Journal of Japanese Society for International Nursing
Online ISSN : 2434-1452
Print ISSN : 2434-1444
Report of international cultural exchange event between Japanese nursing and international students in a school of global nursing
Kazuyo Kanzaki SooudiChihiro Tsuchiya-Theorin Misako IizukaTomomi HashimotoYoshimi KasaiTomoya UnnoOtorirei SatoMaki Nakamura
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2025 Volume 8 Issue 2 Pages 12-

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Abstract

背景

A大学国際看護学部(以下、A)は2021年に国内で2番目の国際看護学部として開設され、グローバルな視点で様々な文化背景を持つ対象者を理解し尊重できる看護職者育成を理念としてあげている。この理念の下、教員及び学生の国際的基礎力を養う活動として、開学年度より国際交流シンポジウム(以下、シンポジウム)を開催してきた。学生の国際的活動に関する意識や期待の実態を明らかにし、本学部における国際的活動の方向性を検討すると共に異文化理解を深める学習環境を整えることを目的に第3回シンポジウム後にアンケート調査を実施した。本稿ではアンケート調査結果から本学部における国際的活動の方向性の検討と異文化理解を深める学習環境の検討に資する内容を分析し報告する。

方法

シンポジウムに参加したA看護学生19名とB大学国際教養学部に所属する留学生(6カ国11名)を含む30名の学生を対象に質問紙調査を行った。2.5時間のプログラム終了後に、研究の目的・方法・倫理的配慮を口頭で説明したうえで研究の協力依頼をし、無記名自記式質問紙を参加者全員に配布し、各自が自由意思で回収ボックスに投函する形で実施・回収した。結果は単純集計と回答の意味内容の類似性に基づきカテゴリーに分類した。医療創生大学倫理委員会の承認を得て実施した。

結果/考察

調査用紙の回収率は90%、意義があったと答えた学生は100%であり、学生全員が国際交流の継続に強い関心を示した。また、看護学生は他国についての知識が乏しいことに気づいたことが明らかになった。要因として、インターネットやSNS等で諸外国やそこに住んでいる人々について漠然とした印象は持っているが具体的な実態を持った交流に至っていないことが考えられる。一方、留学生は日本人との交流に興味関心があるが、日常生活で日本人と親しく交流する機会は限定的であることが明らかになった。

結論

今回の調査から、シンポジウムが看護学生と留学生のどちらにとっても有益であることが分かった。同時に、看護学生が持っている海外についての情報は実体験に基づいておらず正確ではないことや留学生が日本で孤立しがちであるという課題も浮き彫りになった。これらの結果を本学部における国際的活動の方向性と学習環境の整備の検討に反映させ教育機関としての解決策の模索が求められる。

Translated Abstract

Background

Establishing a school of global nursing (A) in 2021 was a significant milestone in response to the Japanese government's call for transcultural nursing education. This institution, dedicated to fostering nurses with a global perspective, has been hosting an annual international symposium. The insights presented in this report are derived from the questionnaire responses collected during the 2023 symposium.

Methods

Thirty students, including 19 nursing students and 11 international students from six countries, participated in a 2.5-hour session. They were asked to answer a questionnaire, which consisted of questions about the appropriateness of the symposium's contents and benefits, and then dropped into a box. The results were analyzed through simple tabulation and content analysis methods. The Ethics Committee of Iryo-Sosei University approved the research plan.

Results/Discussion

The unregistered questionnaire results indicated a 90% response rate and a 100% satisfaction rate. They all expressed a strong interest in continuing international exchange, while two critical issues became apparent. Nursing students realized their knowledge of other countries was less than they had thought. One contributing factor is that most of their prior knowledge was only from social media. International students come to Japan to study and become acquainted with Japanese people. However, most stated they had no Japanese friends, even after a few years of their stay in Japan.

Conclusion

The symposium was a testament to the benefits of international exchange for nursing and international students. However, it also brought to light two critical issues. Nursing students' information on foreign countries is not always accurate. International students tend to be isolated in Japan and do not receive the full benefits of studying abroad. Educational institutions play a role in exploring and implementing solutions to these issues.

Ⅰ.背景

近年、日本社会における国際化を反映し、看護教育においても国際的視点を持った看護職育成に向けた取り組みの重要性が指摘されている。2017年に文部科学省は「看護学教育モデル・コア・カリキュラム」の中で「国際社会・多様な文化における看護職の役割を学ぶ」という目標を定めており、増加する在留外国人を対象とした看護実践や、国境を越えた看護実践の学びの重要性を示唆している。A大学国際看護学部(以下、A)は2021年に国内で2番目の国際看護学部として開設された。教育目標として「異文化理解を深め、グローバルな視点で看護の対象者を捉えることができる看護職者育成」が掲げられ、グローバルな視点で様々な文化背景を持つ対象者を理解し尊重できる看護職者育成を理念としてあげている。この理念の下、教員及び学生の国際的基礎力を養う活動として、開学年度の2021年より【国際交流シンポジウム】(以下、シンポジウム)を開催してきた。

第1回シンポジウム(2021年度開催)では、教員を対象として海外出身の看護職者を雇用している総合病院2か所の看護部長及び、そこで働く海外出身の看護職者と大学をオンラインで結び、意見交換をする場を設けた。そこでは雇用者側が課題と捉えている内容(宗教による祈祷の場の設置や時間的配慮、休暇の捉え方の違い等を含む異文化理解の困難さ)と対応策について学んだ。また、海外出身の看護職者側からは異文化アセスメントの6項目(Giger & Davidhizar, 2002)のうち、母国と日本との違いの中で特に時間の捉え方、コミュニケーション、空間の捉え方(距離感)が同僚スタッフの関係構築の過程で困難であると感じていることを学んだ。

第2回シンポジウム(2022年度開催)ではフィンランド共和国とブータン王国の行政等に直接携わっている有識者と大学をオンラインで結び、フィンランド共和国の教育システムやブータン王国の医療システムと押し寄せる近代化に伴う課題についての講演と意見交換を実施した。両国の内側を熟知しているプレゼンターから観光者には見えないフィンランド共和国およびブータン王国と日本との違いや各国の文化と諸体制の違いを学ぶ機会となった。

第3回シンポジウム(2023年度開催)はCOVID-19感染減少に伴い対面での交流が可能になったことから、学生を対象とした対面による交流の機会を設けた。近隣のB大学(以下、B)留学生センターとの共同開催とし、「第3回国際交流シンポジウム:国境を越えよう」と題した国際交流イベントを開催した。本シンポジウムでは、Aの国際交流委員会の担当教員が中心に企画し、学生によって構成された13名の学生実行委員を立ち上げ、教員と学生実行委員が準備から開催まで協働した。Bの国際教養学部に所属する11名の留学生を迎え、両大学からの代表学生が各国の文化に関するプレゼンテーションを行い、続いて学生同士の意見交換を行った。

Aは開設したばかりであり、今後も国際交流委員会を通して看護学部生のニーズを反映したシンポジウムを発展的に模索している。そのため、学生のシンポジウムに関する感想、国際的活動に関する意識や期待の実態を明らかにし、本学部における国際的活動の方向性を検討すると共に異文化理解を深める学習環境の基礎資料を得ることを目的に第3回シンポジウム後にアンケート調査を実施した。本稿ではアンケート調査結果から、本学部における国際的活動の方向性の検討と異文化理解を深める学習環境の検討に資する内容を分析し報告する。

Ⅱ.方法

1. 調査方法と対象者

本シンポジウムは、Aが企画し、Bの留学生センターと共同開催した。Aは2021年に国内で2番目の国際看護学部として開設され、グローバルな視点で様々な文化背景を持つ対象者を理解し尊重できる看護職者育成を理念としてあげている。Bは国際教養学部を有する大学で、留学生を多く受け入れている。

学生のシンポジウムへの参加は自由参加とし、両大学内にポスターを事前に掲示することや、Bの留学生センターを通じて学生に周知した。事前にAの国際交流委員教員と学生実行委員会が参加予定のBの留学生らがオンラインで交流を行うことで友好的な関係を構築しやすいように図った。シンポジウム後に、参加したAの学生とBの留学生の30名を対象にアンケート調査を行った。シンポジウム終了後に、研究の目的・方法・倫理的配慮を口頭で説明したうえで研究の協力依頼をし、無記名自記式アンケートを参加者全員に配布し、その場で各自が自由意思で回答し、回収ボックスに投函する形で回収した。

2. シンポジウムの内容

シンポジウムは2時間半の予定で構成し、Aの学生2名がコミュニケーションスタイルや食事作法等の日本文化の特徴についてプレゼンテーションを行い、Bの留学生3名が(ベトナム、ミャンマー、グアテマラ)が各国の文化的特徴、宗教、政治的な現状についてプレゼンテーションした。両大学のプレゼンテーションの後に参加者全員で意見交換を行った。

3. 調査内容

 調査項目については、Aの国際交流委員会によって検討を行った。調査項目は、所属、学年、出身国、海外渡航経験の有無(有り・無し)、渡航先(自由記載)、渡航目的とした。また、尺度化して回答するようにした項目として、「テーマや内容は適切であったか」、「意義がある内容であったか」、「他大学の学生と交流を深められたか」、「今後の活動に活かせるか」、「今後も国際交流したいか」とし、「とてもそう思う・そう思う・そう思わない・とてもそう思わない」の4択の回答とした。分析の際、とてもそう思う・そう思うを「そう思う」と統合し、そう思わない・とてもそう思わないを「思わない」と統合した。また、「どのように今後の活動に活かしたいか」、「国際交流する場合どのような内容をしたいか」、「全体的な感想」を自由記載とした。

4. 分析方法

アンケート調査で得られたデータについて、単純集計を行った。所属、学年、出身国、海外渡航経験の有無、渡航先、渡航目的、感想など、回答者全体の傾向を把握するため、質問項目毎に単純集計を行った。自由記載に関しては回答の類似性に基づきカテゴリーに分類した。

5. 倫理的配慮

本調査の実施にあたり、調査依頼用紙に目的、方法、倫理的配慮を記載した。倫理的配慮として、調査の協力は自由意志であること、回答しなくても成績評価などには関係せず、不利益を被ることはないことを口頭で伝えた。留学生については日本語能力が十分にあり読み書きが可能であったため日本語のアンケートを用いた。医療創生大学倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号23-56)。

Ⅲ.結果

1. 回答結果の概要

調査用紙の回収数は27(回収率90%)であった。A看護学生は16名(1年生:3、2年生:8、3年生:5)、B留学生は国際教養学部に所属する11名(ミャンマー、グアテマラ、インドネシア、ベトナム、中国、モンゴル出身)であった。

2. 海外渡航について

 海外へ渡航した経験を持つ者は、A看護学生が8名(50%)とB留学生が11名(100%)であった。渡航先については、看護学生はアメリカやカナダなどの北米、オーストラリアが多く、留学生は日本、タイ、シンガポールなどのアジア諸国が多かった(図1)。渡航目的については、看護学生は旅行や海外研修が多く、留学生は留学や旅行が多かった(図2)

図1渡航先

図2渡航目的

3. シンポジウムのテーマ、内容、意義について

シンポジウムのテーマと内容の適切さ、意義、他大学学生との交流を深めたかどうか質問したところ、それぞれの項目に対し、27の回答全てが「そう思う」と答えた(表1)。

表1 国際交流シンポジウム感 N=27

  そう思う そう思わない 無回答
テーマや内容は適切だったか 27 0 0
意義がある内容だったか 27 0 0
他大学の学生と交流を深めることができたか 27 0 0
今後の活動に活かせるか 27 0 0
今後も国際交流をしたいか 26 0 1

4. シンポジウムについての感想

シンポジウムに参加した感想として【新たな知識の獲得】【異文化交流の喜びを実感】【異文化理解の重要性を実感】の3つのカテゴリーが抽出された(表2)。

表2 参加後の感想 N=58

カテゴリー コード n(%)
新たな知識の獲得

インターネットでは得られない知識

諸外国との比較(共通点/多様性)

自身の文化を客観性に捉えることの重要性

国名は知っていても本当は知らなかつたことを実感

日本人なのに知らない日本文化を初めて学んだ

海外の衝撃的な事実を知った

想像していたより多くの学びがあった

33(56.9)
異文化交流の喜びを実感

楽しかった

交流の機会の重要性を実感

お互いにその場で疑問点を明らかにできた

大きな学びの機会であった

参加出来て嬉しかった

その国で育った人から異文化を学べる喜びを実感

対面での交流の重要性を実感

異文化に触れることの重要性を実感

継続的に交流したい

17(29.3)
異文化理解の重要性を実感

学びを看護職者として活かせる

多様性についての学びは看護職者として重要と実感将来の看護職者として異文化理解の重要性を実感

8(13.8)

【新たな知識の獲得】では『インターネットでは得られない知識』、『諸外国との比較(共通点/多様性)』、『自身の文化を客観性に捉えることの重要性』、『国名は知っていても本当は知らなかつたことを実感』、『日本人なのに知らない日本文化を初めて学んだ』、『海外の衝撃的な事実を知った(ミャンマーの内戦*について)』、『想像していたより多くの学びがあった』、などがあった。【異文化交流の喜びを実感】としては、『楽しかった』、『交流の機会の重要性を実感』、『お互いにその場で疑問点を明らかにできた』、『大きな学びの機会であった』、『参加出来て嬉しかった』、『その国で育った人から異文化を学べる喜びを実感』、『対面での交流の重要性を実感』、『異文化に触れることの重要性を実感』、『継続的に交流したい』、などがあった。【異文化理解の重要性を実感】では、『学びを看護職者として活かせる』、『多様性についての学びは看護職者として重要と実感』、『客観的であることの重要性を学んだ』、『将来の看護職者として異文化理解の重要性を実感』、などがあった。

また、アンケート結果ではないが、参加者全員での意見交換中に複数名の学生から「留学生は海外出身なのに英語は得意ではないことに気付いた」という発言があった。

*ミャンマーの内戦と難民の現状と留学生自ら体験した内容の発表

5. 今後の活動への活かし方

 「質問項目:今後の活動に活かせるか」については、27の回答全部が「そう思う」と答えた (表1)。自由記載の「どのように活かすか」では、【日常生活で外国人との交流に活かす】が58.7%、【学生生活に活かす】が24.1%、【将来の仕事に活かす】が17.2%であった(表3)。自由記載の具体的内容としては、【日常生活で外国人との交流に活かす】では『積極的に国際交流したい』、『困っている外国人を見かけたら助けたい』、【学生生活に活かす】では『今後のプレゼンテーションに活かしたい』、『ボランティア活動を積極的に行いたい』、【将来の仕事に活かす】では『看護師として外国人患者に対応する際に役立てたい』等の回答があった。

表3.どのように今後の活動に活かすか N=29

カテゴリー コード n(%)
日常生活で外国人との交流に活かす

積極的に国際交流したい

困っている外国人を見かけたら助けたい

17(58.7)
学生生活に活かす

今後のプレゼンテーションに活かしたい

ボランティア活動を積極的に行いたい

7(24.1)
将来の仕事に活かす 看護師として外国人患者に対応する際に役立てたい 5(17.2)

6. 将来的な国際交流

 今後も国際交流をしたいかと質問したところ、26の回答が「そう思う」と答えた(表1)。どのような国際交流をしたいか質問したところ、自由記載では【新たな学びへの希望】が62.0%、【新しい交流の形の提案】が37.9%であった(表4)。具体的内容としては、【新たな学びへの希望】では『海外の言語・文化・制度について深く知りたい』、【新しい交流の形の提案】では『小さいグループになって文化について話し合いたい』、『言語交換(日本語以外の言語による交流)やゲームなどで交流を深めたい』、『行事に関わるパーティーや料理を通した交流をしたい』、等の回答があった。

表4. 希望する国際交流 N=29

カテゴリー コード n(%)
新たな学びへの希望 海外の言語・文化・制度について深く知りたい 18(62.0)
新しい交流の形の提案

言語交換やゲームなどで交流を深めたい

行事に関わるパーティーや料理を通した交流をしたい

小さいグループになって文化について話し合いたい

11(37.9)

IV. 考察

1. 学生と異文化の接点

参加学生全員が自由記載に感想を記述していたことから、シンポジウムが両大学の学生にとって大きな学びに繋がったと推察される。Aの学生の半数は海外への渡航経験がなく、日常的に外国人との接点がないことが予想され、今回のシンポジウムで初めて海外出身の学生を身近に感じたことが推察される。インターネットやSNS、あるいは海外からの観光客を見ることで諸外国やそこに住んでいる人々についての漠然とした印象は持っており、「なんととなく知っていると思っていた」が具体的な実態を持った交流に至っていないことが推測される。

同様に、留学生は日本在住でありながらも日常生活で日本人学生と親しく交流する機会は限定的であることが推測される。シンポジウムの意見交換会の中で、モンゴル国とミャンマー連邦共和国出身参加者は、「母国を同じくする人たちとの交流はあるが個人レベルでの日本人の友人はほとんどおらず、アルバイト先で客としての日本人の関わりに留まっている」と述べていた。つまり、物理的に日本に住んでいても、日本の一般の人たちとの交流や個人的な知り合いや友人を得て日本の生活習慣や言語を生活レベルで知る機会が極少であると推測される。大橋(2008)は、「留学生が日本人の友達が欲しいと望んでも日本人学生からあまり声をかけられず孤立し、生きづらさを感じて精神的に追い込まれる留学生は少なくない」と述べている。Bの留学生センター長も「留学生が日本に馴染んで同年代の日本人学生と親しく交流できるように支援をしているが、複数年に及び日本に滞在していても日本人の友人を得ないまま帰国してしまうケースが少なくないことが課題である」と述べていた。諸外国との交流促進と同時に在日留学生との交流は日本の教育機関としても重要な役割であると考える。

今回のシンポジウムを経て両大学の学生が「もっと話したい」「留学生の母国について聞きたい」と答えていることから、今回のように学生同士が企画運営に一部なりとも関わることで、お互いがイベントに対するオーナーシップを持つことができ、自然に目の前にいる留学生と看護学生が相互に交流し、個人レベルでの関心を持つことができたことが示唆された。Whatley(2024)は教育的な意義を向上させるために対面による交流の重要性を述べているが、今回のシンポジウムではその効果を示すことができたと考える。

加えて、学生実行委員と留学生たちが事前にオンラインで顔合わせをしたことでお互いの不安が軽減されたことも意見交換が円滑に進められた要因の一つと考える。今回のようなシンポジウムを通して学生生活の中で異文化に触れる機会があることは、留学生の孤立防止、国際看護を学ぶ学生の異文化理解促進のツールとしての意義が示唆されたと考える。今回のシンポジウムは看護学生にとっても留学生にとっても両者にメリットが多く、学生のニーズに沿った国際交流のひとつの在り方であったと考える。

濱畑ら(2004)も述べているように、日常生活の中で外国人と交流する機会が少ない日本人学生には、教員が外国の実情について情報提供できる機会を作ることが大切であると考える。また、Aの学生らが小学生の時から学習してきた「英語」が万国共通と思っていた学生は、英語を母国語としない留学生(全員が英語圏以外の出身であり、英語よりも日本語が理解できる)との交流で、改めて「外国人は英語を話す」という思い込みに気づき、対面での交流の重要性を「使用言語」の面からも認識したことが示唆された。

2. 今後の国際交流活動の展望

 本シンポジウムは学生の自由参加としているが、今後は参加学生をさらに増加させることが課題の一つとしてあげられる。学生が参加しやすい日程選択、ニーズに沿った企画内容、広報強化に力を入れる必要があり、そのためには今回のアンケート結果は有益である。

 今後の展望として、両大学の学生が今後は小さなグループあるいは個々での会話の機会を持つことを望んでいた。Aの学生と留学生両者とも国際交流の機会は意義深いと捉えた結果となったが、今後も学生のニーズに合わせた交流の具現化に向けて、学生生活の中で異文化に触れる環境設定や国際交流の機会を整えることは大学や教員の重要な役割である。今後、環境設定や国際交流の機会の設定の検討に、アンケート調査で明らかになったことを基礎資料として活かしていきたいと考える。

 

Ⅴ. 結論

今回の調査から、シンポジウムが看護学生と留学生の双方にとっても有益であることが分かった。また、看護学生も留学生のどちらもが異文化交流に大きな興味関心があることや、シンポジウムにおける国際交流を通し、両者が交流の喜びを感じ、新たな知識の獲得に繋がったことが明らかになった。同時に、看護学生が海外や外国人に対して知っているつもりが、実際に対面にて個人レベルで交流してみると実は今までの関連情報が必ずしも事実ではないことや偏見に基づいていたことを認識する機会となった。又、留学生が少なからず経験する国内での孤立問題も表面化した。教育機関はこれらの問題の解決策を模索し、実行することが求められる。今後も日常的に国内外の異なる文化に触れる機会を検討・企画することが望まれ、シンポジウムは将来国際看護活動に関わる可能性があるA看護学生にとっては国際看護における基盤の一構成要素となり得る。

利益相反(COI)について

本研究について、筆頭著者および共著者には、報告すべき利益相反に関する開示事項はない。

著者の貢献

スーディ神﨑和代:構想、研究計画、データ収集・分析、原稿作成、最終確認

土谷テオリンちひろ:研究計画、データ収集・分析、図表作成、原稿作成、

飯塚美佐子:質問票作成、データ整理

橋本友美:質問票作成、データ整理

葛西好美:質問票作成、調査支援

吽野智哉:質問票作成、調査支援 

佐藤鳳玲:質問票作成、調査支援

中村摩紀:質問票作成、調査支援

謝辞

本調査にあたり、ご協力いただいたすべての学生の皆様に心より感謝申し上げます。

引用文献
 
© Japanese Society for International Nursing
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