Journal of Information Processing and Management
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2013 Volume 55 Issue 11 Pages 859-862

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米国議会図書館Twitterアーカイブの現状

Twitter archive計画を2010年4月に発表した後,米国議会図書館(Library of Congress)は,詳細については沈黙を保ってきたが,その進捗状況がホワイトペーパーと1月4日のブログで発表された。既に2006年~2010年のツイート収集が完成しており,総数は1,700億に達する。議会図書館が毎日受け取るツイート数は,2011年2月には1億4,000万だったのが,2012年10月には5億と急増した。研究者からは,既に400を超えるアーカイブ利用の要望が寄せられており,研究者がアーカイブに総合的かつ有益な方法でアクセスできるようになることを優先課題として,現在重大な技術の挑戦に取り組んでいる。その詳細は発表されてないが,Washington Post紙が,Robert Dizard Jr.副館長の言葉を紹介している。「人々は完全にインデックスされたデータベースを期待するが,それをリアルタイムで大規模データベースに適用することは極めて難しい。Twitterはコンテンツの創造と配布に焦点を置くが,私たちは,データの収集とアーカイビング,その固定化とアクセス提供という非常に異なるモデルを追求している」。

Gnip社の管理の下で,ツイートは自動的にアーカイブに移転され,それぞれのツイートには50を超えるメタデータフィールド,例えば,最初にツイートされた場所,リツイート回数,フォロワーなどが付与される。ツイートに添付されたリンク,写真,ビデオなどは含まれない。安全保護のために,ツイートコレクションは2セット用意される。議会図書館が,Gnip社から受け取った133テラバイトのデータは,ソーティングやフィルタリングなどが未だされておらず,未加工の状態にある。Dizard副館長は,予算が不十分なため,現在のところは,研究者をアーカイブにアクセスさせるのはコスト的に無理であると述べている。議会図書館が現在提供しているサービスを利用して,2006年~2010年分のツイートを1回検索すると24時間かかるとのことである。最終的な計画では,ツイートコレクションは館内の閲覧室でのみ利用できることになる。プライバシーに十分配慮するため,最も厳しいプライバシー設定を選んだ人々のツイートはアーカイブせず,削除されたツイートの消去も計画中である。誰がアーカイブにアクセスできるのか,またアクセスができるようになるまでのタイムテーブルなどの情報は,現在のところ不明なままである。

(http://www.loc.gov/today/pr/2013/files/twitter_report_2013jan.pdf)(http://www.washingtonpost.com/lifestyle/style/library-of-congress-has-archive-of-tweets-but-no-plan-for-its-public-display/2013/01/03/e4db1c24-55d4-11e2-bf3e-76c0a789346f_story.html)(accessed 2013-01-15).

JSTORがジャーナルアーカイブを無料提供

このところ立て続けに新しいプログラムを発表しているJSTORは,登録するとJSTORアーカイブの一部を無料で読めるパイロット・プログラムRegister & Readを2012年3月に開始したが(vol.54, no.12の本欄にて既報),このプログラムを拡大し,1,200タイトルを超えるジャーナルアーカイブを無料提供するサービスを2013年1月に開始した。10か月のテスト期間中は,76出版社のジャーナルが提供されたが,プログラムの本格開始により,700を超える学会,大学出版局,学術出版社の学術ジャーナル論文450万件以上が提供される。JSTORのアカウントに登録し,所属機関や研究分野などを含む個人情報を提供しさえすれば,最大3論文を好きな期間,無料で読むことができる。しかし,選んだ論文は少なくとも14日間は削除できず,その期間中に新たな論文を読むことはできない。また,テスト期間中と同様,ダウンロードやコピーはできない。JSTORは,登録から得た情報を,関心を持つ出版社や図書館にも使わせるが,これは出版社にRegister & Readへの参加を促すための重要なインセンティブとなる。JSTORを運営するITHAKAのHeidi McGregor副社長は,「コンテンツ利用者や興味分野のデータは,出版社が購読者やメンバーを増加し,新しい著作者を獲得する機会を見いだすのに役立つ」と述べている。個人情報の扱いについては,JSTORは安全なプライバシーポリシーを持っていると主張するが,懸念する人々も少なくないようである。McGregor氏によれば,プログラムのテスト期間中に15万人が登録利用したとはいうものの,論文に到達した人たちの中で,実際に登録を完了したのは75分の1に過ぎなかった。主なターゲットとされた,機関に属さない独立研究者は登録者のわずか16%しかなく,ほとんどは学生であった。この期間中に提供されたジャーナルの60%は,1論文を個人に売ることができ,販売の低下が生じなかったことから,本格開始に際して脱落した出版社は皆無とのことである。JSTORはRegister & Readを,新しい利用者にアクセスするための実験で,今後もプログラム内容は変わっていくという意味で,依然としてベータと称している。

アーカイブの無料提供が発表された2日後,JSTORから480万件の論文を違法にダウンロードしたとして2011年7月に逮捕され(vol.54, no.6の本欄にて既報),裁判を4月に控えていたAaron Swartz氏の自殺が伝えられた。告発することを拒んでいたJSTORは直ちに,「われわれの使命は,世界の多数の学術知識への幅広いアクセスを促進することであり,裁判については当初から残念に思っていた。ダウンロードされたデータは返却されており,JSTORはSwartz氏に対する民事請求に関しては解決済みである」と述べ,哀悼の意を表する声明を発表した。

(http://about.jstor.org/individuals)(http://about.jstor.org/statement-swartz)(accessed 2013-01-15).

Penguinが司法省と和解

電子書籍の価格協定をめぐって,米国司法省がApple社と大手5出版社を相手に訴訟を起こすと同時に提案した和解条項案を,Penguinグループが,ついに受け入れることを決め,和解協定に署名した。Penguinは2013年後半にRandom House社と合併することになったため,訴訟から抜け出すことを余儀なくされたものと思われる。和解の内容は2012年4月に3出版社(Hachette社,HarperCollins社,Simon & Schuster社)が受け入れたものと基本的に同じである(vol.55, no.3の本欄にて既報)。Penguinは,電子書籍小売業者との現存の契約を破棄し,今後2年間電子書籍の価格コントロールを断念する,すなわち,小売業者は価格を自由に設定できるという契約を結ぶことに同意し,再犯を防ぐために司法省の厳しい監視の下に置かれることになる。それに加えて,いかなる小売業者も低価格を設定することはできないというような,最恵国待遇の協定を結ぶことも5年間禁じられる。既に和解を受け入れた3出版社は,Amazonなどの小売業者と新しい電子書籍契約を締結した。今なお,自社電子書籍の価格を設定し,小売業者にコミッションを支払っているが,小売業者は自由に値引きをし,損をして売ることも可能である。司法省は,和解はPenguinの多くの電子書籍価格引き下げをもたらすだろうと主張しているが,実際には,3出版社の電子書籍価格はわずかに下がった程度であるものと見られる。6月に開始される審理に向け,残ったApple社とMacmillan社が訴訟を続けるかどうかに焦点が集まっている。

(http://www.justice.gov/opa/pr/2012/December/12-at-1514.html)(accessed 2013-01-15).

行政機関のソーシャルメディア利用進む

行政機関によるソーシャルメディアの利用が一段と進んでいる。首相官邸は1月10日にFacebookページを開設した。このFacebookページでは,安倍総理の基本的な考えや,安倍内閣が取り組む政策,首相官邸での日々の動きなどを,写真も活用しつつ国民に直接届けたいとしている。首相官邸は昨年10月に無料通話・メッセージングアプリ「LINE」に行政機関としては初めて公式アカウントを設置するなど,ソーシャルメディアの活用を進めている。安倍総理自身も就任前からFacebookを積極的に活用し,多くのユーザーを集めている。今後は安倍総理個人のFacebookページでは,自身の働きぶりや身近なトピックを伝えるなどし,首相官邸のページとは使い分けていくとしている。

一方,東京都の猪瀬新知事は昨年12月18日の庁議で,東京都のすべての局に対して,ツイッターアカウントを開設し,情報発信を行うよう指示した。この指示を受けて都庁全体でのアカウント数は,以前は11局で13アカウントだったが,27局で33アカウントになった。

(http://www.kantei.go.jp/jp/pages/fb_release.html)(https://www.facebook.com/sourikantei)(http://www.metro.tokyo.jp/SUB/accounts.htm)(accessed 2013-01-15).

Twitterの利用増加続く,テレビ視聴率への活用も

Twitterは2012年12月18日,月間アクティブユーザー数(MAU)が2億人を突破したと発表した。Twitterは2011年9月にMAUの1億人突破を発表しており,それから1年強で倍増したことになる。Twitterでは1か月に1回以上Twitterにログインしたユーザーをアクティブユーザーと定義している。

また2013年1月1日には,1秒当たりのツイート数(TPS)の記録が塗り替えられた。例年,新年を迎える瞬間には,ユーザーが一斉に新年を祝うツイートを送信している。2013年も,それぞれの時間帯で新年を迎えた瞬間にTPSが急増した。日本で新年を迎えた際には最高33,388TPSとなり,2011年12月にやはり日本で記録した25,088TPSを大きく上回って,過去最高記録となった。

一方,Twitterのツイートデータを別の分野で利用する試みも進んでいる。米調査会社のニールセンとTwitterは,ツイートデータを利用したテレビ視聴率調査「Nielsen Twitter TV Rating」を共同で構築すると発表した。ニールセンはこれまでも米国向けにテレビ視聴率調査を行っているが,「Nielsen Twitter TV Rating」はそうした既存のテレビ視聴率調査を補うもので,テレビ局や広告主に対して,テレビ視聴者のソーシャル活動を理解するために必要なリアルタイム指標を提供する。日本でも,ビデオリサーチがTwitter Japanの協力の下で,Twitter上でのテレビ番組への反応を測る指標の整備に乗り出すなど,同様の取り組みが進んでいる。

(https://twitter.com/twitter/status/281051652235087872)(http://blog.jp.twitter.com/2013/01/blog-post.html)(http://www.nielsen.com/us/en/insights/press-room/2012/nielsen-and-twitter-establish-social-tv-rating.html)(accessed 2013-01-15).

2013年のセキュリティ動向予測

2012年末には,セキュリティ企業各社が2013年のセキュリティ動向予測を発表している。米トレンドマイクロが12月17日,米シマンテックが11月11日,米マカフィーが12月27日に,それぞれ発表した予測では,1)モバイル端末をターゲットとしたマルウェアの急増,2)モバイルやクラウドを狙った攻撃やランサムウェア(単なる詐欺ではなく,ユーザーを脅迫するようなマルウェア)の出現,3)国家や軍によるサイバー攻撃,オンラインでのスパイ活動などの増加,といった脅威を共通して指摘している。

(http://blog.trendmicro.co.jp/archives/6457)(http://www.symantec.com/connect/blogs/2013-5)(http://www.businesswire.com/news/mcafee/20121227005115/en/McAfee-Predicts-Rapid-Evolution-Cyberthreats-Year)(accessed 2013-01-15).

Kindleストア,日本での利用率トップに

インプレスR&Dは1月9日,日本での電子書籍ストアの利用率に関する調査結果を発表した。同社が発行する電子出版業界向けの電子雑誌の読者を対象として,2012年12月17日から20日まで行った調査では,アマゾンの「Kindleストア」を利用しているという回答が40%になり,紀伊國屋書店の「BookWebPlus」(13.4%)やソニーの「Reader Store」(10.1%)を大きく引き離して1位になっている。前回調査(2012年10月)は,Kindleストアが日本でサービスを開始する直前で,「BookWebPlus」は1位,「Reader Store」は3位だった。Kindleストアはサービス開始から短期間で多くの利用者を獲得したことになる。調査結果では,2位以下の電子書籍ストアの利用率に大きな変動がなかったことを興味深い点としてあげ,「Kindleストアの日本参入は既存ストアのシェアを侵食せずに新たな市場を作り上げた」と指摘している。ただし,前回2位の楽天「Kobo」は利用率が減少している。調査結果では,Koboが電子ペーパー型の専用端末中心で,iPhoneやiPad向けのアプリ対応が遅れたことを原因としてあげている。一方,紀伊國屋書店のBookWebPlusは,マルチデバイス対応を進めており,Kindleストアも専用端末にスマートフォン向けアプリを導入している。

(http://www.impressrd.jp/news/130109/OnDeck)(accessed 2013-01-15).

 
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