Japanese Journal of Visual Science
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Visual function examinations for prescribing glasses
Yoshiyuki Ariga
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2022 Volume 43 Issue 4 Pages 99-105

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要旨

快適さを重視した眼鏡の処方という観点から,必要な視機能検査について述べる。なかでも特に基本となる検査として,屈折検査と調節検査について詳しく述べる。

調節機能解析装置ではオートレフラクトメータ(オートレフ)を用いているため,測定原理や測定可能な範囲はオートレフの仕様に準拠している。よって,オートレフの仕様を把握し適切な操作方法を身に着けることが,屈折・調節検査の基本となる。また,正確に測定したオートレフの値を用いて,自覚的な屈折検査をフローチャートに従って行っていく。

眼鏡処方の前提として,解剖学と眼生理学に精通し,尚且つ屈折と調節を理解している眼科医によって,眼鏡は処方されるべきものであると考える。

Abstract

From the viewpoint of prescribing glasses with an emphasis on comfort, the necessary visual function examinations will be described. In particular, examination of refraction and examination of accommodation are described in detail as the basic examinations.

Since the accommodative analyzer uses an autorefractometer (autoref), the measurement principle and measurable range conform to the specifications of the autoref. Therefore, understanding the specifications of the autoref and learning how to operate it appropriately are the basis of refractive and accommodation examinations. In addition, the examination of subjective refraction is performed according to a flowchart using accurately auto-ref values.

As a prerequisite for prescribing eyeglasses, we believe that eyeglasses should be prescribed by an ophthalmologist who is familiar with anatomy and ocular physiology, and who understands refraction and accommodation.

はじめに

眼鏡処方に必要な視機能検査というと,対象とする眼によって必要な検査は異なるが,基本的には屈折・調節・眼位の三つの検査は欠かすことができない。加えて,眼鏡を装用した時の評価としては基本的には両眼での評価になるため,両眼視に関わる検査や両眼同時雲霧法なども重要である。また,実際の眼鏡処方を想定したときには,今までどのような矯正状態や矯正度数で過ごしていたのか,どのような環境や場面で眼鏡を使用していきたいのか,患者自身がどの程度の見え方の質を必要とするのか,なども考慮する必要がある。

上記のように様々な要素や検査結果を加味した上で処方される眼鏡ではあるが,この項では「快適さを重視した眼鏡の処方」という観点から,必要な「視機能検査」について述べる。特に基本となる検査として,今回の項では屈折検査と調節検査について詳述する。

屈折検査

屈折検査は他覚的屈折検査と自覚的屈折検査に分けられる。他覚的屈折検査も自覚的屈折検査も,患者の視機能を評価する上で重要な検査であり,「快適さを重視した眼鏡処方」においてはとりわけ,他覚的屈折検査を正確に行うことが求められる。他覚的屈折検査については主にオーレフラクトメータ(オートレフ)について,自覚的屈折検査については,フローチャートを用いたワンパターンの検査について述べる。

①他覚的屈折検査機器 据え置き型のオートレフについて

1.測定結果から考える,安定した測定値とは

まずは,調節緊張が反映されてしまったオートレフの結果の例を示す(図1)。

図1

調節緊張が反映されたオートレフの結果

1は,学校検診にて視力低下の指摘を受けて来院した7歳女児の右眼のオートレフの測定結果である。屈折値の横にある数字は測定時の信頼係数であり,この図1の例の場合は9が最も高い数値であり,6が最も低い数値であった。学校の検査結果では,右眼の視力値はC判定(小数視力0.7-0.9),左眼の視力値はB判定(小数視力0.3-0.6)であった。学校の検査結果から<>の代表屈折値を見ると,それらしき値に見えなくもないが,5つの測定値の球面度数はかなりのバラつき(範囲:-0.50D~-2.25D)がみられ,信頼係数は低くないものの,とても安定した測定値とはいえない。そこで,一旦測定を中断し,再度,右眼からオートレフの測定を試みた。その測定結果を示す(図2)。

図2

安定した値のオートレフの結果

2の測定結果をみると,左眼は測定ごとの信頼係数も高く,値のバラつきもほとんどない。右眼は,球面度数の値が若干ばらつくが,調節緊張の介入が先ほどの測定に比べ少なく,許容できる測定結果と思われた。この結果をもとに,裸眼の視力検査と自覚的屈折検査を行ったところ,右=1.2(1.2×+0.25),左=1.2(1.2×+0.25)であった。その後の診察でも,特に異常所見は認められず,今のところ問題なし,ということになった。

安定していない測定結果と,安定した測定結果の例を提示した。測定結果を確認する際のポイントとしては,値のバラつきが少ないことと,信頼係数が高いことが重要である。ではここから,安定した測定値を得るために重要なことを,述べていく。

2.測定窓の汚れと測定精度の確認

安定した測定結果を得るために,まずは基本的な装置の状態や設定などを確認する。測定窓が汚れていないことや,測定精度が下がっていないことは大前提である。レンズに埃がついていれば,ブロワを用いて埃をとばす1。装置に付属している模擬眼(模型眼)を測定し,測定精度が誤差の許容範囲内におさまっているかを確認する。

3.測定モードの設定

オートレフの測定モードを,測定ごとに毎回雲霧機能が作動するような設定にする。もちろん,この設定にしたからといって,調節緊張を完全に取り除けるわけではないが,測定の最初のみ雲霧機能が作動するモードに比べて,経験上,調節緊張を有する症例では測定値にバラつきがでたり,雲霧機能が働いた時の瞳孔の動きが通常と異なる印象があるため,調節緊張症例に気が付きやすい印象がある。

4.測定時の注意点

患者が楽な姿勢で測定を行う。あごが浮いていないか,しっかりあご台にのっているか,額当てから額が離れていないか,などを確認する。

適切な声かけとともに,測定を開始する。梶田眼科(当院)では「視標(気球だったら気球)の絵の真ん中を,大きく目をあけて見ていて下さい」と,声かけをしている。視線方向の屈折を測定できるようにするためである2。どの検査においても共通ではあるが,速やかにテンポよく測定を行う。

オートレフを操作し,モニター画面をよく観察しながら,照準を合わせていく。自動で照準をあわせてくれる機能を有する機器もあるが,オートトラッキング機能に任せきるのではなく,基本的には自分自身でしっかり照準を合わせていく。また,眼瞼や睫毛が測定域にかかってしまう場合は,測定光束を遮らないよう,適宜眼瞼挙上を行う必要がある。他にも,マイヤーリングから乱視や涙液層破壊時間の観察ができるので,マイヤーリングに乱れがないことも確認しながら測定する。マイヤーリングに乱れがある場合は,適宜瞬目を促す。

測定している最中,眼底反射光の徹照像をよく観察していると,中間透光体の混濁(主に白内障や,後発白内障)に気が付く場合がある。そういった情報も,その後の検査などに非常に有益な情報であると考える。加えて,瞳孔径や,瞳孔の動きの観察も行う。測定値にバラつきがあれば測定回数を増やしたり,再測定を行う。

②自覚的屈折検査

1.過矯正を防ぐフローチャートを用いた自覚的屈折検査

次に,「過矯正を防ぐフローチャート3(図3)」を用いた,自覚的屈折検査について述べる。

図3

過矯正を防ぐフローチャート

基本的には,このフローチャート通りにワンパターンで検査を行っていく。ワンパターンで行う検査の長所としては,結果を見たときに検査の過程をある程度辿れることや,検者間の差が出にくいことがあげられる。

2.視力値の判定基準

視力値を判定する基準は2つあり,標準閾値と準標準閾値である。表を示す(表1)。

表1

視力値を判定する基準

視標がランドルト環のみで構成されている場合は標準閾値を,視標にひらがななどの文字が入っている場合は準標準閾値を用いる4

準標準閾値での例をあげる。表1のような準標準閾値の列があり,視力検査の際はランドルト環視標のみを使用していると仮定する。ランドルト環視標の数は3視標であり,その視標を2つ提示して2つとも誤答した場合は,もちろんその列の視力値をとることはできない。しかし,最初に提示した視標を誤答したが,後の2つの視標は正答した場合,誤答した視標を再度提示して正答すれば4視標中の3正答になるので,その列の視力値をとることができる。

3.自覚的屈折検査を始めていく初期設定値

前述したように極力正確に記録した他覚的屈折検査の値を活用し,検査を始めていく初期設定値を定める。手順は以下のとおりである。

【初期設定値の定め方】15

球面レンズの度数:オートレフの値よりも0.75Dプラスよりの値のレンズを選択する。

円柱レンズの度数:オートレフの値よりも0.75D弱めの値のレンズを選択する。

円柱レンズの軸度:オートレフの値に5°,もしくは10°単位で近似させた軸度を選択する。

先程提示した図1と図2のオートレフ値で初期設定値の例を示す。

1の右眼の代表値は

〈S-1.25D C-0.75D Ax 98°〉

なので,初期設定値は

〈S-0.50D〉

となる。

2の右眼の代表値は

〈S+0.25D C-0.50D Ax105°〉

なので,初期設定値は

〈S+1.00D〉

となる。初期設定値を定めたら,そのまま先ほどのフローチャート通りに進んでいく。

この初期設定値で検査進めていくことはつまり,他覚的屈折値で検出された全乱視が-1.00D以上の場合は,初めに乱視矯正をした状態で自覚的屈折検査を始めるということである。検出された全乱視が-0.75D以下の場合は,乱視矯正が無しの状態で始める。-0.75D以下の弱度の乱視は,眼によっては,疲労や調節緊張の影響を受けると乱視軸が変動する場合があったり,偽調節として利用しているからである。勿論,-0.75D以下の乱視矯正を必要とする眼も存在する。その場合は,図3のフローチャートの右側部分,円柱レンズ度数を強めていく手順に進んでいくことになる。

4.フローチャートにそった実例

実例を示す。37歳,男性,瞳孔間距離63mm,右眼の他覚的屈折値の代表値は〈S-3.75D C-1.50D Ax173°〉であった。

便宜的に瞳孔間距離64mmの検眼枠を装用させ,初期設定値である〈S-3.00D C-0.75D Ax170°〉のレンズを挿入し検査を始めた。初期設定値の視力値は0.7であった。球面度数に-0.25Dを加えた〈S-3.25D C-0.75D Ax170°〉のレンズで再度視力値を確認し,0.9であった。球面度数に更に-0.25Dを加えた値〈S-3.50D C-0.75D Ax170°〉で視力値を確認し,1.2であった。1.0以上が確認されたので,ここで自覚的屈折検査は終了となる。よって,結果は(1.2×S-3.50D=C-0.75D Ax170°)となる。

このフローチャートによる検査に慣れていない場合に,初期設定値の円柱レンズの矯正を忘れてしまうミスや,初期設定値のレンズで1.0以上が確認できた場合に,初期設定値から更に球面レンズ度数に+0.75Dを加えることを忘れてしまうミスが多く見受けられる。このフローチャートの流れをしっかりと身に着け,ワンパターンの検査ができるようになれば,検査時間は短くなり,視力検査での患者負担を大いに減らすことができる。

5.網膜面上の「前焦線と後焦線と最小錯乱円」による検査の説明

最後に,この初期設定値からフローチャート通りに進めていく検査に関して,網膜面上の前焦線と後焦線と最小錯乱円で説明をする。乱視をある程度矯正してから自覚的屈折検査を始めるということはつまり,網膜面上の前焦線と後焦線の幅をある程度狭めてから検査を始めるということである。また,フローチャート通りに進んでいくと,視力値が1.0未満になる時が必ずある。これは,最小錯乱円の位置を,一旦は網膜面よりも前方に持ってきて,そこから徐々に網膜面に近づけていく過程で1.0以上の視力値を見つけているということである。よって,乱視によるぼけ像がつくる調節介入を抑えることができ,尚且つ,過矯正を防ぐことができると考えられる。

調節検査

患者の屈折を適切に評価するには,調節検査を行うことと,患者の調節機能のイメージを描きながら屈折を評価することが重要である。つまり,前述の屈折検査の値を活かしきっていくには,調節検査は必須となる。この調節検査の項では,測定の精度や信頼性を高める,調節機能解析装置による検査を行なう上でおさえておきたいポイントについて述べる。

1.2つの調節機能解析装置のオートレフの仕様

調節微動から毛様体筋の緊張状態を推測する調節機能解析装置は現在,NIDEK社製のAA-2(図4)とライト製作所社製のACOMOREF 2(図5)の2種類がある。

図4

NIDEK社製のAA-2

図5

ライト製作所社製のACOMOREF 2

(図はライト製作所社提供)

調節機能解析装置といっても,装置はオートレフを用いているため,測定原理や測定可能な範囲はオートレフの仕様に準拠している。基本データを表に示す(表2)。

表2 調節機能解析装置に用いられているオートレフの基本データ(抜粋)
機器名称ARK-1sACOMOREF 2
測定原理画像解析検影式
球面屈折度(VD=12mm)-30.00~+25.00-20.00~+23.00
円柱屈折度(VD=12mm)0~±12.00D0~±12.00D
1~180°0~180°
測定可能最小瞳孔径直径2mm直径2.3mm
調節除去法自動雲霧自動雲霧
視標固視標内蔵(風景)固視標内蔵(花火)
測定ステップ0.01D/0.12D/0.25DAUTO/0.12D/0.25D

2.両機器共通の調節検査の注意点

先述の「オートレフ測定時の注意点」に留意することは大前提である。そのうえで,以下の点を心得ておく必要がある。

1)検査対象眼の疾患,屈折,瞳孔径についての確認

角膜疾患,白内障などがある場合,正しい測定結果が得られない可能性がある。また,オートレフの測定可能範囲を逸脱していないかにも注意が必要である(特に瞳孔径)。調節検査を開始する前に,問診や他覚的屈折検査,自覚的屈折検査を予め行ってあれば,疾患に対してのある程度の予測をしながら調節検査を行うことができる。測定結果においても,検査対象眼の疾患,屈折,瞳孔径を加味したうえで評価をする必要がある。

2)検査説明を丁寧に行うこと

検査概要を丁寧に患者に説明し,理解してもらうことも重要である。具体的には,測定時間や測定回数,瞬きのタイミング,合間の休憩についてなどである。瞬きに関しては特に,測定中は長く閉じるような瞬きはしないように伝える必要がある。

3)測定中のモニター画面の観察,適切な声掛けについて

オートレフ測定時と同様に,測定中はモニター画面をしっかり観察しながら,検者自身が常にアラインメントをあわせていくことが必要である。また,マイヤーリングを観察し,必要に応じて瞬目を促すなどの適切な声掛けをおこなう必要がある。

3.NIDEK社製のAA-2(ARK-1s)の特長と,AA-2の結果の例

一つ目の特長として,比較的小さい瞳孔径の症例でも安定した測定ができることがあげられる。ARK-1sの測定可能最小瞳孔径は直径2mmであり,測定結果は,近方視時の縮瞳も考慮して評価する(測定可能範囲内かどうか)。

二つ目の特長として,視標面で乱視を矯正するので,乱視眼でも安定した測定が可能であることである。ARK-1sの視力測定機能の仕様に準じて,±8.00Dまで視標面で設定が可能である(S:-20~+20D,C:0~±8D,A:0~180°)。

6は,36歳男性の正常例と,STEPごとの測定開始時のレフ値である〈S, C, A〉の値である。

図6

AA-2の正常例と〈S, C, A〉の値

この〈S, C, A〉の値の,乱視量や軸に変動がある場合は注意が必要であり,乱視矯正の適不適の判断材料となる。

4.ライト製作所社製のACOMOREF 2の特長と測定画面の例

一つ目の特長として,SCREENINGモードでは1STEPごとの測定時間が10秒となり,検査時間を短くできる特長がある。

二つ目の特長として,v1.20以降,測定光の安定状態を示す値であるACV(ACV:Asymmetric Coefficient Value)値を見ながら測定が可能なことである。ACV値は,測定の信頼性の指標として有益であり,値が低いほど安定した測定値であるといえる(0が最小値)。

7は,ACOMOREF2の測定画面の例である。

図7

ライト製作所社製のACOMOREF 2の測定画面の例

SCR CV値は,STEPごとの瞬き相当の回数を5から減じた数である(5が最大値)。先述の通り,測定値とACV値を見ながら測定が可能である。

おわりに

「快適さを重視した眼鏡の処方」という観点から,特に重要な屈折検査と調節検査を中心に述べた。オートレフの仕様を把握し適切な操作方法を身に着けることが,屈折・調節検査の基本である。

施設によっては異なる処方の流れのところもあるかもしれないが,基本的には屈折検査や調節検査は,医師の指示のもと視能訓練士やコメディカルが行い,その検査結果をもとに医師が処方する眼鏡度数を決定する。眼鏡処方の大前提としてあることは「眼科医による眼鏡処方の重要性6」である。「快適さを重視した眼鏡処方」においては殊更に,解剖学と眼生理学に精通し,尚且つ屈折と調節を理解している眼科医によって,眼鏡は処方されるべきものであると考える。

利益相反

利益相反公表基準に該当なし

文献
  • 1)  有賀義之:眼鏡の光学的検査(検査の進め方).眼科vol.64 No.5: 411-418,2022
  • 2)  梶田雅義:オートレフの正しい使い方をマスターしよう!.眼科ケア12(12).1170-1174.2010
  • 3)  梶田雅義:眼鏡処方に必要な屈折検査 B.自覚的屈折検査.すぐに役立つ臨床で学ぶ 眼鏡処方の実際.117-20,金原出版,東京,2010
  • 4)  梶田雅義:視力・屈折検査の手順.眼科ケア13(10).950-54.2011
  • 5)  有賀義之:②自覚的屈折検査(視力検査).眼科ケア20(12).1168-81.2018
  • 6)  梶田雅義:眼科医による眼鏡処方の重要性.眼科 53:975-979,2011
 
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