Palliative Care Research
Online ISSN : 1880-5302
ISSN-L : 1880-5302
Original Research
Cancer Survivors’ Experiences of Changes in Employment and Income, and the Factors Affecting Their Experience, Quality of Life and Mental Health
Sachiko ShimizuMitsunori MiyashitaDaisuke FujisawaMaiko FujimoriMiyako Takahashi
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2018 Volume 13 Issue 3 Pages 209-218

Details
Abstract

がんサバイバーの就業状況の変化に関する経験の実態とQOL・心の健康との関連を明らかにした.60歳未満男性91名,女性269名のデータを2012年12月にネット調査で得た.罹患後の就業変化は,就業時間が減った男性22%,女性8%で,仕事を辞めた男性11%,女性21%と,男女間で有意差があった(P=0.000, P=0.031).就業変化の関連要因は,男性は未婚(P=0.002),PSが1以上(P=0.008),疼痛治療中(P=0.039),女性はPSが1以上(P=0.001),診断からの経過年数が長い(P=0.045)だった.就業変化とQOLの関連は,変化があった男性で身体・社会的QOL,同女性ですべてのQOLが低かった.心の健康との関連では,変化があった男女は,抑うつ不安ではないが有意に得点が高かった.変化があった男性は,抑うつ不安状態の人が多かった.今後,就業に焦点を絞った調査が必要である.

緒言

わが国のがん罹患者は2016年以降100万人を超えると予測されているが1),高齢化の影響を除いた2017年のデータによると,がんの5年相対生存率は多くの部位で上昇傾向,がんによる死亡率は減少傾向であることが明らかになっている2).年齢とがん罹患状況3)をみると,男性で罹患率が高い胃がんや大腸がんは40代で増え始め,60代までに急増する.女性で最も罹患率が高い乳がんは30代で急増,45〜49歳にピークとなる.子宮がんは20代から増え始め,ピークは50〜54歳である.このことは,働き盛りでがんに罹患,闘病する人が少なくないことを示す.実際に,就業しつつ悪性新生物で通院しているのは32.5万人で,生産年齢人口の約3割に該当すると言われる4).この中には,受療中や,治療後の定期受診中など様々な人が含まれていると考える.

治療を受けて経過観察中の狭義のがんサバイバーは,治療の影響による倦怠感などの症状が長期に続くこと5)や,リンパ浮腫や疼痛69),機能障害が持続することがわかっており,身体面における生活の質(QOL)の維持が重要な課題となっている.再発の可能性が高い治療後3年間は再発不安が顕在化する時期だが10),不安とQOLは関連があり11),不安がQOL評価に役立つことが示されている.社会面では,働き盛り世代のサバイバーの特徴的な悩みに「仕事」「経済面」が挙がっているが12),実際に彼らの3〜4割が退職や休職,解雇などを体験し,半数が収入の減少を経験していることがわかっている1317).サバイバーの就業状況における変化の実態は明らかになっているが,就業状況の変化とQOLや抑うつ不安状態との関連はあまり調査されていない.20~40代の乳がん患者において,仕事継続の変化の有無とQOLとの関連が調査されていたが18),関連はみられていなかった.対象が乳がん患者に限られており,男性を含め年齢層を広く調査することで関連の有無が明確になると考える.がん罹患による退職や望まない異動などがあればそれ自体がストレスだが,その後の就職活動や新たな業務の獲得などはさらなる負担となり,QOLの低下を招く可能性がある.就業状況の変化とQOL・抑うつ不安状態の関連を探索することは,就業の支援を検討するうえで重要な資料となると考えた.本研究は,がんサバイバーの就業状況の変化に関する経験の実態とQOL,および心の健康との関連を探索することを目的とする.

用語の操作的定義

広義のがんサバイバー:がんの罹患経験がある患者 狭義のがんサバイバー:病気について,医師から完治した(取りきれた・消えた・なくなった)と言われた,かつ,現在の治療状況を「治った後の定期的な検査通院中」と回答した患者

研究方法

方法

インターネットによる無記名の質問紙調査である.

対象

インターネット調査会社((株)インテージ)に登録しているがんサバイバー600名,がん腫は問わない.適格基準は以下とする.

・診断後1年以上,10年未満のもの

・インターネット調査会社にモニター登録しているもの

・インターネットが使え,認知機能に問題がないもの

・調査への参加に同意が得られたもの

研究方法

インターネット調査会社に,サンプリングとデータ収集を依頼し,2012年12月に調査した.「がんと診断されてからの期間が10年未満」と答えた2,059名のうち,診断時からの年数が2年未満,2年以上5年未満,5年以上10年未満のカテゴリーごと各300名,男女比が1:1になるよう計900名に依頼した.調査全体の必要なサンプルサイズは,精度ベースで設定した.必要症例数が最大となる回答割合50%の点で全体の95%信頼区間を±5%の精度とすると全体で400名,各診断後期間で±7%とすると200名だが,一部の対象を除外する可能性があるため,全体で600名とした.調査依頼数は,過去の複数の調査で分析対象者200〜300名に対し回収率が6〜7割であった19)ことから900名とした.本研究は調査全体の二次解析であり,60歳未満に限定したため,分析対象の360名における精度は,回答割合50%の点で95%信頼区間において±5.2%で,当初の目的をほぼみたしていると考えられる.インテージは約130万人がモニター登録し,プライバシーマークを取得し個人情報保護に関し信頼できる会社である.

調査内容と項目

がんサバイバーが現在までに経験した就業状況の変化に関する経験,がんサバイバー向けQOL尺度(QOL-CS: Quality of Life for Cancer Survivor),K6(心の健康尺度),患者の背景である.

1.がんに罹患してから現在までに経験した,病気による就業状況の変化に関する経験

就業状況は変化がない,就業時間が減った,休職した,仕事を辞めた,転職した,希望していない異動があった,希望していない解雇があった,から該当するものを複数回答で選択してもらった.「就業状況は変化がない」の選択者を「変化がない人」,それ以外を「変化があった人」とした.

2.がんサバイバー向けQOL尺度(QOL-CS)

1995年にFerrellら20)により開発された,がんサバイバーの身体的,精神的,社会的,スピリチュアルのQOLの状態を尋ねる自記式質問紙である.全41問で,0:非常に良い~10:非常に悪い,の10段階尺度で,点数が高いとQOLが低いことを示す.2006年に,日本語版の信頼性と妥当性が確認されている21)

3.K6(心の健康尺度)

2002年にKesslerら22)により開発された心理的苦痛の状態を図る尺度(K10)の短縮版である.6つの質問「神経過敏に感じましたか」「絶望的だと感じましたか」などが過去30日間にどの程度あったかを,0:全くない~4:いつも,から選択し,抑うつ不安状態を図るものである.高得点なほど高度の抑うつ不安状態にあることを示す.2008年に日本語版の信頼性と妥当性が確認されている23).カットオフ値を,重症精神障害を予測する場合の13点とし,13点未満を「抑うつ不安なし群」,13点以上を「抑うつ不安群」とした.

4.患者の背景〔過去および現在の受療状況,Performance Status(PS),社会経済的背景など〕

(1)過去および現在の受療状況

過去については,1年以内の受療状況を,「入院,手術」などから,現在では,「病気そのものを治療するための治療中,治った後の定期的な検査通院中」などから選択してもらった.

(2)活動の程度 (PS)

PS24)は,ECOG(Eastern Cooperative Oncology Group)が開発した,活動程度を0〜4で示すスケールである.日本では,日本臨床腫瘍研究グループによる翻訳版が用いられている.詳細は下記である.0:問題なく活動可能,1:激しい活動は制限されるが,歩行可能,軽作業や座位の作業も可能,2:歩行可能で身の回りのことはすべてできるが作業は困難.日中の50%以上をベッド外で過ごす,3:限られた身の回りのことのみ可能.日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす,4:全く動けず身の回りのことも困難.完全にベッドか椅子での生活.

(3)社会経済的背景(現在の就業状況と世帯収入)

就業状況は,「仕事をしている(フルタイム),仕事をしている(パートタイム),休職中」などから,世帯収入は,「199万円以下,200万円以上399万円以下」などから選んでもらった.

分析方法

60歳未満を対象とし,分析は主として男女別に行った.就業状況の変化に関する経験については,記述統計後,就業状況の変化に関する経験と関連要因については,ロジスティック回帰分析を行った.単変量解析,ロジスティック回帰分析にて変数選択を行った.有意水準は0.05以下とし,統計ソフトはIBM SPSSversion 21.0を使用した.

倫理的配慮

東北大学倫理審査委員会にて承認を得た.個人情報保護などの説明はアンケート冒頭でインターネットを介して行った.対象者はインターネットモニターで,回答の提出で同意が得られたと解釈した.無記名の自記式質問紙調査で,プライバシーは保護された.

結果

対象者の背景(表1

調査対象の男女各450名のうち,男女とも各314名から回答があった.うち,60歳未満の対象は男性91名,女性269名で,回収率は男性29%,女性86%だった.

男性の背景は,既婚74%,消化器がん48%,何らかの疼痛治療を受けている16%だった.PS は0が58%,診断後年数は2年未満37%,再発・転移あり22%,がんが完治した(取りきれた・消えた・なくなったと医師から言われた)は59%,治った後の定期的な検査通院中が58%だった.

女性は既婚75%,乳がん54%,何らかの疼痛治療を受けている10%であった.PSは0が68%で,診断後年数は2年未満35%,再発・転移あり14%,がんが完治した67%,治った後の定期的な検査通院中が58%だった.

表1 対象者の背景(N=360)

サバイバーの現在の就業状況とがんに罹患してからの就業状況の変化に関する経験(表2

1.サバイバー全体

男性でフルタイムは72名(79%),パートタイム3名(3%),無職・定年退職9名(10%),女性でフルタイムは67名(25%),パートタイム63名(23%),専業主婦108名(40%)だった.

がんに罹患してからの就業状況の変化に関する経験(複数回答)は,男性91名中46%,女性269名中27%が変化を経験していた.男性は,就業時間が減った(22%),転職した(14%),仕事を辞めた(11%)で,女性は,就業時間が減った(8%),転職した(4%),仕事を辞めた(21%)であった.

2.狭義のサバイバー

病気が完治した(取りきれた・消えた・なくなったと医師から言われた)かつ,現在の治療状況を「治った後の定期的な検査通院中」とした狭義のサバイバーは,男性45名,女性127名だった.男性の46%,女性の28%が就業状況の変化を経験していた.複数回答による内訳は,男性は,就業時間が減った(20%),仕事を辞めた(9%),転職した(11%)で,女性は就業時間が減った(7%),仕事を辞めた(16%),転職した(3%)だった.

表2 サバイバー全体,狭義のサバイバー※の現在の就業状況と就業状況の変化に関する経験(N=360)

がんに罹患してからの収入の変化(表1

男性の現在の世帯年収は,399万円以下が24%,400万円以上599万円以下が27%で,女性は400万円未満が29%,400万円以上599万円以下が23%だった.

がん罹患後の収入について,男性は,変わらない51%で,44%は下がったと答えた.年収が200万円以上下がったのは12%であった.女性では,収入が変わらないのは60%,36%は下がっていた.年収が200万円以上下がったのは4%であった.

就業状況の変化に関する経験に関連する要因(表34

男性で就業状況の変化に関する経験と関連があった変数は,単変量解析では未婚であること(P=0.002),子供がいないこと(P=0.009),世帯人員が少ないこと(P=0.014),何らかの疼痛治療をしていること(P=0.046),PSが1以上であること(P=0.003)で,再発・転移や完治の有無,現在の治療状況は,統計学的に有意に関連しなかった.多変量ロジスティック回帰分析で変数選択を行った結果,男性で最終的なモデルに含まれた変数は未婚であること〔オッズ比(OR)=6.03,P=0.002〕,PSが1以上であること(OR=3.69,P=0.008),何らかの疼痛治療を受けていること(OR=4.30,P=0.039)であった.

女性で変化に関する経験と関連があった変数は,単変量解析では,何らかの疼痛治療をしていること(P=0.007),PSが1以上であること(P=0.0001),診断時からの経過年数が長いこと(P=0.049),完治したと言われたこと(P=0.009)で,再発・転移の有無や,現在の治療状況は統計学的に有意に関連しなかった.多変量ロジスティック回帰分析で変数選択を行った結果,最終的なモデルに有意に含まれた変数はPSが1以上であること(OR=2.59,P=0.001),診断からの経過年数が長いこと(OR=1.41,P=0.045)だった.

表3 就業状況の変化に関連する要因(単変量解析)(N=360)
表4 就業の変化に関連する要因(多変量解析)

就業状況の変化の経験と調査時のQOL,心の健康(K6)との関連(表5

QOLについては,就業状況に変化があった群となかった群でQOL-CSの各ドメインの点数を比較した.男性では就業状況に変化があった群で身体的QOL(P=0.0032)と社会的QOLが低かった(P=0.0001).女性も,変化があった群で,身体的QOL(P=0.0117),心理的QOL(P=0.0297),社会的QOL(P=0.0001),スピリチュアルなQOL(P=0.0353)のすべてが有意に低くなっていた.心の健康との関連についても,就業状況に変化があった群となかった群でK6得点を比較した.男女とも変化があった群で,抑うつ不安状態ではないが,有意に得点が高かった(男性P=0.00,女性P=0.019).K6得点の13点未満を「抑うつ不安なし群」,13点以上を「抑うつ不安群」とし,変化があった群となかった群で比較したところ,男性の変化があった群で,有意に抑うつ不安状態の人が多かった(P=0.027).

表5 就業状況の変化の経験と調査時のQOL※・心の健康(K6)※※との関連(N=360)

考察

インターネット調査という偏りがある集団ではあるが,わが国のがん患者における罹患後の就業状況について男女別の変化および,QOL,心の健康との関連に関する研究は乏しく,貴重な分析と考えられる.就業状況の変化は男女で違いが大きいことが明らかになった.QOLや心の健康との関連では,男女とも変化があった人の方がQOLは低い傾向にあり,抑うつ不安状態ではないがK6得点が有意に高くなっていた.

就業状況の変化は男性の方が大きかったが,女性は主婦の場合があり,罹患時の就業状況が異なっているため男性より変化が少なかったのだろう.

男性は休職の割合が女性より高く,就業時間の減少,転職などの割合が高かった.逆に言えば女性は仕事を辞めて対応したケースが多いことを示している.男性は主生計者のことが多く,休職から就業時間の減少や転職などをしつつ仕事を続けなければならない状況を反映していると考える.

同様の分析を狭義のサバイバーで行った結果,男性の46%,女性の28%に就業に関する変化があった.男性は仕事を辞めた9%,転職11%,女性は仕事を辞めた16%だった.理由は定かではないが,罹患前の仕事が過酷だったり,がん罹患経験から仕事や生活を見直したりした可能性がある.がんの診断を受けた際に退職した人が2〜3割いることから1315),治療前に治療に専念することを考えた25),職場に迷惑をかけたくないと思った13)可能性もある.男女で理由が異なることも考えられ,さらに検討が必要である.

少数だが,がん罹患後に希望しない異動や解雇があった点も重要である.今回は2%程度だが,現状で20~64歳までの年間がん罹患者が25万人程度と推計されている26)ことから,全国では相当数にのぼるかもしれない.

就業の変化に関する経験の関連要因は,男性は未婚が最大の影響因子だった.既婚男性は主生計者で家庭のために辞職できず,罹患前と同じ仕事を継続するケースが多いと考える.その他,男女ともPSや疼痛治療などが有意だったが,身体的状態が悪いために就業の問題が生じたと考えることが自然だろう.

就業状況の変化とQOLとの関連では,変化があった男女に共通して低かった身体的QOLでは,PSや疼痛治療と同様に身体状況から問題が生じたと考える.同様に,社会的QOLとの関連では,項目に就業や収入に関するものが含まれている点が1番の理由と考えられる.家族介護者の調査で,世帯収入が低いとQOLが下がることがわかっており27),就業の変化による収入の減少はQOL低下を招きやすいと言える.心理面,スピリチュアルのQOLは女性で統計学的に有意だったが,差は臨床的には大きなものではなく,対象数が男性より多い点が影響していると考える.

就業状況の変化と心の健康の関連で,男女とも変化があった群で得点が高かったのは,職場や職種の変更で新たな業務を覚えることや,人間関係の再構築などが負担になっていると考える.仕事は収入を得るだけでなく生きがいともなるため,就業の変化による生きがいの喪失や,それに伴う自尊感情の低下が影響している可能性もある.男性の就業に変化があった群で抑うつ不安状態の人が多かったことは,男性は主生計者の人が多いため,変化を体験しつつ就業を続けることの負担や,女性より仕事のストレスや将来の展望に不安を持つ傾向があること28)が関連していると考える.

就業状況の変化とQOL低下や心の健康への影響を考慮すると,がん罹患後も同職場での継続勤務や,治療との両立ができる支援が必要と考える.就業への配慮を職場で検討するには,主治医から産業医への情報提供が有用29)であるため,産業医がいる職場では,患者の希望を確認しつつ産業医と主治医の連携を強化する必要がある.がん治療医の就労支援に対する認識や対応は,所属施設における患者支援対策と関連がある30)ことから,対策の構築や整備,職員への周知が求められる.さらに,がん患者の4割は診断前後から初回治療開始までに離職していた13)ことから,早急な退職の決断を防ぐために,医療者は診断による衝撃や動揺に対する情緒的支援をしつつ,就業に関連した支援も同時に実施する必要がある.

研究の限界

本研究はインターネット調査のため,多くの限界を有する.回答者は高学歴な人が多い傾向があり31),専門職など,がんに罹患しても雇用維持が相対的に容易な可能性がある.低収入で,就業困難が治療継続に影響する可能性がある集団への調査も必要である.また,本調査はモニター登録で報酬を伴うものだったため,一般的な就業が難しく,このような形で少しでも収入を得ようとする人が登録している可能性がある.ほかにも,就業の変化の理由が「がん罹患」に限らない可能性など多くの限界があり,とくに回答分布に関しては偏りが大きいかもしれないが,関連要因の集計は母集団の影響を比較的受けにくいと考えられる.

今回の当初の目的はがんサバイバーのQOL調査で,罹患時の就業状況についてはデータを収集していなかった.罹患時の就業状況や主たる生計者か,などが把握できていない点は本研究の大きな限界である.

本研究により,がんサバイバーの就業に関する問題の全体像がある程度明らかになり,今後の調査で詳しく検討すべき課題が明確化されたと考える.

結論

インターネット調査により,60歳未満のがんサバイバーにおける,がん罹患後の就業状況の変化に関する経験の実態とQOL,および心の健康との関連を明らかにした.主な結果として,男性の約半数,女性の3割が,がん罹患後に就業時間の減少,退職,転職,希望しない異動や解雇を経験していた.男性は働き続ける傾向だが,女性は退職が多く男女差があった.QOLとの関連では,就業状況に変化があった群で,男性で身体的・社会的QOLが,女性はすべてのQOLが低かった.心の健康との関連では,男女とも就業に変化があった群が,抑うつ不安状態ではないものの有意に点数が高かった.変化があった男性は,抑うつ不安状態の人が多かった.今後は,広く一般がん患者に対し,就業に焦点を絞った調査が必要である.

謝辞

本研究は,厚労科研番号:H26-がん政策-一般-018「がん対策に資するがん患者の療養生活の質の評価方法に関する研究」高橋班の成果の一部である.

利益相反

清水佐智子:原稿料等(株式会社日総研出版)宮下光令:企業の職員・顧問職(NPO 法人日本ホスピス緩和ケア協会理事), 原稿料等(株式会社メディカ出版)藤澤大介:原稿料等(株式会社河出書房新社)その他:該当なし

著者貢献

清水は研究データの収集,分析,研究データの解釈,原稿の起草,原稿の重要な知的内容に関わる批判的な推敲に貢献.宮下は研究の構想およびデザイン,研究データの収集,分析,研究データの解釈,原稿の起草,原稿の重要な知的内容に関わる批判的な推敲に貢献.藤澤および藤森は研究の構想およびデザイン,原稿の重要な知的内容に関わる批判的な推敲に貢献.高橋は研究データの解釈,原稿の重要な知的内容に関わる批判的な推敲に貢献.すべての著者は投稿論文ならびに出版原稿の最終承認,研究の説明責任に同意した.

References
 
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