今までPCのスタートメニューをじっくり眺めたことがありませんでした。遅ればせながら最近,職場で使っているWindows PCのスタートメニューの中で,「コンピューター」「プリンター」という表記が使われていることを知りました。
遅ればせながら,と書いたのは,マイクロソフトがカタカナ語の長音表記ルールを変更したのは2008年のことだったからです。「コンピューター」という表記はWindows7から使われています。
マイクロソフトのルール変更の根拠となっているのは,1991(平成3)年の内閣告示第2号「外来語の表記」です。語尾の-er,-or,-arを長音符号「ー」を用いて書き表す,という原則が盛り込まれています。しかし「外来語の表記」の前書きには「一般の社会生活において,現代の国語を書き表すためのよりどころを示すもの」であり,「科学,技術,芸術その他の各種専門分野や個々人の表記にまで及ぼそうとするものではない」とあり,すぐに科学技術の専門分野に影響を与えることはありませんでした。ICTが進歩を遂げ環境が変わり,マイクロソフトの表記変更に至るまでには17年かかっています。
マイクロソフトの文書には,「コンピューターが広範に普及するにつれ,末尾の長音を省略する傾向の強い工業系,自然科学系の表記に対するユーザーの違和感が増大しています。市場のニーズとして,より発音に近い表記が求められています」とあります。さらに,自然な表記を採用することで読み上げソフトで自然な発音が可能になることもルール変更のメリットとしてあげています。
入力経費を節減するために抄録文の最後の句点を省略していた時代を思うと,隔世の感があります。
なお弊誌は自然な表記を優先しており,「コンピューター」が原則です。 (KM)