2024 Volume 83 Issue 4 Pages 190-198
The Dix-Hallpike test and supine head roll test are head positioning nystagmus tests that are mainly used for the diagnosis of benign paroxysmal positional vertigo (BPPV) and identification of the affected side. There are several issues to consider while performing these tests, and those performing the tests should have a common understanding. The Dix-Hallpike test must be performed on both sides, but if the head torsion angle is large, it may lead to misdiagnosis of bilateral posterior canal-BPPV. In addition, the speed of head positioning must be fast. In Japan, the supine head roll test is often performed in the supine position without the head raised by 30 degrees. By changing the head position between the left and right ear-down positions at approximately the same angle and at the same speed, and with the assumption that the otoliths move the same distance in the same area, the affected side can be estimated by Ewald's law. Elevating the head by 30 degrees while the patient lies supine is not always necessary. In lateral canal BPPV-canalolithiasis, nystagmus induced by rapid head positioning is strong, while in lateral canal BPPV-cupulolithiasis, there is no difference in the intensity of the induced nystagmus depending on the speed of head positioning. Therefore, head positioning should be performed quickly. However, to evaluate the affected side in lateral-canal BPPV, findings of lying-down nystagmus and positional nystagmus in the sagittal plane (face-up supine, sitting and prone positions) are required, in addition to performance of the supine head roll test.
良性発作性頭位めまい症(benign paroxysmal positional vertigo: BPPV)の診断や患側の推定には,頭位・頭位変換眼振の観察が必須であり,主としてDix-Hallpike testとsupine head roll testが行われている。この検査法により,後半規管型BPPV-半規管結石症,外側半規管型BPPV-半規管結石症,外側半規管型BPPV-クプラ結石症の診断が可能である1)~3)。またその他,外側半規管型BPPV-半規管結石症(背地性)(仮称)2)~4),後半規管型BPPV-クプラ結石症2)5)~7)やいわゆるlight cupula2)8)9)の診断にも施行される。しかし,この2つの頭位・頭位変換眼振検査の施行にはいくつか考慮すべき事項があり,施行者は共通の認識を持って実施すべきである。ここでは,良性発作性頭位めまい症(BPPV)診療ガイドライン 2023年版1)をもとに,Dix-Hallpike testとsupine head roll test施行上の注意点について考察する。
2017年の日本めまい平衡医学会による後半規管型BPPV-半規管結石症の診断基準10)では,以下のようにDix-Hallpike testを用いて出現する眼振の性状とめまいの有無を検査する(図1)。後半規管型BPPV-半規管結石症は,卵形嚢斑から脱落した耳石が後半規管のlong-armに存在している。Dix-Hallpike testは患側の後半規管平面で頭部を回転させる頭位変換眼振検査であり,後半規管型BPPV-半規管結石症の診断と患側決定のためのgold standard testとなっている。
(a)は右Dix-Hallpike testを示す。(b)は左Dix-Hallpike testを示す。(良性発作性頭位めまい症(BPPV)診療ガイドライン 2023年版,p29,図7を一部改変して転載)
1)座位での患側向き45度頸部捻転から患側向き45度懸垂位への頭位変換眼振検査にて眼球の上極が患側へ向かう回旋性眼振が発現する。眼振には強い回旋成分に上眼瞼向き垂直成分が混在していることが多い。
2)上記の眼振の消失後に懸垂頭位から座位に戻したときに,眼球の上極が健側へ向かう回旋性眼振が発現する。この眼振には下眼瞼向き垂直成分が混在していることが多い。
3)眼振は数秒の潜時をおいて発現し,次第に増強した後に減弱,消失する。持続時間は1分以内のことが多い。眼振の出現に伴ってめまいを自覚する。
2. Dix-Hallpike test施行上の注意点 1) 両側へのDix-Hallpike test図2は,右後半規管型BPPV-半規管結石症と左後半規管型BPPV-半規管結石症に対して行ったDix-Hallpike testの眼振所見を示している1)。右後半規管型BPPV-半規管結石症では右Dix-Hallpike testで典型的な眼振が出現するが,左Dix-Hallpike testでは眼振は観察されない(図2(a))。左後半規管型BPPV-半規管結石症では左Dix-Hallpike testで典型的な眼振が出現するが,右Dix-Hallpike testでは眼振は観察されない(図2(b))。もし,右側と左側のDix-Hallpike testでそれぞれ上述の典型的な眼振が観察されれば,その頻度は低いが両側の後半規管型BPPV-半規管結石症と診断できる(図3(a))。しかし,一側の後半規管型BPPV-半規管結石症に対して,反対側のDix-Hallpike testでの懸垂頭位で持続性の下眼瞼向き回旋混合性眼振が観察されることがあり,両側の後半規管型BPPVと誤ってしまうことがある(図3(b))。これは,頭部を45度以上捻転して反対側のDix-Hallpike testを行なったために,懸垂頭位で耳石が向膨大部方向に移動して半規管側のクプラに付着し,一時的な後半規管型BPPV-クプラ結石症が起こったと推測されている11)12)。両側にDix-Hallpike testを行なう際に注意が必要である。
(a)は右後半規管型BPPV-半規管結石症,(b)は左後半規管型BPPV-半規管結石症による頭位変換眼振を示す。(良性発作性頭位めまい症(BPPV)診療ガイドライン 2023年版,p30,図9を一部改変して転載)
(a)は両側が患側の後半規管型BPPV-半規管結石症,(b)は両側が患側と誤りやすい右後半規管型BPPV-半規管結石症を示す。
後半規管型BPPV-クプラ結石症は耳石がクプラに固着し,そのために頭位変化によりクプラが重力方向に偏倚して持続性(頭位を維持する限り眼振が持続する:一般的に1分以上持続)の垂直回旋混合性頭位眼振が出現する5)~7)。Epleyは,後半規管クプラが水平位に近くなり最も反膨大部性の刺激が強くなるHalf Dix-Hallpike testを報告している5)。耳石が後半規管のshort-arm側あるいはlong-arm側のどちらに固着しているかは眼振所見のみでは鑑別がむずかしく,両者で頭位治療も異なるはずである。今後,診断方法や治療法の開発が期待される。
2) Dix-Hallpike testの頭位変換速度頭位変換は速く行うことが,American Academy of Otolaryngology-Head and Neck Surgery Foundation(AAO-HNSF)やBarany学会から推奨されている2)3)。その理由は,頭位変換の速度が大きいと,誘発された眼振緩徐相速度も大きくなるためである13)。日常臨床の場でも,ゆっくり頭位変換を行うと眼振が見られず,速くおこなって初めて眼振やめまいが出現する症例を経験する。また,BPPV患者自身もそのことを自覚し,ゆっくりと頭位変換を行っている。したがって,後半規管型BPPV-半規管結石症を診断するためには,Dix-Hallpike testは速く頭位変換を行うことが望ましい。
3) Dix-Hallpike testでの懸垂頭位の角度後屈が十分にできない高齢者は多い。その場合,無理をして懸垂頭位は実施せず,臥位へ頭位変換を行うあるいは肩の下に枕をおいて行なうmodified Dix-Hallpike test14)などが勧められる。
2017年の日本めまい平衡医学会による外側半規管型BPPV-半規管結石症あるいは外側半規管型BPPV-クプラ結石症の診断基準では,以下のようにsupine head roll testを用いて出現する眼振の性状とめまいの有無を検査する10)。しかし,実際にはsupine head roll testによって,外側半規管型BPPV-半規管結石症(背地性)2)~4)やいわゆるlight cupula2)8)9)の推定も行われている。
・外側半規管型BPPV-半規管結石症の診断基準
1)臥位での頭位眼振検査にて右下頭位で右向き水平性眼振と左下頭位で左向き水平性眼振の方向交代性向地性眼振が発現する。眼振には回旋成分が混在していることが多い。
2)眼振は数秒の潜時をおいて発現し,次第に増強した後に減弱,消失する。持続時間は1分以内のことが多い。眼振の出現に伴ってめまいを自覚する。
外側半規管型BPPV-半規管結石症は,卵形嚢斑から脱落した耳石が外側半規管long-armの後方に存在している。上述の診断基準の記載のように一過性の方向交代性向地性頭位変換眼振が特徴的である。それに対し,外側半規管long-armの前方(半規管側のクプラ近傍:periampullary)に耳石が存在する外側半規管型BPPV-半規管結石症(背地性)が知られている。持続性(頭位を維持する限り眼振が持続する:一般的に1分以上持続)の方向交代性背地性頭位眼振が観察される4)15)~17)が,supine head roll testを繰り返すあるいはその他の耳石置換法によって容易に一過性の方向交代性向地性頭位変換眼振を示す上述の診断基準に該当する外側半規管型BPPV-半規管結石症に移行する18)19)。外側半規管型BPPV-半規管結石症(背地性)症例の方向交代性背地性頭位眼振症例に占める割合は約71%(15/21)であったが検討症例数が十分ではなかった18)。治療法の混乱から治療効果にばらつきがあり20),その頻度は明らかではない。末梢性障害による持続性の方向交代性背地性頭位眼振には,耳石置換法が有効な外側半規管型BPPV-半規管結石症(背地性)と耳石置換法の効果に乏しい外側半規管型BPPV-クプラ結石症が存在するので,その鑑別と治療は重要である。
また,一過性ではなく持続性の方向交代性向地性頭位眼振を示すいわゆるlight cupulaが知られている。外側半規管のクプラの比重が周囲の内リンパより軽くなった病態が推測され2)8)9)16),その原因としてクプラに軽い物質が固着,クプラ自体の変化や内外リンパの比重差の出現などが推測されているが,結論は得られていない21)。
・外側半規管型BPPV-クプラ結石症の診断基準
1)臥位での頭位眼振検査にて右下頭位で左向き水平性眼振と左下頭位で右向き水平性眼振の方向交代性背地性眼振が発現する。眼振には回旋成分が混在していることが多い。
2)眼振は潜時なく出現し,めまい頭位を維持する限り1分以上持続する。眼振の出現に伴ってめまいを自覚する。
外側半規管型BPPV-クプラ結石症は,卵形嚢斑から脱落した耳石が,外側半規管クプラの半規管側あるいは卵形嚢側に固着した病態が推測され,持続性の方向交代性背地性頭位眼振が特徴的である16)17)。外側半規管型BPPV-クプラ結石症も後半規管BPPV-クプラ結石症同様,外側半規管クプラの卵形嚢側(short-arm)に耳石が接着した病態の存在が推測されている。後半規管型BPPV-半規管結石症へのEpley法直後に,耳石が後半規管long-armから卵形嚢さらに外側半規管クプラの卵形嚢側へ接着した外側半規管型BPPV-クプラ結石症を推測した症例が報告されている22)。
2. Supine head roll testの定義AAO-HNSFのガイドラインで定義されているsupine head roll testは,仰臥位正面から速く一側耳下90度,さらに眼振が消失後に仰臥位正面に戻り,眼振消失後に仰臥位正面から他側耳下90度に速く頭位変換を行い,眼振を観察する3)。また,仰臥位で頭部を30度前屈することが示されている2)3)。一方,良性発作性頭位めまい症(BPPV)診療ガイドライン 2023年版に示したsupine head roll testでは,仰臥位での30度頭部前屈の記載がない頭位・頭位変換眼振検査が示されている1)。
1) 頭位変換の角度についてAAO-HNSFに示された仰臥位正面で頭部を左右に90度回転させる方法3)は高齢者では困難なことがあり,もし90度が必須条件であれば体幹を回転させた側臥位が必要である。本邦では,仰臥位での頭位眼振検査は主として頭部のみを右耳下と左耳下に回転させる方法が施行され,頸部を捻転しないで体幹を回転させる側臥位は必要に応じて(頸性めまいの鑑別)施行されていることが多い23)。
2) 仰臥位での30度頭部前屈についてAAO-HNSFに示されている仰臥位正面で30度頭部を前屈する方法3)の目的は,supine head roll testにおいて外側半規管平面で頭部を回転させることだと推測される。仰臥位正面で30度頭部を前屈した頭位は,外側半規管平面はほぼ垂直を示している(図4(a))。しかし,頭部を30度前屈して頭部の中心軸で回転した場合,この外側半規管平面で回転したことにはならない(図4(b))。頭部を30度前屈して体幹の中心軸で回転した場合はじめて外側半規管平面で回転したことになる(図4(c))。したがって,より外側半規管平面で頭部を回転させるためには,頭部を30度前屈した枕ごと体幹を回転させ側臥位になる必要がある。Supine head roll testにおいてより外側半規管平面で頭部を回転させるのは理想的だが,仰臥位での頭部水平面で回転しても理論上は約0.87倍(cos30°)の眼振が誘発されることになる。実際,外側半規管型BPPV-半規管結石症では,仰臥位での頭部水平面で回転しても強い眼振とめまいが出現し,診断や患側の推定は可能である。また,そもそも半規管の形作る面は平面ではなく曲面であり,その角度には個体差があるため,理想的な定まった頭部回転面があるわけではない24)。Supine head roll testでは,必ずしも頭部を30度前屈する必要ないと考えられる。
仰臥位正面で頭部を30度前屈(a)して,頭部の中心軸で回転した場合(b)と体幹の中心軸で回転した場合(c)の外側半規管平面を推測した。外側半規管平面で頭部を回転させるためには,頭部を30度前屈した枕ごと体幹を回転させ側臥位になる必要がある。
外側半規管型-半規管結石症では,眼振の強さは患側下頭位が健側下頭位より強く,これによって患側の推定を行っている1)~3)。この眼振の強さの違いはEwaldの法則,すなわち外側半規管では耳石の向膨大部向きの移動が反膨大部向きの移動より刺激が強いことによって説明されている。しかし,AAO-HNSFに示されている仰臥位正面から左右に90度の頭位変換を行うsupine head roll test3)では外側半規管型BPPV-半規管結石症の診断は可能だが,推論上左右への頭位変換では耳石の移動部位や移動距離が異なる可能性がありEwaldの法則では眼振の強さの違いを説明しにくい(図5(a))。この場合の眼振の強さの違いは耳石の移動距離の違いによることを推測した報告がある25)。仰臥位での30度頭部前屈は行わず,ほぼ同じ角度の右耳下頭位と左耳下頭位間での速い頭位変換により,眼振の強さの違いを比較することができる。このsupine head roll testでは,推論上は耳石の移動部位や移動距離は同じであり,患側の推定にEwaldの法則を適用できる(図5(b))。日常臨床で行うsupine head roll testとして,左右耳下約60度頭位間での速い頭位変換による眼振の観察を推奨したい。
患側は右(X)の外側半規管型BPPV-半規管結石症である。各頭位とその頭位での右外側半規管,クプラや卵形嚢斑の位置,頭位変換による耳石の移動(●から○)を示す。実線矢印は向膨大部方向,破線矢印は反膨大部方向への耳石の移動を示している。(a):AAO-HNSFのガイドラインによるsupine head roll test :仰臥位正面から左右耳下90度への頭位変換では耳石の移動部位が異なり,移動距離も異なる可能性がある。(b):左右耳下(約60度)頭位間での頭位角度や頭位変換速度が同じであれば耳石の移動部位や移動距離はほぼ同じと推測される。
AAO-HNSFのガイドラインでは,supine head roll testは速く頭位変換を行うことになっている3)。外側半規管型BPPV-半規管結石症ではゆっくり頭部を回転した時より速く回転した方が出現する眼振緩徐相速度が大きく,潜時が短いことが報告されている25)26)。したがって,外側半規管型BPPV-半規管結石症では,左右への頭位変換速度がゆっくりだと誘発された眼振の強さによる患側の推定はむずかしい。定性的に行われるsupine head roll testでは,左右への頭位変換はできるだけ同じ速度で速く行うことが望ましい。また誘発された僅かな眼振の強さの違いは,必ずしも正しい患側を示しているとは限らない。
外側半規管型BPPV-半規管結石症(背地性)や外側半規管型BPPV-クプラ結石症は,本質的には頭位眼振であり,ゆっくり頭部を回転しても速く頭部を回転しても眼振の強さに差がないことが報告されている22)27)。外側半規管型-クプラ結石症では眼振の強さは健側下頭位が患側下頭位より強く,これによって患側の推定を行っている1)~3)。この眼振の強さの違いはEwaldの法則,すなわち健側下頭位ではクプラ結石症によるheavy cupulaのため向膨大部方向に偏倚し,患側下頭位では反膨大部方向に偏倚することによって説明されている。
3. Supine head roll testによる患側の推定図6のようなsupine head roll testによる左右耳下頭位での典型的な眼振所見により外側半規管型-半規管結石症と外側半規管型-クプラ結石症や外側半規管型-半規管結石症(背地性)の診断が可能である。またEwaldの法則により,外側半規管型-半規管結石症は左あるいは右耳下頭位で眼振が強い側,外側半規管型-クプラ結石症や外側半規管型-半規管結石症(背地性)は眼振が弱い側が患側と推定できる1)~3)16)。しかし,実際の外側半規管型BPPV症例では,眼振の強さに明らかな左右差がないことがあり,患側が推定できない場合がある。いわゆるlight cupula症例は,外側半規管型BPPV-クプラ結石症や外側半規管型BPPV-半規管結石症(背地性)などのheavy cupula症例と全く反対方向の持続性の頭位眼振を示す。しかし,light cupula症例は,眼振の強さの左右差では患側の推定は困難である16)。
患側は右(X)としての眼振を示した。典型的な外側半規管型BPPV-半規管結石症(a)では,lying-down nystagmusは健側向き,患側耳下頭位が健側耳下頭位より強い一過性の水平回旋混合性頭位変換眼振を認める。典型的な外側半規管型BPPV-クプラ結石症(b)では,仰臥位正面では患側向き(neutral positionは患側に存在),座位での前屈約90度の頭位では健側向き持続性の水平性頭位眼振を認め,健側耳下頭位が患側耳下頭位より強い持続性の水平性眼振を認める。(良性発作性頭位めまい症(BPPV)診療ガイドライン 2023年版,p31,図10を一部改変して転載)
外側半規管型BPPV-半規管結石症,外側半規管型BPPV-クプラ結石症や外側半規管型BPPV-半規管結石症(背地性),その他light cupula症例の患側の推定には,supine head roll testとは別の判断基準が必要となる。外側半規管型BPPV-半規管結石症では,座位から仰臥位正面へのlying-down nystagmusが健側を向くことが多い4)28)29)(図6(a))。外側半規管型BPPV-クプラ結石症や外側半規管型BPPV-半規管結石症(背地性)では,仰臥位正面で患側向き,仰臥位正面から患側耳下への頭位変換で眼振が停止し方向が逆転するneutral positionが存在する16)30),座位での前屈約90度の頭位で健側向き眼振などの頭位眼振所見16)を合わせて患側を推定することができる(図6(b))。Light cupulaでは,仰臥位正面で健側向き,仰臥位正面から患側耳下への頭位変換で眼振が停止し方向が逆転するneutral positionが存在する,座位での前屈約90度の頭位で患側向き眼振などの頭位眼振所見を合わせて患側を推定することができる16)。
BPPVの診断や患側の推定には,Dix-Hallpike testやsupine head roll testが用いられている。実際の施行には注意点があり,施行者は共通の認識を持って実施する必要がある。Dix-Hallpike testは両側に施行し,速い頭位変換を行う。それによって,後半規管型BPPV-半規管結石症の診断と患側決定ができる。Supine head roll testは,左右耳下約60度の頭位間で,仰臥位水平面での速い頭位変換を行う。それによって,外側半規管型BPPV-半規管結石症と外側半規管型BPPV-クプラ結石症の診断とEwaldの法則による患側推定ができる。しかし,様々なBPPV亜型の診断と患側の推定には,Dix-Hallpike testやsupine head roll test以外の頭位・頭位変換眼振検査が必要である。
利益相反に該当する事項はない。