Journal of Information Processing and Management
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Guide to effective use of statistics : Part10: Official statistics on wholesale and retail trade
Shoji ASADA
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2012 Volume 55 Issue 1 Pages 47-55

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1. 商業の主要統計

前回は産業に関する主要統計のうち,製造業について解説したが,今回はその続きで,商業に焦点を当てる。わが国の流通構造は複雑であり,その実態の解明にメスを入れたのが公的統計である。公的統計は商品販売の流通構造を明らかにし,特定の商品がどの流通経路でどれだけ販売されているか,卸売り,小売りそれぞれのタイプ別に集計している。ビジネスにおいて新たに開発した商品を,どのような流通経路で販売したらよいかなどの判断に活用できる。最近徐々に勢力を伸ばしているインターネットを通じての販売動向も把握可能である。

商業における代表的な統計である「商業統計調査」と「商業動態統計調査」の特性を比較して表1にまとめた。全数調査である「商業統計調査」は,わが国商業の全体像の把握を目的としている。全国の商店数,従業者数,商品の販売額などについて,業種別,地域別,規模別の状況がわかる。近年では5年に2回の調査となっている。構造調査である「商業統計調査」に対して,動態調査である「商業動態統計調査」は,「商業統計調査」を母集団とする標本調査で,商店の月ごとの販売活動の動向を明らかにしている。対象は大規模卸売店,大型小売店,コンビニエンスストア,一般事業所の4種類から構成されている。

表1 「商業統計調査」と「商業動態統計調査」の比較

全数調査や大規模標本調査が次々に実施されると,回答する事業所側での負担が大きくなる。そこでその負担を軽減すべく,いくつかの調査を統合した調査として平成24年に総務省の「経済センサス‐活動調査」が予定されている。「商業統計調査」は平成24年には実施されず,「経済センサス」の中で把握される。今後「商業統計調査」は「経済センサス」の中間年に実施される。

2. 主要統計の概説

2.1 商業統計調査(経済産業省)

2.1.1 調査の概要

「商業統計調査」はわが国の約160万におよぶ卸売業,小売業についての全数調査で,年間販売額をとらえていることから,「商業の国勢調査」ともいえるものである。市区町村別,業態別(百貨店,スーパー,コンビニ,専門店など),販売形態別(店頭販売,訪問販売,通信販売,自動販売機など),立地環境特性別(商業地,住宅地,商店街など)といったさまざまな角度から分析できるように調べている。

昭和27年に調査を開始以来,昭和51年までは2年ごとに,それ以降平成9年までは3年ごとに実施してきた。それ以降は5年ごとの調査となり,その中間年に補完調査を行う。補完調査は,基本構造のみをとらえるのが目的であり,商店数,従業員数,年間販売額などを調べる。取り扱い品目は日本標準商品分類に基づいて作成した5桁分類と細かいが,補完調査では3桁分類(一部は4桁)と粗くなっている。

調査の方法は,調査員が全国約160万の卸売業および小売業を営む商店を訪問し,調査票を渡して回収する。膨大な調査であるため,全国すべての商店に漏れなく正確に調査票を記入してもらうことが統計の第一歩である。

最近では,商業活動が多様化しており,マンションの一室で行う通信販売,店舗を持たず電話一本で配達する商売,無人のコンビニ,インターネットによる販売など,商店かどうかとらえにくいもの,または商店であってもどこに調査票の記入を依頼すればよいのかわからないものなどが多く出てきている。

なお公表にあたっては集計結果を表2のような構成で表章している。

表2 「商業統計調査」の集計表の種類と主な内容
表3 商業の事業所数,従業者数,販売額の推移

2.1.2 統計からわかること

(1) 業種別の商店数と企業数

法人,個人別にわかる。法人は,会社,農業協同組合,生活協同組合など別に,従業者規模別,売場面積別,年間販売額階級別,営業時間階級別,来客用駐車場収容台数区分別にわかる。調査は事業所単位で行われているが,調査票を名寄せして企業としての調査も集計している。企業の年間販売額階級別の企業数もわかる。

(2) 従業者数

業種別に,法人,個人別にわかる。

(3) 年間販売額

業種別年間販売額のほか,1商店当たり,従業者1人当たり,売場面積1m2当たりの年間販売額がわかる。また,商品の販売以外の修理料,仲立ち手数料のほか,製造業,サービス業としての売り上げもわかる。主たる業務が卸・小売業でありながら,部分的に製造業,サービス業としての業務をしている場合のそれぞれの売上高も把握している。

(4) 商品手持ち額

商店が販売する目的で所有している商品の手持ち額であり,流通在庫と呼ばれている概念に当たるものである。

(5) 現金販売と信用販売の額

販売方法として現金販売なのか,信用販売なのか,信用販売のうちの割賦販売と掛け売り・その他の額などがわかる。割賦販売とは,代金の受け取りが2か月以上の期間にわたり,かつ3回以上に分割して受領することである。手形や,新聞・牛乳などの月決め販売は掛け売りである。クレジットカードによる支払いは,3回以上の分割なのかどうかで割賦販売か掛け売りかに分かれる。

(6) セルフサービス店,製造小売りの商店数,販売額

営業形態として,売場面積の50%以上について,セルフサービス方式を採用しているものをセルフサービス店という。製造小売りとは自店内で製造した商品を,主としてその場所で販売するものである。

(7) 電子商取引による販売額

電子商取引(インターネット)による仕入れ額,販売額がわかる。

(8) 販売形態別販売額

商品の販売形態として,店頭販売,訪問販売,通信・カタログ販売,自動販売機による販売などがわかる。

(9) 商店の立地環境別の商店数,販売額

立地環境として,商業集積地区(商店街),オフィス街地区,住宅地区,工業地区など別にわかる。商業集積地区とは,小売業,飲食店,サービス業が近接して30店以上あるものである。またそれに該当するショッピングセンターや駅ビル,寄合(商店ごとに経営者が異なる)百貨店などである。商業集積地区(商店街)は,さらに内訳として,駅周辺型,市街地型,住宅背景型,ロードサイド型,その他の5つに分類している。

(10) 開店時間,閉店時間

開店時間,閉店時間別の商店数がわかる。また終日営業つまり24時間営業の店の数もわかる。

(11) メーカーの販社の商店数,売上高

卸売業の統計として製造業の販売事業所の統計がある。

(12) 商業マージン

統計には商業マージンという表現はないが,年間仕入れ額と販売額の差からマージンを推定できる。

(13) 小売業の仕入れ先別仕入れ額

生産業者から直接仕入れたか卸売を通したか別の仕入れ額がわかる。仕入れ先として,本支店間移動,自店内製造,生産業者(内訳として親会社,それ以外),卸売業者,海外からの輸入といった区分け別の額がわかる。

(14) 小売業の販売先別の販売額

販売先として,本支店間移動,卸売業者,小売業者,産業使用者,直接輸出,一般消費者がある。

(15) 商品別の取り扱い商店数,年間販売額

「品目編」には商品別の統計がある。例えば,京都府福知山市における楽器販売の商店数,年間販売額といったことがわかる。

(16) 商品別の業種別取り扱い商店数,年間販売額

商品名が表頭に,業種が表側になったクロスの表があり,どのような商品がどのような業種でどれだけ売られているかがわかる。表側の業種には,~小売業として業という字がついており,表頭には,~小売として業という字がついていない。業という字がついていないものが品目を表す。

(17) 業態別の商店数と販売額

「業態別統計編(小売業)」には,百貨店,総合スーパー,専門スーパー,コンビニエンスストア,専門店,中心店,その他の小売店といった業態別の統計がある。主な業態の定義は以下である。

コンビニエンスストア:セルフサービス方式であり,食品を扱っており,売場面積が30m2以上250m2未満で,営業時間が14時間以上の店のことである。

スーパーを大きく3つに分けている。

総合スーパー:そのうち売場面積が3,000m2以上(都特別区および政令指定都市は6,000m2以上)を大型総合スーパー,3,000m2未満(都特別区および政令指定都市は6,000m2未満)を中型総合スーパーとしている。

専門スーパー:売場面積が250m2以上で,衣料品を70%以上扱っているのが衣料品スーパー,食料品を70%以上扱っているのが食料品スーパー,住関連品を70%以上扱っているのが住関連スーパーである。

その他のスーパー:上記のスーパーでもなくコンビニエンスストアでもないが,売場面積の50%以上でセルフサービス方式を採用している商店。

専門店:セルフサービス方式を採用していない対面方式の商店で,衣料品の扱いが90%以上を衣料品専門店,食料品の扱いが90%以上を食料品専門店,住関連品の扱いが90%以上を住関連専門店としている。

それぞれの扱い比率が50%以上を中心店と呼んでいる。専門店でも中心店でもない店をその他の小売店としている。

(18) スーパーやコンビニエンスストアのチェーン店と単独店の商店数

本・支店別の統計で単独店,本店,支店別の商店数を把握している。

(19) 商品別の業態別取り扱い商店数,販売額

表頭に商品,表側に業態のクロス表がある。例えば,化粧品のコンビニにおける販売額などがわかる。

(20) 大規模小売店舗内のテナント店の商店数,従業者数,年間販売額,売場面積

ショッピングセンターのような大規模小売店舗内の商店を,特定大型店とテナント店に分けている。特定大型店とは,百貨店や総合スーパーのような大型の店であり,それ以外をテナント店としている。統計は,「商業統計表 大規模小売店舗統計編(小売業)」に収められている。

(21) フランチャイズ・チェーン,ボランタリー・チェーンへの加盟率

加盟している事業所数,加盟率のほか販売額などがわかる。

フランチャイズ・チェーン(FC)加盟事業所とは,事業所(フランチャイジー)が他の事業所(フランチャイザー(本部))との間に,契約を結び(加盟),フランチャイザーの商標や経営ノウハウを用いて,同一イメージのもとに商品の販売等を行っている事業所のことである。

ボランタリー・チェーン(VC)加盟事業所とは,同一業種の事業所同士で本部を中心に共同仕入れ,配送,宣伝,売り出しなどを行う共同事業に加盟している事業所のことである。

(22) 卸売業の流通経路

卸売業に関しては,「商業統計表 流通経路別統計編」がある。図1のような取引における商店数,販売額が卸売業の業種別に調べられている。

図1 卸売業の流通経路図

2.1.3 読む上での注意点

「商業統計調査」は,前述のように各編に分かれて刊行されているので,目的に応じた使い分けが必要である。例えば,「産業編」と「品目編」の違いは,「産業編」では,いくつかある品目のうち,最も売上高の多い品目で産業が分類されている。これに対して,「品目編」では,品目ごとの売り上げがとらえられる。品目数は,卸売業が110で小売業が82である。

「産業編」の自転車小売業は,いくつかの品目を扱っている中で,自転車小売りが最も多い商店が分類されている。したがってその売上高には,自転車以外の品目も含まれている。これに対して,「品目編」の自転車小売りは,自転車の売り上げそのものである。「品目編」に,自転車小売りの商店数という項目があり,「産業編」の自転車小売業とは数値が大きく異なっている。「品目編」の商店数には,自転車を扱っている商店がすべて集計されている(ただし,調査票に記入されている商店に限る)。小売という表現が,品目の売り上げであり,小売業と業という字がついた表現が自転車小売業に分類されている商店の統計であることを意味する。前述したように業という一字に注目しなくてはならない。

2.2 商業動態統計調査(経済産業省)

2.2.1 調査の概要

「商業動態統計調査」(一般名称:商業販売統計)は,標本調査(一部規模の大きい事業所は悉皆調査)により,卸売業,小売業についてわが国全体の業種別の販売額を毎月把握しているものである。消費動向をモノの販売活動の面から月々にとらえているもので,調査間隔の大きい「商業統計調査」を補完する役割も併せ持っている。

この統計のうちの卸売業販売額と百貨店販売額は内閣府の景気動向指数の一致系列にも用いられており,景気動向を反映するデータとしてもその役割を果たしている。

また,販売額だけでなく大型小売店と大規模卸売店の在庫状況も四半期ごとに把握している。

昭和25年に指定統計として,「百貨店販売統計調査」を開始したのが最初で,昭和28年から「商業統計調査」を母集団とする抽出商店により,「商業動態統計調査」を開始した。当初は四半期ごとのものであった。昭和31年からは「商業統計調査」を母集団とする,標本理論に基づいた標本調査に改正された。昭和34年から毎月調査が始まった。平成10年10月からは,コンビニエンスストアの調査を承認統計として開始し,翌平成11年4月には指定統計になった。また平成12年7月からは,調査票の提出方法を紙媒体に加え,新たに電子媒体による方法(新世代統計システムの稼働によるオンラインを活用した申告)も取り入れている。

調査の対象は全国の卸売業・小売業で,以下の4種類の統計から構成されている。

(1) 全国の卸売業・小売業から標本抽出された商店を対象とした業種別商業販売統計で,わが国の商業の全体像を表すものである。前述したように調査間隔が空いている「商業統計調査」を補う調査といえるもの。

(2) 卸売業のうち従業者規模の大きな商店を対象とした大規模卸売店販売統計。

(3) 小売業のうち百貨店およびスーパーを対象とした大型小売店販売統計。百貨店・スーパー別に,商品別に,県別,13大都市別,経済産業局別に月別の数値を追いかけられる。

(4) 店舗数が500店以上のコンビニエンスストアを有するチェーン企業本部を対象としたコンビニエンスストア販売統計。

標本設計では以下の2つの異なる標本設計をしている。

• 「指定商店調査」(個別標本調査)

卸売業のすべて,従業者20人以上の小売業,自動車小売業のすべてから抽出している。業種別,従業者規模別に標本抽出枠(セル)を設定し,業種ごとに標本の精度が一定範囲(標準誤差率表示5%以下)となるように標本数を設定している。指定商店のうち,抽出率1分の1の商店については,2年間調査をし,その他の抽出商店は1年間を調査対象期間としている。抽出率1分の1の商店とは,卸売業では,従業者200人以上(各種商品卸売業は従業者100人以上),小売業では従業者100人以上(各種商品小売業は従業者20人以上,燃料小売業は50人以上)の店舗である。大規模の店舗以外は調査期間が2年ではなく1年であるが,その理由は,記入の負担を少なくするためである。

• 「指定調査区調査」(地域標本調査)

「指定商店調査」の対象外の従業者19人以下の小売業(自動車小売業を除く)で,調査区を指定しその調査区内に所在する19人以下のすべての小売業を調査する。「商業統計表」の調査区から商業動態調査区を作成し,それを5層に層化して調査区を抽出している。抽出された調査区の小売業すべてを調査しているが,近くに何軒か集まっているほうが調査の効率が良いからである。抽出に当たっては系統的標本抽出(等間隔サンプリング)を用いている。都道府県別,セル別に販売額の大きさ順に商店を並べ,コンピューターにより乱数を発生させ,その値を出発点として等間隔に標本抽出している。調査期間は1年間で,6組のグループを組み,2か月おきに6組のうち1組を新しい標本に交代する方法を取っている。このようにローテーションを組んでいる理由は,標本が変わることによる数値の変化をできるだけ抑えて継続性を高めるためである。

調査の実施においては,都道府県が調査員を通じて対象商店に調査票の記入を依頼し,回収する調査員調査と,経済産業省が直接対象商店に調査票の記入を依頼し,回収するメール調査の2通りがある。大型小売店とコンビニエンスストアは後者の方法でありそれ以外が調査員調査である。

調査結果を集計するに当たっては,業種別・従業者規模別に特異値(セル内における平均より極めてかけ離れた販売額を有する商店)の検出を行い,変動係数の縮小化を図っている。

2.2.2 統計からわかること

(1) 業種別販売額

卸売業,小売業別に業種別の販売額がわかる。小売業の場合,表4に示すような業種分類である。

表4 商業販売額のうち小売業の販売額

卸売業,小売業の販売額の時系列変化を見ると,図2の通り,卸売業の販売額の落ち込みが大きく,流通段階における中抜きが進行している様子を見てとることができる。

図2 卸売業・小売業別の販売額推移

(2) 大規模卸売店の販売額

従業者100人以上の各種商品卸売事業所(総合商社等)および従業者200人以上の卸売事業所について,商品別の販売額がわかる。商品の分類は,繊維品,衣服・身の回り品,農畜産物・水産物,食料・飲料,医薬品・化粧品,化学製品,石油・石炭,鉱物,鉄鋼,非鉄金属,一般機械器具,自動車,その他の輪送用機械器具,家庭用電気機械器具,その他の機械器具,建築材料,紙・紙製品,その他の商品である。

(3) スーパー,百貨店の商品別販売額

スーパーとは,従業員50人以上の大型小売店で,売場面積の50%以上についてセルフサービス方式を採用している商店で,売場面積が1,500m2以上の商店のことである。

百貨店とは,従業員50人以上の大型小売店で,売場面積が特別区・政令指定都市で3,000m2以上,その他の地域で1,500m2以上であり,上記のスーパーに該当しない商店のことである。

(4) コンビニエンスストアの販売額

店舗数500店舗以上(直営店やFC店,VC店など形態に関係なく)を有するチェーン企業の本部を対象とした調査結果がわかる。他の業種は事業所対象だが,この調査は企業を対象にしている。標本調査ではない。販売額は,商品別のほか,サービス売り上げもわかる。店舗数500店舗以上に限った調査であり,わが国全体のコンビニエンスストアの調査ではない。全体については,「商業統計調査」の業態別統計編に調査結果を表章している。

(5) 経済産業局別,都道府県別販売額

地域別の販売額,事業所数を調べているので,例えば,2011年3月11日の東日本大震災による影響がどの程度の大きさであったかを,東北地域の販売額の対前年同月比の数値からはかり知ることができる。大型小売店の販売高を見ると,平成23年3月には東北地域がマイナス22.5%と大きく落ち込んでいる実態がわかる(図3)。

図3 平成23年大型小売店販売高の対前年同月比

2.2.3 読む上での注意点

大型小売店は悉皆調査をしているのでその実額をそのまま用いているが,それ以外の標本調査の結果については,販売額を業種別・従業者規模別に合計し,対前月比を求め,前月の販売総額に乗ずる方法を用いて値を求めている。

標本の抽出率の逆数をかけて全体に復元するという方法は,地域標本調査で業種別・従業者規模別の販売額を求める段階では行っている。その値で前月比を求めて前月の値に乗ずる比推計という方法を取っている。

なお,「商業動態統計調査」は「商業統計調査」を母集団とした標本調査であるため,2~3年ごとに実施する「商業統計調査」の結果が公表された時点で,過去にさかのぼって業種別販売額の水準を「商業統計調査」の結果に合わせるように数値の改訂を行っていた。この作業を水準修正といっている。

平成16年「商業統計調査」の結果に基づいて,平成19年2月分の確報で水準修正を行った。平成14年4月分~平成16年3月分の24か月分の業種別従業者規模別修正販売額を改訂している。この間の「商業動態統計調査」の販売額(業種別,従業員規模別)が同期間を通して商業統計と同額になるように,遡及期間の傾斜配分比率を算出する。

ただし,平成19年「商業統計調査」結果による平成16年4月分以降の修正(水準修正)は中止とした。今後については未定である。

3. 商業に関する統計の活用事例

大阪府における地図の販売額を求めるというケースを挙げてみる。地図は書店で販売されていることに着目し,大阪府の書店の売上高に占める地図の販売高比率を乗じて値を推計できないものかデータに当たってみた。「商業統計調査 品目編」によると,平成19年における大阪府の「書籍・雑誌小売」の販売額は168,186百万円である。次に書店における部門別売上高構成比を,トーハン「書店経営の実態 平成19年度版」1)で見ると,「地図・旅行」が2.0%である。「地図・旅行」のうち地図の比率を求めることができる既存のデータはなかったので,大手の書店3か所を観察して,売場面積比率を見る。そうすると,地図3に対して旅行ガイドが5という比率であった。ここから,おおざっぱな数値ではあるものの,大阪府における地図の販売額として下記のように算出してみた。

  
$168,186\textrm{(百万円)} \times 0.02 \times 3/(3 + 5) = 1,261\textrm{(百万円)}$

次回はサービス業の公的統計の中から主要な統計について,調査の概要,統計からわかること,活用方法などをご紹介する予定である。

参考文献
  • 1)  トーハン・コンサルティング編. 書店経営の実態 平成19年度版. トーハン, 2007, p. 31.
 
© Japan Science and Technology Agency 2012
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