2024 Volume 18 Issue 2 Pages 67-69
2023年4月1日より日本歯科衛生学会規則改定にて新たな学会委員会「企画第二委員会」が発足しました。委員会の任務は専門領域別・研究集会(以下,研究集会)の開催と運営です。そこで,次回の日本歯科衛生学会第19回学術大会内から研究集会を開催いたします(2024年9月21日・新潟市 朱鷺メッセ)。「研究集会って何?」「なぜ研究集会をするのだろう?」「何の意義があるのか?」と疑問に感じる会員も多いのではないかと予想しますので,本稿にてご紹介させていただきます。
患者・国民からの歯科衛生士に対するニーズは多様化しています。歯科医院では患者のう蝕や歯周病管理に限らず歯科矯正治療,口腔インプラント治療,審美歯科治療への患者対応やそれらの専門的管理能力が必要とされています。また,日本の人口構造の変化に伴い,外来診療のみならず地域における訪問歯科診療や在宅での口腔管理,周術期等口腔機能管理で有病者を扱うことも多くなりました。歯科衛生士の役割や職域が広がったことは,これまでの歯科衛生士の活動が社会から一定に認知され必要とされていることの反映であり,われわれにとって非常に喜ばしいことです。一方で,より高度で専門的な知識や臨床実践能力も要求されつつあります。例えば,周術期等口腔機能管理では患者本人のみならず家族への対応が必要です。また,看護師・言語聴覚士に代表されるコメディカルとの連携もあります。さらに有病者の口腔管理は病院現場にとどまることなく地域の歯科医院においても継続されるため,どの歯科衛生士にも必要な能力となっています。近年では,地域包括ケアシステムの一環である地域ケア会議の一員として参画する歯科衛生士も増加しています。ケアマネジャー,社会福祉士や介護福祉士のような福祉職とも関わる機会が増えてきており,他職種に伝える力やコミュニケートする力が必要とされています。多様化される国民のニーズに歯科衛生士が応えていくためには,それぞれの専門性を持ち発揮することが求められます。
現在,日本歯科衛生士会には3つの分野,計12の認定歯科衛生士制度があります。自己研鑽を積み,これらを生かして日々の歯科衛生業務に当たることで,患者・国民のニーズに「応えて」います(図参照)。しかし,多様化する歯科衛生業務のなかで今後求められるニーズや専門性の「探索」は推進されているでしょうか。業務のなかで「もっとこうすればいいのではないか」と思うことはよくあるでしょう。それを具体化・具現化することが「研究活動」です。歯科衛生士の研究が活発になることで,国民の口腔保健に関わる新たなニーズが明らかになり,専門性が開拓される可能性があります。歯科衛生士の教科書に書かれることが変わるかもしれません。われわれは国民に必要なこと(または,国民から必要とされていること)に注視し,進化し続け,社会のなかでの歯科衛生士の存在意義を勝ち取っていく必要があります。

日本歯科衛生学会で開催される専門領域別・研究集会の位置づけ
「知りたいことを探索する行為」が研究活動なので,会員の皆さまは日頃の臨床経験ですでにこれを行われているはずです。そこから,さらにもう1ステップ進んで研究活動の結果を公表する,すなわち学術大会発表や学術論文の作成が重要であると考えています。学会発表や論文作成は聞き手および読者に影響を与えます。研究活動で得た結果公表は,それを作成する過程で専門分野の先行研究(これまでに報告されていることなど)を調べる自己研鑽ともなります。研究なんて私には縁遠いものだ,研究したくても時間や環境がない,と思われる方も少なくないでしょう。しかし,多岐にわたる臨床現場で歯科衛生士の専門性や自立性が期待される以上,われわれ歯科衛生士に研究活動は避けて通れない時代がきていると思います。
違う角度から考えてみます。現在日本の歯科衛生士免許登録者数は約29万人です。その半数の約14万人が就労歯科衛生士で,慢性的な歯科衛生士不足と潜在歯科衛生士が多い状況です。また,歯科衛生士養成においても歯科衛生士を目指す学生(入学者)が減少傾向で競争倍率はほとんどありません。なぜ歯科衛生士として働く人が少ないのか。理由は様々ですが,これらのデータを俯瞰すると,「歯科衛生士として働き続ける人」「歯科衛生士を目指す人」が今後増えるためには,新たな「魅力」を引き出すことは重要であると感じます。歯科衛生士のこの「魅力」は「強み」にも置き換えられ,そのような観点からも研究活動は非常に意味深いことです。歯科衛生士不足など私には関係のないことだと思われるかもしれません。歯科衛生士の魅力が増し,歯科衛生士人口すなわち労働力が増えれば,歯科衛生士の働き方や賃金のような労働環境の改善もますます期待されるでしょう。一人一人の会員の意識の向け方・結束力は声となり,数は力に変わります。研究活動は大変地味な存在かもしれませんが,歯科衛生士の新たな魅力を生み出す土台となると考えます。
現在日本歯科衛生士会では,新たに専門歯科衛生士制度の設立を構想しています。専門歯科衛生士は,専門分野に関する卓越した知識や実践能力,指導能力を有する者に加え,歯科衛生士の新たなニーズや専門性を開拓できる者,歯科衛生士の魅力の発掘に貢献できる者,すなわち上述した研究活動を推進する者が対象となることを想定しています。研究集会への参画は,今後専門歯科衛生士を目指す会員の皆さまに必須となる位置付けであると考えられます。また,一人でも多くの会員の皆さまの研究活動に対する興味を掻き立てる場,研究成果を公表しさらなる活動推進につながる場となる位置付けを目指しています(図参照)。
以上のような位置付けのもと,日本歯科衛生学会第19回学術大会内から研究集会を開催します。専門領域として,「口腔健康教育」,「医療連携・口腔健康管理」,「地域連携・口腔健康管理」の3つを掲げ開催します。初めはシンポジウム形式で研究集会を開催し,専門領域を詳細に知っていただく企画としています。研究に少しでも興味のある方は是非とも参加していただきたいです。また,ざっくばらんに質問・議論できる研究集会にしたいと考えています。日本歯科衛生学会や企画第二委員会も,どのような道筋で研究活動を発展させるのが良いのかを模索しながら協議を進めていますので,より多くの会員の皆さまからご意見や前向きなご批判をいただける,活発な研究集会になることを心より願っています。