとして,電話相談の中で,いかに効果的な支援を行うかなど指し示す必要がある。

2) 基本的属性の側面から

業務上「職位あり」は,外来に勤務する看護職のなかでも少数派であるが,「職位なし」に比べて,5つの下位尺度すべてにおいて自律性平均値が有意に高得点を示した。このことは自律性獲得に影響を及ぼす要因に「職位」があるとする先行研究5) 6)と矛盾しなかった。職位を有する看護職について,「医療の高度化や看護理論の進歩など変化に対する適応性とキャリア意識も自律性に影響力を持ち,キャリア意識は,職位が上がるに従って有意に高くなる傾向」7) と報告がある。職業において自己を高めようとする意識を持ち,変化に適応するための知識やスキルを得る自己研鑽が,限られた時間のなかで対応する電話相談においても自律性を発揮することにつながると考える。

「外来における電話相談の対応経験年数」は,「11年以上」が,「認知能力」,「実践能力」,「具体的判断能力」,「抽象的判断能力」において,高い自律性得点を示した。このことは,外来ケアに精通した看護職が肯定的な自己評価をしていることを示唆する。外来は,「新人看護師では勤まらない経験を積んだ専門職としての意識や能力が問われる職場」8)であり,在院日数の短縮化や医療の高度化を背景に,外来看護師は,「臨床判断能力と実践技術がなくては仕事ができない状況になっている」9)と指摘されている。今後は,電話相談も含めた外来独自の教育コースといった外来ケアに必要な能力が習得できる教育が行われる必要がある。それにより,患者の不安や疑問に対応することが,確実な検査遂行,正確な診断や的確な治療に繋がっていくことが期待される。

「配偶者」や「子ども」の有無は,「就業形態」と関連していた。女性にとって結婚や出産により非常勤職に変わることで,就業時間の制限となり教育機会の制限もあわせ持つものと考える。「非常勤」の看護職に必要な教育を工夫して行い,活用していくことは看護管理上重要なことである。

外来に勤務する看護職の約8割が子どもや配偶者がいるなど家族を形成していた。年齢では30歳から60歳までの看護職で占められており新人看護職が少ないのが外来の特徴である。本研究において,「配偶者なし」「子どもなし」は「配偶者あり」「子どもあり」に比べ,自律性平均値が有意に高得点を示したことは,年齢を30歳代に限定すると婚姻の有無によって自律性には相違が認められないとする研究報告10)を支持しない結果となった。その理由の一つ目として,子育てのライフステージにある看護職の特徴的な現象に,母親としての役割と職業人としての役割を両立させることへの葛藤があるということが考えられる。子育て中の看護職は「自分が満足するまで仕事をやりたい気持ちと,子どもに対しても満足いく母親でありたいという気持ちが同時に存在し,どちらも完全に満たされることがない苦しみの中にいる」11) と報告があり,子育て中においては院内外の研修への参加などスキルアップやキャリア発達のための学びに費やす時間的な余裕がない状況が推測される。二つ目に,キャリア発達過程に関する研究において「30歳前後で結婚・出産を体験していない場合,女性としての人生設計の見直しを図っており,その後,職業への取り組みが変化していた」12)と報告があるように,30歳前後で結婚や子育てをしていないことが,時間的な余裕や自己の職業への向き合い方の変化をうみ,自律性を向上させることにつながる可能性が考えられる。

外来看護職のうち勤務時間に制約のある看護職にとって,時間外の研修や研究といった学習機会の参加は困難な場合が多いが,時間内に提供できる教育支援が看護職全体の専門職的自律性を高めることに繋がると考えられる。

3. 看護経済・政策への示唆

今回の結果では,相談の多くが代表電話の電話取次者から外来看護職へと経由していくことが示され,施設の多くが相談や問い合わせに対応していることが明らかとなった。

従来,看護職の業務は,保健師助産師看護師法第5条のなかで「傷病者若しくはじょく婦に対する療養上の世話又は診療の補助を行うことを業とする」と定められている。しかしながら,電話相談への対応は,看護職の業務範囲における役割の境界が明確でないことから,個々の裁量で行われ,看護ケアの一つとして認識している程度のばらつきが大きいと推測する。電話相談が診療報酬上で評価されることで,電話によるケアが外来ケアの一つであるという認識が高まり,電話相談に携わる外来看護職が自身の役割をより明確に認識し,提供されるケアの質の向上につながると考えられる。そのためには,電話に対応する外来看護職に求められる看護実践を客観的に捉えた,基本的な看護水準の策定が急務である。また,診療報酬の要件として,電話による相談にも十分なケアが発揮できるよう,外来業務量に見合った適正な人員配置が行われていること,電話相談で求められる看護職の実践能力規準が提示され,条件を満たす看護職が配置されていることを設定することなどが必要と考える。

VI. 研究の限界

日中の病院外来における電話相談は,定義が明確でなく,診療報酬の対象となり,病院の業務として組織的に行われているものとそうでないものが回答に混在しており,回答者の電話相談についての認識にばらつきが大きい可能性がある。また,現任教育の定義を明確にせず調査を行なったため,現任教育に関する回答が電話相談に関するものを含んでいるかどうか判断できないことも本研究の限界と考えられる。

VII. 結論

日中の病院外来で電話相談に対応する看護職の自律性に焦点をあて,職務遂行における専門職的自律性の特徴と,自律性に関連する要因を明らかにすることを目的とし,内科外来看護職462名に無記名質問紙調査を実施した結果,以下のことが確認された。

1.高い自律性得点を示したのは,「認定看護師教育機関修了者」,「職位あり」,「外来における電話相談の対応経験年数」が「11年以上」の外来看護職であった。

2.5つの下位尺度すべてにおいて,「現任教育の参加あり」の看護職の方が「現任教育の参加なし」よりも,「就業形態」が「常勤職」の看護職の方が「非常勤職」よりも,有意に高得点を示した。

3.4つの下位尺度において,「子どもなし」の看護職の方が「子どもあり」よりも,3つの下位尺度において,「配偶者なし」の看護職の方が「配偶者あり」よりも,有意に高得点を示した。

4.「配偶者あり」や「子どもあり」の外来看護職は非常勤職が多く,就業形態と自律性得点との関連が考えられた。

5.電話相談に対応する外来看護職の自律性の向上には,勤務時間内に提供できる教育支援が必要であると考えられる。

謝辞

本研究は,浜松医科大学大学院医学系研究科学内研究プロジェクト(HUSM Grant -in -Aid)の研究助成を受けて行った。また研究の趣旨をご理解いただき,ご協力くださいました各医療機関の皆さまに心より感謝申し上げます。なお,本論文は浜松医科大学大学院に提出した修士論文を一部加筆修正したものである。

利益相反

この論文に関し開示すべきCOIはありません。

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