Journal of Information Processing and Management
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2013 Volume 56 Issue 3 Pages 190-193

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Digital Public Library of Americaがベータ版を公開

米国デジタル公共図書館(Digital Public Library of America: DPLA)が,Webサイト上にプロトタイプ(ベータ版)を4月18日に公開した。DPLAの計画イニシアチブは,2010年4月に開始されたが,具体化のきっかけとなったのは,10月にRobert Darntonハーバード大学図書館長によって開催された,図書館・財団・大学・研究所などのリーダー42名による会議での,ビジョンステートメントへの合意であった。その内容は「現代・将来世代のすべてを教育・啓発し,力を与えるために,図書館・大学・アーカイブ・博物館などにある国の遺産を引き寄せる,総合的なオンライン資源のオープンな分散型ネットワークを創設するために,一致協力する」というものである。その後,公共図書館,大学図書館,出版界,技術企業,政府機関,基金機関などが参加して計画が進められてきた。

現在,ハーバード大学,Internet Archive,ボストン公共図書館,シカゴ公共図書館,サンフランシスコ公共図書館から提供された200万件を超える図書・画像・記録・音声をブラウズすることができる。公開直前にはイリノイ大学アーバナ・シャンペーン校図書館とヴァージニア大学の参加が発表された。現時点でアクセスできるのはパブリックドメインに属する,図書,画像,音声ファイル,ビデオ,その他著作権法の制限に抵触しないデジタルの芸術作品に限られている。DPLA理事会議長のJohn Palfrey氏は,著作権のある作品も合法的な方法で利用できるような方法を見いだすことを望んでおり,「非常に優れた弁護士や他の専門家がこの問題に熱心に取り組み,DPLAを通して,著作権のあるデジタル資料を合法的に共有するためのアプローチ方法を検討している」と語った。42の州・地域図書館のうち,現在7図書館がハブとして,DPLAの基本的なサービスとコンテンツを提供しており,将来は残り35図書館も同じ役割を果たすことが期待されている。7図書館は,Mountain West Digital Library(ユタ,ネバダ,アリゾナの3州をカバー),Digital Commonwealth(マサチューセッツ州),Digital Library of Georgia,Kentucky Digital Library,Minnesota Digital Library,South Carolina Digital Library,Oregon Digital Libraryである。

図書館情報資源振興財団(Council on Library and Information Resources: CLIR)のDigital Library Federation ProgramディレクターRachel Frick氏によれば,初日には1時間に50万件のビューがあり,Twitter上には,サイトに対して熱狂的な反応が寄せられていると述べた。内容にバグや矛盾点があると指摘する声もいくつかあるが,図書館界では概して,待ちに待ったプロジェクトがついに公開されたことに沸き立っていると見られる。コレクションへのアクセスをサードパーティー・アプリケーションに加えることを望む人々に対して,DPLAはAPIを提供することにしており,複数のプログラマーが,APIを活用するためのアプリケーションやプログラムのリリースを開始した。既に,DPLAとEuropeanを同時に検索するサイトや,DPLA,Biodiversity Heritage Library,HathiTrust,Internet Archiveの図書を,複数主題に基づいてクラスター構築するバーチャル・シェルフをブラウズできるサイトの利用が可能である。

なお,ボストン公共図書館で予定されていたDPLAのオープニング記念行事(4月18日~19日)はボストン・マラソン爆発事件が起きたために,秋に延期された。

  • (http://dp.la/)(accessed2013-05-10).

Simon & Schuster社が電子書籍のパイロットプログラムを開始

米国の6大出版社の中で,図書館の電子書籍貸出に最後まで抵抗してきたSimon & Schuster社が,ニューヨーク公共図書館(New York Public Library: NYPL),ブルックリン公共図書館(Brooklyn Public Library: BPL),クイーンズ図書館(Queens Library: Queens)の3図書館と,電子書籍貸出パイロットプログラムを開始することを発表した。ニューヨーク公共図書館,ブルックリン公共図書館は4月30日から,クイーンズ図書館は5月半ばから1年間,Simon & Schuster社の全カタログから好きな電子書籍を1年間のライセンス契約で入手することができる。1冊の電子書籍を同時に2人以上に貸し出すことはできないが,貸出回数の制限はない。価格は明らかにされていないが,他の条件はPenguin Groupが,NYPLとBPLと共に2012年秋パイロットプロジェクトを開始した後に,全図書館に広げたモデルによく似ている。利用者は,図書館のオンラインポータルから,Simon & Schuster社の電子書籍を購入することもできる。図書館は,売上代金の一部を受け取ってそれを新しい書籍の購入に当てる。貸出については,3M社がNYPLとBPLを,Baker & Taylor社のシステムであるAxis 360がQueensをサポートする。 Simon & Schuster社のCarolyn Reidy社長は,図書館が社会のあらゆる層に読書を奨励する重要な役割を果たしており,書籍・作家へのファンを作り出すのに役立っていると述べ,出版界における図書館の重要な役割への認識を表明する声明を発表し,貸出パターンや利用者の行動といったデータを集めて,パイロットプログラムが成功であれば,米国中の図書館でも実施する意欲を示した。

  • (http://d2ikrwcyurm5yv.cloudfront.net/press_releases/%20-%20Press%20Releases/NYPL-SS%20Pilot%20Final.pdf)(accessed2013-05-10).

People's Libraryに賠償命令

“Occupy Wall Street”は2012年2月,NY市警により“People's Library”の所蔵資料や器材が没収・破棄されたとして,連邦地方裁判所にニューヨーク市とBloomberg市長,そしてNY市警を告訴していたが,ニューヨーク市と不動産会社であるBrookfield Propertiesは,約233,000ドル(2,300万円)を支払うことに同意した。“People's Library”は,2011年9月に始まった抗議運動“Occupy Wall Street”(ウォール街を占拠せよ)を支援するために,その中心拠点ズコッティ公園(Zuccotti Park)に作られたもので,寄贈された5,500冊の図書のほかメモや新聞記事などの資料がプラスチック容器に保管され,人々に提供されていた。しかし同年11月に公園のテントが撤去された際,約3,600冊の図書が没収され,そのうち約2,800冊は破棄された。和解では,ニューヨーク市に図書の損失に対する47,000ドルと訴訟費用186,350ドルをLibrary Working Groupに支払うよう求めている。資料を除去するのを手伝った,公園の所有者であるBrookfield Propertiesは,市におよそ16,000ドルを支払う。“Occupy Wall Street”のSiegel弁護士は「これは図書館の重要性と憲法に保証されている権利に関する訴訟であった」と語った。ニューヨーク市は上記に加えて,公園で活動していたGlobal Revolutions TVのチームへの器物損壊補償75,000ドル,弁護士費用49,850ドル,自転車発電機を失ったTime's Up New Yorkグループに8,500ドルを支払うことにも同意している。

  • (http://blogs.villagevoice.com/runninscared/2013/04/city_settles_la.php)(accessed2013-05-10).

報道の自由度,日本は世界53位

国際NGO「国境なき記者団(Reporters Sans Frontieres: RSF)」は5月3日の「世界報道の自由の日」に合わせて,世界179か国の「報道の自由度ランキング」2013年度版を発表した。RSFは2013年度のランキングについて,「アラブの春」に伴う政変による影響が落ち着き,報道の自由に対する各国政府の中長期的な姿勢を反映したものになっているとしている。上位は1位がフィンランド,2位がオランダ,3位をノルウェーと北ヨーロッパ諸国が占めている。日本は1年前の22位から53位に急落しており福島原発事故関連報道での透明性の欠如や,情報のアクセスに対する配慮のなさが理由とされている。さらに「記者クラブ」システムの改革が進んでいないことも指摘されている。

  • (http://en.rsf.org/press-freedom-index-2013,1054.html)(accessed 2013-05-09).

Google,メガネ型デバイスを限定発売

Googleは4月中旬,同社が開発したメガネ型のウェアラブルデバイス「Google Glass Explorer Edition」の出荷を開始し,4月30日にYouTubeでその基本的な使い方を紹介する動画を公開した。「Google Glass」はメガネフレームに小さなヘッドマウントディスプレイとカメラ,タッチパッドが搭載されたデバイスで,スマートフォンと連携させて使用する。音声コマンドによって,目の前に表示されるディスプレイ上でインターネット検索やメールの送受信を行ったり,写真や動画の撮影を行ったりできる。「Google Glass Explorer Edition」は,製品版に向けたテストの目的で,一部の開発者を対象に1,500ドルで限定発売された。Googleのシュミット会長は,一般への製品版の発売は2014年になる見込みだとしている。

こうしたヘッドマウントディスプレイ付きのウェアラブルデバイスについて,米調査会社のIHSは4月24日,同様のデバイスが2016年までに累計1,000万台が出荷されるという予測を発表した。同社はこうした「スマートグラス」の成功は,説得力のあるアプリケーションの開発にかかっていると指摘している。スマートグラス上に目の前の人物や現在地の情報をリアルタイムで表示する拡張現実(AR)機能を備えたアプリケーションが登場すれば成功するが,単なるウェアラブルカメラのような機能しかなければ,2016年までの出荷数は100万台にとどまるとしている。

  • (http://www.youtube.com/watch?v=4EvNxWhskf8)(http://press.ihs.com/press-release/design-supply-chain/spurred-google-glass-ihs-forecasts-nearly-10-million-smart-glasses)(accessed2013-05-09).

CERN,世界で最初のWebページを公開

欧州原子核研究機構(CERN)は4月30日,World Wide Web(WWW)公開20周年を記念して,CERNが公開した世界最初のWebページを復活させた。CERNは1993年4月30日,WWWの基盤となるテクノロジーをロイヤリティーフリーで公開している。今回公開されたのは,CERNのチームが保管していた最も古いWebページで,Webの誕生に関するデジタル資産を保存するプロジェクトの一環として公開された。チームでは,今後もこれより古いページを探し続けるつもりだとしている。

  • (http://info.cern.ch/hypertext/WWW/TheProject.html)(http://first-website.web.cern.ch/)(accessed2013-05-09).

ネット選挙解禁へ 夏の参院選から

インターネットを使用した選挙活動を解禁する公職選挙法改正案が4月19日,参議院本会議で可決成立した。2013年夏の参院選から解禁される。今回の法改正によって,Webサイトや電子メール,有料インターネット広告などを利用した選挙活動が解禁され,ブログやTwitter,Facebookでの投票呼びかけが可能になる。電子メールの利用は候補者・政党等に限られ,それ以外の一般有権者は引き続き禁止される(Facebookなどのメッセージ機能はWebサイトの機能とみなし,一般有権者も利用できる)。Webサイトや電子メールには,送信者のメールアドレスなど一定事項の表示が義務づけられる。

これにあわせて,スマートフォン向けの無料通話・メッセージアプリ「LINE」は17日,全政党に公式アカウントを無償提供すると発表した。LINE公式アカウントは,企業などが公式に開設するアカウントで,登録したユーザーにメッセージを一斉配信できるもので,大手企業のほか,首相官邸や自治体が開設している。企業の公式アカウント開設には通常月額料金が必要だが,「国民の政治への興味・関心向上や投票率増加などへの貢献を目的として」,政党の要件を満たす全政党を対象に無料でアカウントを提供するとしている。

  • (http://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/naruhodo/naruhodo10.html)(http://lineblog.naver.jp/archives/25784323.html)(accessed2013-05-09).

情報流出の75%が金融機関を狙ったサイバー犯罪

米Verizonは4月23日,情報流出に関する報告書の2013年度版を発表した。この報告書では,2012年のセキュリティ問題の特徴として,金融情報をターゲットとした大規模攻撃とともに,国家が関与するスパイ活動を挙げている。2012年に発生が確認された情報流出事件で最も多かったのが経済的利益を狙ったサイバー犯罪(75%)だった。これに続いて多かったのが,国家が関与するスパイ(20%)で,国家あるいは経済的利益のために,極秘情報や企業秘密,技術資料を含む知的財産が盗まれていた。被害を受けた業種は多岐にわたるが,金融業界が37%で最多だった。サイバー攻撃は27か国で発生しており,38%が大企業を対象としたものだった。

  • (http://www.verizonenterprise.com/about/news/?nu=/news/2013/04/2013-DBIR-Release-Breach-Report)(accessed2013-05-09).

 
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