Japanese Journal of Visual Science
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Interview
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2020 Volume 41 Issue 4 Pages 86-87

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要旨

本号では京都府立医大眼科学教室の稗田牧先生へのインタビューをお届けします。稗田先生は大変活発に研究や学会活動をされておりますので皆さんご存知だと思いますが,日本の眼科をリードするフロントランナーであり,オピニオンリーダーでもあります。来年の眼光学学会を主催していただくこともあり,今回インタビューをお願いしました。屈折矯正手術,斜視,近視進行研究など,最前線の臨床研究を展開されるに至った経緯や普段聞けない眼光学に対する展望について,このインタビューで明らかにできればと思います。

Q: 眼科医になることや,眼光学を専門にしようと思われたきっかけを教えてください。

A: もともと福岡県の久留米市で生まれ育ち,京都府立医科大学に入学してから京都在住です。大学に入ったころから眼科に興味がありました。それは自分自身の近視が強く,間歇性の外斜視も患っていて,とても不安に思っていたからです。

なんでこんなに目がつかれるのだろう。なんでこんなに字がよみにくいのだろう。と漠然と感じていました。近視と斜視をどうにかしないと一人前の医師にはなれない!と思い込んでいたところがあります。

1992年京都府立医大の眼科に木下茂教授が赴任されて,6回生の夏の学生旅行に木下先生が来られました。自分が近視矯正手術に興味があると言うと,「もうそれはできるようになった。来年から始まるよ。」と言われて,1993年眼科に入局しました。入局したての1年目でエキシマレーザーの治験にかかわらせてもらいました。同門会での最初の発表は「エキシマレーザーによる乱視矯正手術」です。今も同じようなことをしていますね。

Q: 卒業から研究を始められるぐらいまでのお話しを聞かせてください。

A: 京都市立病院,社会保険京都病院,高知県の町田病院と転勤しながら,白内障手術,斜視手術,網膜硝子体手術など一般眼科の臨床技術や知識を学んだあと,サブスペシャリティとして,やはり近視矯正手術がしたいと思い1998年に大学院に入りました。丁度レーシックがアメリカで広がり始め,府立医大でレーシックの治験が始まるときでした。大学院生のとき治験の患者募集,スケジューリング,検査,手術,術後診察,などあらゆる行程を実施させてもらいました。6つのレーシック治験(N社の近視,遠視,カスタム,B社のカスタム,Z社のカスタム)を行うことができ,全国学会で多くの発表機会をいただきました。同じ時期,関連施設のバプテスト眼科クリニックで診療としての屈折矯正手術を開始しました。

1998年には大学院生ながら近視についての専門外来を作らせてもらい強度近視の長期経過観察を始めました。東京医科歯科大学・所敬先生のご指導で,ある高校卒業生の10年後の屈折度数を調査するため毎月東京医科歯科大学に通ったこともあります。

2002年には斜視外来を引きついで大学のチーフ斜視術者になりました。その後バプテスト眼科クリニックの院長になった2006年に自分自身も斜視手術をうけ,間欠性外斜視の苦しみから解放され,その後両眼のレーシックをうけて強度近視の苦しみから開放されました。斜視や近視を自分のこととして悩む機会が減る一方,近視そのものへの興味が強くなりました。

Q: 現在の主なお仕事をおしえてください。

A: 2010年に大学に戻ってからは,角膜移植・円錐角膜治療も行いながら,近視進行予防の臨床研究を行っています。2010年不二門尚先生のご指導で,近視進行抑制眼鏡の多施設臨床研究に参加させてもらったのを皮切りに,学童のオルソケラトロジー,低濃度アトロピン点眼,多焦点コンタクトレンズによる近視進行抑制の臨床研究を継続して行っていま‍す。

2013年からは京都の小学校で「詳しい視力検査」を毎年行っています。学年の全生徒の両眼開放レフラクトメーター,波面収差解析,眼軸長,裸眼・矯正視力を測定して8年継続しています。近視の進行予測や発生予測のための解析をすすめています。

Q: 今後の眼光学の展望を聞かせてください。

A: デカルトの方法序説につづく著作は「屈折光学」です。脳は視覚によって発達してきました。視覚はあまりに自明すぎて,疑われることがすくないのですが,不思議な現象に満ちています。近視進行などはその最たるものです。眼光学が人間の中に占める要素はとても多いことに日々驚いています。

視覚に関連する事象が病気にあたえる影響を十分に理解する必要があります。眼光学は「レンズ光学」と「人間」をつなぐ学問だと思います。眼光学を学ぶことが人間の認識をより真理に近づけるような展望を期待しています。

Q: 来年の眼光学学会2021について教えてください。

A: 自明なものを疑うことからしか,新しいものは生まれません。眼光学の基本になる要素に注目したいと思いました。

「視力」・「屈折」について何がわかっていて,何がわかっていないのか,広くかつ深く理解できる機会にしたいです。

 
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