2024 Volume 83 Issue 6 Pages 515-516
2024年8月25日から28日までスウェーデンのウプサラで行われた第32回バラニー学会に参加してきました。ホームページによると本学会はThe international society for Neuro-otology(国際神経耳科学会)となっています。これまで隔年で開催されるバラニー学会には多くの日本人が参加されていましたが,2020年はコロナ禍で延期となり,2022年にスペインのマドリッドで行われたもののコロナ渦のために日本からは故室伏利久先生がお一人のみの参加であったと伺いました。今回は日本からはもちろん世界中から多くの参加者があり活況を呈していました(600題以上の申し込みがあり,62カ国846名が参加,うち182名がバラニー会員)。学会の様子をお伝えします。
今回はフィンランド航空でヘルシンキ経由でストックホルムを目指しました。ヘルシンキでの乗り継ぎは1時間しかなく,見事に乗り継ぎ便に遅れてしまいました。しかし1時間おきにヘルシンキ-ストックホルム便がでているようで問題なくストックホルムに到着できました。そこから電車でウプサラに向かいました。ウプサラの安宿には朝8時45分に到着しましたが,なんと玄関がロックされており日曜日は朝10時まで開かないと書かれていました。絶望的な気持ちで入り口で立ちすくんでいたところ,チェックアウトした宿泊客がホテルより出てきたので,なんとか9時過ぎには入室することが出来ました。先の思いやられるスタートとなりました。
さて学会初日8月25日はMichael Halmagyi(シドニー大学)によるバラニーゴールドメダルの受賞講演がありました。26日は,日本人有志とストックホルム郊外のバラニーの墓参りに行ってきました(写真1)。夕方のビジネスミーティングでは年会費(60ドルまたは50ユーロ)の未納が問題となっていました。ちゃんとリマインドされないために支払っていないだけなのできちんとリマインドをして欲しいということで話がまとまっていました。学会理事長はGöran Laurellからルンド大学のMikael Karlbergになりました。学会の主な受賞であるHallpike-Nylen prizeは,David E Newman-Toker(Johns Hopkins大学)が,Hallpike-Nylen MedalはJA Lopez-Escamez(シドニー大学)に送られました。また40歳以下の若手に送られるWon-Sang Lee Fund AwardはBenjamin Nham(ニューサウスウエールズ大学),Max Wuehr(ミュンヘン大学),Yi-Ni Li(上海交通大学)に贈られました。過去には日本からも受賞されているので次回以降に日本の先生方の活躍を期待したいところです。夜はジャパンナイトと称して日本から参加された先生方とウプサラ駅前でスエーデン料理をいただきました。27日のお昼に,国際学術委員会委員長の池園哲郎先生による外リンパ瘻についての1時間の教育講演が行われました。CTP検査が日本国内で保険収載されたことはインパクトが強かった様子です。内耳窓閉鎖術がなぜめまいに奏功するのか,新規理論Hyperactive Utricular Movement Theoryを海外研究者とともに提唱しました。講演後には,委員会のジョンズホプキンスBryan Ward先生から外リンパ瘻診断基準の作成の共同作業を依頼されました。日本発のデーターが無ければ作れない基準ですから日本をアピールする絶好のチャンスだと思います。その後,カロリンスカ医科大学付近にあるノーベル賞のアルフレッド・ノーベルの墓参りに行ってきました(写真2)。夜は恒例のウプサラ城でのガラディナーでしたが,参加者とても多く会場は満杯でした。学会会場自体も参加者が急増したため満杯で立ち見が出るほどで(写真3),今後はこの会場(Uppsala Konsert and Kongress)では手狭であると感じました。
私は口演発表で申し込みましたがポスター発表となってしまい,またかなり手狭な会場でであり少々残念でした。個人的な興味の影響もありますが今回の学会ではやはり前庭性片頭痛の演題が目立ちました。また医師以外のコメディカルの先生方の発表も多かったようです。機器展示では多種のvHITデバイスが展示されていたのが印象的でした。
国際学会では勉強のみならず,他の先生方との交流,観光など様々な楽しみがありますが充実した時間を過ごすことができました。バラニー学会は世界中の一流のめまい研究者から直接話を聞いたり,コミュニケーションがとれる貴重な機会です。日本めまい平衡医学会の会員の先生方も積極的に参加して日本のめまい研究の成果を世界に発信していきましょう。なお,次回第33回は中国上海で2026年4月10日から12日に上海交通大学のShankai Yin先生によって主催される予定です。第34回は2028年にイタリアのローマで,第35回は2030年にウプサラの予定です。