Japan Journal of Human Resource Management
Online ISSN : 2424-0788
Print ISSN : 1881-3828
Articles
Development of an Internship Effect Measurement Scale for College Students: An Empirical Study Based on Text Mining and Panel Data Analysis
Yasuyuki HATSUMIOsamu UMEZAKIHiromi SAKAZUME
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2021 Volume 21 Issue 3 Pages 18-42

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ABSTRACT

This research aims to redefine and develop a measurement of internship as a form of career exploration. To achieve this purpose, we conducted three studies.

In study 1, a text analysis was performed to confirm the effects of recent internship experiences. We specifically asked university students (n = 1,179) to answer in free-form format questions about “changes that were made within yourself by participating in the internship” and quantitatively analyzed the contents by using KH Coder.

In study 2, we developed a measurement scale based on the results of the text analysis. From the results of exploratory factor analysis and confirmatory factor analysis (n = 3,826), five effects were extracted namely“ a clearer career vision,”“ a broadened career vision,”“ recognition of human network,”“ motivation to work,” and“ an enhanced self-understanding.” We also developed a 20-item “internship effect measurement scale” to measure these five effects.

In study 3, two analyses were conducted to verify the developed scale’s reliability, validity, and effectiveness. The first is a correlation analysis with the existing scale. From the results of this analysis, a significant correlation was confirmed between the internship measurement scale and career exploration scale, and the reliability and validity of the scale were confirmed. The second is the verification of the scale’s effectiveness by the t-test within the results of job-hunting. From this analysis, it was confirmed that there was a significant difference in the five effects of internship within the groups with and without job offers, and groups satisfied or dissatisfied with job offers.

There are four major contributions to this research. The first is to clarify the “effects” of the recent internship experience. The most distinctive feature is the positive correlation (r = .42) between “a clearer career vision” that narrows down one’s career vision and “a broadened career vision” that expands the possibility of one’s career. It was confirmed that both effects, which may be inconsistent, could be established simultaneously. In other words, the internship experience has various effects, such as “expanding while narrowing down” or “narrowing down while expanding” the future career.

Second, we developed an“ internship effect measurement scale” that measures the internship’s five effects. Various scales related to career exploration have been developed, but very few scales have been developed for internships. The features of this scale are that (1) the effects felt by university students from recent internship programs are directly reflected in the scale, (2) the correlation with the existing career exploration scale has been confirmed, and (3) the scale’s effectiveness was confirmed in“ with or without job offer” and“ with or without satisfaction with job offer”.

Third, we showed that each of the five effects of the internship affects outcome variables differently. From the results of the t-test, the factors that have a significant difference in “with or without job offer” and“ with or without satisfaction with job offer” are different. This result suggests that the factors making a difference in“ with or without job offer” and“ with or without satisfaction with job offer” are different. In other words, these five internship effects have different roles and influences on job-hunting results.

The fourth is the contribution to the theoretical aspect. Internships are considered a form of career exploration behavior, and we defined internship as “a form of career exploration with work experience conducted in adolescence.” In addition, career exploration is considered a concept consisting of two aspects, “self-search” and “environmental search.” However, the results of this research suggested that “recognition of human network” and “motivation to work” may be unique effects of the internship experience.

1. 問題の所在

本研究の目的は,キャリア探索(career exploration)の一形態である「インターンシップ」について,効果の再定義と測定尺度の開発を行うことである。これまで,大学生のインターンシップ活動については,行政機関,教育機関,民間企業等から多数の調査・研究が積み重ねられてきた。しかしながら,インターンシップの効果や,効果の測定方法については,複数の課題が残されている。そこで本研究では,大学生の自由記述内容をもとに,インターンシップの効果を再検討し,効果を測定するための尺度開発に取り組んでいく。本尺度開発を通して,インターンシップの効果をより精緻に定義・測定し,インターンシップが大学生の就職活動に及ぼす影響を明らかにすることが,本研究の最終的な目的である。

近年,大学生を対象としたインターンシップ活動に大きな変化が生じている。インターンシップとは,「学生が在学中に自らの専攻,将来のキャリアに関連した就業体験を行うこと」と定義され,キャリア教育の一環としてその有効性に注目が集まっている(文部科学省・厚生労働省・経済産業省,2015)。新規学卒者向け就職情報サイトを運営する株式会社リクルートキャリアによれば,2020年卒学生のインターンシップ参加率は62.2%,平均参加社数は4.5社となっている。同社が毎年発行する「就職白書」において,初めて「インターンシップ編」が刊行された2013年卒では,参加率が17.4%,平均参加社数は1.7社であったことを考えると,7年間で参加率は3倍以上,参加社数も2倍以上増加していることが確認できる(リクルートキャリア,2013,2020)。同様の傾向は株式会社マイナビによる「2021年卒 マイナビ大学生広報活動開始前の活動調査」からも確認できる。上記調査によれば,インターンシップの参加率・平均参加社数は2014年卒で32.1%,1.7社であったが,最新の2021年卒では85.3%,4.9社まで上昇している(マイナビ,2020)。調査会社によって数値の差異はあるものの,全体として,大学生のインターンシップ活動が急速に活発化していることが確認できる。

また,参加率だけでなく,インターンシップが大学生の最終的な進路決定に及ぼす影響も拡大している。文部科学省(2017a)によれば,インターンシップに参加した学生の42.8%がインターン先企業への選考参加を希望しており,10.4%が実際に就職をしている。同様の調査を行ったリクルートキャリア「就職白書2020」においても,インターンシップ参加学生の内,39.9%がインターン先企業に入社予定,29.2%がインターン先と同業種の企業に入社予定であることが報告された。つまり,7割近い大学生が,インターンシップに参加した業種に入社予定ということである。2013年卒の37.0%(インターン先に入社予定12.3%,同業種に入社予定24.7%)と比較すると,インターンシップが大学生の進路決定に及ぼす影響が拡大しているといえる(リクルートキャリア, 2020)。

以上のように,インターンシップの重要性の高まりや量的拡大は多数の調査から確認できるものの,インターンシップの質的側面については課題も残されている。文部科学省(2017a)は,今後のインターンシップ推進の課題として「量的拡大」と「質的充実」の2点を掲げている。「量的拡大」については,1997年に当時の文部省,通商産業省,労働省が「インターンシップの推進に当たっての基本的考え方」,いわゆる「三省合意」を結んで以降,その推進が着実に進められてきた。これにより,インターンシップを実施する大学数は,1997年当時(実施校数107校)と比較して6倍近くまで増加しており,2017年には全大学の81.6%(637校)まで拡大している(文部科学省,2017b)。

一方,インターンシップの「質的充実」については複数の課題が指摘されている。中でも,「質的充実」の指標となるべき教育効果の把握・向上については複数の課題が残されている。文部科学省(2017a)によれば,業務負荷,専門人材の不足等により,インターンシップの教育効果を高めるための事前・事後学習が大学で適切に実施されていないことが指摘されている。また,インターンシップ参加前後の効果測定も精緻に行われておらず,教育効果の把握ができていないことが課題となっている。さらに,浅海(2007)田中(2007)亀野(2011)酒井(2015)は,そもそもインターンシップの「効果」とは何か,どのように効果を定義・測定していくのかについて,実証研究が不十分であると指摘している。このようなインターンシップの「質的充実」への懸念・課題は,現在においても解決されていない。これらの事実は,インターンシップの効果の再定義と測定尺度の開発に取り組む,本研究の意義・必要性を実務面から支持するものである。

2. キャリア探索としてのインターンシップの効果と課題

「質的充実」の課題解決に向け,本節ではインターンシップの先行研究を概観していく。はじめに,インターンシップがキャリア探索(career exploration)の一形態であることを確認した上で,理論面でのインターンシップの位置付けと課題点を明らかにする。次に,我が国におけるインターンシップの効果に関する先行研究を概観し,既存研究の課題点を明らかにしていく。

インターンシップは,そもそもキャリア探索行動の一つとして位置付けられる活動である。Stumph, Colarelli, & Hartman(1983)は,キャリア探索(career exploration)について「職業的発達に関連する一連の探索的な行動や認知のプロセス」と定義している。また,キャリア探索は,自己について考え,評価を行う「自己探索(self-exploration)」と,職業に関する情報を得るための「環境探索(environment exploration)」の二側面から構成されることが指摘されている(Stumph et al., 1983: Zhou, Alexander, Houng, Alfred & Connie, 2018)。

我が国のインターンシップが,上記二側面を備えたキャリア探索行動であることは先行研究からも明らかである。酒井(2015)は,インターンシップの実体験は,何よりも自己の「能力不足」の明確化・認知につながることを指摘し,インターンシップによる「自己探索」の側面を強調している。また,浅海(2007)は大学生のインターンシップ参加目的を5つに分類し,「自己理解・自己信頼の探索」が,参加目的として重視されていたことを報告している。さらに,株式会社マイナビによる「2019年度マイナビ大学生インターンシップ調査」によれば,大学生のインターンシップ参加目的として「自分が何をやりたいかを見つけるため」,「仕事に対する自分の適性を知るため」が,第2位と第4位に挙げられている(マイナビ,2019a),これは,インターンシップ参加者が就業体験を通して「自己探索」を行っていること,その結果として,自己の興味・職業適性への理解を深めていることを示唆している。

同様に,インターンシップは職業に関する情報を得るための「環境探索」の側面も備えている。平尾(2011)は,インターンシップ経験が就職活動に及ぼす影響を調査し,参加学生の回答結果として「志望する業界・企業への理解が深まった」が最も多かったこと(参加者の50%)を報告している。また,前述の株式会社マイナビによる調査においても「特定の企業のことをよく知るため」,「志望企業や志望業界で働くことを経験するため」が,第1位と第3位に挙げられている。これらの事実は,インターンシップ参加者が就業体験を通じて,自分に合った業界・企業・仕事の情報を得る「環境探索」を行っていることを示している。

以上のように,インターンシップはその行為自体に「自己探索」と「環境探索」を内包した活動である。また,インターンシップをキャリア探索の一形態として考察した場合,その活動を特徴付け,他のキャリア探索行動と区分する要因が2つある。第1節で示した定義からも明らかなように,インターンシップ特有の要因とは,第一に,「在学中(青年期)に行われる活動であること」,第二に,「就業体験を伴うこと」である。以上の点を鑑みると,インターンシップとは,「青年期に行われる,就業体験を伴ったキャリア探索の一形態」と定義・表現することができる。

Zhou et al.(2018)は,このキャリア探索に関する広範なレビューを行い,青年期(early adulthood)に行われる「キャリア探索」の効果として,「キャリア適応力(career adaptability)」の発達,「キャリア・アイデンティティ(career identity)」の確立,「キャリア自己効力感(career decision self-efficacy)」の獲得等を挙げている(Taylar, K. M., & Betz, N. E. 1983; Cheung & Arnold, 2014; Lent, Ireland, Penn, Morris & Sappington, 2017)。しかしながら,これらの先行研究では,青年期のキャリア探索の効果については言及されているものの,「就業体験を伴ったキャリア探索」の効果については明らかにされていない。前述のように,インターンシップ特有の要因とは,青年期と就業体験の2つの要因を同時に伴うことであり,これはインターンシップを特徴付け,他のキャリア探索行動と区分するものである。それゆえ,その効果を精緻に測定するためには,キャリア探索の既存尺度をそのまま適用するのではなく,インターンシップ特有の要因を考慮した尺度,換言すれば,インターンシップに特化したキャリア探索尺度を開発する必要があると考えられる。

また,海外で行われているインターンシップの多くが採用目的(採用直結型)であるのに対し,我が国のインターンシップは教育活動の一環として位置付けられている(文部科学省, 2017aリクルートワークス研究所, 2016)。そのため,インターンシップと採用活動との直接の連動は,原則禁止されている(日本経済団体連合会,2019)。このようなインターンシップの目的や位置付けが明確に異なる場合,インターンシップから得られる効果も異なる可能性がある。それゆえ,インターンシップの効果や尺度開発を検討する際も,先行研究に依拠しつつ,我が国特有の状況を踏まえた分析と開発が必要であると考えられる。

以上の点を鑑みると,「キャリア探索」の概念・理論面の取り組むべき課題の一つは,多様なキャリア探索行動を抽出・分類し,各探索行動から得られる効果とその差異を明確化することにあると考えられる。このような課題を踏まえた場合,本研究は,インターンシップという青年期かつ就業体験を伴ったキャリア探索行動の定義,効果測定,他のキャリア探索行動との差異を明らかにし,キャリア探索の概念・理論の精緻化にも寄与すると考えられる。これらの事実は,本研究の意義・必要性を理論面から支持するものである。

以上のような課題点はありつつも,キャリア探索の一環であるインターンシップの効果については,我が国においても多数の有益な研究が積み重ねられてきた(高良・金,2001; 佐藤・堀・堀田,2006楠奥, 2006; 真鍋,2010古田,2014初見・梅崎・坂爪,2017)。また,その効果については,インターンシップに関わる主体に応じて,大きく3つの視点に分けることができる。第1に,大学等の教育機関から見た「教育効果」,第2に,企業から見た「教育・採用活動への効果」,そして第3に,学生本人から見た「学習・就職活動への効果」である。

本研究では,上記視点の中でも,学生本人を主体とした就職活動への効果に焦点を当てていく。その理由として2点挙げられる。第1に,文部科学省(2017a)でも明言されているように,インターンシップの主役は学生である。主役である学生が知覚・認知している効果を明らかにすることが,インターンシップの現状を把握し,その後の改善活動の土台になると考えられる。第2に,田中(2007)藤本(2013)平野(2015)も指摘しているように,大学生がインターンシップに参加する最大の目的は,将来の就職活動を円滑に進めることにある。株式会社マイナビによる「2021年卒 マイナビ大学生インターンシップ前の意識調査」では,インターンシップ先を選ぶ際に就職活動を意識していると回答した学生が95.6%(常に意識している68.9%・時々意識している26.7%)に達している(マイナビ,2019b)。一方,「自分の力を試すため」,「自分の専攻が社会で役立つかを知るため」,といった就職活動以外の参加目的は,それぞれ22%,17%となっている。近年の大学生にとって,インターンシップは具体的な意識・目的を帯びた活動であり,インターンシップと就職活動を完全に切り離すことはできない。また,インターンシップが本来,自分に合った職業を発見するためのキャリア探索行動である点を鑑みると,インターンシップと就職活動を合わせて考えていくことには一定の整合性があると考えられる。以上の点から,本研究ではインターンシップの主役である大学生と,その参加目的である就職活動への効果に注目し,分析を進めていく。

このインターンシップの就職活動への影響について,平尾(2011)は,国立A大学の事例をもとに実証研究を行った。分析の結果,インターンシップに参加した学生の方が,そうでない学生よりも内定率・進路決定率が高いことが明らかとなった。また,平野(2015)は,シグナリング理論からインターンシップの効果を分析し,自発的・非自発的にかかわらず,何らかの形でインターンシップ経験が企業側に伝わることによって,内定獲得率が有意に上昇することを明らかにした。さらに,三浦(2016)も,私立B大学の事例分析を行い,インターンシップの講義を受講した学生の成績および進路決定率が,未受講者よりも有意に高いことを報告している。しかしながら,三浦も直接言及しているように,上記結果がインターンシップ経験によるものか,もともと学習・就業意欲の高い学生が受講したことによるものかについては結論が出ていない。本疑問について佐藤・梅崎(2015)は,インターン経験と内々定数増加の関係について検証を行っている。分析の結果,インターンシップへの参加自体が内々定数を増加させる効果は認められず,もともと高い能力を持った学生がインターンシップに参加したことによる,自己選別バイアスの可能性が示唆される結果となった。

以上のように,複数の実証研究においても,インターンシップの効果や,その効果が就職活動結果に及ぼす影響については統一的な見解が成されていない。このような結果の背景には,特定の大学のみを分析対象としたことによるサンプルセレクションバイアスの問題,インターンシップの期間・内容の問題,各年の求人状況など,様々な要因が考えられる。また,複数の研究が就職活動に対するインターンシップの肯定的な影響を支持する一方,「インターンシップを通して具体的にどのような効果が得られ,就職活動にどう影響したのか」という点については,必ずしも明らかにされていない。さらに,第1節で言及したように,大学生のインターンシップ活動は近年大きな変化を遂げている。参加率の急速な上昇から,インターンシップは広く大学生一般に浸透してきており,必ずしも意欲・能力の高い学生に限られた活動とは言えなくなっている。また,「ワンデーインターンシップ」に代表される期間・内容の多様化に伴い,インターンシップ経験から得られる効果や,その効果が就職活動に及ぼす影響も変化していることが推測される。

以上の点を鑑みると,近年のインターンシップを分析していくためには,既存研究に依拠しながらも,「インターンシップは大学生にどのような効果をもたらすのか」,「効果をどのように測定するのか」,「得られた効果は就職活動にどのような影響を及ぼすのか」を問い直す必要がある。具体的には,これらの疑問を検証するために,3つの課題に取り組む必要がある。第1に,インターンシップ経験から得られる効果を再定義することである。第2に,新たな定義に基づいた効果測定尺度を開発することである。第3に,測定された効果が就職活動の結果に及ぼす影響を明らかにすることである。

本研究では,上記課題の解決に向けて,3つの分析を行う。Study1では,近年のインターンシップ経験から得られる効果を再定義するために,テキスト分析を行う。Study2では,テキスト分析の結果をもとにした尺度開発を行う。Study3では,開発された尺度の信頼性・妥当性の検証と,就職活動結果を用いた尺度の有効性を検証していく。

3. Study1:テキスト分析

3-1 研究の方法

Study1では,近年のインターンシップ経験から得られる効果を再定義するために,テキスト分析を行った。具体的には,「インターンシップに参加して自分の中に生まれた変化」について,大学生に自由記述形式で回答してもらい,その内容を計量的に分析した。

インターンシップ効果の再定義において,自由記述のテキスト分析を採用した理由は大きく2つある。第1に,インターンシップの効果を問う際に,選択肢自体が被験者に与えるバイアスを避けるためである。第2に,選択式の回答では,選択肢に存在しない効果を捉えることができない可能性がある。換言すれば,自由記述形式を採用することによって,近年のインターンシップから大学生が感じている多種多様な効果を探索的に捉えることが可能となる。また,質問の仕方についても,「インターンシップの効果とは何であるか」を直接問いかけても,回答者によっては言語化されていない可能性がある。それゆえ,本研究ではインターンシップ経験によって自分の中に生まれた「変化」を,インターンシップ経験が引き起こした効果(インターンシップ経験がなければ引き起こされなかったもの)として捉え,その内容を探索的に分析することとした。

3-2. 調査対象・分析データ

テキスト分析を目的とした第1回調査は,2017年10月に行われた。調査対象は,2019年卒対象の就職情報サイト「マイナビ」に登録し,なおかつ株式会社マイナビが主催する「インターンシップアワード」に参加した学生である。

就職情報サイト「マイナビ」は,掲載企業社数2万社以上,登録学生数80万人以上に及ぶ,我が国最大級の新卒向け就職情報サイトである。その利点として,性別・大学・学部系統・地域等にかかわらず,あらゆる属性の学生が登録している点が挙げられる。また,「インターンシップアワード」は,学生の社会的・職業的自立に貢献したインターンシッププログラムを表彰する制度であり,2020年現在,経済産業省・厚生労働省・文部科学省・日本経済新聞社が後援を行っている。任意での調査依頼のため,「調査に回答した学生」というバイアスは避けられないものの,一定の適切性・代表性のある母集団から抽出されたサンプルであると考えられる。

本調査では,インターンシップ全般の効果を抽出するため,文系・理系の学部系統,インターンシップ先の業種,インターンシップの期間・内容などを限定せずに調査を行った。そのため,本研究ではいわゆる「ワンデーインターンシップ」も分析対象に含まれている。ワンデーインターンシップに代表される短期間のプログラムについては,文部科学省(2017a)日本私立大学団体連合会(2017)日本経済団体連合会(2019)等から,その内容・質保証に懸念が示されているものの,本研究では大きく2つの理由から分析対象に含めることとした。第1に,期間のみによって就業体験の有無やプログラムの有効性・適切性を判別することが実質的に不可能であること,第2に,近年我が国で行われている公募型インターンシップの半数以上がワンデーインターンシップであり(リクルートキャリア, 2018, 2019, 2020),これらを分析対象から除外した場合,著しく現実の現象から乖離した分析となってしまうためである。それゆえ,本研究では企業がインターンシップとして募集活動を行い,学生がインターンシップと認識して参加したプログラムを分析対象とした。

上記の前提に基づき,第1回調査は,インターンシップ経験者に対してインターネット経由で行われた。具体的には,「インターンシップに参加して自分の中に生まれた変化」について,自由記述形式で回答をしてもらった。その結果,「変化は特になかった」という回答も含む1,179名のサンプルを得ることができた。

回答者の属性は,「性別(男性516名・女性663名)」,「学校区分(大学919名・大学院234名・短大その他26名)」,「文理系統(文系673名・理系506名)」,「学年(3年生870名・4年生以上49名・大学院1年生223名・大学院2年生以上11名・短大1年生その他26名)」である。また,自由記述における一人あたりの回答文字数は,最大336文字,最小4文字,平均41.5文字であった。

3-3. 分析・結果・考察

本研究では,上記1,179名の自由記述内容について,テキストマイニング用ソフト「KH Coder」による計量テキスト分析を行った。計量テキスト分析とは,計量的分析手法を用いてテキスト型データを整理または分析し,内容分析を行う手法である(樋口,2014)。本研究において,計量テキスト分析を採用する利点は2つある。1つは,計量分析を用いることによる,データ分析の信頼性・客観性の向上である。2つ目は,樋口(2014)でも強調されているように,計量分析による新たなデータの質的側面の発見・探索能力の向上である。これらの利点は,自由記述のテキストデータから探索的にインターンシップの効果を抽出するという,本研究の目的とも合致する。以上の点から,本研究では計量テキスト分析を採用し,大学生の自由記述内容の整理・分析を行った。表1はその結果である。

表1 自由記述内容の頻出上位100語

表1は,インターンシップによる「変化」の自由記述内容について,KH Coderを使用して抽出された頻出上位100語である(表1参照)。表1の結果から,「自分」,「インターンシップ」,「業界」,「仕事」などの主語と思われる語が,上位10位以内に入っていることが確認できる。また,「感じる」,「思う」,「考える」,「ようになった」など,インターンシップ経験による変化や思考の結果を示唆する語も10位以内に入っている。しかしながら,これらの頻出語リストのみでは,大学生が具体的に何を思うようになったのか,どのような変化を感じたのかについては判断することができない。それゆえ,本研究では抽出語同士の関係を明らかにし,一定の意味・まとまりを抽出するため,頻出語(出現回数35回以上)による共起ネットワーク分析を行った。共起ネットワーク分析の利点は,出現パターンの似通った語,すなわち共起の程度が高い語と語を線で結んだネットワーク図を視覚的に描ける点にある。図の解釈における重要な点は,語と語が線(点線および実線)で結ばれているかどうかであり,近くに配置されているだけでは共起関係を意味しない。また,円の大きさは,語の出現回数(frequency)を示し,線の濃さは共起関係の強さ(coefficient)を表している。本研究では,この共起ネットワーク分析によって,インターンシップ経験から得られた変化(効果)について,大学生がどのようなことを想起する傾向があるのかを探索的に分析した。図1は,その結果である(図1参照)。

図1 共起ネットワーク分析の結果

図1の結果から,共起関係にある6つのカテゴリーグループ(図1の01~06)を抽出することができた。第1のグループは,「自分」という言葉を中心に,「知る」,「感じる」,「思う」,「考える」が結びついている。さらに周辺部まで含めて考察すると,インターンシップを通して,自分の今(現状)を知る,必要性を感じる,将来について考える,などの「自己探索」を行っている様子が伺われる。第2のグループは,「なった」という言葉を中心に,「将来」,「明確」と「イメージ」,「変わる」という言葉が両側に派生して伸びている。これらは,インターンシップを通して将来が明確になること,もしくはイメージが変わる(就業体験によってイメージが実態に近づく)効果があることが示唆される。第3のグループは,「もっと」,「他」,「見る」であり,インターンシップによって意欲・積極性が増していることが確認できる。第4のグループは,「インターンシップ」,「積極的」,「参加」と,そこから周辺部に派生する「人」,「業界」,「企業」とのつながりを確認することができる。このことから,インターンシップへの積極的な参加が,多様な出会いの創出や拡大に寄与していることが推測される。さらに,第5のグループは,インターンシップを通して,「企業」で「働く」ことや,「実際」の「仕事」を知る効果があることが示唆されている。最後に,第6のグループは,インターンシップへの参加が,「業界」への新たな興味喚起につながっている様子が伺われる。

本研究では,この6つのグループについて,本稿執筆者である3名の研究者間で検討を行った。はじめに6つのグループそれぞれについて,独立した効果・概念と考えられるもの,他の効果と統合できるものを精査した。分析にあたり,本研究ではキャリア探索の概念に依拠して検討を行った。第2節で述べたように,キャリア探索は「自己探索」と「環境探索」から構成される概念である。また,インターンシップもキャリア探索の一形態である。それゆえ,その活動内容や得られる効果も「自己探索」や「環境探索」に関連すると仮説を立て,6つのグループを分類した。執筆者3名で複数回検討を重ねた結果,第1グループは「自分」という言葉を中心に「自分の今(現状)を知る,必要性を感じる,将来について考える」が関連付けられているため,「自己探索」に属する活動・効果と判断した。また,第2,4,5,6グループは,積極的なインターンシップ参加によって,「実際の仕事が分かる,業界に興味を持つ,将来が明確になる」等が関連付けられているため,「環境探索」に関連した活動・効果であると判断した。しかしながら,第3グループについては,「もっと」,「他」,「見る」など,意欲や積極性を示す内容であり,「自己探索」,「環境探索」に含めることは困難であると判断した。

次に,「環境探索」に関連する第2,4,5,6グループについては,「効果の違い」によってさらに2つのグループに分類した。具体的には,環境探索を通じて将来の仕事・キャリアが「明確化」しているか,それとも「拡大化」しているかという点である。例えば,第2グループではインターンシップ経験によって将来が明確になる,イメージが変わることが示唆されている。また,そのような変化は,第5グループで示されている実際の仕事体験を通して引き起こされることが推測される。一方,第6グループは「業界」,「興味」,「持つ」が連なっており,インターンシップ経験を通して選択肢や視野が拡大している様子が伺われる。そして,このような変化は,第4グループで示されるような積極的なインターンシップへの参加や他者の意見・アドバイスを聞くことによって引き起こされることが推測される。以上の点から,本研究では「環境探索」に属する4つのグループについて,「明確化」という観点から第2・第5グループを統合し,「拡大化」という観点から第4・第6グループを統合した。

以上の作業過程を通して,本研究では最終的に,「自己探索」に関わる第1グループを「①自己理解」とし,「環境探索」に関わる第2・第5グループを「②仕事・キャリアの明確化」,第4・第6グループを「③仕事・キャリアの拡大化」とした。また,第3グループについては,本研究の目的がインターンシップの効果を探索的に抽出することであるため,「自己探索」や「環境探索」には含めず,インターンシップの独立した効果として「④意欲・行動」と命名した。以上の点から,本研究では近年のインターンシップ経験から得られる効果は,4つの要素から構成されると考えた。

最後に,本研究では上記4つの効果の内容妥当性について検討を行った。具体的には,インターンシップの効果に関する行政機関,民間企業,学術機関等の先行研究を参照し,4つの効果と関連する内容が存在するかを精査した。その結果,上記のような命名・概念化はされていないものの,効果の内容については共通点が確認された。例えば,文部科学省(2017c)では,学生にインターンシップの成果を尋ねており,「自分の強み/弱みの発見」,「自分のキャリア観/職業意識を明らかにする」,「就職活動の際の企業選択の幅を広げる」,「就職活動への意欲を高める」などが選択肢として提示されている。これらの内容は,本研究から得られた「自己理解」,「仕事・キャリアの明確化」,「仕事・キャリアの拡大化」,「意欲・行動」とも類似・共通するものである。一方,本研究と先行研究との違いは,「仕事・キャリアの明確化」と「仕事・キャリアの拡大化」の扱いにあると考えられる。文部科学省(2017c)では,インターンシップの成果として22項目を挙げているが,「仕事・キャリアの明確化」と類似・共通する項目は「自分のキャリア観/職業意識を明らかにする」の1項目のみである。また,当該項目は自己理解の一部として取り扱われており,独立した概念として捉えられていない。同様に,「仕事・キャリアの拡大化」と類似・共通する「就職活動の際の企業選択の幅を広げる」も1項目のみであり,こちらも意欲・行動の一部として扱われていることが伺われる。以上の点を鑑みると,本研究の特徴は,仕事・キャリアに対する「明確化」と「拡大化」を独立した別個の概念として抽出したこと,さらに,矛盾しかねない両効果が同時に存在し得る可能性を仮説として定義した点にあると考えられる。以上の結果から,テキスト分析および構成概念の検証から導かれた4つの効果は,一定の内容妥当性がありつつも,先行研究とは異なる部分を強調,概念化している点に差異があると判断した。

4. Study2:尺度開発

4-1. 研究の方法

Study2では,Study1で行ったテキスト分析の結果をもとに,インターンシップの効果を測定するための尺度開発に取り組んでいる。はじめに,Study1で定義された仮説的な4つの効果を測定するための質問項目案を作成した。具体的には,1,179名の回答内容を再度確認しながら,各効果を問う質問(例えば,自己理解の程度を問うと考えられる質問,将来の仕事・キャリアがどの程度明確化しているかを問うと考えられる質問など)を3名の研究者で探索的に数十項目作成した。次に,行政機関,民間企業,学術機関等の先行研究から,4つの効果と関連があると思われる質問項目を洗い出し,作成した質問項目案と比較検討した。これにより,内容の抜け漏れや内容妥当性の再検討,文章表現の修正等を行った。上記作業を反復的に複数回繰り返すことによって,本研究では最終的に4つの効果を問う40個の質問項目案(原案)を作成した。表2は,その結果である(表2参照)。次に,作成された40項目の原案について探索的因子分析を行い,尺度の因子構造について検証を行った。

表2: インターンシップ効果測定尺度の原案

4-2. 調査対象・分析データ

尺度開発を目的とした第2回調査は,2019年卒対象の就職情報サイト「マイナビ」に登録する大学生に対して,インターネット経由で2018年3月5日から3月31日にかけて行われた。第1回目と同様に,インターンシップ参加経験の有無のみを抽出条件とし,40項目の質問について任意での回答協力を求めた。その結果,4,000名から回答を得ることができた。また,この4,000名から,不適切な回答(インターンシップ経験なしにチェックなど)をした者と,短期大学,高等専門学校,専門学校,その他の学校の者を除き,3,826名を分析対象とした。

回答者の属性は,「性別(男性2,211名・女性1,615名)」,「学校区分(大学3,244名・大学院582名)」,「文理系統(文系1,489名・理系2,337名)」,「学年(2年生以下5名・3年生2,929名・4年生以上310名・大学院1年生564名・大学院2年生以上18名)」である。

4-3. 分析・結果・考察

本研究では,上記3,826名の回答結果について,主因子法・プロマックス回転による探索的因子分析を行った。分析にあたり,因子負荷量が0.4未満のもの,複数の因子にまたがって影響を与えている項目は除外した。表3は,その結果である(表3参照)。

表3 インターンシップ効果測定尺度(原案)の因子分析結果

探索的因子分析の結果より,当初,仮説として定義していた4つではなく,5つの因子(効果)が抽出された。具体的には,「①自己理解」,「②仕事・キャリアの拡大化」,「③仕事・キャリアの明確化」については,項目数は減少したものの,当初の仮説通り因子が抽出された。しかしながら,「④意欲・行動」については,2つの因子(表3の第3因子と第4因子)に分かれた。両因子の内容は,第3因子が「就職活動を上手くいかせるために,周りの社会人,学生,OB・OG,キャリアセンターを活用していきたい」という意欲であり,第4因子は「仕事・働くことに対する準備・覚悟ができ,社会人として早く働き始めたい」という意欲であった。

同じ意欲でありつつも,因子が2つに分かれた要因として3つの視点が考えられる。第1に,意欲・行動の「方向性」である。第3因子は,社会人,学生,OB・OG,キャリアセンターなど,自己の外側にある外部環境や資源を積極的に活用しようとする意欲である。一方,第4因子は仕事・働くことに対する自己の内的欲求であり,意欲の源泉や方向性に違いがあると考えられる。第2に,意欲・行動の「目的」である。第3因子が就職活動の成功を意図したものであるのに対し,第4因子は社会人としての在り方や就労への意欲と考えられる。最後は「時間的展望」である。第3因子が直近の就職活動を捉えているのに対し,第4因子は卒業後の就労を見据えたものである。これらのどの要因がより重要かを明確に判別することは困難であるが,以上のような意欲の方向性・目的・時間的展望の違いによって,因子が2つに分かれたことが推測される。

本研究では,この5つの因子の内容・性質について研究者3名で再度検討を行い,各因子の特徴を踏まえた上で,「①キャリアの焦点化」,「②キャリアの展望化」,「③人的ネットワークの認知」,「④就労意欲」,「⑤自己理解」の名称を付与した。各因子の定義ならびに特徴は以下の通りである。

① キャリアの焦点化

「キャリアの焦点化」は,インターンシップを通して「将来のキャリアについて,興味・関心が絞られ,明確化されること」である。この尺度の得点が高いことは,例えば,「興味のある業界・企業,仕事内容の絞り込みができた」,「社会に出たら達成したい,具体的な目標ができた」など,自分のやりたいこと,将来のキャリアプランが明確化された状態を意味する。これまで,漠然としたイメージでしかなかった将来像が,インターンシップを通して具体化し,進むべき方向性やキャリアが定まった状態を示す。

② キャリアの展望化

「キャリアの展望化」は,焦点化とは正反対に,「自らの将来のキャリアについての可能性が広がること」である。この尺度の得点が高いことは,例えば,「興味のある業界・企業,仕事内容の範囲が広がった」,「社会には,私が思っている以上に多様な選択肢があることが分かった」など,インターンシップを通して以前よりも視野が広がり,自分自身のキャリアに新たな可能性を認識していることを意味する。

③ 人的ネットワークの認知

「人的ネットワークの認知」は,「大学のキャリアセンターやOB・OGなど,周囲の社会人を,就職活動を円滑に進めるために利用可能な有益な資源として認知すること」である。この尺度の得点が高いことは,例えば,「就職活動を上手く進めるために,周りの社会人に積極的にアドバイスを求めていこうと考えるようになった」,「OB・OG訪問を主体的に行おうと考えるようになった」,「大学のキャリアセンターなど,自分の周りにある施設・機会を積極的に活用しようと考えるようになった」など,様々な態度が挙げられる。インターンシップを通して,自分の周りに存在する機会や人的ネットワークの有効性を改めて認識し,積極的に活用していく姿勢を示している。

④ 就労意欲

「就労意欲」は,「インターンシップを通して獲得された働くことへの意欲」である。この尺度の得点が高いことは,「社会人として早く働き始めたいと思うようになった」,「社会人になる準備・覚悟ができた」など,インターンシップを通じて,就業することに対して高い意欲があることを意味する。

⑤ 自己理解

「自己理解」は,「インターンシップを通して認識された自己の長所ならびに補うべき短所」である。インターンシップ参加者は,「自分の強みを知ることができた」,「自分に足りない能力を把握することができた」など,就業体験を通して自己に対する理解を深めている。特に,インターンシップによる自己理解には,他大学の学生や社会人など,他者との協同・人間関係の中で認知される特徴があり,この点において紙上で検討する自己分析とは質的に異なるものである。

以上の探索的因子分析の結果から,上記5つの因子を,近年のインターンシップ経験から得られる効果として再定義した。また,本研究では,この5つの因子(効果)を測定する20項目の質問群を「インターンシップ効果測定尺度―事後調査版―1」と命名し,以後取り扱っていく。

最後に,本研究ではインターンシップ効果測定尺度の因子構造の妥当性と尺度の有効性について検討を行った。具体的には,確証的因子分析(CFA)の手法を用いて,インターンシップ効果測定尺度と当初の仮説モデルである4因子40項目の原案について比較分析を行った。分析の結果,4要因40項目の原案については,CMIN/DF=20.83,GFI=0.800,AGFI=0.777,CFI=0.801,RMSEA=0.072,SRMR,=0.057であり,適切なモデル適合度を得ることができなかった。次に,5因子20項目のインターンシップ効果測定尺度については,CMIN/DF=16.27,GFI=0.931,AGFI=0.910,CFI=0.928,RMSEA=0.063,SRMR,=0.045であり,適切なモデル適合度を得ることができた(図2参照)。以上の結果から,インターンシップ効果測定尺度の因子構造の妥当性が確認された。また,モデル間の比較から,原案よりもインターンシップ効果測定尺度の方が有効な尺度であることが確認された。

以上のプロセスを経て開発されたインターンシップ効果測定尺度について,同様の尺度がないか確認したところ,我が国で行われているインターンシップの効果に特化し,なおかつ因子構造や構成概念が一致する尺度は現在のところ確認できていない。しかしながら,インターンシップがキャリア探索の一形態である点を鑑みると,キャリア探索尺度との関係が想定される。次節では,類似性・共通性が推測されるキャリア探索尺度との関係を分析することにより,インターンシップ効果測定尺度の信頼性・妥当性をさらに検証していく。

図2 インターンシップ効果測定尺度の確証的因子分析

5. Study3:インターンシップ効果測定尺度の検証

Study12より,近年のインターンシップから得られる5つの効果と,効果測定の尺度を開発することができた。本節では,このインターンシップ効果測定尺度について2つの分析を行う。第1に,キャリア探索尺度との相関分析による尺度の信頼性・妥当性の検証である。第2に,就職活動結果を用いた,t 検定による尺度の有効性の検証である。

5-1. 信頼性・妥当性の検証

⑴ 研究の方法・仮説

第1の検証は,インターンシップ効果測定尺度と既存尺度の相関分析である。具体的には,Stumpf et al.(1983)が開発し,安達(2001)が日本語版を作成した「キャリア探索尺度」との相関分析である。これまでも述べてきたように,インターンシップは青年期・就業体験という特徴を持つキャリア探索の一形態である。それゆえ,理論面から考察した場合,インターンシップ効果測定尺度とキャリア探索尺度には,一定の相関関係があることが想定される。また,インターンシップ効果測定尺度は大学生の自由記述内容をもとに開発されているため,彼・彼女らが感じている「近年のインターンシップ効果」のみを捉えてしまっている可能性も考えられる。それゆえ,インターンシップ効果測定尺度と,信頼性・妥当性が既に確認され,理論的にも関係が想定されるキャリア探索尺度との相関を確認することは,本尺度の信頼性や内容妥当性の担保にもつながると考えられる。以上の点から,本研究では,インターンシップ効果測定尺度とキャリア探索尺度について,以下の仮説を設定した。

  • 仮説1:インターンシップ効果測定尺度とキャリア探索尺度には有意な正の相関関係がある

⑵ 分析データ・結果・考察

仮説1の検証のため,本研究ではStudy2で用いた3,826名のデータを使用して分析を行った。分析に先立ち,インターンシップ効果測定尺度の5つの要因について信頼性分析を行ったところ,全ての要因でα= .75以上の値を得ることができた。これにより,インターンシップ効果測定尺度の信頼性が確認された。次に,インターンシップ効果測定尺度の5つの要因と,キャリア探索尺度を構成する「自己探索」,「環境探索」の2要因の相関分析を行った。表4は,その結果である(表4参照)。

表4 インターンシップ効果測定尺度とキャリア探索尺度の相関分析

表4の結果から,インターンシップ効果測定尺度の5つの要因とキャリア探索尺度の2要因の全ての関係において,有意な正の相関関係が確認された。これにより,仮説1は支持された。また,相関分析の結果から,次の3点の特徴が示唆される。第1に,キャリア探索尺度の「自己探索」と「キャリアの焦点化(r = .41)」,「キャリアの展望化(r = .42)」が有意な相関関係にあること,さらに,その相関係数が「自己理解(r = .35)」よりも高い点である。この結果から,自己探索とは単に自己の強み・弱みを把握することではなく,業界・企業・仕事のイメージを明確化すること,新たな職業選択の可能性に気付くことによっても深まることが示唆される。第2に,キャリア探索尺度の「環境探索」もインターンシップの5つの効果全てと有意に相関しており,最も相関係数が高いのは「キャリアの焦点化(r = .49)」であった。この事実は,自分に合った職業を見つけるための環境探索は,自己の視野を広げる活動(キャリアの展望化)よりも,将来の仕事・キャリアを明確化させる活動(キャリアの焦点化)とより深く結びついていることを示唆している。第3に,「キャリアの展望化(r = .42, .41)」,「就労意欲(r = .39, .40)」,「自己理解(r = .35, .35)」の3つの効果は,キャリア探索の「自己探索」と「環境探索」両者に対して同程度の相関であった。この結果は,例えば,多様な職業選択の可能性を認知するキャリアの展望化は,環境探索行動であると同時に自己探索行動でもある可能性を示している。

以上の結果から,既存のキャリア探索尺度とインターンシップ効果測定尺度の関係を確認することができた。また,両尺度の相関係数も.39から.49の中程度である点を鑑みると,インターンシップ効果測定尺度はキャリア探索尺度と関係しながらも,異なるものを測定していると考えられる。そしてこの結果は,インターンシップがキャリア探索行動の一形態でありながらも,その効果を精緻に測定するためにはインターンシップに特化した尺度開発が必要である,という本研究の主張を支持するものと考えられる。

5-2. 尺度の有効性の検証

⑴ 研究の方法・仮説

第二の検証は,平均値の差による尺度の有効性の検証である。インターンシップ効果測定尺度が実務的にも有効な尺度である場合,インターンシップに関連する重要な結果変数において,5因子に有意な差が観察されることが予想される。つまり,重要な結果変数において,5因子が高いグループと低いグループに有意な差が確認されることが,インターンシップ効果測定尺度の有効性を示すと考えられる。それゆえ,本研究では「内々定の有無」と「内々定先への満足感の有無」について,インターンシップ効果測定尺度の5因子を使用したt 検定を行う。「内々定の有無」と「内々定先への満足感の有無」については,就職活動の結果指標としても重視されており,インターンシップの効果を測定する結果変数として適切であると考えられる。また,上記2つの結果変数において尺度の有効性が確認されることは,本研究の問いである,「インターンシップの効果は就職活動にどのような影響を与えるのか」を明らかにすることにもつながると考えられる。

本研究では,就職活動に対するインターンシップの肯定的な影響を支持する立場から,5因子は内々定の獲得に有意な差をもたらすと仮説を立てた。換言すれば,内々定があるグループとないグループでは,「キャリアの焦点化」,「キャリアの展望化」,「人的ネットワークの認知」,「就労意欲」,「自己理解」において,有意な差が存在するということである。特に内々定を獲得したグループは,内々定がないグループよりも,5因子の平均値が有意に高く,インターンシップを通してこれらの因子が向上することが,内々定の獲得に肯定的な影響を与えることが推測される。

ただし,近年では一部企業においてインターンシップが実質的な採用選考として扱われており,そのような場合,必ずしもインターンシップ経験の効果によって内々定を獲得したとは言えない可能性がある。それゆえ,「内々定の有無」については2つの分析を行った。はじめに,「内々定あり群・なし群」の比較である。次に,「内々定なし群」と「入社意思の最も高い内々定先のインターンシップには参加経験なし群」の比較である。つまり,内々定しているが,当該企業のインターンシップには参加していなかった学生群である。これにより,インターンシップが採用選考と関連している可能性を排除した上で,内々定あり群となし群の比較を行った。

最後に,本研究では5因子は内々定の獲得だけでなく,内々定先への満足感にも有意な差をもたらすと仮説を立てた。前節で述べたように,インターンシップには将来のキャリアを広げる,絞る,周囲の人的ネットワークを活用する,就労意欲や自己理解を向上させる効果がある。このような「自己探索」と「環境探索」の過程を経て獲得された内々定は,自己のキャリア選択に対する納得感を醸成し,内々定先に対する満足感を高めることが推測される。以上の点から,本研究では以下の3つの仮説を設定した。

  • 仮説2:内々定を獲得したグループと獲得していないグループでは,インターンシップ効果測定尺度の5つの因子に有意な差がある

  • 仮説3:内々定先のインターンシップに参加していないグループと,内々定を獲得していないグループでは,インターンシップ効果測定尺度の5つの因子に有意な差がある

  • 仮説4:内々定先への満足感があるグループと満足感がないグループでは,インターンシップ効果測定尺度の5つの因子に有意な差がある

⑵ 分析データ・結果・考察

仮説2,3,4を検証するため,本研究では独立サンプルのt 検定を行った。本分析に使用するデータは,第2回調査の3,826名に対して追跡調査を行い,2018年5月末までに回答があった573名のパネルデータである。回答者の属性は,「性別(男性227名・女性346名)」,「学校区分(大学422名・大学院151名)」,「文理系統(文系287名・理系286名)」,「学年(3年生377名・4年生以上45名・大学院1年生149名・大学院2年生以上2名)」である。

第3回目の調査では,回答時点での内々定の有無や内々定先への満足感,さらには「内々定している中で,入社意思の最も高い企業のインターンシップ経験有無」などが調査されている。本研究では,この573名のパネルデータを使用し,仮説2,3,4における両グループの5因子の差を検証した。なお,「内々定先への満足感」については,「入社意思の最も高い企業から受けた内々定先への満足感を選んでください」という問いに対して5件法による回答を求め,「十分満足している」,「ある程度満足している」を「満足感あり群」,「どちらともいえない」,「あまり満足していない」,「全く満足していない」を「満足感なし群」と定義して分析を行った。表5は,その結果である(表5参照)。

表5 インターンシップ効果測定尺度の5 因子の比較

表5より,「内々定の有無」については,「キャリアの焦点化(p <.01)」,「キャリアの展望化(p <.01)」,「就労意欲(p <.01)」の3因子において,有意な差が確認された。しかし,「人的ネットワークの認知」と「自己理解」については,内々定あり群となし群の間に有意な差は確認されなかった。次に,内々定先のインターンシップ経験なし群と内々定なし群の比較では,「キャリアの展望化(p <.05)」と「就労意欲(p <.01)」の2つの因子において有意な差が確認された。しかし,「キャリアの焦点化」,「人的ネットワークの認知」,「自己理解」については,有意差は確認されなかった。最後に,「内々定先への満足感」については,「キャリアの展望化(p <.05)」,「人的ネットワークの認知(p <.01)」,「就労意欲(p <.05)」の3因子で有意な差が確認されたが,「キャリアの焦点化」と「自己理解」では有意差は確認されなかった。以上の結果より,仮説2,3,4は,全て一部支持される結果となった。「内々定の有無」や「内々定先への満足感」など,結果変数によって有意差が出る因子が異なった点については,多様な解釈が考えらえる。推測される原因の一つは,各因子の効果が,主にその後の「行動」を促進する要因であるのか,それとも「内省」を促す要因であるかという点である。例えば,「内々定の有無」で有意差が確認された,「キャリアの焦点化」,「キャリアの展望化」,「就労意欲」は,その後の就職活動における行動を促進する要因であることが推測される。「自分のやりたいことが分かった」,「興味の範囲が広がった」,「早く社会人として働いてみたい」など,将来の就労に対する肯定的な感情・認知が高まることは,その後の就職活動量を増加させ,最終的な内々定獲得にも寄与することが予想される。一方,「内々定先への満足感の有無」において,より厳しい有意水準での有意差が確認された「人的ネットワークの認知」は,主に内省活動を促進する要因であることが推測される。周りの社会人,OB・OG,キャリアセンターなど,就職活動を通じて十分な人とのつながりを持ち,助言・サポートを受けたと実感することは,自己の進路選択や内々定先への満足感の醸成に寄与することが推測される。

以上の解釈の妥当性については,本研究のみで判断することはできない。インターンシップ後の会社説明会の参加社数やアドバイスを受けた人数など,5因子が就職活動時の行動量・プロセスにどのような影響を与えるのかを,精緻に分析していく必要がある。

6. 総合考察

6-1. 本研究の貢献

本研究では,インターンシップ効果の再定義と測定尺度の開発,就職活動への影響について検討を行ってきた。一連の分析を通した,本研究の主な知見・貢献は以下の4点である。

第1に,近年のインターンシップから得られる「効果」を明らかにした点である。本研究を通して,「キャリアの焦点化」,「キャリアの展望化」,「人的ネットワークの認知」,「就労意欲」,「自己理解」の5つの効果を抽出することができた。本研究の結論として,インターンシップには将来のキャリアを広げる,絞る,人的ネットワークの有効性を認識する,就労意欲や自己理解を向上させるなど,多様な効果が存在することが確認された。中でも,特に特徴的なのは,「キャリアの焦点化」と「キャリアの展望化」という正反対の効果が同時に存在している点である。両者の相関係数が.42(p <.01)である点を鑑みると,2つ要因は有意に関係しつつも,それぞれが独立の効果を持つと考えられる。また,より重要な点は両者が「正の相関」をしている点である。一般に,焦点化が高まれば展望化が低下し,展望化が高まれば焦点化は低下すると予想されるが,本研究の結果から,キャリアに対する焦点化と展望化は「同時に両立し得る」ことが確認された。つまり,インターンシップ経験には,将来のキャリアを「広げる」もしくは「絞る」という二者択一ではなく,「広げつつ,絞る」,「絞りつつ,広げる」という多様な効果があることが推測される。

第2に,上記5つの効果を測定する「インターンシップ効果測定尺度」を開発した点である。これまで,キャリア探索に関する様々な尺度が開発されてきたが,インターンシップ特有の要因や,我が国の状況を踏まえた尺度開発は極めて少なかった。そのような状況の中,本研究で開発された尺度には大きく3つの特徴がある。1つは,大学生の自由記述をもとに尺度の原案が作成されている点である。その結果,大学生が近年のインターンシップから何を得ているのか,という視点を尺度に直接反映することができた。2つ目は,既存のキャリア探索尺度とも有意な相関が確認された点である。これにより,インターンシップ効果測定尺度が近年の状況変化のみを捉えた尺度ではないこと,キャリア探索尺度として一定の内容妥当性を担保していることが確認された。3つ目は,パネルデータの分析を通して,尺度の有効性が一定程度確認された点である。本研究では,「内々定の有無」や「内々定先への満足感の有無」など,就職活動の重要指標における5因子の差を検証してきた。上記の結果変数において,複数の因子で有意な差が確認されたことは,就職活動結果に対する本尺度の有効性を支持するものである。インターンシップ効果測定尺度は,近年の状況変化を反映しながらも,一定の信頼性・妥当性・有効性が担保された尺度であり,今後,幅広く使用されていくことが期待される。

本研究の第3の貢献は,インターンシップから得られる5つの効果それぞれについて,影響を及ぼす結果変数が「異なる」可能性を示した点である。表5から確認できるように,「内々定の有無」と「内々定先への満足感の有無」では,有意な差がある因子が異なっている。具体的には,「内々定の有無」については,「キャリアの焦点化」,「キャリアの展望化」,「就労意欲」が有意であるのに対し,「内々定先への満足感の有無」では,「キャリアの展望化」,「人的ネットワークの認知」,「就労意欲」が有意となっている。この事実は,内々定獲得の差に効く因子と,内々定先の満足感の差に効く因子が異なることを示唆している。換言すれば,インターンシップから得られる5つの効果は,各因子によって役割が異なり,就職活動結果に及ぼす影響もそれぞれ異なるということである。

また,もう1つ重要な点として,「内々定先のインターンシップ経験なし群」と「内々定なし群」の間においても,「キャリアの展望化」と「就労意欲」で有意な差が確認された。インターンシップが採用選考と関連している可能性を排除した上で有意差が確認されたことは,インターンシップ経験には複数の効果が存在し,それらの効果が後の就職活動結果に影響を及ぼすという仮説を支持するものである。本研究では内々定の有無と満足感の有無のみを分析対象としたが,今後は5つの因子が入社後の組織適応(早期離職の有無など)に及ぼす影響を分析することも考えられる。パネルデータの分析を通して,インターンシップから得られる効果が複数存在すること,各因子が異なる役割・効果を持つ可能性を定量的に示した点は,本研究の貢献であると考えられる。

最後は,理論面への貢献である。本研究の理論面への貢献は大きく3つ考えられる。第1に,我が国のインターンシップがキャリア探索の一形態であることを確認し,本活動を「青年期に行われる,就業体験を伴ったキャリア探索の一形態」と定義・位置付けた点である。第2に,上記定義におけるキャリア探索の5つの効果を明らかにした点である。本結果は,青年期,就業体験という条件下におけるキャリア探索行動が具体的にどのような効果をもたらすのかを明らかにする一助になると考えられる。第3に,キャリア探索を構成する「自己探索」,「環境探索」と,インターンシップの5つの効果の関係を明らかにした点である。相関関係の特徴については5-1の⑵で指摘したが,より重要な点は,インターンシップというキャリア探索行動には,「自己探索」,「環境探索」以外の効果が存在する可能性を示した点である。具体的には,効果の内容から,主に「自己理解」が「自己探索」に属し,「キャリアの焦点化・展望化」が「環境探索」に属することが推測される一方,インターンシップ特有の効果として,「人的ネットワークの認知」と「就労意欲」が考えられる。

例えば,「人的ネットワークの認知」は,インターンシップを通して社会人,他大学の学生,OB・OG,キャリアセンターなど,自分の周りにある環境や人的資源を積極的に活用する姿勢・意欲が向上することである。このような効果が発生する背景には,インターンシップの内容の多くに「他者との協同作業」が含まれていることがあると考えられる。インターンシップでの協同作業を通して他大学の学生や社会人から学ぶことの重要性を認識し,それらを積極的に活用していく姿勢・意欲が芽生えることは,インターンシップならではの効果であることが推測される。同様に,インターンシップの最大の特徴は就業体験を伴うことである。実際の仕事に直接触れることによって,紙上や一方的に説明を聞く受け身のキャリア探索では得られない知識・能力・充実感を獲得し,当該経験が仕事・働くことに対する肯定的な姿勢・意欲を育むと考えられる。本研究の結果のみで判断することはできないが,上記2要因も含めて,インターンシップというキャリア探索行動が持つ特有の効果についてさらに検討していく必要がある。

以上の論点については今後更なる調査・分析が必要である。しかしながら,インターンシップから得られる多様な効果と「自己探索」,「環境探索」の関係を定量的に分析することは,そもそもどのような活動が両概念に該当するのか(もしくは該当しないのか),両探索行動を促進するためにはどのような要因が必要かなど,キャリア探索の概念・理論の精緻化にも寄与すると考えられる。

6-2. 本研究の限界・課題

本研究には少なくとも3つの課題が残されている。第1に,インターンシップの「効果」の再検証である。本研究では自由記述のテキスト分析からインターンシップの効果を抽出したが,研究者の主観やバイアスが入り込む可能性は否定できない。また,大学生が無意識に感じている,言語化されていない効果を抽出することも困難である。さらには,出現回数が少ない言葉の中に,重要な因子が隠れている可能性も考えられる。5因子以外にも重要な因子(効果)が存在していないか,再検証する必要がある。

第2に,インターンシップ効果の測定方法である。本研究では株式会社マイナビの協力を得て,インターンシップ経験者のパネルデータを取得することができた。しかしながら,特定の時期に一斉調査を行う形式であるため,インターンシップを終えてから時間が経過している者,継続中だった者など,様々なケースが混在していたことが推測される。また,内々定の有無についても,企業の内々定出しの時期の都合により,調査時期にたまたま内々定なしとなっていたことも考えられる。今後,インターンシップの効果をより精緻に測定していくためには,インターンシッププログラムの直前・直後で調査を行い,変化量や効果量を分析していく必要がある。さらには,インターンシップ未経験者との比較も欠かせない。これらの問題については,改めて調査・分析が必要である。

最後に,今後取り組むべき課題として,インターンシップ経験が入社後の組織適応に及ぼす影響を明らかにする必要がある。本研究の結果からインターンシップの5つの効果が確認されたが,これらの因子が早期離職の有無など,入社後の組織適応に及ぼす影響については明らかになっていない。本疑問に対する実証研究が不足する中,古田(2010)は,インターンシップ経験の有無と新入社員の「キャリア適応力(career adaptability)」の関係について分析を行い,両者の間に有意な関係があることを報告している。しかしながら,インターンシップのどのような経験・効果がキャリア適応力を高めるのか,それがどの程度,組織適応に影響するのかについては疑問が残されている。本問題を解決していくためには,インターンシップとキャリア適応力の関係,さらにはキャリア適応力と組織適応の関係など,複数の長期にわたる調査・分析が必要である。今後のインターンシップ研究をより有意義なものにしていくためには,インターンシップの効果の抽出や就職活動への影響に留まらず,入社後の組織適応まで視野に入れていく必要がある。これまで述べてきた課題点を克服し,インターンシップから入社後の組織適応までを念頭に入れた研究を実現することは,インターンシップの主体である大学・企業・大学生それぞれに対して,新たな知見・示唆を提供するだろう。

付表 インターンシップ効果測定尺度(20項目)

 【謝辞】

本研究の執筆過程において,匿名レフェリーの先生方および編集委員長の池田心豪先生から多数の有意義かつ建設的なアドバイスを頂きました。ここに記して感謝申し上げます。

また,本研究は複数年にわたる長期の調査と多数の関係者の献身なしには成し得ませんでした。その中でも,本研究に貴重なデータを提供して頂くとともに多大なご協力を頂いた,株式会社マイナビHRリサーチ部の栗田卓也様,東郷こずえ様,事業推進統括事業部企画推進統括部 企画開発部の松井徹哉様に深くお礼申し上げます。

(筆者=初見康行/多摩大学経営情報学部准教授 梅崎 修/法政大学キャリアデザイン学部教授 坂爪洋美/法政大学キャリアデザイン学部教授)

【注】
1  本尺度はインターンシップ経験者に対して,回顧的に主観的効果を問う形式となっている。そのため,尺度の副題を「事後調査版」とした。表記の簡便性を図るため,以降では「インターンシップ効果測定尺度」と略記する。

【参考文献】
 
© 2021 Japan Society of Human Resource Management
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