Japanese Journal of Visual Science
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The Evolution and Future of Smart Contact Lenses
Takushi Kawamorita
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2021 Volume 42 Issue 4 Pages 96-101

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要旨

近年コンタクトレンズ(contact lenses: CL)のテクノロジーは,発展し続けており,最近ではスマートCL(Smart CL)といわれる従来の屈折矯正や老視矯正を行うCLに新たな付加価値を加える挑戦的な開発が進められている。生体モニタリング,ドラッグデリバリー,拡張現実などの機能を有するスマートCLなどがその代表であるが,エレクトロニクス,微細加工,材料,センシング技術の発展に支えられ,開発が加速している。このスマートCLの進化の現状と可能性に触れ,未来について考えてみたい。

Abstract

Technology of contact lenses (CLs) has continued to evolve, and smart CLs have been developed that add value to conventional CLs that correct refraction and presbyopia. Smart CLs with functions such as biomonitoring, drug delivery, and augmented reality are typical examples. Progress with these CLs has been accelerated by developments in electronics, microfabrication, materials, and sensing technologies. I will touch on the current status and potential of this area and consider the future of smart CLs.

1. はじめに

近年コンタクトレンズ(contact lenses: CL)テクノロジーは,さらに進化しており,非球面,トーリック,累進,拡張型焦点深度(extended depth of focus: EDOF),不正乱視補正,周辺屈折補正,近視進行抑制,など様々な角度から新しいデザインが登場している。このような眼科領域において実用的な矯正レンズの発展に加えて,現在ではスマートCLといわれる既存のCLに新たな付加価値を加え,さらに一歩進んだ挑戦的な開発が進められている。スマートCLの定義は,明確でなく,一部の報告ではセンサーやアクチュエーション,ワイヤレスコミュニケーション技術を有し目に直接接触する集積回路を持つデバイスとされるが1),この特集記事では視力・屈折矯正だけでない付加価値を持ったCLという広義な意味として取り上げる。具体的には,視力・屈折矯正目的だけでなく,診断補助やドラッグデリバリー,自動焦点,また医療分野だけにとどまらず拡張現実Augmented Reality(AR)デバイスとしての役割も含む。情熱あふれるベンチャー企業から経験と力のあるグローバル企業が次々と開発に着手している。その背景には,エレクトロニクス,微細加工,材料,センシング技術の進歩がある。モノのインターネット(Internet of things: IoT)化,バイオセンサー市場,AR/VR市場の大きな成長が見込まれていることからも,普及に向けた大きな期待もかけられている。この記事で取り上げるスマートCLは,既に市販されているものから近く発売されるもの,さらに研究段階で多くの時間を有するものまで様々なフェーズのものを含む。各々安全性や懸念点,個人情報保護や倫理面などから克服しなくてはいけないハードルがあり,一部否定的な意見がでることも想像できるが,まずはスマートCLの進化と未来について前向き捉え,読者の方々とその有用性について考えてみたい。

2. 疾患の診断補助機能を有するスマートCL

昨今では,時計や衣服などウェアラブルデバイスにて心拍や血圧,運動,睡眠などをモニタリングすることで,健康管理を行うことはそれほど驚くことではなくなった。そして,この流れはコンタクトレンズにも応用が検討されている。

2-1.  眼圧変動をモニタリングするCL

すでに臨床応用されているスマートCLでは,眼圧変動におけるピークパターンを24時間可視化するトリガーフィッシュ®システム(シード社)がある(図1)。これは眼圧変化により誘発される強角膜輪部の形状の変動をマイクロセンサーが捉え,相対的な眼圧の変動におけるピークパターンを検出する。最長24時間にわたって5分ごとに30秒間自動的に計測し,本機独自の単位である「ミリボルト エクイバレント(mVeq)」として変動をモニタリングする(図2)。CLの材質は,シリコーン,直径(diameter: DIA)は,14.1 mm,ベースカーブ(base curve: BC)は,8.4,8.7,9.0 mmの3種類ある。原理としては,CLに埋め込まれたマイクロセンサーが角膜曲率の変動を電気信号に変換し,眼の周囲に装着されたアンテナとケーブルを通して情報が転送される。このCLは高度管理医療機器であり,医療従事者が事前に注意事項をしっかりと説明する必要があるが,侵襲性は低く実用的で有用なシステムと報告されている2)。行動記録とピークパターンを重ねることで,より精度の高いサポートが可能となる。緑内障と眼圧,日常生活行動と眼圧の関係など今まで見えなかった眼圧への影響因子の解明や薬剤効果判定にも応用できる可能性がある。

図1

眼圧変動におけるピークパターンを24時間可視化するトリガーフィッシュ®システム(シード社)(資料提供 株式会社シード 掲載許諾確認中)

    左上:トリガーフィッシュ®センサー外観,右上:装着イメージ,左下:装着後の外観,右下:アンテナ外観

図2

ソフトウェアSoftware for SENSIMED Triggerfish®表示例(資料提供 株式会社シード 掲載許諾確認中)

    相対的な眼圧の日内変動を示し,本機独自の単位であるミリボルト エクイバレント(mVeq)をモニタリングする

2-2.  涙液中のグルコース濃度をモニタリングするCL

ヒト涙液のタンパク質の組成には,リゾチームなどの酵素や抗体,神経ペプチド,ラクトフェリンなどがあり,涙液の組成を分析することで,病気や状態が診断できる可能性があるとされ,長い間研究対象となっていた。また,基礎涙液膜内にあるグルコースは,涙液濃度が空腹時非糖尿病の眼で13~51 μmと3)血中濃度の1/100程度であるが,捉えることができれば,糖尿病管理に有用とされる。従来涙液グルコース濃度と血糖濃度とのは不一致が報告されていたが,計測手法の発展により可能となった。グーグル社とノバルティス社が共同で開発しているCLセンサーは,レンズ前後面の層の内側に電気化学センサーが埋め込まれ,このワイヤレスチップが涙液中のグルコース濃度を測定する。血中グルコース濃度の変化とそれに対応する涙液グルコース濃度の変化の遅延は約5分とされる4)。ベースカーブや酸素透過性,フィッティング,屈折矯正効果は,現在使用されているCLと同等で,中心厚みは約0.1 mmである5)。世界の糖尿病人口は,2019年時点で4億6300万人,2045年には7億人に達すると予測されており6,このようなモニタリングの仕組みを整えることは重要と思われる。

2-3.  涙液のコルチゾール濃度をモニタリングするCL

その他涙液中のコルチゾール濃度をモニタリングする機能を有するスマートCLがある7)。ストレスホルモンとして知られるコルチゾールの蓄積は,脂肪とアミノ酸の濃度を増加させ,2型糖尿病,自己免疫疾患,心血管合併症などの重篤な疾患や,うつ病や不安障害など神経障害を引き起こす可能性があるため,コルチゾールの管理ができるようになれば,有用性が高い。生体起源の分子認識機構を利用した化学センサーの総称であるバイオセンサーは,CLへ応用される前に長い歴史があるが,コルチゾールの評価においては,血液や唾液,汗,髪,尿中など多くの計測がなされてきた。このスマートCLでの優位性は,スマートフォンへのリアルタイム転送やリモート評価が可能な点である。このコア技術には,グラフェン電界効果トランジスタ(Field Effect Transistor: FET)チップの発展と,この製品における高い伸縮性や優れた透明性が挙げられる。コルチゾール濃度変化に伴うセンサーの電流や抵抗の変化からコルチゾール濃度が計算され,生体における適合性に関しては,人とウサギのin vivo試験で確認され,炎症および熱・電磁界放射に対する安全性は示されている。心理社会的ストレスの指標となったり,たとえば産業開発における評価指標としたり,幅広い応用が考えられる。

3. ドラッグデリバリー機能を有するスマートCL

従来,点眼薬は,眼内への浸透において,眼のクリアランスメカニズムとバリア機能に障壁があり,滞留時間が2分程度と考えると効果は限定的となる。そのため,比較的濃度を高めに,かつ使用頻度を上げる必要があり8),コンプライアンスや副作用に課題が残る。粘膜接着性ポリマーやナノ粒子,イオンフォレーシスなどを利用した解決策も提案されているが,安定性や再現性,合併症などから問題は解決していない。そのような中,長時間装用しているCLにドラッグデリバー機能を持たせることでこれらの問題の解決するための挑戦的な研究開発が続けられている。変遷として,CLは,1965年にSedlácek9)によってドラッグデリバリーのための媒体として最初に使用され,その後,緑内障におけるピロカルピンを浸透させるために使用された10)。シリコーンハイドロゲルなどは,高い酸素透過性や長期間装用可能で,薬物の滞留時間が30分以上と長いことから,有望な素材とされている11,12)。人の涙液は,厚みが約6 μm13),容量が約6~7 μLである14)。CLを装用することで,レンズ前後に涙液が覆い,各々Pre Lens tear film(PLTF)とPost Lens tear film(POLTF)と呼ばれ,薬物がレンズ前面と後面に放出される。薬物は,放射状に拡散され,POLTFは,角膜から前眼部に到達する。PLTFに拡散した薬物は,結膜に吸収され,血管や結膜から強膜への経路に入る。薬剤によって各々詳細な調査が必要と思われるが,多くの報告があり15),今後も注目したいCLである。

また,眼表面に直接アプローチするスマートCLも登場している。ワンデー アキュビュー®セラビジョン®アレルケア®(ジョンソン・エンド・ジョンソン社)は,1日使い捨てコンタクトレンズであるエタフィルコンA素材に抗アレルギー薬ケトチフェンを配合された世界初のコンビネーションCLである(図3)。構成モノマーは,メタクリル酸-2-ハイドロキエチル(2-HEMA),メタクリル酸(MAA)およびメタクリレート系架橋剤であり,含水率は59%,酸素透過率Dk/L値(−3.0 D)は,33.3である。レンズには1枚あたり0.019 mgのケトチフェンが含まれ,装用時に薬剤が涙液層に拡散し,5時間まで放出される。結膜抗原誘発試験においては,眼のかゆみ症状は15分後から12時間後まで抑制すると報告されている16)。ケトチフェンは,プラスの電荷を持つことから,マイナス電荷を持つCL素材のエタフィルコンAに取り込ませている。CL装用後は,濃度勾配により薬剤が涙液層に拡散する仕組みとなっている。同社のスクリーニング期と治療期のクリーニング期と治療期に分けられた2試験において,試験レンズ(エタフィルコンAとケトチフェン0.019 mg)群では,242眼のうち18眼,プラセボレンズ群では246眼のうち6眼に有害事象が発現し,試験レンズの2件(流涙増大)で重度と判断されたが,それ以外はほとんどが軽微または軽度と報告された16)。充血の抑制,視力に影響を及ぼさないことが示され,アレルギー性結膜炎に伴う眼のかゆみなどの症状を起こりにくくすることにおいて有用と結論付けられている16)。日本では,主たる機能は視力補正(−0.50から−12.0 Dまで,プラノレンズは販売していない),かゆみを起こりにくくするのは付帯機能として,高度管理医療機器として承認された。注意点は,アレルギー性結膜炎を治療するものでないこと,眼科医による適応判断が必要な点,片眼1日1枚限りの使用,異常を感じたら眼科受診をする,他の薬剤を服用するときは医師や薬剤師にこのCLを使用していることを伝える,などが挙げられる。このような注意点はあるものの,昨今では花粉症など眼アレルギー症状に悩まされているものは多いため,特にアレルゲンへの暴露が想定される前においての使用は症状の緩和が期待できる。

図3

ワンデー アキュビュー®セラビジョン®アレルケア®(ジョンソン・エンド・ジョンソン社)の概要(資料提供 ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社)

4. 自動焦点機能を有するスマートCL

調節可能な多焦点かつ高屈折力を有する液晶マイクロレンズアレイが開発され,老視矯正への応用が期待されている17)。液晶レンズは,開発の歴史があり18),軽量化,調節可能,低消費電力と進化させ,実用化の可能性が高まっている。原理としては,基本的には,ディスプレイの前のさまざまな位置に画像を偏向させるために,回折,反射,屈折,遮閉などの光学現象を応用させる。平凸または平凹レンズのような形状の液晶セルを作り,電圧を加えることで,入射光の偏光方向を切り替えることで調節可能となる。液晶レンズの特性によりオフ,多焦点,単焦点と切り替えることが可能である。濃度が不均一になっていて,高密度領域では波面の速度が低下し,低密度領域では速度が増加する特性を利用し,さらに屈折率勾配型のGRINレンズを適用している。レンズの半径と厚みを変えてこの焦点距離を変化させることになる。今後も老視人口は増え,かつCLを常用していた世代が高齢化を迎えることから,現在市販されている遠近CLとともにニーズは上がっていく可能性は高い。

5. 自動調光機能を有するスマートCL

羞明(まぶしさ)の機序は,視覚系や環境が複雑に絡み合っていることから完全に解明されておらず,その研究は,眼科,眼光学,神経眼科,心理物理,人間工学,照明,航空・自動車関連分野など境界領域である。従来,サングラスや遮光眼鏡,フィルタなど,光学レンズやフィルムでの対応が主であった。そのような中,アキュビュー®オアシス®トランジションズ スマート調光TM(ジョンソン・エンド・ジョンソン社)がスマート調光CLを発売し,話題となった(図4)。このレンズは,太陽光による紫外線と280~430 nmの可視光線に調光剤が反応し,活性化すると光線透過率が低下する仕組みとなっている。紫外線は,B波は99.9%,A波は98.9%以上カットし,可視光は色が最も薄い状態で最大16%カット,色が最も濃い状態で最大70%カットされる。この可視光のカットにより,不快グレアやハロー,スターバーストの低減や,目を細める,手で光を遮る,動きが止まるなどのまぶしさに伴う身体反応を低減させる効果が期待できる。我々の生活の中では,意識すると意外にまぶしさを感じるシーンは多く,生活の中でまぶしさを自然に減らしたい方がこのレンズの適応となる。

図4

アキュビュー®オアシス®トランジションズ スマート調光TMの概要(資料提供 ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社)

他にも調光する機構をもつCLとして,強膜コンタクトレンズに埋め込まれた人工虹彩を透過率で制御するスマートCLがある1)。瞳孔は,収差と焦点深度,網膜照度を制御しており,この機能をCLに持たせることを目的とした。無虹彩患者のデータや光学シミュレーションに基づいて様々な照度条件で光学性能と焦点深度,網膜照度のデータテーブルを持っていると予想され,照度に応じてCLの透過率を変化させ,CLの有効径を調整する。CLの透過率制御においては,ゲストホスト液晶セル(GH-LCD)という分子の制御を行う。GH-LCDは,平面性の高い棒状の高い化合物である二色性色素(ゲスト)を液晶(ホスト)に溶解させ,ゲストはホストと同方向に配向させる。電圧を加えることによりゲストの配向が変化し,光の進行方向や偏光方向による吸収や色が変化することになる。無虹彩患者に動的な瞳孔の役割を与えられる可能性を有し,また潜在的には,健常者においてもより速い光量調節,網膜像の質調整を行える可能性を持っている。

これらのCLでは,共通して網膜に到達する入射光量を調整し,視覚の質を上げるというアプローチを行っている。我々の生きる世界において,日中と夜間の入射光量差は,約100万倍,瞳孔径でカバーできるのは最大でも16倍程度である。感度調節の大半は,視細胞やそれ以降の視覚情報処理系が行っていると予想できるが,暗い中での高輝度ヘッドライトや街路灯で感じるまぶしさへの対処,自動車走行など高速移動時に必要とされるより速い明・暗順応など,より高い視覚の質に対応できるシステムは,安全や疲労軽減の観点から有用と思われる。

6. その他,付加価値を有するCL

3Dプリントの技術が応用されたコンタクトレンズも検討されている19)。レーザーを用いて高い透明性を維持したままナノパターンがテクスチャー加工され,たとえばこの技術はカラーCLに応用され,色覚異常のためのCLを製作できる可能性がある。色覚異常は,特定の錐体細胞の減少や欠損が起こっているため,錐体細胞そのものを増やすことは難しいため根本的に完治させる治療は現時点ではなく,またレンズのフィルタは基本的にある特定の領域で吸収される光の量を変えることしかできない。それらの点を踏まえ,たとえば480~500および550~580 nmの波長範囲の波長を吸収することで,色のコントラストを見かけ上,上昇させるレンズ設計がある20)。すでに眼鏡では色覚補正用レンズとして応用されている。

さらに他の用途ではCLの3D表面が黄色ブドウ球菌を捕捉するように設計され,機械学習アルゴリズムを用いて細菌数をカウントする仕組みも考えられている21)。この技術により,将来的には,たとえばCL使用者が自宅で涙液中のさまざまな細菌,ウイルス,分析物を検出するために広く適用できる可能性があると結論づけられている。

7. AR機能を有するスマートCL

最後に,サイエンス・フィクション(SF)映画にでてくるような近未来を連想させるAR機能を有するスマートCLを取り上げる。まず,ARとは,人が知覚する現実環境をコンピュータにより拡張する技術,およびコンピュータにより拡張された現実環境そのものを指す。仮想現実や人工現実感を指すVirtual Reality(VR)や,コンピュータで作成した仮想現実に現実世界の情報を取り込んで両者を融合させる技術である複合現実Mixed Reality(MR)という用語もあり,明確に区分できる技術と境界が不明確な技術もある。現在市販されているものから,わかりやすくイメージできるものを挙げるとすれば,没入感の高いゴーグル型がVRであり,スマートフォンゲームアプリにある現実世界に仮想の世界を重ねて拡張するのがARである。MRは,さらにカメラやセンサー,ホログラムなどを用いて,現実空間に仮想空間を重ね,自由な角度から見たり,3D表示やタッチ入力したり,ARをさらに発展させた技術とされる。このような技術をCLに応用する開発が進められている。代表的には,国内最大手のCLメーカーであるメニコン社と,米国カリフォルニア州でコンピュータに関連する先駆的な製品やプラットフォームの開発を行うMojo Vision社が共同開発を行っている(図5)。現在,両社が共同開発を進めているMojo Lensは,市販されてはおらず研究開発段階ではあるが,超小型で高密度のダイナミックディスプレイ,省電力イメージセンサー,高精度アイトラッキングやモーションセンサーなどが搭載されており,ナビゲーションシステムなど情報を現実空間に表示させることができる(https://www.mojo.vision/mojo-lens)。この技術はスマートフォンやスマートウォッチなど,下方視かつ近方視が多くなっている現状を考えれば,眼調節の低減,頸椎のアーチが失われるストレートネック,肩こりや頭痛などの症状低減,さらに顔をあげていることで態度が洗練されているという意味でのスマートさも期待できる。

図5

Mojo Lens外観(WEBサイトから引用)

これらの技術は,コンピュータの性能向上や,人工知能(artificial intelligence: AI),5G・6G(第5世代・第6世代移動体通信方式)などが融合することで,益々新しい技術が生まれ,市場が活性化すると期待され,巨大グローバル企業もこのスマートCLに注目している。そして何より我々に未来を感じさせてくれる楽しみがある。

8. おわりに

本特集記事では,近未来を感じさせるスマートCLの現状と可能性について紹介した。これらは,機能自体が診断補助や,Quality of Life/Visionの向上,生活の利便性を高めてくれるものから,自分の行動や状態が可視化されることで,自分自身を客観的に把握し制御すること,いわゆるメタ認知の能力を高めて行動変容につなげるものまで大きな可能性を感じさせてくれる。文字数制約の関係で概要を記載するのみとなったが,ぜひ参考文献で詳細をご覧いただきたい。医療者サイドでは安全性と有用性に対しては冷静に注視しなくてはいけないが,これらスマートCLの目的を達成するためにはセンサーとシステム,材料,製造,電力供給,耐久性,安定性,安全性評価,法規制など気の遠くなるようなプロセスをすべてクリアする必要があり,開発研究者,技術者,関与するメーカーに敬意を表したい。その上で我々はスマートCLの進化と未来にはわくわくする気持ちで歓迎したい。

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