Palliative Care Research
Online ISSN : 1880-5302
ISSN-L : 1880-5302
Original Research
A Second Time Nationwide Survey of Quality of End-of-Life Cancer Care in General Hospitals, Inpatient Palliative Care Units, and Clinics in Japan: The J-HOPE 2 Study
Megumi ShimizuMaho AoyamaTatsuya MoritaSatoru TsunetoYasuo ShimaMitsunori Miyashita
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2016 Volume 11 Issue 4 Pages 254-264

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Abstract

終末期がん患者が受けた緩和ケアの質の維持向上のために,定期的な緩和ケアの質の評価は重要である.本研究では,我が国2回目の全国的遺族調査(J-HOPE2)を実施し,遺族の視点での緩和ケアの現状と前回J-HOPEからの変化の有無を検討した.日本ホスピス緩和ケア協会会員施設の一般病院25施設,緩和ケア病棟103施設,診療所14施設で死亡したがん患者の遺族への自己記入式質問紙により7,797名の回答を得た.ケアへの全般的満足度は高く維持されていた.しかし,改善の必要性のある側面として,一般病院では,医療者間の連携,看護師の知識技術,医師の対応,緩和ケア病棟では,入院しやすさ,診療所では,設備環境が示唆された.経時的には,J-HOPEの結果との臨床的に意味のある変化はなかった.我が国の緩和ケアの質を維持向上していくために,今後もこのような大規模遺族調査を定期的に実施していくことが重要である.

緒言

緩和ケアの質の評価を行うことは,ケアの質の維持向上のために重要である1).しかし,終末期の患者は,身体的,精神的に調査への参加が困難である2).そのため,患者による評価の代替として,遺族の視点から緩和ケアの質を評価することが,世界的に実施されている37)

我が国では,1990年の緩和ケア病棟入院料の新設に続き,2002年に緩和ケア診療加算も増設され,緩和ケアを提供する制度が整備されてきた.さらに,2006年制定のがん対策基本法に基づき2007年に策定されたがん対策推進基本計画の中で,緩和ケアが重点強化項目の一つとして掲げられ,緩和ケア病棟だけでなく,緩和ケアチームや在宅緩和ケアの推進も求められている8).また,2008年からの医師に対する緩和ケア継続教育プログラム9)や,緩和ケア普及のための地域プロジェクト1012)など,緩和ケアの質の向上,均てん化を目指す動きもある.このような中で,我が国全体の緩和ケアの質の評価を経年的に実施することは,さらなる取り組みや改善策を模索するうえでも重要である.

我が国では,緩和ケア病棟で死亡したがん患者の遺族により緩和ケアの質を評価する大規模調査が1997年,2001年に実施され13,14),2007年,2008年には緩和ケア病棟に加え,がん診療連携拠点病院および在宅緩和ケア施設を対象とした全国的遺族調査(the Japan Hospice and Palliative Care Evaluation study: J-HOPE study,以下J-HOPE)が実施された1517).J-HOPEでは,ケアの質について,構造・プロセス・アウトカムの3側面からの評価が実施された.J-HOPEでは,受けた終末期ケアについての遺族の評価は全体的に高いこと,がん診療連携拠点病院は緩和ケア病棟や在宅緩和ケア施設より緩和ケアの改善の余地があること,在宅緩和ケア施設では,望ましい死の達成度がより高く評価されていたことが示された.J-HOPEでは,各参加施設に,全体の結果と参加施設個別の結果をフィードバックし,参加施設が今後のケアに活かすことができるようにした.

本研究では,J-HOPEに引き続き,遺族によるケアの質の評価に関する研究the Japan Hospice and Palliative Care Evaluation study 2: J-HOPE 2 study(以下,J-HOPE2)により,遺族による緩和ケアの質の評価のための全国的大規模調査を実施した.とくに,緩和ケア病棟については前回J-HOPEと同様の施設を参加対象とすることにより,3年間での我が国の緩和ケアの質の維持や変化をより正確に把握することとした.さらに,J-HOPE2においても,参加各施設個別の結果を各施設にフィードバックすることにより,前回J-HOPEに参加した施設については,3年間での取り組みについて遺族からの評価を提供できる.

本稿では,J-HOPE2の全体の結果を,前回J-HOPEと比較し,我が国の緩和ケアの質が維持されているか,改善されているかを,遺族の視点からの評価により検討することを目的とした.

方法

本研究は,日本ホスピス・緩和ケア研究振興財団事業「日本ホスピス緩和ケア協会会員施設における『遺族によるケアの質の評価に関する研究』(J-HOPE2)」として,2010年10月から2011年1月に実施した.

1 調査対象

調査対象施設は,2010年1月1日時点で,日本ホスピス緩和ケア協会の会員(以下,協会会員)の緩和ケア病棟,一般病院,診療所のうち研究参加に同意した施設とした.参加施設は,緩和ケア病棟は,当時点のホスピス・緩和ケア病棟承認届出受理施設195施設中103施設(53%),一般病院は,当時点の緩和ケア診療加算届出受理施設および緩和ケアを提供している一般病院88施設中25施設(28%),診療所は,当時点の緩和ケアを提供する診療所35施設中14施設(40%)だった.

対象者は,調査対象施設で,2008年1月1日から2009年12月31日までの間に死亡したがん患者の遺族とした.対象者の適格基準は,がん患者の遺族(キーパーソン,または身元引受人),死亡時患者年齢が20歳以上,遺族年齢が20歳以上,入院(または利用開始)から死亡までの期間が3日以上とした.除外基準は,遺族の同定が不能,遺族が認知症,精神障害,視覚障害などにより調査票記入不可能または精神的に著しく不安定なために研究への参加が不適当と担当医が判断した者,家族にがんの告知がされていなかった者とした.

2 調査手順

調査対象施設にて,2008年1月1日から2009年12月31日の期間に死亡したがん患者の遺族について,2009年12月31日を起点に100名を目安に適格基準に基づき対象者リスト作成後,除外基準により対象の選定を行った.調査票一式を参加施設から調査対象者に郵送した.回答後の調査票は,郵送により事務局が直接回収した.調査票内の質問項目への回答を以て調査参加の同意を得たこととした.調査への参加拒否の場合,調査票表紙の調査への参加を希望しないという選択肢に丸をつけ,事務局へ返信するよう依頼した.返信のなかった対象者へは,最初の送付から1~3カ月後に再度調査票を送付した.

3 調査項目

1)遺族による緩和ケアの質の評価

受けたケアへの全般満足度は,「全般的にホスピス・緩和ケア病棟に入院中(療養中)に受けられた医療は満足でしたか」という質問をし,“1.非常に不満”“2.不満”“3.やや不満”“4.やや満足”“5.満足”“6.非常に満足”の6段階で評価を得た.

患者の受けたケアについて,構造・プロセスを評価するためにCare Evaluation Scale: CES18)を使用した.CESは,10領域(患者への説明・意思決定,家族への説明・意思決定,医師による身体的ケア,看護師による身体的ケア,精神的ケア,設備・環境,費用,利用しやすさ,連携・継続,介護負担軽減)28項目から構成される.受けたケアに対しての改善の必要性について“1.大いにある”“2.かなりある”“3.ある”“4.少しある”“5.ほとんどない”“6.全くない”の6件法で評価する尺度で,信頼性・妥当性が証明されている.

緩和ケアの質のアウトカム評価のために,Good Death Inventory: GDI1921)を使用した.GDIは遺族によりがん患者の望ましい死の達成度を評価する尺度である.日本人が,望ましい死の達成として共通して重要だ考える10領域30項目と,人によって重要さは異なるが大切だと考える8領域8項目で構成され,“1.全くそう思わない”“2.そう思わない”“3.ややそう思わない”“4.どちらともいえない”“5.ややそう思う”“6.そう思う”“7.非常にそう思う”の7件法で評価する尺度で,信頼性と妥当性は確認されている.

2)患者・家族背景

患者背景は,年齢,性別,原発部位,各施設最終入院日(診療所は在宅ケアの開始日),死亡日を,研究参加施設より収集した.遺族背景は,年齢,性別,健康状態,患者との関係,付き添いの頻度,介護交代者の有無,患者が亡くなる前1カ月の医療費について,対象者から回答を得た.

4 倫理的配慮

対象者に対し,文書にて調査の趣旨,サンプリング方法,プライバシーの保護(無記名であること),参加の自由,参加しない場合も不利益を被らないことを説明した.調査票への回答をもって参加への同意とした.

本研究は,J-HOPE2研究事務局のある,東北大学大学院医学系研究科の倫理委員会の審査を受けた.参加各施設は,施設内倫理委員会の審査または施設長の承認を得た.

5 分析方法

各調査項目の記述統計を算出した.また,一般病院,緩和ケア病棟,診療所の施設群ごとにCES,GDIの共通して重要な項目,人によって重要な項目の合計得点の平均を算出した.

続いて,ケアへの全般的満足度は,“やや満足”“満足”“非常に満足”を「満足」との回答として,CESは,改善の必要が“全くない”“ほとんどない”を「改善の必要がない」との回答として,GDIは,“ややそう思う”“そう思う”“非常にそう思う”を「そう思う」との回答として回答割合の合計を施設別に算出した.

さらに,経年的な変化の検討のために,一般病院,緩和ケア病棟,診療所の結果を,それぞれJ-HOPEのがん診療連携拠点病院,緩和ケア病棟,在宅緩和ケア施設の結果と比較した.対象者背景は,ウィルコクソンの順位和検定またはカイ二乗検定により2群比較を行った.全般的満足度,CESおよびGDIの短縮版の各項目は,各施設群の平均点を算出し,各々ウィルコクソンの順位和検定により2群の得点を比較し,続いて,対象者背景(患者年齢,患者性別,原発部位,入院期間,遺族年齢,遺族性別,健康状態,患者との関係,付き添いの頻度,介護交代者の有無,患者の死亡前1カ月の医療費)を調整し比較を行った.また,臨床的な差の大きさを分析するために,Cohenにより定義されたEffect Size(ES,効果量)を算出した22).有意水準は両側0.05未満とし,統計解析はSAS®9.4(SAS Institute Inc., Cary, NC, USA)を用いた.

結果

応諾状況を表1に示した.潜在的な対象者は,合計14,369名で(一般病院では2,607名,緩和ケア病棟では10,642名,診療所では1,120名),うち892名が除外基準により除外された.457名への調査票が宛先不明だったため,調査票有効送付数は13,020であった.返送のあった8,480名(65%)のうち,回答拒否が683名であり,最終的に7,797名からの回答を得た(有効回答率60%).

表1 応諾状況

対象者背景のJ-HOPEとの比較を表2に示した.患者,遺族の性別は,どの施設群でもJ-HOPEと比べ有意な違いはなかった.患者,遺族の平均年齢は,どの施設群も一貫して,1~2歳程度J-HOPE2で高い傾向にあったが,診療所では有意な違いではなかった.その他の背景も大きな変化はなかった.

表2 対象者背景

全般的満足度,CES,GDIの短縮版の項目について,施設群ごとの,「満足」「改善の必要がない」「そう思う」との回答割合をJ-HOPEの結果とともに図1図2に示した.J-HOPE2において,全般的満足度で,「満足」との回答割合は,一般病院84%.緩和ケア病棟94%,診療所96%だった.CESでは,「病室(自宅)は使い勝手がよく,快適であった」は,「改善の必要はない」との回答割合が,緩和ケア病棟では75%だったのに対し,一般病院では54%,診療所では,46%だった.GDIでは,「ひととして大切にされていた」「医師を信頼していた」で「そう思う」との回答割合は,一般病院89%,79%,緩和ケア病棟94%,83%,診療所96%,90%だった.一方,「望んだ場所で過ごせた」は,診療所は95%の遺族が「そう思う」だったが,緩和ケア病棟66%,一般病院54%だった.「落ち着いた場所で過ごせた」では,診療所92%,緩和ケア病棟85%が「そう思う」だったが,一般病院では65%だった.全体として各施設群の評価の傾向は経年的に類似していたが,一般病院はJ-HOPEのがん診療連携拠点病院より評価が高い項目が多かった.

図1 全般的満足度,Care Evaluation ScaleのJ-HOPEとJ-HOPE2の結果

全般的満足度6段階評価のうちの“非常に満足”“満足”“やや満足”との回答の合計割合,Care Evaluation Scaleの短縮版の各項目について6段階評価のうち,改善の必要が“全くない”“ほとんどない”との回答の合計割合を示した.

図2 Good Death Inventory(共通して重要なこと)のJ-HOPEとJ-HOPE2の結果

Good Death Inventoryの共通して重要なことの短縮版の各項目について7段階評価のうち“非常にそう思う”“そう思う”“ややそう思う”との回答の合計割合を示した.「人に迷惑をかけてつらいと感じていた」は割合が高いほど評価が低いことを意味している.

J-HOPEとJ-HOPE2のCES,GDIの合計点の平均を表3に示した.また,受けた全般的満足度,CES,GDIの各項目の施設群別の経年比較とESも示した.CESの合計点は,一般病院で,J-HOPE2の方が2.9点高くなっていたが,緩和ケア病棟,診療所では違いは1点未満だった.GDIの共通して重要な項目の合計点は,すべての施設群でJ-HOPEとの違いは1点未満だった.GDIの人によっては重要な項目の合計点は,一般病院ではJ-HOPEから1.5点高くなっていたが,緩和ケア病棟,診療所では違いは1点未満だった.各項目の一般病院(J-HOPE2)とがん診療連携拠点病院(J-HOPE)の比較では,CESでは,ほぼすべての項目で,統計的有意にJ-HOPE2で評価が高くなっていたが,効果量が0.15以上の項目はなかった.GDIでは「からだの苦痛が少なく過ごせた」「先々に起こることを詳しく知っていた」で,統計的有意にJ-HOPE2で評価が高く(調整前,調整前ともにP<0.001),効果量も,0.140,0.148だった.緩和ケア病棟では,全般的満足度,CESおよびGDIの項目で,統計的有意な違いがあった項目は多かったが,効果量が0.15以上の項目はなかった.診療所では,GDIの「人に迷惑をかけてつらいと感じていた」のみ,統計的有意にJ-HOPE2の評価が高く(調整前P=0.006,調整後P=0.001),効果量は0.18だった.

表3 全般的満足度,Care Evaluation ScaleおよびGood Death Inventoryの各項目の平均とJ-HOPEとJ-HOPE2の比較

考察

この研究は,我が国におけるがん患者遺族を対象とした2度目の全国的大規模遺族調査であった.我が国の緩和ケアの質を経年的に評価し,維持・向上の指標とするために,重要な調査であった.主な知見は以下である.1)全体として,受けたケアへの遺族の満足度は高かった.とくに,患者の医師への信頼と,患者を尊重するケアに関しては高い評価であった.2)全体的な評価の傾向は,前回J-HOPEと類似していた.3)前回J-HOPEとの施設群別の比較では,臨床的に大きな変化はほとんどみられなかったが,一般病院(今回J-HOPE2の対象施設)はJ-HOPEのがん診療連携拠点病院の結果よりも評価がよい傾向にあった.

J-HOPE2の結果では,受けたケアに対する遺族の全般的満足度は高かったといえる.さらに,医師との信頼関係や患者を人間として尊重するケアといった基本的なケアについての評価も高かった.この結果は,J-HOPEと類似しており,協会会員施設における緩和ケアの質に対する遺族の評価は,高く維持されていることが示唆された.

J-HOPE2の結果について,施設群間での比較では,傾向はJ-HOPEと類似していた.一般病院では,他の施設群よりもケアについての改善点が多く残されていた.とくに,医療者間の連携,看護師の知識技術,医師の対応の評価が低く,多職種連携による緩和ケアの提供の充実の必要性が示された.緩和ケア病棟のケアについて,遺族は高く評価をしていた.とくに,設備環境,苦痛緩和について高い評価だった.この傾向は,J-HOPEと一貫していた.一方,入院のしやすさについては,他の施設群よりも評価が低かった.近年,我が国の緩和ケア病棟の数は増加してきており,入退院者数も増加している23).しかし,必要な時の緩和ケア病棟へのスムーズなアクセスはまだ不十分であると考えられる.診療所を利用した患者の遺族は,とくに,患者の望ましい死の達成度の評価が高かった.この結果は,我が国の先行研究や,海外での遺族調査とも一貫していた2426).身体的,精神的な症状の緩和だけでなく,希望した場所で落ち着いた環境の中療養できたこと,尊厳を保てたこと,家族と十分に過ごせたことも在宅療養の利点だったと考えられる.一方,在宅療養では,設備面に改善の必要性が残されていた.2010年には,終末期がん患者が,介護保険により,適切な時期にベッド等の福祉用具の貸与が受けられるよう,厚生労働省より通知が出されたが27),終末期がん患者が適切に介護保険サービスを利用するためには,サービス対象となる「終末期がん」であるとの判断の難しさや,申請手続き上の種々の行程に時間かかるなどのバリアも存在している28).在宅での緩和ケアのさらなる質の向上には,医療,福祉,行政を含めたシームレスな連携も重要だと考えられる.

各施設群別のJ-HOPEとJ-HOPE2の比較では,臨床的に大きな変化は,ほとんどみとめられなかった.しかし,J-HOPE2の一般病院とJ-HOPEのがん診療連携拠点病院の結果の比較では,一貫して,一般病院で評価が高い傾向にあった.とくに,身体的苦痛緩和の評価は臨床的にも中程度の評価の違いがみられ,一般病院は,がん診療連携拠点病院よりも,専門的な緩和ケアの評価が高い可能性が示唆された.J-HOPE2の一般病院は,協会会員施設であり,緩和ケアに注力している成果が表れている可能性がある.また,診療所の比較では,他者への負担感についての評価は,J-HOPE2で臨床的な改善が示唆された.終末期の患者の心的状態に影響をするといわれており29,30),他者への負担感を軽減するための医療者や家族の望ましい関わり方についての示唆も得られている31).しかし,他者への負担感についての診療所の遺族評価の改善の理由を考えるうえでは,別の調査が必要である.

本研究の限界を以下に挙げる.まず,本研究の回答率は,高いとはいえない.満足度が高いことと,回答率の高さは関連するといわれており32),未回答者は,ケアへの評価が低い可能性があるため,本研究で得られた回答は,ケアの評価の高い方へ偏っている可能性がある. 2つ目に,本研究は,遺族からの視点での評価であるため,患者本人の評価とは異なる可能性がある33).3つ目に,患者がケアを受けていた時期から,6カ月以上経過しているため,記憶バイアスも否定できない.4つ目に,遺族の評価には,施設背景による影響も予想される.J-HOPE2の緩和ケア病棟の結果について施設背景による影響を探索した研究では,いくつかの施設要因が示唆されている34).今回の研究では,一般病院は,がん診療連携拠点病院よりも緩和ケアに関する評価が高い可能性が示唆されたが,今回対象となった一般病院は,施設の規模,緩和ケアチームの有無,緩和ケアに関わるスタッフの配置の違いが緩和ケア病棟以上に大きいことが予想される.そのため,より詳細に施設に関するデータ(規模,人員配置,サービスなど)を収集し,どのような要因が緩和ケアの評価に影響するのかを明らかにする必要がある.5つ目に,本研究では,リクルート対象施設中の参加率は,低かったといえる.本研究では,調査の方法上,参加施設にも大きな労力がかかる.参加施設が,より研究参加によるメリットを実感できるよう,調査内容やフィードバックの方法などを検討していく必要がある.最後に,本研究では,参加施設を協会会員施設に限定したため,我が国全体の緩和ケアの質の評価とは言い難い.しかし,経年的な評価は,いかに同様の対象,方法で調査を行うかが重要であるため,現段階では,協会会員施設を参加対象とすることが,実施可能な方法である.しかし,我が国全体の緩和ケアの質を経年的に評価し,緩和ケアの維持向上を図るには,施設ベースではなく,死亡小票を用いるような遺族調査を定期的に実施することも望まれる.

結論

本研究は,全国の一般病院,緩和ケア病棟,診療所で死亡したがん患者の遺族を対象とした我が国2回目の大規模調査であった.結果について,前回の大規模遺族調査と大きな変化はなく,受けた緩和ケアへの遺族の全般的満足度は高く維持されていたが,どの施設群においても改善の余地のある事項が残されていることが明らかとなった.緩和ケアの質の維持向上のための取り組みが続けられているなかで,今後も,このような大規模調査を定期的に実施していくこと,さらに,評価に影響する要因をより詳細に探索していくことが重要である.

References
 
© 2016 by Japanese Society for Palliative Medicine
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