Journal of Information Processing and Management
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2014 Volume 57 Issue 8 Pages 600-603

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欧州司法裁判所が図書館の書籍デジタル化を認める

9月27日,欧州司法裁判所(European Court of Justice: ECJ)は,EUの大学や図書館が許可なく書籍をデジタル化することを可能にする判断を下した。ドイツのダルムシュタット工科大学(Technische Universität Darmstadt)は多年にわたり,図書館の参考書籍や教科書をデジタル化し,それを図書館の特定箇所で学生に提供し,プリントしたり,USBメモリーに保存したりすることを許してきた。デジタルコピーの数を図書館が所蔵する印刷書籍の数と同じに制限しており,欧州著作権指令(Copyright Directive of the European Parliament)における例外として認められるものと信じていた。しかし,ドイツの科学系出版社Eugen Ulmer KGが2009年1月に,自社書籍のデジタル版の購入を提案したところ,大学がそれを断ってデジタル化を行ったことから,著作権違反で大学を告訴した。ドイツ連邦裁判所は審理を延期し,欧州著作権指令の例外の範囲を明確にするために,欧州司法裁判所の判断を仰ぐことになった。欧州司法裁判所は,たとえ著作権保持者が図書館にライセンス契約を結ぶことを提案しても,図書館は例外規定を利用することができるとして,大学に有利な判決を下した。欧州著作権指令は,政府が図書館に書籍をデジタル化する権利を与え,必要であれば,専用コンピューター上で資料の利用を可能にすることを禁じないが,公共図書館では,プリントアウトやUSBメモリーでの保存は,複製であるので許されない,と判決は述べている。しかし,EUメンバー国では,著作権保持者に補償金が支払われる限り,図書館利用者がプリントアウトしたり,USBメモリーに保存したりすることを許す例外規定や制限を設けることは可能であるとされた。欧州司法裁判所は論争そのものの裁定は行わない。欧州司法裁判所の決定に従って判決を下すのは当事国の裁判所なので,訴訟はドイツ連邦裁判所に戻ることになる。

  • (http://www.courthousenews.com/2014/09/12/71318.htm) (accessed 2014-10-07).

作家たちがAmazon社批判を強める

Amazon-Hachette紛争に関して10万4,000ドルを費やし,New York Times紙8月10日の日曜版に,Amazon社を批判する全頁の意見広告を掲載した作家たちのグループAuthors Unitedが,9月初めに新たな行動を起こした。Authors Unitedの代表者であるスリラー作家Douglas Preston氏が,グループのメンバー909名に加えて,その後署名に参加した作家たちに,Amazon社を批判する手紙を送ったのである。「Amazon社はHachette社に対する制裁を続けており,Hachette社から出版している作家2,500名,7,000タイトルが明らかに影響を受けている。Hachette社の作家はAmazon社での売上が少なくとも50%,多くの場合90%減少した」と指摘し,現在Amazon社と友好的な交渉を行っているSimon & Schuster社から出版している作家に何が起きるかわからないと懸念を示し,最後に,Authors Unitedは近いうちにさらなるイニシアティブをとらざるをえないと述べている。

そしてAuthors Unitedは9月19日,Amazon社の取締役10名に,ポリシーの変更を要求する公開書簡を,1,000名を超える署名を添えて発送した。Authors Unitedが望んでいるのは,Amazon社がHachette社との契約紛争において,強硬な交渉戦術を取るのを止めることである。ところが,その文面に批判の声があがり,Authors Unitedはひそかに書簡を修正したが,それもまた批判を受けるという事態が起きている。『The Digital Reader』の編集者Nate Hoffelder氏が指摘したのは,たとえば,1)Authors Unitedの主張とは異なり,Amazon社からの購入を控えるようになった読者は8%弱に過ぎない(vol. 57, no. 6の本欄にて既報)。2)Amazon社とHachette社のどちらの味方もしないと言いながら,Amazon社のみを非難している。3)Amazon社のRussell Grandinetti副社長の言葉を誤引用している。4)「ほかの製品と違って,本は安く書くことも中国にアウトソースすることもできない」と述べているが,Amazon社は本を安く作ろうとしているのではなく,安く売ろうとしているのである。批判4)に対してAuthors Unitedは「中国」の部分を「他国」に変更した。これにより,米国以外の全部の国の作家を侮辱する書簡になるという皮肉な結果をもたらしてしまった。

Authors Unitedは,Amazon社のビジネス手法に対して独占禁止法の調査を行うよう,米国司法省(Department of Justice: DOJ)に求めるつもりであることを明らかにした。Preston氏によれば,反トラスト局のWilliam Baer次官補宛ての書簡はすでに作成されており,司法省はAuthors Unitedが提供するどのような情報も歓迎すると述べたとのことである。

なお,以前からHachette社の作家を標的にしたAmazon社の戦略に反対してきた8,500名を擁する作家組合(Authors Guild)は,Amazon社に対する調査開始を求めて,司法省との話し合いを8月1日に行っていた事実を明らかにした。

  • (http://www.authorsunited.net/amazonboardletterprivate/) (http://the-digital-reader.com/2014/09/04/authors-united-considers-next-move-amazon/) (http://the-digital-reader.com/2014/09/15/authors-united-sends-open-letter-amazon-board-filled-bad-arguments-factual-errors/) (accessed 2014-10-07).

Swets社に破産宣告

オランダのライデン市に拠点を置く,雑誌取次大手Swets(Swets Information Services B.V.)が支払い不能となり9月24日に破産宣告を受けた。1901年に設立されたSwetsは,“図書館と出版社のためのコンテンツマネジメントサービスにおけるグローバルマーケットのリーダー”を自負してきたが,2013年末,長期融資に関連した契約の要件に応じることができなかった。そのため,貸し手が長期ローン9,500万ドルの即時返済を要求する権利を有する状況に陥った。Swetsはヨーロッパ,アジア,アフリカ,南北アメリカの20か国以上にオフィスと約600名の従業員を擁し,160の国に8,000以上の顧客と80万のサブスクリプションを抱えている。経営陣は裁判所が任命した破産管財人とともに解決策を検討してきたが,事業をまとめて売却する以外の代替案が具体化しなかったため,破産を申請するに至った。アムステルダムの裁判所は要請に応じて即日,Swetsに破産を宣告し,Swetsの資産に対する担保権行使を妨げるために2か月の冷却期間(afkoelingsperiode)を許可した模様だ。Swetsの日常業務は継続するものの,新しいオーダーやサブスクリプションは保留されるようである。出版社は顧客に,自分たちと直接取り引きするよう勧告している。今のところ海外の子会社は破産宣告には含まれていないが,債権者に支払いをするためにSwetsの資産とされる可能性はある。

  • (http://www.swets.com/news/swets-information-services-bv-declared-bankrupt#.VDFiwjhxmcw) (http://newsbreaks.infotoday.com/NewsBreaks/Swets-Declared-Bankrupt-Expected-to-Sell-Business-in-Parts-99589.asp) (accessed 2014-10-07).

Yahoo! Japanと北海道が包括連携協定を締結

Yahoo! Japanと北海道は9月29日,包括的な連携協定を締結したと発表した。両者は「道政情報などの発信」「防災・災害対策」「北海道経済の活性化」「デジタル人材の育成」「電子自治体の推進」などの分野で連携する。Yahoo! Japanのトップページで,地域住民向けに災害時などの緊急情報や道政情報を発信する初の試みを開始する。そのほかにも,道庁や道内自治体Webサイトのスマートフォン向けの最適化や,特設サイトでの道産品の販売支援,自治体職員の広報技術の向上なども行う。

  • (http://pr.yahoo.co.jp/release/2014/09/29a/) (accessed 2014-10-07).

「青少年のインターネット・リテラシー指標」公表

総務省は9月30日,「平成26年度 青少年のインターネット・リテラシー指標等」を公表した。同省では,インターネット・リテラシー向上施策を効果的に進めるため,毎年全国の高校1年生を対象に,インターネット上のリスク対応に関するテストと,利用実態についてのアンケート調査を行い,結果をとりまとめている。この結果によると,全体のテスト正答率は70.2%で,前年度(68.9%)よりも微増した。アンケートでは,スマートフォン保有者は全体の88.1%で前年度(84%)より上昇した。インターネット利用に使用する端末もスマートフォンが80.1%と前年度(75%)より上昇している。フィルタリング機能の認知度は年々高くなっており,7割の学生が「フィルタリングは安心にインターネットを使うことを可能にするもの」と回答し,フィルタリングの必要性についても8割近くが「必要」と回答している。

  • (http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01kiban08_02000147.html) (accessed 2014-10-07).

米Yahoo!,創業時からの「Directory」を終了へ

米Yahoo!は9月26日,1994年の同サービススタート時から20年にわたって提供していた「Yahoo! Directory」を2014年12月31日で終了すると発表した。Yahoo! Directoryは,Webサイトを「Arts & Humanities」(芸術・人文),「Business & Economy」(ビジネス・経済学),「Recreation & Sports」(レクリエーション・スポーツ)などのカテゴリに分類したもので,Yahoo! 創業者が1994年に立ち上げたWebディレクトリがもとになっている。Googleの検索エンジンが人気になってからは,Directoryの利用は大幅に減少している。米Yahoo!は,「世界中の人々の習慣をより楽しさとひらめきに満ちたものにする」というミッションの達成を目指し,検索,コミュニケーションなどのコア製品に集中するため,過去2年間で60以上の製品・サービスを終了させており,今回のDirectory終了もそうした戦略の一環とみられる。Yahoo!は発表文で「われわれのビジネスは変化した」と終了の理由を述べている。なお,Yahoo! Japanにも同様の「Yahoo! カテゴリ」があるが,Yahoo! Japanはソフトバンクとの合弁会社で米Yahoo!とは独立した企業のため,今回の決定の影響は受けない。

  • (http://yahoo.tumblr.com/post/98474044364/progress-report-continued-product-focus) (accessed 2014-10-07).

Twitter,MITメディアラボのソーシャル研究に出資

マサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボは10月1日,Twitterから5年間で1,000万ドルの出資を受け,社会的な関係性や動向を分析するためのプラットフォーム開発に取り組む「Laboratory for Social Machines(LSM)」を設立すると発表した。またこのプログラムの一環として,Twitterはリアルタイムおよび過去の公開ツイートへのアクセスも提供する。LSMはTwitterから資金提供を受けるが,その運営や研究は完全に独立性を保つとしている。Twitterのディック・コストロCEOは,「われわれはこの投資によって,人々のコミュニケーション方法におけるTwitterやほかのプラットフォームの役割を理解するための研究により深くかかわる機会が得られる」と述べている。MITメディアラボの伊藤穣一所長は,「LSMは,Twitterと協力して,新たな公共領域というビジョンを実現するための解析ツールを構築する」と述べた。

  • (http://newsoffice.mit.edu/2014/twitter-funds-mit-media-lab-program-1001) (https://blog.twitter.com/2014/investing-in-mit-s-new-laboratory-for-social-machines) (accessed 2014-10-07).

紀伊國屋書店と図書館流通センター,書誌データ標準でWG発足

紀伊國屋書店と図書館流通センター(TRC)は,10月1日に書誌情報サービスの世界標準への対応に向けた共同ワーキンググループを発足させたことを10月3日付けで発表した。このワーキンググループでは,世界標準の目録規則「RDA(Resource Description and Access)」に対応した書誌データの提供や,日本の図書館へのディスカバリーサービスの構築について検討する。ディスカバリーサービスでは,従来の蔵書検索(OPAC)に加え,電子書籍,電子ジャーナルなど,図書館が提供するあらゆるコンテンツを一元的に検索することが可能。自館の所蔵を世界に公開すると同時に,自館が所蔵しない資料については,グローバルILLを利用する等,外部連携が可能となるとしている。

  • (http://www.kinokuniya.co.jp/c/company/pressrelease/20141003120400.html) (accessed 2014-10-07).

 
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