2020 Volume 41 Issue 3 Pages 50
第59回日本白内障学会総会・第46回水晶体研究会は,2020年5月29日から6月11日に開催された。新型コロナウイルス感染拡大に伴い,通例の会場での開催は取り止めとなり今年度はWeb開催となった。運営事務局に伺ったところ,例年は約300名強であった参加者が,今回は1300名を超える登録があり,白内障学会シンポジウムでは約2500ものアクセス数があったとのことで大盛況のうちに幕を閉じた。
今回のテーマは「老視の科学」だった。ひと昔前までは,老眼になってしまったら諦めてうまく付き合っていくしかない,というのが老視に対する通念だった。しかし,近年における眼内レンズやコンタクトレンズのめざましい発展と,屈折矯正手術の普及により,これまで諦め受け入れることしかできなかった老視に挑むことができるようになった。
今回の学会・研究会シンポジウムでは,水晶体弾性の低下が一因となって引き起こされる老視のメカニズムから,老視に対する外科的治療,光学的アプローチ,薬物療法の可能性と,多岐に渡る分野から老視に焦点を当て,最新の知見をわかりやすくご教授頂いた。また,一般演題や共催セミナーでは,眼内レンズの選択方法やレンズ特性を評価した臨床研究を多く拝聴することができ,今後の臨床の現場でも活用させて頂ける内容が盛りだくさんだった。私自身は本学会で「白内障術前後の主観的幸福度とその関連因子」という題目で,白内障手術は視機能だけでなく主観的幸福度も改善させるという多施設共同研究の結果を発表した。白内障手術において視機能の改善が最重要であることは周知の事実ではあるが,幸福度など視機能以外の評価にも着眼する必要があると考える。今回の学会でもQOL(Quality of Life)や満足度,それらに関連する術中の痛みなど,視機能以外にも注目した研究が散見され,非常に有意義な内容だった。
本学会も第124回日本眼科学会総会も前代未聞のWeb開催となり,学会運営に携われた先生方や運営事務局の方々のご尽力は大変なものだったことは想像に難くない。しかし実際に参加させて頂き,Web開催の長所も多く実感することができた。私にとってWeb開催の最大のメリットは,期間中であればどの時間帯でも聴講が可能だったことだ。私には未就園児がいるため,学会に参加する際は子どもを家族に預けたり,難しければ託児所に預けたりと面倒な手筈を踏まなければならない。Web開催であれば子どもが寝た後にゆっくり拝聴することができる。また,内容をメモしている最中に次のスライドに進んでしまうこともなく,一時停止したり巻き戻ったりと,勉強内容をより深く理解することができた。本来の会場開催では,聴講したい講演が同時刻に重なってしまった際泣く泣くどちらかを選んだり,慌ただしく梯子したりすることが多いが,Web開催では自分の聴講したい講演を好きなだけ聴講できたことも魅力的だった。また今回の学会は,会場開催であれば東京都内で行われる予定だったが,遠方の方々が学会のために移動する労力や時間が浮いたこともメリットの一つであると思う。しかし,会場開催の学会の醍醐味は,やはり日本中の眼科医,視能訓練士が一堂に会する独特の雰囲気であり,それに附随する意見交換会(飲み会)であると思う。会場開催の学会が心から待ち遠しいが,今回のWeb開催から学べたこと,得られたものを生かせられるような,今後の学会の在り方にも期待したい。