Journal of Information Processing and Management
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Meeting
Code4Lib JAPAN Conference 2014
Tomoyasu OKUYAMA
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2014 Volume 57 Issue 9 Pages 683-685

Details

  • 日程   2014年9月6日(土),7日(日)
  • 場所   鯖江市図書館(文化の館)(福井県鯖江市)
  • 主催   Code4Lib JAPAN
  • 後援   株式会社リクルートテクノロジーズ,DAYPLA株式会社
  • 協力   公益社団法人日本図書館協会,情報知識学会,Project Next-L,図書館問題研究会,大学図書館問題研究会

1. はじめに

Code4Lib JAPAN(http://www.code4lib.jp)は日本の図書館における情報技術活用の停滞という現実を踏まえ,専門家のみならず一般の図書館員に広く門戸を開いて,図書館における情報技術活用を促進し,図書館の機能向上と利用者の図書館に対する満足度向上を目指している。カンファレンスの開催は,昨年の南三陸についで鯖江が2回目の開催である。

2. 基調講演「文化資源のデジタル化とその課題」

福島幸宏氏(京都府立総合資料館)がカンファレンス2014の基調講演をされた。

まず“文化資源”をどうとらえるかという提起が改めてなされた。行政資料調査の際に“紙やフィルムは残らない”ことを知り,「近代以降の資料は特に,残すものを選ぶのか,それとも残ったものでよいのか,そのへんをじっくり考えるべきだ」と訴えた。

次に東寺百合文書のデジタル化を通してわかったことは,「京都府立総合資料館開館以来の40年間に所蔵・収集してきた資料の整理や,マイクロフィルムに収めるという地道な作業活動があったからこそ,1年でデジタル化ができたということだ。資料のデジタル化の議論は,紙の段階の整理やマイクロ作成やメタデータ付与など,デジタルコンバートに集中しがちだが,大事なのは対象資料の決定,そして資料の整理・メタデータの付与に尽きるのではないか」という持論を述べられた。

最後にデジタルで公開する点を踏まえて,「“アクセス”と“利用・再利用”は違う。単に資料画像を見ることができるだけではなく,それをどこまで使えるかを考える時期にきている」と指摘されたのが印象的だった。

3. 鯖江からの発表

せっかく鯖江で開催されたので,地元鯖江からJK課女子の代表を伴って発表された福野泰介氏によるSabota(1)について少し触れておきたい。発端は,鯖江市役所JK課の女子高校生たちから「図書館の席の空き状況が知りたい」という要望があり,アプリ開発に至ったということである。鯖江市役所JK課女子とは,これまで市役所や公共サービスに直接かかわることの少なかった地元の女子高生たちから創り出される新しい企画やアイデアをカタチにしていく実験的な市民協働推進プロジェクトの1つだ注1)

新館開館から15年以上経った鯖江市図書館の利用者は減少傾向にあり,最近話題のJK課の提案で,いながらにして図書館の専用ブースの空き情報がわかる仕組みの実施に取り組んでいる。ちなみにSabotaの機器類は手作りである。Oculus Rift(オキュラス・リフト)というバーチャルリアリティーに特化したヘッドマウントディスプレイを使用する。Sabotaは現在もセンサーの交換,iBeaconの導入,SPARQLへの対応等,鋭意改良中とのことである。

図1 Sabota

4. 全体を通しての所見

Code4Lib JAPAN発足の経緯は,個人的にはとりわけ公共図書館員の技術・知識不足が背景にあると考えられるだけに,職場内の自主学習グループ“ししょまろはん注3)”が出発点となっている京都府(京都地域がオープンデータへの取り組み注4)が盛んで,背景に各種アプリの開発・先行事例があるにせよ)や鯖江市の事例は,実用的という意味において非常に勇気を与えてくれるものであった。もちろん,そこに至るまでの素材は常日頃からきちんと探して持っておかないと,何かを思いついたときに,「はて何を?」となってしまうので,その意味でも公共図書館らしい取り組みであるといえよう。また,図書館ひっこしらくらくキットなどは公共図書館でも応用がきくと感じられた。

発表全体を通して,ものすごいアプリケーションソフトを使うのではなく,意外と基本的なオフィスソフトの延長線上にさまざまな創意工夫が凝らされていたし,LOD(Linked Open Data)が1つのトレンド・キーワードだなとも感じとることができた。

偶然,開催中の日曜朝にNHKの番組で“ハッカソン”が取り上げられており,そのことを話題にしている参加者の顔ぶれを見て,今回集まった人たちの技術力と意識の高さを垣間見た気がした。

(新潟県立図書館 奥山智靖)

表1 Code4Lib JAPAN カンファレンス2014発表一覧(1日目)注2)
1 基調講演
1.1 「文化資源のデジタル化とその課題」福島 幸宏(京都府立総合資料館)

2 通常発表
2.1 「司書が作るオープンデータ ~スマホアプリで京都の観光資源に~」是住 久美子(京都府立図書館)
2.2 「Drupalを活用したOpen Linked Dataの実践的試行環境の構築」林 賢紀(国際農林水産業研究センター)
2.3 「『図書館ひっこしらくらくキット』~配架計画支援アプリ『連番くん』及び書架棚見出し出力器『見出しちゃん』の作成による図書館の引っ越しに伴う作業の効率化~」石田 唯(東京大学法学部研究室図書室)
2.4 「配架図が変われば図書館が変わる~Haikaプロジェクトのコンセプト」吉本 龍司(カーリル)

3 ライトニングトーク
3.1 「配架図エディタの応用的な使い方」出口 賢(カーリル)
3.2 「移動図書館での車両情報管理」酒井 りな(カーリル)
3.3 「図書館空席案内 sabotaの裏っ側」福野 泰介(Jig.jp)
3.4 「NDL LabSearch Clientのご紹介」常川 真央(筑波大学大学院)
3.5 「使ってみようLOD!」福山 樹里(国立国会図書館)
3.6 「連想検索エンジンGETAssocを活用した『発見対象文書』×『ユーザーペルソナ』検索」藤原 剛(DAYPLA)
3.7 「大学におけるプリントディスアビリティへの支援のために、クラウド型DAISY図書作成システムを利用する実験と検証」沖田 克夫(NaD)
3.8 「図書館司書課程授業におけるウェブサイト評価の実践の試み」古賀 崇(天理大学)
3.9 「OpenGLAM JAPAN2年目の展開-活動方針と当面の活動計画」岡本 真(アカデミック・リソース・ガイド)
表2 Code4Lib JAPAN カンファレンス2014発表一覧(2日目)注2)
2 通常発表
2.5 「Next-L Enju機関リポジトリモジュール」田辺 浩介(物質・材料研究機構)
2.6 「データカタログソフトウェア CKAN」加藤 文彦(情報・システム研究機構)
2.7 「ログデータの活用が進まない現状を打破するために:Wikipediaページ閲覧統計データを題材とした試み」清田 陽司(ネクスト)

3 ライトニングトーク
3.10 「遠隔地の図書館関係者のオープンオンラインディスカッションを実現する分散型会議中継システム」小野 永貴(千葉大学)
3.11「[唐詩]の日中間のメタデータとそれらをつなぐ接続のRDFの作成」叢 艶
3.12 「NDC Rader~日本語テキストの日本十進分類レーダーチャートによる可視化アプリケーション~」前田 朗(国立情報学研究所)
3.13 「図書館ぶらり部ワークショップ@第100回図書館大会」高橋 徹(国際電気通信基礎技術研究所)
3.14 「学術情報やソーシャルメディアのレコメンド&フィードバックをコアにした「できない大学生向け」の学習支援サービスの企画提案」田邊 稔(エムエムツインズ)

本文の注
注1)  JK課の図書館アプリSabotaができました! http://www.city.sabae.fukui.jp/pageview.html?id=15134

注2)  Code4Lib JAPAN カンファレンス2014発表プログラム http://wiki.code4lib.jp/wiki/C4ljp2014/program

注3)  ししょまろはんラボ http://libmaro.kyoto.jp/

注4)  京都の図書館司書「ししょまろはん」がつくるオープンデータ http://www.slideshare.net/kumikokorezumi/code4lib-38764703

 
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