Palliative Care Research
Online ISSN : 1880-5302
ISSN-L : 1880-5302
Letter to Editor
End-of-life Care in Patients with Hematological Malignancies
Eiji Ohno
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2016 Volume 11 Issue 2 Pages 1001-1003

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本誌第11巻第1号に掲載されました浦浜らの『終末期血液悪性疾患患者に対してPalliative Prognostic Scoreを用いて予後を予測することの妥当性と有用性』1)を興味深く拝読いたしました.血液悪性疾患患者の終末期ケアの質についての研究において,専門的緩和ケア施設への紹介が少なく急性期病棟やICUでの死亡が多いことが報告されており2),その原因の一つとして固形がんと比較した時に予後予測が困難であることが指摘されています3).緩和医療においては様々な生命予後予測ツールがありますが,そのほとんどは固形がんの患者を基に開発されています.最近,専門的緩和ケア施設に紹介された血液悪性疾患患者を対象にして,そのようなツールの一つであるPalliative Prognostic Index(PPI)の有用性が確認されました4).またKrippらも,そのような患者を対象にしたツールを開発し報告しています5).浦浜らの報告は,最もよく知られまた比較的簡単に利用できるツールの一つであるPalliative Prognostic Score(PaP)を用いて,同じように予後予測が可能であることを初めて報告しており,多くの医療者や血液悪性疾患の患者にとって有益であると確信します.

われわれはさらに,標準的治療では治癒が望めなくなった進行期の血液悪性疾患患者に対して,専門的緩和ケア施設に紹介される前の,まだ血液内科医の下で緩和的化学療法や輸血などの対症療法を行っている時点での予後予測が可能になれば,終末期ケアの質をより高いものにすることができると考えました.そこで,そのような状況の患者を対象に,PPIとKrippらのツールについて検討を行い,いずれも有用であることを報告しました6).同じ患者群を対象にして,浦浜らの報告と同様にPaP合計スコアを基にA群40例(生存期間中央値77.5日),B群44例(27.5日),C群30例(13.0日)の3群に分類し,log-rank検定を行ったところ,いずれの群間でも有意差(p<0.001)を認めました.従って,PaPはこのような時期においても有用なツールとなる可能性が示唆されました.

しかしながら,浦浜らの報告と同様,われわれも単施設における少数例での検討にすぎません.専門的緩和ケアを行う本邦の58施設が参加した予後予測の前向き大規模コホート研究であるJ ProVal Studyにおいて,解析された2361例のうち血液悪性疾患患者を53例含んでおり7),この患者群についてのサブ解析を行うことが待たれます.その結果を基に,血液悪性疾患患者の終末期ケアを充実させるため,さらに多数例でこれらの予後予測の妥当性を前向きに検討し解析していくことが必要です.そのためには,緩和医療と血液内科とが協働して,多施設によるデータベースを構築していくことが望まれます.

References
 
© 2016 by Japanese Society for Palliative Medicine
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