Equilibrium Research
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A Case of Eosinophilic Otitis Media Coincident with Vestibular Schwannoma, Which Progressed to Eosinophilic Granulomatosis with Polyangiitis and Resulted in Severe Bilateral Vestibular Dysfunction
Keishi Fujiwara
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2024 Volume 83 Issue 6 Pages 509-514

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 1.症例提示

症例:64歳,男性

主訴:ふらつき,両難聴

既往歴:気管支喘息,脂質異常症,肝機能障害,両好酸球性副鼻腔炎術後

現病歴:半年前からふらつきの出現あり,特に歩行時にふらついていた。両耳鳴・難聴は数十年前からあり,右の難聴はここ2年の間で徐々に増悪していた。断続的に両側とも耳漏認めていた。近医耳鼻咽喉科を受診し,両混合性難聴,左鼓膜穿孔を指摘され,ふらつきの精査目的にX年2月に当科紹介受診となった。

【初診時所見】

耳:右鼓膜膨隆,左鼓膜穿孔および鼓膜の肥厚を認めた(図1A)

図1  耳内所見の経過

(A)初診時:右鼓膜の膨隆および左鼓膜穿孔・鼓膜の肥厚を認める

(B)初診2年後:右耳の膠状の耳漏,左耳の耳茸を認める

(C)EGPA治療後:両側の鼓膜穿孔は認めるが耳漏や耳茸は消失している

鼻:両中鼻道を中心に鼻茸を認めた

頭位・頭位変換眼振検査:左向き方向固定性水平性眼振

Head Impulse Test(HIT):右陽性

純音聴力検査:右(105.0 dB),左37.5 dB(4分法)両側とも気骨導差あり(図2A)

図2  純音聴力検査の経過

(A)初診時:両側混合性難聴を認め,右気導聴力と中~高音域の骨導聴力はスケールアウト

(B)EGPA発症直前(初診8年後):左気導の閾値上昇を認めるが骨導聴力は50–60 dB前後

(C)EGPA発症時:両側骨導聴力がスケールアウト

初診時評価:好酸球性副鼻腔炎に対する手術の既往があり,鼓膜所見から両好酸球性中耳炎が疑われた。左向き方向固定性水平性眼振,HITの結果から,ふらつきは右末梢前庭障害によるものと考えられた。好酸球性中耳炎による内耳障害の可能性も考慮されたが,左に比べ右難聴が高度であり,聴神経腫瘍の除外目的に内耳道MRIを撮像することとした。中耳病変があるため,温度刺激検査は施行しなかった。

MRI:右内耳道底に10 × 5 mmの腫瘍性病変を認めた(図3

図3  MRI所見

右内耳道底に10 × 5 mm大の腫瘍性病変を認める(矢印)

初回診断:両好酸球性中耳炎,右聴神経腫瘍

【経過】

ふらつきは右聴神経腫瘍による右前庭障害として,前庭リハビリテーションの指導を行った。好酸球性中耳炎,好酸球性副鼻腔炎に対しては局所ステロイド薬を適宜使用した。ふらつきは持続しており,X + 2年にvideo Head Impulse Test(vHIT)を施行したところ,右側の全ての半規管でvestibulo-ocular reflex(VOR)gainの低下およびcatch-up saccade(CUS)を認めたが左は正常であった(図4A)。耳内所見は変動しており,時に膠状の耳漏や耳茸を認めた(図1B)。定期的なMRIの撮像で聴神経腫瘍の増大を認めず外来で経過観察としていたが,X + 7年の定期受診の際に左難聴が増悪したとの訴えがあった。純音聴力検査では骨導,気導とも左聴力の閾値上昇を認めた(図2B)が,vHITでは悪化を認めなかった(図4B)。好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(eosinophilic granulomatosis with polyangiitis: EGPA)発症の可能性を考え,抗好中球細胞質抗体(anti-neutrophil cytoplasmic antibody: ANCA)を測定したが,PR3-ANCA,MPO-ANCAいずれも陰性で,好酸球は8.3%であった。しかし,その3ヶ月後に受診した際に,左難聴の改善はなく,頭を動かすと視線が定まらないという訴えがあり,vHITでは左半規管機能も高度に低下しており,両側高度半規管障害を認め(図4C),jumbling現象と考えられた。純音聴力検査では両側骨導聴力もスケールアウトとなっていた(図2C)。血液検査を再検したところMPO-ANCA 9.2 IU/mL,好酸球30.0%と上昇がみられ,EGPA疑いとして,当院リウマチ内科へ紹介,入院の上,ステロイドパルス療法およびシクロフォスファミド静注療法による治療開始となった。全身精査の結果,胸部CTにて両肺のすりガラス様濃度上昇を認め,感覚障害などの自覚症状はないものの神経伝導速度の低下を認め,血管炎に関連する所見と考えられた。EGPAとして治療後に耳内所見は著明に改善した(図1C)が,聴力,平衡機能の改善は得られなかった。

図4  vHIT所見の経過

(A)初回(初診2年後):右全ての半規管の機能低下を認める

(B)EGPA発症直前(初診8年後):初回と比べ,大きな悪化を認めない

(C)EGPA発症後:右のさらなるVOR gain低下および左全ての半規管機能低下を認める

最終診断:右聴神経腫瘍およびEGPAによる両側聾・両側高度前庭障害

 2.症例解説

本症例は,聴神経腫瘍を合併した好酸球性中耳炎として経過観察していたところ,初診から8年後にEGPAを発症し,両側聾・両側高度前庭障害に至った1例である。好酸球性中耳炎とEGPAに伴う中耳炎は臨床像が酷似しており,鑑別に苦慮することも多い。本症例はさらに右聴神経腫瘍を合併しており,難聴,平衡障害にどの疾患がどの程度寄与していたのか評価が困難であった。

EGPAは先行症状として気管支喘息や鼻副鼻腔炎がみられ,末梢血好酸球増多を伴って血管炎を生じ,末梢神経炎,紫斑,消化管潰瘍,脳梗塞,脳出血,心筋梗塞,心外膜炎などの臨床症状を呈する疾患で,ANCA関連血管炎の一つである1)。鼻副鼻腔炎や滲出性中耳炎,感音難聴などの耳鼻咽喉領域の症状は48–96%に認められる1)。ANCA陽性率は31–58%と決して高くはなく1),ANCA陰性でもEGPAを否定はできないことに留意が必要である。耳鼻咽喉科領域の組織診ではEGPAに特徴的な著明な好酸球浸潤を伴う壊死性肉芽腫性炎と壊死性血管炎の病理像は得られないことも多く,診断を困難にしている。EGPAに伴う耳症状のうち,難聴についてはいくつか報告があるが,平衡機能に関する報告は少ない。34例のEGPAにおいて耳症状を検討した報告2)では,18例(52.8%)に難聴を認め,骨導閾値上昇を認めたのが6例であった。めまい症状は7例にあり,非特異的な浮動性めまいが4例,良性発作性頭位めまい症が3例であった。大部分の症例が耳症状は喘息や鼻症状から10年以上遅れて発症していた。Nakamaruらの報告では,21例中11例に耳症状を認め,難聴は軽度から中等度の感音もしくは混合性難聴で,1例を除いて聴力は改善したとされる3)

本症例では,vHITを用いて半規管機能の経過を長期にわたって観察し得た。従来,温度刺激検査が半規管機能検査として用いられてきたが,本症例のように中耳病変を伴う症例においては温度刺激が半規管へ適切に伝わらず,温度刺激検査では適切に半規管機能を評価できない恐れがある。一方,今回用いたvHITは頭部回転時の頭部運動と眼球運動の速度の比であるVOR gainを計測することで半規管機能を評価するため,中耳病変を認める症例に対する半規管機能評価に最適であると考えられる。我々は,EGPAを含むANCA関連血管炎に伴う中耳炎(OMAAV)症例の半規管機能をvHITで評価し,半規管機能低下を検出し得たことを報告している4)

好酸球性中耳炎とEGPAに伴う中耳炎は,ともに気管支喘息を背景とし,膠状の耳漏がみられるなど共通点も多い。両者の臨床像を比較した研究では,EGPAに有意な好酸球高値を認め,鑑別のポイントとされている5)。EGPAに伴う内耳障害は早期のステロイドパルス療法+免疫抑制治療での改善の報告もある3)が,高度障害に至ってからの改善は困難で,本症例でも聴力,平衡機能とも改善は得られなかった。

 3.ピットフォールとコツ,メッセージ

前述の通り,好酸球性中耳炎とEGPAに伴う中耳炎は臨床像が酷似しており鑑別が困難なことがある。好酸球性中耳炎と考えられる症例の経過観察の際は,症状としてはEGPAに伴う末梢神経炎に伴うしびれや咳嗽,皮膚障害などに注意をし,検査所見では好酸球数,ANCAを定期的にチェックする必要がある。内耳障害が高度となるとEGPAとして治療を行っても不可逆性で改善は困難であることが多く,いかに早期にEGPAの可能性を疑えるかが重要である。本症例では症状悪化時にEGPAの可能性を考慮したが,好酸球,ANCAを測定するも有意な上昇は認めず,診断には至らなかった。しかし,3ヶ月の間に急速に内耳障害が進行し,不可逆性となってしまった。EGPAを含めて,中耳病変がある平衡障害症例では温度刺激検査では正確に半規管機能を評価できない可能性があり,vHITでの評価が有用である。

利益相反に該当する事項はない。

文献
 
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