Japanese Journal of Visual Science
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2022 Volume 43 Issue 4 Pages 150

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第58回日本眼光学学会総会が北海道旭川市で2022年9月3日~4日に開催され,学会長は旭川医科大学の石子智士先生が務められました。

今回の学会テーマは「夢」でした。各講演においても医療者側,企業の研究者側の夢を感じられる講演となっており,充実した2日間となりました。

本学会の目玉である招待講演から学会がスタートしました。招待講演は自然科学研究機構国立天文台の早野裕先生より「天文学のための補償光学とその応用」と題して,すばる望遠鏡のあるハワイ島よりご講演がありました。天文学における補償光学というのは主に観測対象からの光が伝播してくるときに起こる位相ゆらぎに対し,ビームスプリッタを用いて観測対象を撮像する撮像系と位相ゆらぎを撮像する光学系に分けて位相ゆらぎを解除しようとするものであるとお話がありました。眼科領域でも補償光学が用いられており,生体のイメージングにおいても同様に問題の本質は,媒質の不均一な屈折,反射による散乱と揺らぎ場であるというお話がありました。今回は標高4,000 m以上の高地より酸素吸引しながらのご講演であり非常に印象深いものがありました。

特別講演1では吉田晃敏先生より「日本の医療機器をどう国際化するか」と題してご講演がありました。これまで吉田先生が長年にわたって注力されてこられた遠隔医療の軌跡についてお話がありました。また,常に国際化や未来を見据えてご尽力されてこられた様子を改めて知ることができ感銘を受けました。新型コロナウイルス感染拡大に伴い,今となってはオンライン開催やオンデマンド配信などICTを用いた学会が多くみられるようになってきました。遠隔医療においても同様に「人」ではなく「情報」を動かすということに今より約30年前より着目された吉田先生の先見の明に敬服いたしました。

特別講演2では東京医科歯科大学の大野京子先生より「近視研究の夢」と題してご講演がありました。病的近視と生理的範囲内の近視の違いというのは後部ぶどう腫の有無にあり,その観察方法には3DMRIによる眼球全体を診る方法,超広角Swept source OCTを用いて観察する方法についてお話がありました。OCTを用いた方法では,脈絡膜がエッジに向かって薄くなりエッジを超えると再び厚くなっていくことなどについてお話されていました。後部ぶどう腫は高齢の方がなる疾患と思っていましたが,小児のOCT画像をご提示していただき,小児においてもぶどう腫が出来ているということをお話されていました。また,近視進行抑制の治療についてもお話があり,波長の種類が異なる短波長のバイオレットライト,650 nmのレッドライトが共に近視抑制効果が高いという興味深いお話も拝聴することができました。

今回の学会ではOCTに関するセッションも多くみられ,シンポジウム3では「イメージングの夢:日本のOCT開発製造技術の奥義」と題して日本を代表するニデック,トプコン,キャノン,トーメーコーポレーション,ニコンの開発者よりご講演がありました。冒頭に座長の先生より近年は中国のOCTも台頭してきているとのお話があり,中国産のOCTというのを初めて耳にしました。今やOCTは診療において必要不可欠な機器となっており,一台で診療に必要な検査画像をほぼ取得することができるall in oneの機器から,自動化,広角化,画像の加算方法など,各社のOCTへのこだわりがみられた講演でした。私が視能訓練士として勤務しだした当時はTime domain OCTもまだ使用されていましたが,それが今となってはSpectral domain OCTやSwept source OCTとなりました。更にはOCT-Angiographyも撮像することができるようになり,その技術の進歩には目を見張るものがありました。今後はどのような技術が搭載されてくるのか非常に楽しみです。

次回の第59回日本眼光学学会総会は古川英光先生が主催され,2023年9月2日(土),3日(日)に山形市で開催されます。今回,初めて日本眼光学学会総会に参加しましたが,想像していたよりも内容が多岐に渡っており,充実した2日間を過ごすことができました。

石子智士先生と旭川医大視能訓練士

 
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