Japanese Journal of Visual Science
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Original Articles
Analysis of mire rings with a new image analysis program
Motohiro ItoiOsamu HiedaYuuki HiroseChie Sotozono
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Keywords: Keratoconus, mire-ring
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2021 Volume 42 Issue 1 Pages 7-12

Details
要旨

【目的】CGPack10(サンコンタクトレンズ)(以下CG10)は,新規開発されたマイヤーリング像画像解析プログラムである。CG10を使用する機会を得たので,円錐角膜眼を用いて解析結果の妥当性を検討した。

【対象と方法】Wave-Front Analyzer KR-1W®(TOPCON)(以下KR1W®),前眼部OCT(CASIA® SS-1000:TOMEY)の2機種を測定している円錐角膜眼を対象に,KR1W®から得られたマイヤーリング像を,CG10を用いて解析した。Ks値,Kf値,乱視度数について,KR1W®の測定値とCG10の解析値との一致性についてPearsonの積率相関係数を用いて後方的に評価した。

【結果】対象は19例19眼(平均K値:46.6 ± 2.8)で,Pearsonの相関係数(r)は,Ksが0.984,Kf値が0.993,乱視度数が0.967となり,いずれも有意な正の相関関係を認めた(p < 0.01)。

【結論】軽度から中等度の円錐角膜眼において,CG10による画像解析は妥当と考えられた。

Abstract

Purpose: CGPack10 (CG10: Sun Contact Lens. Co. Ltd) is a newly developed mire ring image analysis program. We had the opportunity to use CG10 and investigate the validity of the analysis results using keratoconus eye.

Method: We enrolled patients who underwent examination via Wave-Front Analyzer KR-1W® (KR1W®: TOPCON) and anterior ocular OCT (CASIA® SS-1000: TOMEY). Mire ring images obtained from KR1W® were analyzed using CG10, and the relationship between KR1W® measurements and CG10 analysis for Ks values, Kf values, and astigmatism axes were evaluated retrospectively.

Results: This study involved 19 eyes of 19 KC patients. We found significant correlations between KR1W® measurements and CG10 analyses for Ks values, Kf values, and astigmatism axis. (Pearson correlation coefficient: 0.984, p < 0.05, 0.993, p < 0.01, 0.967, p < 0.01, respectively)

Conclusions: In mild to moderate keratoconus eyes, the CG10 analysis of the mire ring images was seemed to be valid.

緒言

Placido型角膜形状解析装置は,角膜形状解析装置のなかでもっとも古くから使用されている装置である。1880年代に,Placidoが同心円像を角膜に投影し,その反射像(マイヤーリング像)から角膜形状を観察する装置を発明1)した。この装置は,発明者の名前からPlacido角膜計と呼ばれ角膜全体の形状を測定する機器の基礎となっている。その後,1890年代にマイヤーリング像を写真に記録するフォトケラトスコープ2)が登場し角膜の定性的評価が可能となった。1980年代には,円錐角膜をはじめとした角膜不正乱視眼の検出,或いは,良質なコンタクトレンズ設計を目的として,より客観的な角膜形状解析の関心が高まり,マイヤーリング像をコンピューター解析するビデオケラトスコープ3)が登場した。ビデオケラトスコープによって,角膜の定量的評価が可能となり,Placido型角膜形状解析装置として今日まで使用されている。

現在使用されているPlacido型角膜形状解析装置の多くは,画像解析プログラムが内蔵されており,角膜曲率半径のみならず,最適なコンタクトレンズのベースカーブ4),フーリエ解析による角膜形状の正乱視・不正乱視成分5),円錐角膜などの角膜形状異常の診断補助指数68)を得ることが可能である。しかし,これらのプログラムは,角膜形状解析装置の機種別に開発されており,マイヤーリング像の解析は,撮影を行った機種ごとに専用の画像解析プログラムが用いられている。これまでに,マイヤーリング像に対して,撮影を行ったPlacido型角膜形状解析装置ごとに用意された専用プログラム以外の,別種のプログラムを用いて解析することを試みた報告はない。専用プログラム以外での解析が可能になれば,撮影を行った機種からは本来得ることが出来ない形状指数を算出することが可能となり,Placido型角膜形状解析装置の利便性が大きく向上する可能性がある。

そういった背景から,サンコンタクトレンズ社は,マイヤーリング像の解析を目的に,画像解析プログラムCGPack10(以下CG10)を開発した。CG10は,角膜形状解析装置から独立した画像解析プログラムであり,角膜形状解析装置から得られたマイヤーリング像を定量化することが可能である。この度,筆者らはCG10を使用する機会を得たので,その解析方法を報告し,円錐角膜眼を用いて,解析結果の妥当性を検討した。

対象ならびに方法

2018年3月から2021年3月の間に,京都府立医科大学の円錐角膜・CL外来を受診した症例のうち,ソフトコンタクトレンズを2週間,ハードコンタクトレンズを3週間以上装用していない状態で,Wave-Front Analyzer KR-1W®(TOPCON社)(以下KR1W),前眼部OCT(CASIA® SS-1000:TOMEY社)の2機種によるデータを有する円錐角膜眼を対象とした。円錐角膜の診断は,1)細隙灯顕微鏡検査で,角膜下方突出,角膜菲薄化,角膜Fleischer ring,Vogt’s striae,のうちいずれか一つ以上の所見を認め,かつ 2)前眼部OCTから得られるEctasia screening index9)が30以上のものとした。急性水腫の既往がある者,強角膜への外科的手術の既往がある者,KR1W内蔵プログラムで角膜曲率測定が不可能であった者は除外した。また,1例1眼を原則とし,両眼が解析可能な症例に対しては封筒法を行い,無作為に抽出した片眼のみを対象とした。

KR1W®から得られたマイヤーリング像に対して,CG10を用いて画像解析を施行し,強主経線角膜屈折力(以下Ks),弱主経線角膜屈折力(Kf),乱視度数,乱視軸を算出した。Ks,Kf,乱視度,について,KR1W®の測定値(以下KR1W値)とCG10による解析値(以下CG10値)をMan-Whitney U検定を用いて比較し,その一致性について,Pearsonの積率相関係数とBland-Altman解析を用いて後方視的に評価した。尚,有意水準は5%とした。また,乱視は乱視度数および乱視軸からなる指標であるため,過去の報告10)に習ってベクトル解析を行い,KR1W値とCG10値の差について,倍角座標系に表示した。代表症例について,KR1W®から得られたマイヤーリングとCG10による解析結果を(図12)に示す。KR1Wはカスタムモードを用いて連続3回の撮影を行い,瞳孔径が最も大きかった撮影結果を,解析対象とし,Ks,Kf,乱視度数,乱視軸を得た。本研究は,ヘルシンキ宣言に則り,京都府立医科大学倫理審査委員会の承認を受け行った。

図1

KR1Wから得られたマイヤーリング像

耳下側に軽微な急峻化を認める。また,中央から3-5本目のリング状に白点を認める。

図2

CG10による解析結果

左上:KR1Wから得られたマルチマップ。左からマイヤーリング像,axial map,解析結果が示されている。

右上:プログラム内部の画像処理ツールによって,白点が除去されている。

左下:合計15本のリングついて,リング毎に64の測定点が設定されている。

右下:角膜前面のaxial map。下方のおよび耳下側に,赤色から白色で示される,高屈折域を認めている。画面下方には,解析結果が示されており,KWは弱主経線角膜屈折力を,KSは強主経線角膜屈折力を示している。

以下にCG10による画像解析の概要を示す。

まず,解析に用いたKR1Wと同じ機体を用いて,基準模型眼を用いてキャリブレーションを行った。その後,KR1W®によって撮影されたマイヤーリング像をJPEG形式にてコンピューターに取り込み,画像解析を行った。KR1Wから得られたマイヤーリング像には,リング上に高輝度の点が存在しているため,プログラム内部の画像処理ツールを用いて,白点を消す作業を行う。次に,解析ツールを用いて,Axial mapを作成する。CG10は,マイヤーリング像のうち中央15本を解析対象とし,リング毎に放射状に64の測定点を設けている。その結果,合計960ポイントの曲率半径に基づいて,Axial mapを作成している。また,SimK(角膜換算屈折力)は,Axial map上のφ3 mmの形状を反映しており,64方向の中で最も高い値をKs,Ksの経線に直行する経線の屈折力をKfとしている。解析の際に,アライメントなどについて,人為的な操作はなく,全てが自動で行われる。代表的な症例の,KR1W測定結果と,CG10による解析結果を図1に示す。

結果

対象は19例19眼(男性14例,女性5例)で年齢は31.3 ± 11.4歳(平均値±標準偏差)で,平均換算角膜屈折力は46.6 ± 2.8 D,平均最薄角膜厚は462.1 ± 32.5 μmであった。表1に対象の年齢,性別及び,前眼部OCTの測定結果を示す。KR1WおよびCG10から得られたKs,Kf,乱視度数,乱視度数および,ベクトル解析の結果を表2に示す。Ks,Kf,乱視度数について,CG10値とKR1W値との間にいずれも有意な差は認めなかった(Man-Whitney U検定)。Pearsonの相関係数は,Ksが(r = 0.984, p < 0.01),Kfが(r = 0.93, p < 0.01),乱視度数が(r = 0.967, p < 0.01)となり,いずれも有意な正の相関関係を認めた(図3)。ベクトル解析にてKR1Wで得られた乱視からCG10で得られた乱視の差分を計算すると,3眼を除いていずれも1 D以内に収まった(図4)。また,Bland-Altmanプロットにおいては,Kfは全ての症例で,Ks,乱視度数は1例を除いて2標準偏差の中に入っていた(図5)。

表1 対象
年齢(歳) 性別 AveK(D) 最薄角膜厚(μm) ESI
1 18.1 男性 43.10 472 33
2 18.1 男性 47.07 519 95
3 18.3 男性 45.36 454 83
4 20.6 男性 43.77 463 36
5 22.9 男性 44.12 411 38
6 24.7 男性 43.95 503 61
7 25.7 男性 48.94 449 38
8 26.3 男性 49.74 466 36
9 28.9 男性 44.30 453 60
10 30.8 女性 45.95 516 60
11 32.3 男性 53.90 421 79
12 32.8 男性 47.07 483 53
13 33.5 女性 44.82 450 68
14 34.2 男性 46.42 423 47
15 36.1 女性 46.60 508 66
16 36.5 男性 49.20 473 43
17 45.1 男性 46.95 452 95
18 51.8 女性 50.37 440 66
19 58.7 女性 43.60 423 38

AveK:平均換算角膜屈折力,ESI:Ectasia screening Index

表2 KR1W®による測定値とCG10による解析値
KR1W® CG10 P value
Ks(D) 48.60 ± 4.19 48.48 ± 4.45 P = 0.548
Kf(D) 45.47 ± 3.50 45.46 ± 3.84 P = 0.748
乱視度数(D) 3.13 ± 1.38 3.02 ± 1.34 P = 0.273
平均ベクトル 1.54 D 軸145度 1.67 D 148度

Ks:強主経線角膜屈折力,Kf:弱主経線角膜屈折力

図3

KR1Wによる測定値とCG10による解析値の,散布図

    a)Ks値に関する散布図

    b)Kf値に関する散布図

    c)乱視度数に関する散布図

図4

KR1WとCG10の角膜乱視の差分ベクトル

    KR1Wから得られた乱視とCG10から得られた乱視の差分ベクトルを倍角座標に示す。

図5

KR1Wによる測定値とCG10の解析値のBland-Altmanプロット

a)Ks値に関するBland-Altmanプロット

b)Kf値に関するBland-Altmanプロット

c)乱視度数に関するBland-Altmanプロット

縦軸にKR1W値とCG10値の差を,横軸に平均値を示している。また点線は平均値±2標準偏差を示す。Kfは全ての症例で,Ks,乱視度数は1例を除いて2標準偏差の中に入っている。

考察

今回,我々は円錐角膜眼を対象に,CG10を用いてKR1Wから得られたマイヤーリング像を解析し,Ks,Kf,乱視度数について,CG10による解析値がKR1W®の測定値と高い相関関係を認めることを示した。一般に,Placido型角膜形状解析装置では,リング上に放射状に設定された測定点からAxial mapを作成し,角膜中央部の曲率半径からSimKが算出される11)。CG10とKR1Wは,いずれも,角膜曲率8.00 mmを基準球面としてAxial Map上のφ3 mm位置の曲率半径からSimKを算出しており12),この一致によって,CG10値とKR1W値との間によって高い相関関係を認めたと考えられた。また,Axial mapの元となるリング毎の測定点は,CG10が64箇所,KR1Wが360箇所12)と大きく異なり,解析値に影響を与える事が予想されたが,今回の検討ではCG10値とKR1W値との間に有意な差は認めなかった。しかし,角膜中央の非球面性が高い症例では,測定点総数の差が解析値に影響を与える可能性が考えられる為,症例数を増やし,円錐角膜の重症度・突出部位の位置別の検討が必要と考えた。

KR1Wは19本のリングを解析対象としているが,CG10は中央15本のリングを解析対象としており,CG10はKR1Wと比較して解析範囲が狭い。しかし,今回の検討では,角膜中央3 mmの角膜形状を反映したSimKおよび乱視度数を対象とした為,解析範囲の差は影響しなかったと考えた。Placido型角膜形状解析装置を用いた角膜前面形状の質的評価として,平均R値,平均Q値などの,角膜周辺部を含めた角膜形状全体を反映した指標も知られている13)。解析範囲の差によって,角膜周辺部の形状を反映した指標では,今回の結果とは異なる結果が得られる可能性がある為,今後は,SimK以外の角膜形状指数の妥当性について検討する必要がある。

今回使用したKR1Wは,オートフォーカス式であり,KR1Wから得られたマイヤーリング像のピントがボケた症例はなく,いずれもCG10にて解析可能であった。しかし,マニュアル式のフォーカスを採用している機種から得たマイヤーリング像は,ピントズレによりデジタイゼーションが困難となる可能性がある。そのため今後は,他のPlacido型角膜形状解析装置を用いて,ピントがズレたマイヤーリング像に対する解析精度の確認が必要と考えられた。

本研究の限界として,症例の重症度の偏りと,症例数の少なさが挙げられる。今回は,KR1Wの測定値とCG10による解析値の比較を目的としたため,KR1W内蔵プログラムで角膜曲率測定が不可能であった者は除外した。その結果,症例の多くが軽度円錐角膜となる偏りを生じた。重度の症例ではデジタイゼーションが困難となり,今回の検討とは異なる結果を生じる可能性があるため,今後は,重症度別の解析精度の確認が必要と考えられた。また,KR1Wおよび前眼部OCTの両方を撮影した症例が少なく,本研究の症例数は19眼にとどまっている。症例数が少ないことで,CG10の解析精度を過大評価している可能性があるため,症例数を増やした更なる検討が課題として考えられた。

今回の検討では,軽度から中等度の円錐角膜眼を対象に,KR1W®から得られたマイヤーリング像に対して,CG10を用いて再解析を施行し,CG10による解析値がKR1W®の測定値と高い相関関係を認めることを示した。CG10によるマイヤーリング像の解析は妥当であると考えられた。

利益相反

廣瀬裕樹(E:サンコンタクトレンズ),外園千恵(F:参天製薬,サンコンタクトレンズ,シード,CorneaGen,ひろさきLI)

文献
 
© 2021 The Japanese Society of Ophthalmological Optics
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