Equilibrium Research
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Unilateral Semicircular Canal Plugging for Intractable Bilateral Posterior Canal Benign Paroxysmal Positional Vertigo: A Case Report
Hiroshi HyakusokuFumiyuki GotoShoji KanedaKenji OkamiKoichiro Wasano
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2026 Volume 85 Issue 2 Pages 64-69

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Translated Abstract

Benign paroxysmal positional vertigo (BPPV) is believed to occur when dislodged otoconia from the utricle migrate into the semicircular canals. The condition resolves spontaneously or with canalith repositioning procedures in most cases. However, a subset of patients exhibits refractory BPPV that does not respond to conservative treatment, in which case, surgical intervention may need to be considered. We report a case in which a favorable clinical outcome was obtained following left posterior semicircular canal plugging performed in a patient who presented with refractory bilateral posterior canal BPPV that developed following a traffic accident.

The patient was a 75-year-old woman who began suffering from vertigo after she sustained injuries in a motorcycle accident at the age of 73 years. She was diagnosed as having BPPV at a local clinic and underwent repeated canalith repositioning procedures and pharmacotherapy, but failed to show symptomatic improvement. Therefore, two years later, she was referred to our department. Although the recurrent right posterior canal BPPV improved with continued conservative treatment, the left-sided BPPV remained refractory, with persistent severe nystagmus despite repeated repositioning maneuvers. Therefore, we performed left posterior semicircular canal plugging. Postoperatively, the rotational vertigo and nystagmus that could be elicited by the left Dix–Hallpike maneuver resolved completely, accompanied by marked improvement in the subjective symptoms. Video head impulse testing demonstrated a reduction in the vestibulo-ocular reflex gain of the left posterior semicircular canal and the appearance of persistent compensatory eye movements, confirming effective occlusion of the target canal. No postoperative alterations were observed in the functioning of the ipsilateral anterior or lateral semicircular canals.

Semicircular canal plugging is a safe and effective therapeutic option for patients with intractable BPPV who are unresponsive to conservative treatment. Further studies are warranted to elucidate the physiological changes in vestibular function that occur following this procedure.

 緒言

良性発作性頭位めまい症(以下BPPV)は,卵形嚢から耳石が剥がれ,半規管に迷入することで発症すると考えられている1)2)。耳石が消退あるいは吸収されれば,自然治癒するとされる予後良好な疾患と考えられ,浮遊耳石置換法などの頭位治療によって治癒期間が短縮されることが報告されているが3)4),頭位,頭位変換眼振を繰り返し治癒に至らない難治性BPPVが存在する。今回我々は,交通事故後にめまいを発症し,当科で両側後半規管型BPPVと診断し,頭位治療で治癒が得られず左半規管遮断術を施行し,video head impulse test(以下vHIT)で左後半規管機能が低下し,持続時間が長くcatch up saccade(以下CUS)とは言えない代償性の眼球運動が出現することを確認した症例を報告する。

 症例

75歳,女性。

主訴:繰り返す頭位変換時の回転性めまい。

現病歴:73歳時に,バイクで交通事故に合い,その後にめまいを自覚した。近位耳鼻咽喉科クリニックを受診し,BPPVの診断で,頭位治療や薬物治療を受けていたが治癒していなかった。約2年経過したところで激しい回転性めまいを自覚し,治癒が得られないため,その激しい回転性めまい自覚後10日目に当科へ紹介受診された。

既往歴:両側内頚動脈瘤,骨粗鬆症,高血圧症,脂質異常症,僧帽弁閉鎖不全症,憩室出血。

初診時所見:標準純音聴力検査(4分法)は右27.5 dB,左23.8 dBでほぼ左右差を認めなかった(図1a)。座位による注視眼振検査では,眼振を認めなかった。赤外線CCDカメラによる頭位変換眼振検査で,左Dix-Hallpike法時に,時計周りの回旋性眼振を認めた(図1C)。左右の前庭機能を評価するため,Cervical-Vestibular Evoked Myogenic Potential(以下VEMP)は気導500 Hz刺激,気導1000 Hz刺激共に両側で無反応(トーンバースト,105 dBSPL),Ocular-VEMPは骨導500 Hzで右15.14 μV,左16.88 μVであり(トーンバースト,105 dBSPL),左右差を認めなかった(図2)。各半規管の機能を確認するため,vHITを施行した。左外側半規管でのみCUSを認め,それ以外の半規管ではCUSを認めなかった(図3a)。温度刺激検査(20度冷水,5 cc,10秒)における最大緩徐相速度は,右耳22.6度/秒,左23.5度/秒で,左右差を認めなかった。

図1  標準純音聴力検査結果と初診時の眼振所見

A.初診時の純音聴力検査結果。右27.5 dB,左23.8 dB(4分法)で,ほぼ左右差を認めなかった。

B.術後の純音聴力検査結果。術側の左耳において,高音部のみ聴力低下を認めた。

C.左Dix-Hallpike法時に検者からみて時計回りの回旋性眼振を認めた。

図2  初診時のVEMPの結果

C-VEMPは500 Hz刺激(A),1000 Hz刺激(B)共に両側で無反応(気導トーンバースト,10 ms,105 dBSPL),O-VEMP(C)は500 Hz刺激で右15.14 μV,左16.88 μVであった(骨導トーンバースト,10 ms,105 dBSPL)(波形上が右側,波形下が左側)。

VEMP:Vestibular Evoked Myogenic Potential,C:Cervical,O:Ocular。

図3  vHITの結果

A.術前のvHIT。左外側半規管でCUS(矢頭)を認めた。

B.術後のvHIT。半規管遮断術を行った左後半規管において,VORの低下(矢印)と持続時間の長い代償性の眼球運動(矢頭)が新たに出現した。

CUS:catch up saccade,vHIT:video head impulse test,VOR:vestibulo-ocular reflex。

以上より左後半規管型BPPVと診断し,Epley法を提案するも,前医でブラントダロフ法とEpley法を何度か施行されるも改善がなかったことで,Epley法を拒否したため,Rolling-Over Maneuver(以下ROM)法を指示したが,3週間後の再診時に改善が得られず,左Epley法をめまい相談医が複数回施行したが,改善は得られなかった。1ヶ月後の再診時,座位から右下頭位変換時に,時計周りの回旋性眼振を認め,右の後半規管型BPPVを併発したが,右後半規管型BPPVは自然軽快した。これまでの経過で複数回にわたるEpley法で改善が得られず,2年以上めまい症状が持続していたため,眼振の強い左に対して,初診から約3ヶ月半経過した時点で,左後半規管遮断術を施行した。

術中所見:耳後部切開後,乳突削開術を施行した。後半規管隆起で後半規管の骨迷路を開窓し,そこに骨パテを充填し,その浅層を皮下組織で被覆し,フィブリン糊で固定し,閉創した。

術翌日には,座位から左下頭位変換時の眼振が消失し,自覚症状も改善し,ふらつきが軽快した術後8日目に退院となった。退院後,再び,座位から右下頭位変換時に,反時計周りの回旋性眼振を認め,右の後半規管型BPPVが再発した。その後も眼振所見が続き,めまい症状訴えているが,術前の左下頭位時の眼振よりも症状が軽く,軽快するため経過観察を希望している。手術による聴力への影響を確認するため,術後42日目に施行した標準純音聴力検査では,高音部のみ聴力低下を認め(図1b),術後37日目に施行したvHITでは,左前半規管および左外側半規管で術前と変化を認めなかったが,左後半規管において,新たにvestibulo-ocular reflex gainの低下と持続時間が長い代償性の眼球運動を認めた。これらの結果は,半規管遮断術によるものと考えられた(図3b)。

 考察

BPPVは自然治癒の得られる予後良好な疾患と考えられている5)。また,浮遊耳石置換法による頭位治療法が開発され,後半規管型BPPVに対しては,Brandt-Daroff法,Epley法,Semont法,外側半規管型BPPVに対しては,Lempert法,ROM法,Vannucchi法が報告され,治癒に至る時間の短縮が得られている3)4)6)~9)。しかし,これらの頭位治療を行っても,治癒に至らない難治性のBPPVが存在し,めまい症状が続く故に,生活の質が下がり,日常生活に支障を来たす症例が存在する。このような症例に対しては,外科的治療を考慮する必要がある。

BPPVは頻度の高い疾患で,日本において,10万人当たり,10.7から17.3人と見積もられている10)。多くは,一側性であり,両側性のBPPVは,1.4%から6.9%と報告され稀である11)~13)。本症例は,外傷性のBPPVで,当院へ受診する前は両側性であったのか,一側性であったのかは定かではないが,当院通院の経過中に両側性の後半規管型BPPVを示した。右側の後半規管型BPPVは繰り返しているものの症状は軽度で,めまい症状も消失する一方で,左側の後半規管型BPPVは難治性であり,症状の軽快も得られなかったため,難治性の左側のみ手術を施行した。Hotta et al.は,両側の後半規管型BPPV症例のうち,3例中2例が保存的加療で改善が得られず,両側の半規管遮断術を施行し,良好な結果であったと報告している13)。また,難治性のBPPVは,経過中に両側性のBPPVを発症することがあると報告されており,さらに,両側の後半規管型BPPVでは,片側のEpley法によって対側の耳石が排出されるため,難治化しやすいと考えられる14)

BPPVに対する外科的治療は,後半規管膨大部神経切断術と後半規管遮断術が報告されている。1974年にGacek et al.15)が,後半規管膨大部神経切断術を報告した。その後,難治性BPPV252例に対する後半規管膨大部神経切断術の治療成績を報告し,97%のめまい制御率を報告している16)。しかし,後半規管膨大部神経の解剖学的個人差が大きく,感音難聴を来たす症例が4%から19%と報告されており,合併症のリスクがある17)~19)。一方,後半規管遮断術に関しては,1990年にParnes et al.によって後半規管遮断術が初めて報告された20)。その後,44例に対する手術成績の報告がなされ,98%のめまい制御率であり,感音難聴を来たした症例は,1例(2%)であったと報告している21)。本症例においても,術後の聴力低下及び,左の前半規管,外側半規管機能に変化は認められず,手術成績は一定しており,副損傷も少ないと報告されており,後半規管遮断術が外科的治療の第一選択になりうると考えられる21)22)

本症例は,cVEMPが両側無反応であった。気導500 Hz刺激のcVEMPにおいて,60歳以上では,40%の症例で無反応であると報告されている23)。また,Piker et al.はcVEMPに関して,加齢とともに,波形の低下が生じると報告し,500 Hzで反応の見られなかった場合,750 Hzあるいは1000 Hzで施行することを推奨しているが24),本症例では1000 Hzでも両側無反応であり,加齢による球形嚢の機能低下があったと考えられる。一方で,本症例はoVEMPでは左右差のない反応があった。oVEMPも年齢による変化により60歳以上の25%が無反応になると報告されているが25),cVEMPと比べ年齢の変化は少ないと報告されており24),卵形嚢の機能は保たれていたと考えられる。

半規管遮断術による半規管機能についてであるが,本症例において,左後半規管のVOR gainの低下と持続時間が長い代償性の眼球運動が術後に出現し,左後半規管機能が低下している一方で,左の前半規管,外側半規管機能に変化はなかった。半規管遮断術は,半規管内のリンパ流動を堰き止めてしまうため,半規管機能の低下が出現し,その結果,VOR gainの低下も出現すると考えられる。また,持続時間が長くCUSとは言えない代償性の眼球運動を認めた。この代償性の眼球運動についてはアーチファクトとは考えにくく,発生機序などについては今後の検討が必要であると考えられる。さらに,他の同側半規管機能にも影響を与え得ると考えられるが,渉猟する限り,本邦において半規管遮断術後のvHITによる半規管機能評価の報告はなく,今後,半規管遮断術施行後における半規管機能の詳細な検討が期待される。

 まとめ

両側後半規管型BPPVに罹患し,頭位治療で治癒が得られない左側に対して,左半規管遮断術を施行した。術後より,左下頭位時の回転性めまいの訴えは消失し,頭位変換眼振検査で,左Dix-Hallpike法時の眼振を認めていない。また,vHITで左後半規管機能が低下し,持続時間が長くCUSとは言えない代償性の眼球運動が出現することが確認された。保存的治療に抵抗する難治性BPPVに対して,半規管遮断術が有効な治療選択肢となり得ることが示唆された。今後,半規管遮断術施行後における半規管機能の詳細な検討が期待される。

 倫理的承認

本研究は,東海大学臨床研究審査委員会の承認(承認番号:25J002)を得て実施され,ヘルシンキ宣言の倫理指針を遵守している。

 付記

本論文の要旨は,第84回日本耳科学会総会・学術講演会(2025年11月26日,横浜市)で発表した。

利益相反に該当する事項はない。

文献
 
© 2026 Japan Society for Equilibrium Research
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