Japan Journal of Human Resource Management
Online ISSN : 2424-0788
Print ISSN : 1881-3828
The 49th Annual Conference at Keio University
How do companies sustain high value-adding human resources?: Recruitment, training, and association
Osamu UMEZAKI
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2020 Volume 20 Issue 2 Pages 54

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第49回大会の統一論題は,「企業は高付加価値人材をいかに確保するのか?―採用・育成・アライアンス―」となりました。人口減少による慢性的な入手不足,人材獲得のグローバル競争,AIに代表される技術革新の加速化によって求められる能力が変化する中,高付加価値人材とは誰であり,企業はそのような人材をいかに確保しているのかを議論することを目的として,本シンポジウムを企画しました。

実務と研究が交差する場という日本労務学会の魅力を最大限に生かすために,人事実務の現場で活躍されている企業人2名と,研究者2名の4名にご登壇をお願いし,ご快諾いただきました。

田中憲一氏(サントリーホールディングス株式会社グローバル人事部部長)には,グローバル人事の最前線に立つ企業としての人事施策について,また柴田史郎氏(面白法人カヤック人事部長)には,鎌倉という地域に密着した企業間のアライアンスの代表例である「まちの人事部」などの様々な活動についてお話いただきました。

学会からは,清家篤氏(慶應義塾大学客員教授,日本私立学校振興・共済事業団理事長)に,労働経済学に基づいたマクロの視点から労働政策や人事施策を踏まえた人材にかかわる大きな社会変動をご報告いただきました。一方,組織論・経営戦略論の理論研究者である宇田川元一氏(埼玉大学大学院人文社会科学研究科准教授)は,ゲスト報告者として組織論における「対話」「語り」というキーワードを踏まえて,ミクロの視点で組織内の変化についてご報告いただきました。

登壇者4名の方々にそれぞれご報告いただいた後に,活発な意見交換が行われました。その一部を紹介しましょう。例えば,宇田川氏が,経営学の視点から「自律的戦略行動」と,その行動を活かす組織のあり方に対して話題提供があり,それに応じて田中氏や柴田氏が自社の事例を紹介しつつ,人事施策の意図が説明されました。この議論の中で企業文化とは何かが議論されるようになり,さらに清家氏からも,中途採用が増える中で持続される企業文化とは何かという新たな問題提起がされました。人材を活かす企業文化を動態的に捉えるという研究テーマが生まれた瞬間でした。

さらに,新しい経済環境の下で「中間層の育成か,エリート層の育成か」という問いが企業レベルと社会レベルを行き来しながら議論されました。登壇者の皆様が,それぞれ異なる角度から意見を述べられた結果,その場に新しい問いが次々と生まれ,会場を巻き込む形で創発的な議論に変貌していったと思います。未来のことになりますが,この場で生まれた問いや新しい認識は,会員の皆様の個々のご研究の中で活かされ,今後の労務学会の研究蓄積になるのではないかと思っております。

 
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