Journal of Information Processing and Management
Online ISSN : 1347-1597
Print ISSN : 0021-7298
ISSN-L : 0021-7298
Topics of the information community
JOURNAL FREE ACCESS FULL-TEXT HTML

2013 Volume 56 Issue 8 Pages 566-569

Details

GoogleがedXに協力

ハーバード大学とマサチューセッツ工科大学(MIT)が創設したNPOのMOOC(大規模公開オンライン講座)edXは9月10日,Googleとパートナーシップを結んだことを発表した。edXとGoogleはオープンソースのMOOCプラットフォームとなるOpenedXを開発し,その学習ツールと併せて,世界中の機関や個人に対して,来年前半に提供する予定である。MOOCに関心を持つ開発者のために,1つのサイト上にMOOC作成ツールが公開されることになる。edXはGoogleと協力して,edXコンソーシアム参加28機関以外の大学,機関,企業,政府,教師のための新しいサイトMOOC.orgをGoogleの基盤の上に構築・運営する。Googleは,ハーバード大学,MIT,カリフォルニア大学バークレー校,スタンフォード大学などedXパートナー機関の第一人者たちと協力してコアプラットフォームを作成するだけでなく,学生の学習方法や,キャンパス内外の学習・指導をテクノロジーがどのように変革させるかを研究する。

Googleは,スタンフォード大学の教授らが立ち上げたCourseraや,スタンフォード大学の教授でGoogleの副社長(VP)兼フェローでもあるSebastian Thrun氏等が立ち上げたUdacityとも話し合いを行っている。しかし,Googleは個々のビジネス上の決定については論じないとして,その営利企業MOOCのCourseraとUdacityへの言及は避けた。edXがXBlockとして知られるソースコードを2013年6月にリリースしたのに対し,Courseraは,クオリティを維持するために,開発者にコードを開放しない方針を採っている。UdacityはedX発表の前日に,専門家研修や業務研修に焦点を合わせたOpenEducationAllianceの設立を発表したが,その中にはGoogleも含まれており,UdacityとGoogleは携帯電話でのコースを作り出すことを考えている。

  • (https://www.edx.org/alert/edx-announcespartnership-google/1115)(accessed2013-10-09).

edXが有料の証明書発行

2013年秋学期から,edXのコースを履修した学生のうち,希望者には有料の終了証明書が発行されることになった。対象となるのは現在3コースのみだが,これらを選択した場合,次の3つの選択肢の中から自分の望むものを選ぶことができる。(1)証明書は受け取れないが無料で聴講する,(2)無料の証明書を受け取るために登録する,(3)写真とIDを登録し,コースの課題を完了したあかつきには,有料の終了証明書(ID Verified Certificate of Achievement)を受け取れる。コース開始2週間以内であれば,支払い金は全額が返却される。料金はコースごとに異なり,“Introduction to Statistics”が25ドル,“Software as a Service”が50ドル,“Circuits and Electronics”が100ドルであるが,edXを支援するために規定以上の額を寄付することもできる。現在は,終了証明書には成績や単位数は記入されない。対象コースは徐々に増やす計画である。なお,終了証明書を得たいが,料金を支払えない学生は,(2)のhonor code certificateを選択することも可能である。この証明書は,コースを無事に終えたことは証明するが,本人が誰であるかを証明することはできない点が終了証明書と異なる。edX社長AnantAgarwal氏は,終了証明書は,edXの「自立」ビジネスモデルを作るための努力の1つであると述べている。

  • (http://www.thecrimson.com/article/2013/10/2/edxid-verified-certificates/)(accessed2013-10-09).

米国政府機関閉鎖に情報ベンダーが救いの手

米国では暫定予算が不成立のため,10月1日から一部の政府機関が閉鎖された。歴代の大統領図書館を含む米国国立公文書館(National Archives)や博物館は閉鎖され,米国議会図書館(Library Congress)は,一旦は閉鎖されたWebサイトは回復したものの,建物は閉鎖され,Webを通した問い合わせには応じられない状況に陥った。この状況に対応して,EBSCO社とオックスフォード大学出版局(OUP)によるデータベースの無料提供サービスが発表された。まず,米国教育省がWebサイト上で公開している,無料版のERIC(Education Resources Information Center)Databaseを提供できなくなったことを知ったEBSCO社が,10月3日,政府機関閉鎖が終了するまでの期間に限り,ERIC DatabaseとERIC Thesaurusを無料提供することを発表した。登録の必要はなく,誰もが自由に利用できる。ただし,アクセスできるのは抄録とインデックスのみである。ERICサーバーがホストしている論文のフルテキストや他の資料は,政府機関閉鎖中はオフラインになっているため利用できない。

EBSCO社に次いで,オックスフォード大学出版局が10月7日から2週間限定で,3つのレファレンス・データベース,(1)Oxford Reference,(2)American National Biography Online,(3)Social Explorer(米国のセンサス統計が含まれる)の無料アクセス提供を開始した。政府機関閉鎖が解除された場合も,2週間の無料提供は続けられる。ログインにするには(1)と(2)は指定されたusernameとpasswordを使うが,(3)は電子メールでusernameとpasswordを得る方式である。

  • (http://www.ebscohost.com/newsroom/stories/ebsco-information-services-releases-acomplimentary-version-of-eric)(accessed2013-10-09).

    (http://www.infodocket.com/2013/10/07/complimentary-access-to-three-oxford-universitypress-online-databases-for-next-two-weeks/)(accessed2013-10-09).

図書館のソフトウェア貸出サービス

ミズーリ州のカンザス市公共図書館(Kansas City Public Library, KCPL)が,Mozilla Igniteから17,500ドルの賞金を得て,Software Lending Libraryを開発した。Mozilla Igniteは,米国国立科学財団(National Science Foundation, NSF)とモジラ財団(Mozilla Foundation)によって設立された,アプリケーション開発を支援するオープンイノベーションプロジェクトである。Software Lending Libraryは,図書館利用者がソフトウェアを借出して,自分のコンピューターで利用することができるシステムである。KCPLは貸出用のソフトウェアのライセンスを購入するために必要な資金(100,000ドル/年)を申請している。

ソフトウェアの貸出サービスは,図書館カード所有者のコンピューター上にリモートデスクップを作り出し,限られた時間だけ利用させ,時間が過ぎるとそのリモートデスクトップは終わってしまう仕組みである。利用者は作成したドキュメントを自分のコンピューターに保存することができる。貸出は同時期に1ライセンス1人となる。Microsoft Office,Adobe Creative Cloud,Photoshopなどのほか,専門家レベルのソフトウェアも提供される。技術的な問題やライセンスに関する争点は残っているが,KCPLは数週間内にパイロットテストを開始し,2014年1月までには貸出サービスを実施する予定である。また,他の図書館が同じサービスを提供できるように,ドキュメンテーションやソースコードを無料で供与することを計画している。

  • (http://www.thedigitalshift.com/2013/09/software/kansas-city-pl-to-launch-software-lending-librarypilot/)(accessed2013-10-09).

Twitter,緊急メッセージ配信サービスを開始

米Twitterは9月25日,緊急メッセージ配信サービス「Twitterアラート」を米国,日本,韓国で開始した。日本では警視庁警備部災害対策課,東京消防庁,tenki.jpなどが配信組織として参加しているほか,Twitterではさらに自治体などの登録を呼びかけている。Twitterアラートを設定するには,アラートを受け取りたい組織のアラート設定ページから登録する。アラートメッセージは緊急時に,モバイル端末の公式アプリを通じてプッシュ配信されるほか,Web版ではホームタイムラインにハイライト付きで表示される。

  • (https://blog.twitter.com/2013/twitter-alerts-critical-information-when-you-need-it-most)(accessed 2013-10-09).

    (https://about.twitter.com/ja/alerts)(accessed 2013-10-09).

8大学合同の電子書籍活用実証実験を開始

慶應義塾大学は9月27日,大学図書館電子学術書共同利用実験への参加8大学合同で,10月1日から大学図書館における電子書籍の活用に関する総合的な実証実験を開始すると発表した。実験では,専用アプリを搭載したiPadなどのデバイスを一定期間貸出して行うモニター実験や電子書籍の発見性を高めるナビゲーション・システムの検討,学生や研究者等が電子書籍化を期待している書籍の調査,電子教科書の配信・利用実験などを行う。この実験により,大学図書館に共通する電子書籍の「利用のイメージ」が明らかとなり,本格的な電子書籍サービスの実現に必要な基礎データが収集されることが期待されるとしている。実証実験への参加大学は,慶應義塾大学,大阪大学,神戸大学,東京大学,名古屋大学,奈良先端科学技術大学院大学,福井大学,立命館大学。

  • (http://www.keio.ac.jp/ja/press_release/2013/kr7a4300000ckcbv-att/130927_1.pdf)(accessed 2013-10-09).

出版関連団体,海外電子書籍への消費税課税を要望

日本書籍出版協会など出版関連9団体は9月11日,政府宛の要望書「海外事業者のコンテンツに対する公平な消費税課税に関する要望」をネット公開した。この要望書は,Amazonやkoboなど海外法人からの電子書籍に消費税が課税されないため,公平な競争が阻害されている現状の是正を求めるもの。2014年以降,消費税が増税されれば,「価格競争力の差」は歴然であり,その差を国内事業者が埋めるのは至難だと指摘している。財務省内では海外からの電子コンテンツ配信への課税に関する研究会が発足しているが,結論が出ておらず,要望書では,新しい制度が消費税引き上げ時に間に合わなくなることへの危機感を表明している。

  • (http://www.jbpa.or.jp/pdf/documents/kaigaishohizei20130828.pdf)(accessed 2013-10-09).

デジタル教科書の整備率が上昇

文部科学省は9月17日に「平成24年度学校における教育の情報化に関する調査結果」を公開した。同報告書では,全国の全公立学校を対象として,「学校におけるICT環境の整備状況」と「教員のICT活用指導力」について調査。うち,ICT環境の整備状況では,超高速インターネット(30Mbps以上)接続率は75.4%,電子黒板がある学校の割合は74.7%となった。デジタル教科書の整備率は平均32.5%で,前年の22.6%から上昇している。最も整備率が高い福井県は59.9%で,最下位の北海道(7.5%)と大きな差がある。

  • (http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/1339524.htm)(accessed 2013-10-09).

革新的企業100社を選ぶ「グローバル・イノベーター2013」

トムソン・ロイターは10月7日,世界で最も革新的な企業/研究機関を選出する「Top 100グローバル・イノベーター 2013」を発表した。これは同社が保有する特許データを元に知財・特許動向を分析し,「特許数」,「成功率」,「特許ポートフォリオの世界的な広がり」(分析対象はいずれも過去3年間)と「引用における特許の影響力」(分析対象は過去5年間)の4つの評価軸を基本として,企業・研究機関100社を選出するもの。国別の選出企業数では,米国が45社で1位,日本が28社で2位となった。選出企業をみると,「特許戦争」を繰り広げたスマートフォン関連企業(アップル,マイクロソフト,サムスン,グーグル,ブラックベリー)などが軒並み選出されている。また,同レポートでは,特筆すべき点として研究開発費の急増を挙げており,選出企業・機関の2012年の研究開発費の合計額2,232億ドルは,米国の代表的な銘柄500社(S & P500)の研究開発費総額を8.8%上回っている。

  • (http://ip-science.thomsonreuters.jp/press/release/2013/TOP100/)(accessed 2013-10-09).

3Dで結果を印刷する「さわれる検索」

Yahoo!JAPANは9月17日,「さわれる検索プロジェクト」を発表した。「さわれる検索」とは,これまでのインターネット利用のスタイルであった文字・音声入力によって情報を「見る」「聞く」ことから,情報に「さわる」ことに発展させたコンセプトモデル。3Dデータベースと3Dプリンターを融合させ,音声入力によって認識されたキーワードを3Dプリンターから出力することによって実際の「立体物」を生成し,アウトプットする。Yahoo!JAPANでは,この新コンセプトを「さわれる検索プロジェクト」として筑波大学附属視覚特別支援学校へ導入しており,すでに装置を試験的に設置している。同時に,個人や法人から出力用の3Dデータの投稿を呼びかけている。

  • (http://pr.yahoo.co.jp/release/2013/0917a.html)(accessed 2013-10-09).

    (http://sawareru.jp)(accessed 2013-10-09).

 
© 2013 Japan Science and Technology Agency
feedback
Top