2024 Volume 18 Issue 2 Pages 26-37
本研究の目的は,歯科衛生士養成校学生の臨床実習時のストレス反応の実態と関連要因を把握することである。対象はA歯科衛生士養成学校の3年生46名とし,初めての学外での臨床実習の終了後に質問紙調査を行った。調査項目は,属性,生活習慣,環境,主観的な健康状態,臨床実習におけるストレスに関する項目,職業性ストレス簡易調査票を一部改変したものである。回答がすべて適切であった44名(女性20.8±0.6歳)の結果の分析を行った。臨床実習において,ストレスに思った項目は,「自分の知識不足」,「自分の技術不足」が共に36名(81.8%)で最も多かった。「高い・やや高い」反応があった者は,「不安感」24名(54.5%)が最も多かった。また,実習中の健康状態は,「活気」,「イライラ感」,「疲労感」,「不安感」,「抑うつ感」,「身体愁訴」と正の相関(p<0.01)があり,睡眠時間と実習中の「疲労感」には負の相関が認められた(p<0.01)。また,同居家族がいないものほど,「抑うつ感」が高く,「活気」が低かった。学生は,人間関係よりも自身の力量にストレスを感じていることが示唆された。また,実習中は,「不安感」などのネガティブなストレス反応と体調には関連があると憶測された。教員は,知識や技術に不安を持たないように十分サポートする必要があるとともに,生活習慣や環境についても考慮する必要があると考えられた。
The purpose of this study was to clarify dental hygiene students’ psychological and physical responses to stress and associated factors during clinical training, and to examine ways in which teachers can provide support for students.
A questionnaire was conducted to survey 46 third-year students at a dental hygiene school after the completion of their initial clinical training at actual clinics. The questionnaire examined attributes, lifestyles, environments, subjective health, stressors during clinical training, and scores from the partially revised Brief Job Stress Questionnaire.
The results of the 44 students (all female, av. 20.8 ±0.6 years old), who answered all questions were analyzed. Among the stressors during clinical training, “my insufficient knowledge” and “my insufficient skills” were the most common (36; 81.8%), followed by “creating training records” (35; 79.5%). “Anxiety” (24; 54.5%) was most frequently observed in students with high or relatively high stress response levels. Furthermore, health status during clinical training was positively correlated with “feeling active”, “feeling frustrated”, “feeling fatigue”, “feeling anxious”, “feeling depressed”, and “unidentified complaints” (P<0.01). In addition, sleep duration was negatively correlated with ”feeling fatigue” during clinical training (P<0.01). Also, those not living with family members had higher scores for “feeling depressed” and lower scores for “feeling active”.
The results suggest that students feel stressed about their abilities/skills rather than their interpersonal relationships, and negative stress such as “feeling anxious” is correlated with physical conditions during clinical training. Thus, it may be necessary for teachers to provide sufficient support for students so that they do not worry about their knowledge and skills, and to take their lifestyles and environments into consideration.
歯科衛生士養成課程における臨床実習は,これまで学んだ知識や技術,態度を統合し,実践的な能力を身につける場としてきわめて重要であるとともに,医療に携わる者として自覚を持ち,人として成長する場1)でもある。しかし,臨床実習は多くの学生が不安や緊張を持って臨んでいることが多く2),緊張から身体異常を訴える学生もいる。また,松尾らは臨床実習が歯科衛生士養成校学生の精神健康度を不良にする可能性を示唆している3)。緊張感をもって実習に臨むことは必要であり,適度なストレスは学習者の学習意欲を高め,人間成長の動機づけを促進する場合もあるが,精神的な要因のみならず,肉体的疲労からストレスを感じていることもある4)。加えて,先行研究においては,歯科衛生士養成校学生が初めて直接患者と関わる学内での臨床実習時のストレスについて,学生は実習初日に不安状態,精神的ストレスが高く,実習終了時には有意に低下することが確認され,また,ストレスは学生個々に要因が複雑であることが示唆された4)。
一方,看護学生における調査では臨床実習前に比べて臨床実習後の主観的健康状態は「よくない」状態が増え,睡眠時間は有意に減少し5),6),加えて,精神健康状態と睡眠時間には負の相関関係があると報告されている7)。また,精神健康状態は自己効力感,ストレスコーピングとも関連があり7),さらに,看護学生の臨床実習におけるストレスは,「実習記録に関するもの」,「教員・指導者との関係」,「対象者との関係」,「学生同士の関係」,「知識・技術不足」等の因子が挙げられ,それぞれの因子によりストレス対処行動に傾向があると報告されている6)。
これらより,歯科衛生士養成校学生においても,ストレスによる心身の反応が高い学生はストレス要因(生活習慣を含む)に特徴があるのではないかと考えたが,具体的な臨床実習のストレス要因とストレス反応の関係に関する文献は見当たらない。
そこで,本研究は,歯科衛生士養成校学生が初めての学外における臨床実習時のストレスによって起こる心身反応の実態と関連要因について把握し,学生自身のストレス対処方法について教員ができるサポート方法を検討することを目的として行った。
A歯科衛生士養成校(4年制)の平成30年度および平成31年度の3年生46名であり,「歯科診療所実習」を履修した学生を対象とした。
歯科診療所実習の概要
3年次後期における歯科診療所実習は,学生が初めて学外での臨床実習をする場となる。学生は各診療所に2名ずつ配置され,16日間(4週)の実習を行った。当該実習の目的は,以下の①~③である。①歯科診療所の指導者の監督下で,頻度の高い歯科疾患に関する歯科診療補助,歯科保健指導,歯科予防処置の知識・技術・能力および態度を実践的に習得する,②地域における歯科診療所の役割ならびに歯科衛生士の役割と業務を理解し,歯科衛生士としての実践力を養う,③歯科医療従事者の機能や役割を理解し,チーム歯科医療について実践するとともに,スタッフおよび患者とのコミュニケーション能力を養うである。
Ⅱ 調査方法平成30年10月から12月および平成31年10月から12月の,「歯科診療所実習」実習終了後に,選択式一部自由回答式の無記名自記式調査票を配布,同意を得られた対象学生から回収した。
Ⅲ 調査内容調査内容は,①属性,②生活習慣,環境,主観的な健康状態,③臨床実習におけるストレスに関する項目,④ストレス反応である。
1.属性
年齢,家族との同居の有無である。
2.生活習慣,環境,主観的な健康状態
実習前,中,後の平均睡眠時間,大学,または実習施設への通学時間アルバイトの有無,食生活,主観的健康状態であり,食生活は,「正しい」1点,「どちらともいえない」2点,「正しくない」3点の3件法,主観的健康状態は,「とても健康」1点,「健康」2点,「どちらともいえない」3点,「健康でない」4点,「とても健康でない」5点の5件法で回答を得た。
3.臨床実習におけるストレスに関する項目
臨床実習におけるストレスについて30項目を設定した。30項目は,歯科診療所実習における学生の実習内容で看護学生における臨床実習でのストレス因子5),6)を参考にして,研究者間で項目を選定した。各項目は,「ストレスではなかった」1点,「あまりストレスではなかった」2点,「ややストレスと思った」3点,「ストレスと思った」4点の4件法で回答を得た。
4.ストレスによっておこる心身の反応
職業性ストレス簡易調査票8)を一部改変したもの(図1)を用いた。職業性ストレス簡易調査票は,「仕事のストレス要因」,「ストレス反応」,「修飾要因」で構成されている。本研究では「ストレス反応」を使用し,学外臨床実習中の1か月間の状態について回答を得た。ストレス反応の尺度は,心理的ストレス反応として「活気」(3項目),「イライラ感」(3項目),「疲労感」(3項目),「不安感」(3項目),「抑うつ感」(6項目),身体的ストレス反応として「身体愁訴」(11項目)の29項目からなり,各項目に対しては,「ほとんどなかった」1点,「ときどきあった」2点,「しばしばあった」3点,「ほとんどあった」4点の4件法で回答を得た。なお,活気については逆転項目として点数を逆転させて計算した。よってすべての項目で得点が高いほどストレス反応が高いことを示す。また,各尺度のストレス反応について,各尺度に該当する項目の点数を算出し,その点数を「素点換算表version 2R」8),9)(図2)に当てはめて5段階(高い,やや高い,普通,やや低い,低い)による評価を行った。

ストレス反応調査票(職業性ストレス簡易調査票8)を一部改変したもの)

ストレス反応素点換算表(女性)
46名のうち,回答がすべて適切であった44名(女性,平均年齢20.8±0.6歳)の結果について分析を行った。統計解析は単純集計を行った後,SPSS Statistics 26(IBM,Tokyo. Japan)を用いて行った。睡眠時間の実習前,中,後の3群間の差はFriedman検定の後にBonferroni法で調整して比較した。実習中の睡眠時間,主観的健康状態,食生活とストレス反応の相関関係はSpearmanの順位相関係数を用いて,同居,アルバイト有無の2群間の検定はMann-Whitney U検定を用いて検討した。統計学的有意水準は5%とした。
Ⅴ 倫理的配慮対象学生に対し,研究目的と方法ならびに参加は自由意思であること,また,回収する調査票は無記名調査であるため,質問紙を提出してからは同意の撤回できないこと,個人情報は保護されることなどを口頭ならびに文書で説明した。研究参加に同意を得られた対象学生のみから調査票を回収箱に投函させた。
本研究は,千葉県立保健医療大学研究等倫理委員会の承認(申請番号2018-26)を得て実施した。
家族との同居は,20名(45.5%)が同居「あり」であった。平均睡眠時間は,実習前6.1±1.1時間,実習中5.5±1.1時間,実習後6.5±1.1時間であり,実習中の睡眠時間は,実習後に比較し有意に少なかった(p<0.01)。また,平均通学時間は大学へは,39.7±33.2分,実習施設までは,43.1±24.0分であった。主観的健康状態は,「とても健康」,「健康」と回答したのは,実習前後は33名(75.0%)であり,実習中は26名(59.1%)であった。食生活の規則は,「正しい」と回答したのは,実習前は19名(43.2%)であり,実習中,後は20名(45.5%)であった。アルバイトを行っていたのは,実習前は,36名(81.8%),実習中は,26名(59.1%)実習後は,33名(75.0%)であり,実習中は減少する傾向であった。
Ⅱ 臨床実習における項目別のストレス(表2)30項目のうち,「ストレスと思った」,「ややストレスと思った」の回答が,最も多かったのは「知識不足」,「技術不足」が36名(81.8%)であり,次いで「実習記録(レポート)作成」35名(79.5%),「実習に伴う時間の拘束」32名(72.7%),「大学内での報告会」26名(59.1%),「実習中,やることが多い」24名(54.5%),「休息時間の過ごし方」,「睡眠不足」23名(52.3%)であった(表2)。
Ⅲ ストレスによっておこる心身の反応(表3)職業性ストレス簡易調査票におけるストレス反応の結果は,各項目の平均点は心理的ストレス反応である「活気」は,9.6±2.5点,「イライラ感」は,5.5±2.9点「疲労感」は,7.9±2.5点,「不安感」は,8.0±2.7点,「抑うつ感」は,12.3±4.7点であり,身体的ストレス反応である「身体愁訴」は,20.1±7.6点であり,合計63.4±18.8点であった。また,各尺度に該当する項目の点数を算出し,素点換算表8),9)に沿って評価した結果は,「高い」・「やや高い」ストレス反応があった者は,「不安感」24名(54.5%)が最も多く,次いで,「活気」21名(47.7%),「抑うつ感」16名(36.4%),「疲労感」15名(34.1%),「身体愁訴」10名(22.7%)「イライラ感」9名(20.5%)であった。
Ⅳ 実習中のストレス反応と各要因の関連(表4)実習中の睡眠時間とストレス反応の「疲労感」は負の相関が認められ(r=-0.43,p<0.01),実習中の主観的健康状態が悪いほど,「活気」(r=0.50),「イライラ感」(r=0.40),「疲労感」(r=0.51),「不安感」(r=0.39),「抑うつ感」(r=0.54),「身体愁訴」(r=0.63)と正の相関が認められた(p<0.01)。また,「疲労感」は,実習中の規則正しい食生活と正の相関が認められた(r=0.30,p<0.05)。同居する家族の有無は活気(p<0.01)と抑うつ感(p<0.05)に有意な差が認められ,同居家族がいないものほど,抑うつ感が高く,活気が低くなった。アルバイトの有無はすべてのストレス反応において有意な差は認められなかった。
本調査は,A歯科衛生士養成校3年生に対して初めての学外での臨床実習時におけるストレス反応の実態と関連要因について調査し検討をした。
ストレス反応について,「素点換算表」8),9)に沿って評価した結果は,「高い」・「やや高い」のストレス反応があった者は,「不安感」24名(54.5%)が最も多く,「活気」21名(47.7%),「抑うつ感」16名(36.4%)が次いだ。皆川らの歯科衛生士における調査では,「高い」・「やや高い」反応があった者は,「不安感」は35.7%,「活気」は21.4%,「抑うつ感」31.0%であり10),対象学生は歯科衛生士と比較し,ストレス反応が高くなると考えられた。また,対象学生の実習中のストレス反応を合計した平均点は63.4±18.8点であった。筒井らの臨床実習中での介入前の歯科衛生士養成校学生のストレス反応は63.4±13.6点であり11),今回も同様の結果であることから,対象学生のみならず歯科衛生士養成校学生はストレス反応が高い状態で実習に臨んでいることが示唆された。
一方,ストレス反応の各項目の平均点は,女性の標準集団12),13)では,「活気」8.6±2.3,「イライラ感」7.0±2.4,「疲労感」7.1±2.5,「不安感」6.2±2.3,「抑うつ感」10.9±3.9,「身体愁訴」20.8±5.7であり,本研究の結果と比較すると,「イライラ感」以外のすべての項目で対象学生のストレス反応は高かった。特に,対象学生の「不安感」の平均点は8.0±2.7であり,標準値の6.2±2.3と比較して高い傾向であり,また,「不安感」の平均点は,皆川らの歯科衛生士を対象に行った調査では,6.6点10),上村ら薬学部学生の実習4週目に行った調査では5.9点であり14),それらと比較しても対象学生は不安に対するストレス反応の平均点が高い傾向が認められた。このことから学生は,臨床実習において特に「不安感」についてストレス反応が高くなることが示唆された。また,質問項目の「気がはりつめている」の得点が高かったことから,初めての学外臨床実習であり緊張感も高かったと推測され,「不安感」を高くすることに影響したと考える。
実習のストレス要因で「ストレスと思った」,「ややストレスと思った」の回答で最も多かったのは,「自分の知識不足」,「自分の技術不足」であり,次いで,「実習記録(レポート)作成」,「実習に伴う時間の拘束」であった。学生は人間関係よりも自身の力量や,時間に関することにストレスを感じていることが示唆された。約8割の学生が知識,技術不足にストレスを感じていて,このことが不安につながっていると考えられる。頭山らは,歯科衛生士養成校学生臨床実習において学生は歯科衛生士業務を見学することにより自分の技術に対して不安を感じていたと報告している15)。一般に不安は期待どおりになるのか見通しがつかない時の感情であるとされており16),その派生感情には,心配や焦りの感情があげられる。実際に歯科衛生士の業務を見ながら「できないかも」,「どうしよう」などと思いながら実習に臨んでいたと推測される。過度な不安や緊張により心身ともに萎縮してしまい効果的な実習ができなくなる可能性も考えられる。教員は学生が見通しをたてられるようなサポートをする必要があるだろう。授業の充実に加え,具体的な課題の提示,自己評価ができる教材の提供,またOSCE(客観的臨床能力試験)を導入する17)などして,実習前に学生の不足している内容が自覚できるような工夫が必要と思われる。自主的に不安を払拭するために学生の主体的な学習を身につけるよう支援するとともに,また,技術については,学生個々が練習できる環境を提供するなどのサポートをすることが求められる。さらに,歯科衛生士によるマンツーマンの指導を受けることで学生は主体的に目標をもって実習に取り組むようになり18),習熟レベルや目標にあわせた指導を行うことで学生は満足し,学習意欲が向上する18)ことから,学内教員は,実習施設の実習指導者と綿密な連携をとり学生個々の情報を共有し,積極的に相談や質問を受け付ける工夫をすることが大切であると考える。
加えて,隅田らは,学業成績上位者は臨床実習開始前に高不安の傾向があったと報告している19)ことから,教員からみて学力の高いと思われる学生であっても個々に不安の原因が何なのか,学生が自身で気づき,解決出来るようなサポートの必要があると考える。
「実習記録(レポート)作成」については,実習記録の書き方や書く力の不足から記録をすることが困難である20)ことが推測され,これにより実習記録作成に時間がかかることでよりストレスが増加していると考える。歯科衛生士養成校学生の実習時での記録の作成は,ストレス,つらかった項目として挙げられていて3),21),22),特に,有本ら22)の報告は平成3年の調査であることからかなり以前から学生にとってストレスとして認識されていると考えられる。また,理学療法学科の学生においてはデイリーノート作成時間と症例レポート難易度は学生の心理的ストレスを増減させる要因の一つと示唆されている23)。実習記録の作成の何に困難を生じているのか確認し,個別に指導し,学生のスキルアップをサポートする必要があると考える。
主観的な健康状態について,本研究の対象学生は「とても健康」,「健康」と回答したのは,実習前後は33名(75.0%),実習中は26名(59.1%)であり,実習中は減少する傾向であるものの,平成28年度国民生活基礎調査の20~29歳の健康意識の結果では「よい」24.9%,「まあよい」20.9%であった24)ことから,比較的健康状態は良かったと考えられた。加えて,金子らの看護学生対象の調査では実習前は「よい」,「まあよい」が53.8%,実習後は21.5%であった5),6)ことから,対象学生は実習中に健康に不調が生じていても比較的,早くに回復していると考えられる。しかし,実習中の主観的健康状態は,ストレス反応のすべての項目において正の相関が認められた(p<0.01)ことから,ネガティブなストレス反応が高くなると,体調をくずす可能性が高くなることが示唆された。
本調査では,ストレス反応の「疲労感」と睡眠時間,食生活に相関が認められた。睡眠時間は,実習中は5.5±1.1時間であり,実習前後より減少する傾向にあった。看護学生においても,実習前は6.2±1.2時間,実習後は3.8±1.4時間であると報告されていて5),6),実習中は,学内での授業より実習時間が長く,また,実習記録の作成などの課題が影響して睡眠時間が短くなると考えられる。教員は,学生自身のタイムマネージメントのサポートだけでなく,実習施設までの通学時間の調整などできる限りの考慮も必要なのではないかと考える。一方,食生活については,食生活が正しくないことが「疲労感」に影響したと推測される。阪野らは,女子学生の食生活と疲労状態の関連について,食習慣の悪い群は良い群より疲労状態であったと報告している25)。実習中のみならず、普段から食生活を整えることが必要と考えられた。
今回,アルバイトの有無で実習中のストレス反応に有意な差は認められなかったが,アルバイトをしている者の方がしていない者よりストレス反応が低い傾向があった。元々,ストレス反応の高い学生はアルバイトをしていない可能性もあるが,アルバイトをすることで気分転換ができ,また,コミュニケーションスキルを持つ21),26)ことでよい影響を得ているのではないかと推測される。アルバイト就労により疲労や睡眠不足,心理的負担が生じる27)ことがあるが,アルバイトは実施の有無より働き方を工夫することが必要であり,本調査の対象学生は実習中のアルバイトを中止する傾向もみられ上手く自身で調整できていたと考える。
一方,同居家族がいない者ほど,「抑うつ感」が高く,「活気」が低かった。大学生を対象にした調査において,抑うつと父親,母親のサポートは負の相関があると報告があり28),また,天地らは,自宅や学生寮で生活するより下宿生の欠席が多く,その理由として,生活が不規則になり体調不良や寝過ごすなど自己管理に問題があったと考察している26)。「抑うつ感」はストレス反応の中で最も高いストレスレベルでみられる症状であり8),日常からの学生の生活環境も注視する必要がある。学生生活の質を高めるためには疲労感が残らないような日常生活環境の調整が課題と考えられている29)ことからも,充実した実習を行うためには,実習中に限らず,生活環境を整えることが大切であり,教員は学生の生活習慣なども考慮して学生のサポートを行う必要がある。
また,今後は対象者を増やして歯科衛生士養成校学生のストレス因子構造を解明しそれぞれの対策について検討する必要があると考える。
歯科衛生士養成校学生が初めての学外における臨床実習時のストレスと心身の反応の実態について調査,検討を行い,以下の結果を得た。
1.ストレス反応について,「高い」・「やや高い」の反応があった者は,「不安感」(54.5%)が最も多く,「活気」(47.7%),「抑うつ感」(36.4%)が次いだ。対象学生は不安に対するストレス反応の平均点が高い傾向が認められ,特に「不安感」についてストレス反応が高い集団であると示唆された。
2.実習のストレス要因で「ストレスと思った」,「ややストレスと思った」の回答で最も多かったのは,「自分の知識不足」,「自分の技術不足」であり,次いで,「実習記録(レポート)作成」,「実習に伴う時間の拘束」であった。学生は人間関係よりも自身の力量や,時間に関することにストレスを感じていることが示唆された。
3.実習中の健康状態は,ストレス反応のすべての項目において正の相関が認められ(p<0.01),ネガティブなストレス反応が高くなると,体調をくずす可能性が高くなると示唆された。
4.ストレス反応の「疲労」と睡眠,食生活に相関があった。睡眠時間は,実習中は5.5±1.1時間であり,実習前後より減少する傾向にあった。
5.同居家族がいないものほど,「抑うつ感」が高く,「活気」が低かった。
教員は,知識や技術に不安を持たないように十分サポートする必要があるとともに,実習中に限らず,生活習慣や生活環境についても考慮する必要があると考えられた。
本研究に関して,利益相反に相当する事項はありません。