2013 Volume 56 Issue 9 Pages 653-656
Wikipediaを運営するWikimedia財団は,特定の製品やサービスを宣伝するために金を受け取っていた(Paid-for advocacy)編集者アカウントを無効にしたと11月に発表した。無効にされたアカウントは250を超える。利益を得るために編集をする行為は,Wikipediaのポリシーや利用規約の違反だが,英語のページで増加しており,調査によれば,問題とされる記載のほとんどが,米国に本拠を置くWiki-PR社に起因する。Wiki-PR社は,12,000を超える人物や会社のために,Wikipediaページの作成・編成,管理,翻訳を提供していると主張しており,最近それらの顧客に,航空券・ホテル・レンタカーなどの格安予約サイトPriceline.comとメディアの大手企業Viacomが加わったことが発表された。2011年の設立当初,Wiki-PR社は1記事当たり約500ドルを請求していたが,今では1記事当たり約2,000ドル,顧客のサイズ次第でそれ以上を請求しており,記事の新たな編集を望む顧客は,毎月99ドルを支払わなければならない。オンライン新聞Daily Dotは,ある大学の学部長の経験を紹介しているが,それによると,彼は自分についての記事を作成してもらうために1,500ドルを払ったが,そのページが注目に値しないという理由でいったん削除された後,わずか30語のプロフィールに縮小され,費用として更に800ドルを要求されたということである。今回大きく取り上げられて話題になったが,WikipediaのSignpost紙によると,利益追求のための編集の問題は新しい問題ではなく,2006年には既に49~99ドルで,Wikipedia記事の作成・編成を目的とする会社が設立され,サービス提供が開始されている。
(http://en.wikipedia.org/wiki/Wikipedia:Wikipedia_Signpost/2013-10-09/News_and_notes)(accessed 2013-11-11).
Baker & Taylor,OverDrive,3M,RBDigitalの各社は10月17日,Macmillan社が電子書籍の全既刊書リストを図書館に提供することになったことを顧客に伝えた。長い間,図書館への電子書籍販売を拒否してきたMacmillan社は,今年1月に,公共図書館での電子書籍貸出をテストする2年間のパイロットプロジェクトを開始したが,10か月でそれを拡大したことになる。ただし今回,新刊書リストは含まれない。図書館利用者は,Macmillan傘下のSt. Martin's,Straus & Giroux,Henry Holt,Macmillan Children's,Torの電子書籍約11,000を読むことが可能になる。全既刊書リスト提供の条件は以前と変わらず,同一書籍を同時に2人以上が借りることはできず,価格は1タイトル25ドル,貸出は2年間または貸出回数52回のうち早い方となる。
米国図書館協会(American Library Association: ALA)のStripling会長は,Macmillan社のパイロットプロジェクト拡大を歓迎するコメントを発表した。それに加え,5大出版社のうちPenguin Random House内のPenguinグループが図書館の電子書籍貸出の条件を改善し,Hachette BookグループとSimon & Schuster社は昨年からニューヨークの数図書館においてパイロットプロジェクトを開始したなど,順調に改善してはいるものの,高価格(Random House)や26回の貸出制限(HarperCollins社)など,依然として解決しなければならない問題が残っていると語った。
米国デジタル公共図書館(Digital Public Library of America: DPLA)に,3つの新しいサービスハブが加わった。(1)Metropolitan New York Library Councilが8つのregional library councilsと協力して管理運営するEmpire State Digital Network,(2)250のパ-トナー機関からの30万件を超えるデジタルアイテムで構成されるThe Portal to Texas History,(3)ノースカロライナ州内の機関からメタデータを集めるThe North Carolina Digital Heritage Center,である。これによりサービスハブの総数は9になった。サービスハブは域内の図書館,博物館,アーカイブなどの機関からデジタルオブジェクトに関する情報を集めて,標準化されたデジタルサービスをパートナー機関に提供する,州や地域のデジタル図書館である。
DPLAは,資料にアクセスするための新しいインターフェース“Bookshelf”を発表した。これはHarvard Library Innovation Labが開発したバーチャル書架で,検索結果が書棚に置かれた本のように表示され,本の背に書かれた題名や著者の名前を容易に読むことができる。本の幅,高さ,厚さも表現され,背の色は,検索された本の適切さの度合いをブルーの濃さによって示すヒートマップになっている。
Bill & Melinda Gates財団は,公共図書館に向けて全国規模の研修システムを作るため,図書館専門家・団体のネットワークを構築するための助成金990,195ドルをDPLAに提供することになった。DPLAはサービスハブと共同で研修カリキュラムの資料を作成し,デジタルスキルと能力を向上させるための実践的な研修を行う。
米Amazonは10月10日,オンライン学習サービス企業TenMarksを買収することで,両社が合意したと発表した。TenMarksは幼稚園から高校までの児童・生徒向けに,算数・数学のオンライン学習プログラムを提供している。Amazonは「受賞歴のあるTenMarksの数学プログラムは,世界中の数万もの学校で使用されている。AmazonとTenMarksは協力して,充実した教育コンテンツやアプリケーションを開発して,複数のプラットフォームで利用できるようにするつもりだ」としている。買収金額などは明らかにされていないが,今後さまざまな手続きを経た上で,2013年第4四半期には買収を完了する予定。
紀伊國屋書店,KADOKAWA,講談社の3者は10月15日,合弁会社「株式会社日本電子図書館サービス(略称:JDLS)」の設立を発表した。これまで3者は電子書籍時代における利用者の利便性向上,図書館関係者の運用への支援,著作者への適正な利益配分等を行う業界共通プラットフォームの必要性について議論してきたが,今回,本格的な事業化をめざして,学校・公立図書館向けの電子書籍貸出サービス提供に向けた準備として合弁会社を設立した。
英国の非営利団体Open Knowledge Foundationは,政府データのオープン化状況を評価する「オープンデータ評価指標(Open Data Index)」2013年の結果を公表した。この評価指標は世界70か国について,交通,教育,保険医療などの政府データが,Webでどの程度公開されているか,またオープンライセンスを使用しているかなど14項目を評価,指標化した。オープン化の順位では,1位英国,2位米国,3位デンマークで,日本は28位。下位には,キプロス,ケニア,ブルキナファソなどが並んだ。結果について同団体は,「政府データのオープン化の動きがここ数年で進んできたことは歓迎すべきだが,今回の指標では,価値ある情報でいまだ未公開になっているものがあまりにも多い」としている。上位20か国でも,主要なデータセットのうち,オープンデータとして再利用できる状態になっているものは半分以下であり,主要国であっても政府データのオープン化はまだ不十分である状況を示している。
Googleは10月29日,日本のコンピューターサイエンス教育を支援する「コンピューターに親しもう」プログラムを開始した。これは,6~15歳の児童生徒を対象に,コンピューターやプログラミングの基礎を学んでもらう取り組み。同プログラムでは,ゼロからコンピューターやプログラミングを学べるよう設計された名刺サイズのコンピューター「Raspberry Pi(ラズベリーパイ)」を5,000台提供し,1年で25,000人以上の児童・生徒の参加を目指す。そのほか,教育・NPO法人の指導者向け研修イベントの実施や,保護者向けプログラムも準備している。
ビッグデータ・オープンデータ活用推進協議会は11月10日,「ビッグデータ・オープンデータの活用アイデアコンテスト」を開催した。このコンテストは,個人またはグループ・企業が対象で,ビッグデータ,オープンデータそれぞれについて,活用分野,必要となるデータ,アイデアの内容および行政サービスにおける具体的な活用方法を募集するもの。221件の応募のなかから,「市内で流行している子どもたちの感染症の流行状況を可視化して注意を促す『子ども感染症進行マップ』」が最優秀賞に選ばれた。ビッグデータ・オープンデータ活用推進協議会は2013年4月に,武雄市(佐賀県),千葉市,奈良市,福岡市の4市と,東京大学,日本IBM,日本マイクロソフトによって設立された。
(https://www.facebook.com/bigdataopendata4city/posts/686860811333063)(accessed 2013-11-11).
日本における「MOOC」(大規模公開オンライン講座)推進団体である「JMOOC」(日本オープンオンライン教育推進協議会)が10月11日に設立された。世界中から数十万人規模の登録者が参加するMOOC(Massive Open Online Courses)は2012年頃から米国を中心に急速に発展。大学の正規の単位として認定する動きや,MOOCを予習教材として使った反転学習の普及が進んでいる。日本でも注目が集まる一方で,JMOOCは課題として,世界的なMOOCは英語講義が中心であることや,各国のトップ校に限定されるといった制約があり,日本の全主要大学が入れる体制にはないことを指摘している。JMOOCは,「日本のみならず,広くアジア諸国を含む諸外国に対してもオープンオンライン学習環境を提供」し,「大学の有する専門教育知識だけでなく企業の保有する実践的実学知識の提供も積極的に勧奨し,知識社会の基盤形成を推進し,本格的な継続学習社会の実現」を目指すとしている。
アメリカのセキュリティ企業Stricture Consulting Group(SCG)は,米アドビ・システムズから流出したパスワードを分析し,使用者数が多い上位100位のパスワードを公表した。上位3位は「123456」,「123456789」,「password」で,多くのユーザーが推測されやすい安易なパスワードを使っている実態が明らかになった。SCGによれば,流出したパスワードは暗号化されており,同社は暗号鍵を入手したわけではないが,アドビが対称鍵暗号を選んでいたことや,全てのパスワードに同じ鍵を使っていたこと,さらにはユーザーが平文で保存していたパスワード推測のヒントから,この結果をまとめることができたとしている。