Palliative Care Research
Online ISSN : 1880-5302
ISSN-L : 1880-5302
Original Research
A Retrospective Analysis of the 44 Cases with Opioid Switching to Methadone
Sachiko KimuraYoshinobu MatsudaKozue YoshidaRie HiyoshiKaori TohnoSachiko OkayamaHideki NomaTakayasu Itakura
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2015 Volume 10 Issue 3 Pages 194-200

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Abstract

メサドンはがん疼痛治療薬として本邦でも使用可能となったオピオイドであるが,個人差の大きい薬物動態や重篤な副作用のため使用にあたり細やかな配慮が必要であり,広く使用されるには至っていない.今回,他のオピオイドからメサドンに変更導入を行ったがん疼痛のある44症例を通してその鎮痛効果と副作用の検討を行い,がん疼痛治療におけるオピオイド鎮痛剤の中のメサドンの臨床的意義を考察した.44症例のうち導入に成功したのは37症例(84.1%)であり,成功症例においてメサドン投与前後の疼痛強度(Numerical Rating Scale;NRS)は平均7.5から2.8に低下していた.副作用として強い眠気が6例,嘔気が3例にみられたが,QT延長や呼吸抑制の重篤なものは認めなかった.高用量のオピオイドを必要とする難治性のがん疼痛患者では,メサドンも疼痛治療の選択肢となり得ると考えられた.

緒言

 がん患者の多くが経験するがん疼痛は,時に難治性であり生活の質を下げる要因となる.オピオイドはがん疼痛治療の中心となる薬剤であるが,副作用のため継続・増量が困難な場合や耐性による効果減弱のため十分な鎮痛効果が得られない場合に他のオピオイドに変更(スイッチング)することにより疼痛コントロールの改善がみられるといわれている1).オピオイドスイッチングの際には,それぞれの薬剤の特性を理解して選択し,患者の状態に合わせて用量調整する必要がある2)

 メサドンは,モルヒネ・オキシコドン・フェンタニルと同じμ受容体に作用する強オピオイド鎮痛剤であるが,日本においては他の強オピオイド鎮痛剤で治療困難な中等度から高度の疼痛を伴う各種癌における鎮痛を目的とする薬剤として承認されており,オピオイドナイーブの患者には使用しないようWHO三段階除痛ラダーの次のステップに位置づけられている.

 メサドンの特徴として,①経口投与での生物学的利用能が85%とモルヒネの30%より高く,他のオピオイドとの交差耐性が不完全であり,オピオイド使用量を減らすことができる.②μ受容体作用以外にN-methyl-D-aspartate (NMDA)受容体阻害作用やセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害作用も有し,神経障害性疼痛や痛覚過敏・オピオイド耐性形成に対する抑制効果が期待できる3).③活性代謝物が存在せず,胆汁排泄であり腎機能障害時にも使用できる.また,神経毒性のある代謝産物が生成されないため,ミオクローヌスやせん妄・幻覚が少ない4).④消化管で速やかに吸収されるため,経口投与による鎮痛効果発現時間は30分未満と早い.⑤脂溶性が高く吸収後に多くの臓器や組織に移行し,さらに血漿蛋白結合率も高いため半減期が長く,用量調整ができれば安定して使用できる.⑥他のオピオイドよりも低価格である.などが指摘されている2, 5, 6, 7, 8, 9, 10)

 一方,血中半減期が長くその個人差も大きい11)ことで用量調整が難しく,過量投与による呼吸抑制や心電図でQT延長を認めtorsade de pointesと呼ばれる特殊な心室頻拍あるいは心室細動などの重症心室性不整脈を生じて,めまい・失神などの脳虚血症状や突然死をきたしうる重篤な副作用が報告されている10, 12).また,主に肝臓チトクロムP450のCYP3A4およびCYP2B6で代謝されるため多くの薬物相互作用がある13)など,使用に際しては細やかな配慮を要する.

 今回,44症例のメサドン使用例を通してその鎮痛効果と副作用の検討を行い,がん疼痛治療におけるオピオイド鎮痛剤の中のメサドンの臨床的意義を考察した.

方法

 対象は2013年4月から2014年12月の間に宝塚市立病院緩和ケア内科にて,がん疼痛に対し他のオピオイドからメサドンにスィッチングした44症例.メサドンへの変更導入を考慮した理由は,全症例が先行オピオイドで鎮痛不十分であったためであるが,そのうち2例が腎機能障害のため他剤への変更困難,さらに1例が眠気,1例がせん妄のためオピオイドの増量困難であったものが含まれる.メサドンへスイッチング前に投与されたオピオイドは,1剤が29例,2剤が12例,3剤が3例であった.

 難治性がん疼痛の患者は他院や院内緩和ケアチームからも紹介を受けたが,処方はすべて緩和ケア内科医が行った.そのうち主治医ではなく他科入院中の患者を回診して他病棟で処方を行ったのが6例あり,主治医との連絡を密に行い,緩和ケアチームで経過観察を行い,併用薬のチェックは担当薬剤師により行われた.

 スイッチング前には全症例でメサドンの特性を説明し,血中濃度が安定して十分な鎮痛効果が得られるまでに時間を要すること,投与開始初期に急速に増量することは呼吸抑制や不整脈などの危険があるためレスキューで対応すること,併用薬やサプリメントを変更・開始するときには相互作用のある可能性があるため相談をすることを患者・家族に話し,了解を得て開始した.

 先行オピオイドをレスキューも含めモルヒネ内服量に換算し,国内臨床試験で用いた換算表(表1)に基づきメサドン初回投与量を決定したが,症例に応じ適宜増減を行った.スイッチング方法は,一度に先行オピオイドからメサドンに変更するstop and goで行った.メサドン適正使用ガイド8)での勧告に基づき初回投与後7日間は増量を行わず,疼痛の増強に対しては他のオピオイドでのレスキューを使用した.さらに,至適用量に到達するまで投与量を調整した.

表1 国内臨床試験で用いたモルヒネ経口剤からメサドン経口剤への換算表8)

 メサドン投与前後には心電図検査や電解質検査による観察を行い,相互作用の可能性のある併用薬は禁忌のものはないため中止はせず,注意深く継続投与とした.

 至適用量到達の判断基準を満たした日をタイトレーション完了とした.至適用量到達の判断基準は,国内第II相臨床試験14)での基準を採用し,メサドンを同一用量で6日間以上投与した翌日に,1)評価日前日のレスキュー使用回数が1日2回以下であって,かつNRSが切り替え前の値以下である,2)忍容できない副作用および過量投与の徴候がない,3)安全性・有効性観点から,投与量に問題ありと考えられる要因がない,のすべてを満たす場合とした.

 タイトレーション完了までの痛みの評価をNRSで行い,タイトレーションに要した日数,投与量,副作用発現の有無を分析した.NRSのデータは,自分で評価できる人では患者さんからの自己申告の数値を,できない人は医師または看護師の問診で数値化した.1日数回の評価のうち最高値をその日のNRSとし,メサドン投与前日とタイトレーション完了前日のデータを評価した.そして,メサドン投与前とタイトレーション完了時のNRSおよびQTc間隔(フクダ電子社の自動心電計でBazettの計算式を使用)を,Wilcoxon符号付順位和検定行った.

結果

 タイトレーションに成功したのは44症例のうち37症例(84.1%)で,タイトレーションに至らなかったのは7症例であった.その原因は,がんの進行による内服困難が4例,原疾患(咽頭癌)の悪化による死亡が1例,嘔吐による内服困難が1例,患者自身の中断希望が1例であった.

 成功37症例の患者背景を表2に示す.疼痛機序として,膵癌や腹腔・後腹膜リンパ節転移による上腹部・背部痛,肝腫瘍による肝被膜の伸展痛,がん性腹膜炎による腹部膨満を伴う局在が不明瞭な腹痛を内臓痛と判断し,消化器系癌に多くみられた.また,骨転移があり体動時に増悪する痛み,肺癌の胸壁浸潤,乳癌による皮膚潰瘍形成や頭頸部癌の局所再発によるうずくような痛み,癌が後腹膜や骨盤底に浸潤したことによる腰背部痛や肛門部痛を体性痛と判断した.さらに,脊椎骨転移・浸潤から脊髄に癌が進展しその神経支配領域にみられる灼熱痛・電撃痛・痛覚過敏・アロディニアなどの痛みと運動障害,癌やリンパ節転移が頸・腕・腰仙部神経叢に浸潤することによる障害神経支配領域の痺れを伴う感覚障害や運動障害を神経障害性疼痛と判断したが,体性痛と混在している症例が多くみられた.

表2 タイトレーション成功37症例の患者背景

 成功症例には,抗がん剤治療中が9例,またフェノールブロックまたはくも膜下ブロックの治療歴のあるものが3例,疼痛緩和目的の放射線治療歴のあるものが10例であった.

 さらにメサドンへの変更は,外来通院中で行われたのが11例,入院中に行われたのが26例であった.

 また,タイトレーション後に2例が他院へ転院したが,1例はメサドン処方医がいる緩和ケア病棟のある地元の病院へ転院,1例は病状が悪化し内服困難となったため塩酸モルヒネの皮下注射に変更後もとの病院へ戻った.

 メサドン変更前のオピオイドは,オキシコドン内服剤が20例,モルヒネ内服剤が5例,フェンタニル貼付剤が5例,モルヒネ注射剤が5例,オキシコドン注射剤が2例であり,その経口モルヒネ換算量(レスキューを含む)は平均157mg(60-660mg)/日であった.

 メサドンの開始量は10mg/日が1例,15mg/日が28例,30mg/日が6例,45mg/日が2例であり,タイトレーション完了時は平均26mg(10-90mg)/日となった.

 変更前の経口モルヒネ換算量とタイトレーション完了時のメサドンとの換算比は,平均6:1であった.

 また,タイトレーションに要した日数は,中央値で12日(7-55日)であった.至適用量到達の判断を行うのが7日目以降であるためタイトレーション完了の日数は最短でも7日となるが,導入成功37症例のうち9症例は7日目にタイトレーション完了と判断された.反対にタイトレーションに40日以上を要した症例が2例あったが,これは持続痛はコントロールされていたが突出痛のためレスキュー使用が多く至適用量到達の判断基準を満たさなかったことによる.

 メサドン投与前のNRSは7.5±1.8(平均値±標準偏差),タイトレーション完了時は2.8±2.0であり,有意に低下を認めた(p<0.001).さらに,神経障害性疼痛のある19例でのNRSは平均7.6から2.5と,より大きな変化がみられた.

 主な副作用としては強い眠気が6例と嘔気が3例にみられ,一旦減量を要したが中止には至らなかった.眠気がみられた6例のうち2例で中枢神経抑制作用のあるベンゾジアゼピン系睡眠導入剤を併用していたが,メサドンを減量することで改善がみられた.さらに,24症例に併用注意とされる抗精神病剤,利尿剤,副腎皮質ステロイド剤,ベンゾジアゼピン系睡眠導入剤,選択的セロトニン再取り込み阻害剤などを併用しており,また低カルシウム血症に対して内服治療中が4例あったが,500msec以上のQTc延長や重篤な不整脈をきたしたのは0例,呼吸抑制をきたしたのも0例であった.

 メサドン投与前のQTc間隔は平均433msec(391-474 msec),タイトレーション完了時のQTc間隔は平均431 msec(380-480msec)であり有意な変化は認めなかった(p=0.937).また,メサドン投与前のQTc間隔が平均433 msec未満の18例においてメサドン投与後の変化率は+1.4%(平均417 msecから423 msec),433 msec以上の19例では−1.7%(平均471 msecから463 msec)であり,QTc間隔のbaselineが長い症例ではメサドン投与後も長い傾向にあるが,変化率には影響がみられなかった.

 図1に,成功37症例におけるタイトレーション完了時のメサドン投与量とQTc間隔の相関を示す.ばらつきがあるものの,正の相関傾向がみられた.

図1 メサドン内服量とQTc間隔の相関係数

 QTc間隔が450-500msecに達した場合には投薬継続のリスクとベネフィットを患者と相談しより注意深い観察を要し,500msecを超えた場合にはメサドンの減量または中止する必要があると勧告されている15).今回の検討症例には500msecを超えたものはなかったが,1例は投与開始前から474msecと延長しており1週後488 msecとなったが,メサドンを減量することにより480 msecとなり,不整脈がみられることなくメサドンの継続が可能であった.

考察

 今回の検討では,メサドンへのスイッチングでタイトレーションが成功すなわち至適用量に到達したのは44例中37例の84.1%で,国内第II相臨床試験での到達率85.0%14)とほぼ同率であった.ニューヨークの緩和ケア病棟の20症例ではメサドンに変更して痛みの改善がみられたのが90%と報告している4).また,Mercadante16)は345症例と多くの症例で検討した結果,77.4%でメサドンへの導入に成功し,至適用量が安定した日数の中央値は3日であり,不成功症例は27例が死亡,また副作用や内服困難となり他のオピオイドに変更したのが51例であったと報告している.

 われわれは,先行オピオイドが経口モルヒネ換算で60 mg以上でも十分な鎮痛効果が得られていない症例では痛みの原因を再度アセスメントし,それが内臓痛だけでなく体性痛や神経障害性疼痛が混在して難治性疼痛となることが推定された場合,他のオピオイドへのスイッチングとしてメサドンへの変更も選択肢の一つとして検討した.そのため,比較的低用量から開始することになり,至適用量まで到達しやすかったのではないかと考える.

 メサドンは多くの代謝酵素にかかわっており,併用薬に注意を要する.オーストラリアではメサドン関連死の74%でメサドンとベンゾジアゼピン系睡眠導入剤が併用されていたとの報告がある17).今回の検討でも24例と多くの症例に相互作用の可能性のある薬剤を併用していたが中止が困難であることが多く,慎重にメサドンの用量調整が必要であったと思われる.

 薬剤による2次性QT延長症候群は,QTc間隔が薬剤投与後に25%以上延長するか,500msec以上となる場合にQT延長ありと診断される18).Ehretら19)はメサドンによるQT延長は用量依存性であると報告しており,メサドン開始前にQT延長のリスク因子の有無を確認し,開始後は定期的に心電図を施行してQTc間隔を評価し,メサドン投与量が100mg/日を超えた際また失神やけいれんの症状がみられた場合には臨時の心電図を施行するよう勧告されている6).また,メサドン投与前からQTc延長がみられることは珍しくなく,がん患者の疼痛治療としてメサドンを投与する際に注意深く経過観察を行えば,高度なQTc延長や致死的不整脈が起こる頻度は少ないとの報告もある20, 21).しかし,メサドン投与前にQTc延長のみられる患者では延長のみられない患者と比較して,メサドン内服後にQTc延長のriskが高いため慎重に用量調整を行い,心電図のモニタリングをする必要がある20)

 今回の症例では,タイトレーション完了後に疼痛の増悪でさらにメサドンの増量を行い,最終的に内服量が100mg/日を超えたのは2例のみでありQTc延長はみられなかったが,今後高用量での検討を要すると考えられる.また,Kornickら22)がメサドン投与量とQT間隔とは正の相関関係があると報告しているが,今回の44症例で検討した結果も同様の傾向を認めた(図1).

 またスイッチングの方法として,速やかにメサドンの鎮痛効果が得られることや先行オピオイドの副作用の早期消失を期待して,今回は全症例においてstop and go(SAG)でメサドンに変更した.他施設でも同じ方法で安全にスィッチングできたという報告もある23).一方,3日かけて1/3量ずつ変更していく3-Day switch(3DS)の方がメサドンの副作用や内服中断例が少ないとの報告もあるが24),この論文で扱った症例は先行オピオイド用量の平均が経口モルヒネ換算でSAG群900 mg/日,3DS群1330 mg/日と突出して高用量であり,我が国の標準的なオピオイド処方量(今回の症例での平均は157 mg/日)の際に同様の結果かどうかは不明で,このような高用量を先行オピオイドとして使用している場合には3DSの方が安全な可能性がある.

 さらに,メサドンの使用困難さの理由の一つに,他の強オピオイド鎮痛剤との用量換算比が確立されていないことがある.これはメサドンの薬理学的特性として他のオピオイド鎮痛剤との交差耐性が不完全であること,薬物動態に個人差が大きいことなどが理由とされている25).ヨーロッパ緩和医療学会(EAPC)のがん疼痛ガイドラインにおいて,経口モルヒネから経口メサドンへの換算比は1:5から1:12または24以上と広範にわたり,推奨比は確定できないとされている26).また,米国でのガイドラインに記載されている経口モルヒネから経口メサドンへの換算比やいくつかのレビューにおいて,経口モルヒネが高用量になると換算比は大きくなると報告されている25, 27, 28)

 このようにメサドンは換算比が確立されておらず,スイッチングに際して用量調整に難渋するだけでなく呼吸抑制や不整脈のリスクも伴うため,とくに高用量のオピオイドからのスイッチングや慢性呼吸不全,病状の悪化した症例では適応を慎重に検討する必要がある.

 今回,導入成功37症例のうち9症例は7日目にタイトレーション完了と判断できており,7日目までに痛みが軽減した症例もあるため,至適用量が比較的低用量である場合にはメサドンの効果発現が他のオピオイドと比較して必ずしも遅いのではないと思われる.

 がんにより痛み刺激が持続すると神経の刺激閾値が低下し,軽微な刺激でも痛みを伝えるようになる末梢性感作がおこり,痛覚過敏が発生する.さらに末梢神経の感作に伴ってNMDA受容体の活性化が起こると中枢神経系の感作も発生し,より強い痛みが広い範囲に発生するようになるといわれている.さらに,痛みによって放出されるノルアドレナリンやセロトニンによって活性化されている下行性疼痛抑制系も,強い痛みが持続すると機能低下を起こすといわれている2)

 メサドンは,NMDA受容体拮抗薬の作用とセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害作用を合わせもつオピオイドであり,これまでのオピオイドでは緩和できなかった痛みや神経障害性疼痛に対しても効果が期待でき10),高用量のオピオイドを必要とする難治性のがん疼痛患者でメサドンにスイッチをすると効果の得られることがあることが言われている.

 内臓痛だけでなく,がんの脊髄や神経叢・皮膚への浸潤,骨転移など体性痛と神経障害性疼痛が混在し,オピオイドを使用しても痛みが難治性であることが予想される場合,また副作用のためオピオイドの量を減らしたい場合や薬剤費を抑えたい場合には,メサドンの導入も選択肢にあがると考えられる.またそのような症例で,病状がかなり進行してからメサドンを導入して鎮痛効果が得られても,そのベネフィットの受けられる期間が短いことや高用量からメサドンへの切り替えはリスクが高いことから,難治性の疼痛と考えられる症例では内服モルヒネ換算で60mgに達し,低用量から開始できる早期にメサドンの導入を検討することが,患者負担も医療者のストレスも少ないのではないかと思われる.

 メサドンの内服開始後,血中濃度が安定して十分な鎮痛効果が得られるまで時間を要することを,医療者も患者・家族も理解することが必要である.開始にあたっては,薬剤師による併用薬のチェックや看護師による患者家族への精神的サポートも必要である.今回の症例のうち11例が外来で導入できたが,当院では投与開始前からタイトレーション完了まで,緩和ケア認定看護師が患者・家族との面談と電話連絡による支援を行い,安全に導入できるよう配慮している29)

 メサドンにより良好な除痛が得られた場合であってもそれに変わりうる他のオピオイド鎮痛剤がないため,病状の進行などによりメサドンが内服できなくなった時のスィッチングには,併用薬や患者の状態に応じて考慮する必要があると考えられた.

結語

 他のオピオイドからメサドンへの変更は,患者個々の病状に合わせて細かい配慮をすれば,安全に良好な除痛が得られる可能性がある.

 しかし日本では使用可能となってからの期間がまだ短く使用症例数が少ないため,さらに今後長期投与例や高用量使用例での効果,安全性を検討していく必要があると思われる.

References
 
© 2015 by Japanese Society for Palliative Medicine
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