THE JOURNAL OF JAPAN SOCIETY FOR DENTAL HYGIENE
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Survey on the content of oral health information most viewed on video SNS
Moeka ARAKI, Chisachi OGURA, Mami ENDOH, Emi KURAMOCHI, Atsushi TAKAYANAGI, Atsushi YAMAGISHI
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2024 Volume 18 Issue 2 Pages 61-66

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【緒 言】

近年,スマートフォンの普及に伴いインターネットの利用率が増加し,動画投稿や共有サービスを使用目的とした動画によるSocial Networking Service(SNS)が多く利用されている。SNSとは,Social Networking Serviceの略で,利用登録をした会員同士がインターネット上で利用できるサービスのことである。その利用者は乳児から高齢者の幅広い世代に渡り,18歳未満~40代において90%以上が動画を視聴していると報告されている1),2),3)。一方でこれまで情報を得る主な手段であったテレビ放送では,リアルタイムでの視聴率が減少し4),2022年にインターネット利用率に逆転された1)。SNSには,文章をメインとしてやり取りを行うサービス,写真をメインとしたサービス,実名で登録しビジネスとプライベートの両方で利用することが出来るサービスがあげられる。中でも,動画SNSの1つであるYouTubeJPは幅広いコンテンツの動画をメインに情報発信がされており,多くの利用者に活用されている1)。

2019年から世界に広まった新型コロナウイルス感染症の流行に伴い,社会生活に大きな変化が生じ,対面での行動が制限されSNSの社会的役割が拡大した。大学講義も非対面での講義が余儀なくされ,対面で行われていた授業が非対面授業になったことにより,時間や受講場所の自由度が高くなり,学習にSNS等が多く活用されるようになった5)。好きな時に利用することができる動画SNSは身近なコンテンツであり,容易にアクセスし情報を入手することが可能である。

口腔保健情報に関しても,動画SNSではさまざまな情報発信が行われており,今後は保健情報源として動画SNSの活用がさらに高まることが予想される。

そのため,動画SNSを口腔保健情報の普及に効果的に活用していくことが重要であると考えられる。動画SNSを通じて,適切な口腔保健情報を伝えるためには多くの人に視聴されることや,その内容がエビデンスに基づいていることが求められる。これまで,配信されている動画の特徴・内容・エビデンスについて医科の領域では調査・解析6)が行われているが,歯科分野では見当たらない。そこで,現在多く視聴されている口腔保健情報の動画内容,配信者の特徴と実態を明らかにすることを目的に調査を行った。

【対象および方法】

動画SNSは,日本において最も利用者が多いYouTubeJP1)を使用し,検索語は,歯科におけるセルフケアをターゲットとし,Google Trends7)で検索回数が多い“はみがき”虫歯 and 予防”歯周病 and 予防”とした。視聴回数の多い動画の抽出には,YouTubeJPの検索フィルタの「視聴回数」を使用し,動画を並び替えて上位50本の動画を選択した(検索日:2022年3月27日)。

調査項目は,視聴回数,配信者の属性,動画の特徴とした。視聴回数は,調査日にすべての調査を行い,単位は万回として千の位で四捨五入をした。配信者の属性は,歯科医療者と一般に分類した。職種や資格はYouTubeJP内で配信者が歯科医師・歯科衛生士と公表しているものを用いた。動画の特徴は,視聴対象者,動画の形式,表現方法,動画内で取り扱われているケア用具の4つの項目に分類した。視聴対象者では,動画を視聴する対象年代を小児のみ,成人のみ,小児および成人に分類した。動画の形式は,実際に人が登場しているものを実写,アニメーションキャラクターが登場しているものをアニメーション,スライドショーに分類した。表現方法は,言葉による説明,ストーリー性のあるものをドラマ形式,歌に分類した。ケア用具は,歯ブラシ,歯磨剤,デンタルフロス,歯間ブラシ,洗口剤の使用方法を説明しているものを集計した。これらの内容について3つの検索語と配信者の属性により分類した。

検索用語で選択された動画を視聴回数が多い順でソートし,上位5名の配信者のすべての動画を視聴し,その内容を歯科関係とそれ以外に分類した。また配信者の属性はチャンネルの情報から得た。

【結 果】

Ⅰ. 各検索語の視聴回数と配信者

視聴回数が多い上位50本の動画配信者の属性と総視聴回数を表1に示す。各検索語における視聴回数上位50本における総視聴回数は,“はみがき”で5億3336万回,“虫歯 and 予防”で454万回,“歯周病 and 予防”で588万回であった。検索語における動画配信者の分類として,“はみがき”では歯科医療者0%,一般100%,“虫歯 and 予防”では歯科医療者46%,一般54%,“歯周病 and 予防”では歯科医療者72%,一般28%であった。各検索語における視聴回数上位50本の視聴回数を表2に示す。視聴回数は,“はみがき”の1位が9005万回,50位では151万回であった。“虫歯 and 予防”では1位60.5万回50位1.6万回,“歯周病 and 予防”では1位90.0万回50位1.8万回であった。

表1

視聴回数が多い上位50本の動画配信者の属性と総視聴回数


表2

各検索語における視聴回数上位50本の視聴回数


Ⅱ. 各検索語の動画の特徴

各検索語における上位50本の動画の特徴を表3に示す。視聴対象者は(小児+小児および成人)を小児,(成人+小児および成人)を成人とすると,小児:成人は“はみがき”47:3,“虫歯 and 予防”44:22,“歯周病 and 予防”2:50となり,“はみがき”虫歯 and 予防”では小児対象が多く,“歯周病 and 予防”は成人対象が多かった。形式では全ての検索語で実写が多いものの,小児を対象とした動画が多く“はみがき”虫歯 and 予防”ではアニメーションが23本,19本であるのに対し,成人対象が多い“歯周病 and 予防”ではアニメーションは1本,実写が48本となっておりそれぞれの特徴がみられた。表現方法では説明:(ドラマ形式+歌およびドラマ形式+歌)を比較すると,“はみがき”虫歯 and 予防”歯周病 and 予防”では2:48,31:19,50:0となり,小児対象はストーリーやリズム感のあるもの,成人対象では言葉や図で説明するものがそれぞれ多くなっており形式と同様な特徴がみられた。ケア用具に関しては,歯ブラシの使用方法に関するものが“はみがき”38本で,生活習慣の定着を目的としているものが多く見られた。“虫歯 and 予防”は13本,“歯周病 and 予防”は17本であったが,どちらも歯ブラシの基本的な使い方のみで,歯ブラシの種類や選択方法などを説明しているものはなかった。エビデンスと異なる知識は見られなかったが,フッ化物配合歯磨剤のう蝕予防効果といったエビデンスに基づいた情報も見られなかった。また,3つの検索語すべての動画の特徴を配信者属性別に分類した結果を表4に示す。150本の内訳は歯科医療者が59本,一般91本であった。視聴対象者は,歯科医療者では“成人”が多く,一般では“小児”が多かった。動画形式は,歯科医療者と一般ともに“実写”が多く,一般は“アニメーション”が多かった。表現方法では,歯科医療者はほとんどが“言葉による説明”であったが,一般では“歌およびドラマ形式”が多かった。取り扱われているケア用具は,共通して“歯ブラシ”が多かった。

表3

各検索語における上位50本の動画の特徴


表4

動画配信者の属性別のすべての動画の特徴


調査した150本の動画で視聴回数が多い上位5本の配信者の属性は,絵本作家1名,親子1名,教育関係企業2社,音楽関係企業1社であった。これらの配信者による口腔保健に関する情報以外も含めたすべての配信内容を調べた結果では99.6%が口腔保健情報以外のものであった。具体的な内容は,知育,ダンス,遊び,趣味,旅行,料理などの生活や娯楽視点の情報が配信されていた。

【考 察】

今回の調査した検索語の中では“はみがき”の視聴回数が最も多かった。検索用語として最も頻繁に使用されていると考えられ,情報発信の際に好適であることが推察された。特徴的だったのは歯科関連の情報であるにも関わらず,配信者の属性はすべて一般で歯科医療者は上位50名には見受けられなかった。上位の動画内容は,はみがき習慣の定着を目的とした小児向けのものが大半を占めていた。このことから,動画を親子で視聴していると予想され,はみがきを歌や劇で直感的に理解されやすくしており,子どもが楽しめる内容であることが視聴者のニーズであると推察された。一般の配信者と比べると歯科医療者の動画の形式は実写が多く,表現方法としては言葉による説明に徹していたため親にとっては有意義であっても子どもが楽しく視聴して生活習慣に取り込める要素が少なかったため視聴回数の増加に繋がらなかったと推察される。はみがき習慣の定着を目的とする場合は,毎日のはみがきの動機付けのため多数回動画が視聴されている可能性が高く,視聴回数が増加する要因になっていたと考えられる。

“虫歯 and 予防”においては454万回視聴されており,配信者の属性は一般54%と歯科医療者46%と同程度であった。歯磨剤に関しては歯ブラシに乗せるなどの行為についての情報しかなく,う蝕予防に対してエビデンスが確立されているフッ化物配合歯磨剤に関しては,重要な情報である歯磨剤の使用量8)やその使用方法9)に関する情報は取り扱われていなかった。フッ化物配合歯磨剤のフッ化物濃度の選択・使用方法は,年代によって異なるため適切なセルフケアが実施出来るように情報やフッ素症の発生リスクを合わせて情報発信することが必要であると考えられる10)。国際的にフッ化物応用について研究が進められている中で日本においても,4学会合同で推奨されるフッ化物配合歯磨剤の濃度が幼児は1000ppmF,児童から成人・高齢者は1500ppmFに引き上げられ,さらに具体的な使用量,ブラッシング回数やうがいについて発表された11)。しかしながら,一般の配信者ではこのような情報を目にすることが少なく,知識も少ないことからエビデンスレベルの高いコンテンツを作成するのは困難であると考えられる。エビデンスレベルの高い情報に容易にアクセス出来る歯科医療者が,生活者に理解され生活習慣に取り入れやすい形でフッ化物応用などの情報を発信することは視聴者にとって有用であると考えられるため多くの機会で取り上げられることが望まれる。“歯周病 and 予防”では,588万回視聴されており動画配信者の72%が歯科医療者であった。治療方法などを含む資格や専門的な知識が必要であるため,一般の配信者では取り扱いづらい内容であったことが考えられる。視聴対象者は,成人48本・小児および成人2本となっていた。現在,日本では4mm以上の歯周ポケットを有する者は15~24歳で17.8%,25~34歳で32.7%12)であり,今後は予防策の1つとして,なるべく早い時期から興味を持ってもらえるような動画を作成することで予防に対する行動のきっかけとなる可能性が考えられる。投稿されていた“歯周病 and 予防”の動画は,すべて言葉による説明であったため,各年代が興味を持って生活習慣に取り込めるような内容の動画が制作されることが望まれる。

動画内で取り扱われているケア用具は,“歯ブラシ”が多かった。生活習慣の定着を目的としているものが多く,効果的な使用方法について発信している動画は少なかった。近年は,多種多様な歯ブラシが市販されており,適切な選択によりブラッシングテクニックを補いセルフケアの負担を軽減するものがある13),14)。しかしながら,具体的な選択方法に関する情報は見られなかった。配信内容に,個々の口腔内状況に合わせた歯ブラシの選択方法などを含めることで,より効果的にセルフケア支援に繋がると考えられる。

動画内容の信頼性については,他の医療分野では配信されている動画の質について多く調査がされており15),歯科の分野も配信動画についても精査をしていく必要があると考えられる。医科領域では,Journal of the American Medical Association Scoreを基準とした動画の質の評価を行った報告16)があるが,今回調査した動画SNSにおいては情報源に関する内容が含まれていないために,これらの指標を用いて評価することが困難であった。予防のエビデンスが確立されているものもあるが,従来の指標では歯科の予防分野を取り扱うことができないため,エビデンスに基づいているかどうかと視聴者に受容されるかの両方について客観的に評価できる指標を検討することが求められる。

視聴回数が多い動画配信者の動画内容は,生活の一部の情報として配信されており,視聴者にはより身近に感じられるものとなっていた。視聴回数が増加しやすい配信者の特徴として,さまざまなコンテンツを数多く配信していることが関連していると考えられる。インターネットを最も活用する理由は「趣味・娯楽に関する情報を得る」であるため1),口腔保健情報の発信が目的であっても,視聴者の共感性を得ることが重要であると考えられ,動画の品揃えを豊富にし,その配信者に興味を持ち,親近感や信頼感を得ることも必要であると考えられる。

今回の調査結果においても,視聴回数が多い動画配信者の投稿動画では生活・娯楽視点であった。歯科医療者として視聴者の年代・特性・ニーズに合わせて生活者目線のエビデンスがある口腔保健に関するコンテンツを作成し,幅広く情報共有するためには,得られた知見を含め多く視聴されている動画に関してさらに調査をしていくことも重要であると考えられた。今回は特定の一部の用語を用いて上位のみでサンプル的な調査を行っているため,必ずしも全体像を把握できているとはいえない。そのため,検索用語の見直しやフィールドをグローバルに広げるなど,調査を多角的に実施してデータを蓄積することが必要である。

【結 論】

“はみがき”,“虫歯 and 予防”,“歯周病 and 予防”の検索語において,多く視聴されている動画を調査したところ,う蝕や歯周病予防に繋がるエビデンスに基づいた具体的な情報は発信内容に含まれていなかったが,楽しく見やすい工夫がされていた。情報発信を行う際にはエビデンスも重要であるが,日常生活の中での人々のはみがき習慣など歯科に関する情報の入手と楽しく見やすいなどの動画の選択方法の理解が重要であると考えられた。例えば,歯科医療者が歯科疾患・セルフケアに関する情報を動画SNSにより伝える際には,動画を多くの国民に視聴してもらうために,楽しく見やすいものにしていくことなどが重要であると考えられた。

また配信されている動画の信頼性を担保するため,口腔保健情報分野の評価システムの構築が必要であると考えられた。

本論文に対して,開示すべき利益相反状態はない。

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